ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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伝説の食材その1。霊草

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでADフィンを若返らせる為に深淵にある霊草を探しに旅に出たクー・フーリン一行。

 

 その道は多難が当然のように待ち受けていた。まず、草を探すにしてもアテがない、果たして探している霊草がどんなものかスカサハも含めて想像がつかないからだ。

 

 深淵の知識のあるスカサハもこの霊草については断片的なものしかわかってはいない。

 

 

「霊草は…深淵の暗い海底にあると聞いた事がある」

「ほぇー、じゃあ海藻なんやな」

「どんな海藻なんだろうねー、海藻料理なら結構作ったことあるけど」

 

 

 馬に跨る一同はそんな会話をしながら霊草を探し求め、スカサハが先導する中、深淵の海へたどり着くための過酷な道のりを行く。

 

 借りた馬は当然、道中降りなくてはならなくなり、途中からは徒歩で進み、食料が底をつけば無人島や村での生活の知識を活かして生き延びながら彼らは進んだ。

 

 深淵にある海底にある海藻、かつて、ギルガメッシュ王が手に入れたとされる海の野草。

 

 手を取り合い崖を登り、過酷な道のりをスカサハが先導する中、彼らはただただついて行く、時には自分達の昔話や他愛の無い会話や豆知識を披露しながらの旅は苦難はたくさんあれど彼らには実に楽しいものだった。

 

 そして、ついに、深淵の海を目の前に彼らはその場所へと足を踏み入れる事になる。

 

 

「ついに…ここまで来たか…」

「ここに伝説の真昆布があるんだね…リーダー」

「なんかアルギン酸めっちゃ取れそうやね」

 

 

 暗く広がる深淵の海。

 

 スカサハと共にこの場に訪れた二人は待ちに待った伝説の野草、霊草の生えているであろう場所の近くまでやって来ることができた。

 

 暗く海底が見えない海、この海底にそのアルギン酸たっぷりの真昆布、ではなく、ADフィンを若返らせる為の霊草が生えている。

 

 自作で作った船、『つれたか丸』を漕いで行き、霊草を取るべく深淵の海を行く。

 

 そして、ある程度、深淵の海を進んだところで、『つれたか丸』の上で3人は会議を開いてひとまず顔を見合わせると、どうやって草を回収するのかを相談し始めた。

 

 

「やっぱり素潜りして取り行くしかないよね?」

「うむ、なら私がいこうか?」

「いやいや、あかんよ、師匠でも女の人をこんな暗い海に入ってもらうなんて危ないですから」

「ふふふ、今更、私を女扱いか?しげちゃん?」

「いや、結構、師匠は女の人の扱いしてましたよね? 僕」

 

 

 そう言って、クー・フーリンは悪戯そうに含んだ笑みを浮かべているスカサハに首を傾げながらそう告げる。

 

 確かにいくら不死とはいえど、暗い深淵の海に女性である彼女を潜らせるにはあまりにも酷としか彼には思えない。

 

 紳士的であるクー・フーリンはそう思った。危ない事こそ、男性である自分達が身体を張って進んでやらなくてはいけない。

 

 その言葉を聞いたディルムッドは待ってましたと言わんばかりに自身の背後から手作りしたあるものをクーフーリンとスカサハの二人に見せた。

 

 

「リーダー、じゃあ俺らで潜るんだ? 一応、足ヒレ自作してみたけど」

「おー、これなら下までガンガン進めるな!」

「ディル、お前なかなか器用だな」

「へへへ、こんぐらいならまだ楽勝っすよ」

「おー、サイズピッタシやな、よし潜ってとっとと草毟って来よう」

「イメージ的には?」

「禿頭にする感じで」

「了解!」

 

 

 禿頭にするイメージでもって足ヒレをつけた二人はスカサハに水中でも息ができるルーン魔術を施してもらい、海底にある霊草を取りに深淵の海に潜った。

 

 深い深い海の底、真っ暗な海の底をひたすら潜り続ける事、数時間。

 

 無心で潜り続ける二人、建築作業なんかに打ち込む際にはよく無言でひたすらに作業に打ち込む彼らには懐かしい感覚だろう。

 

 水中の中で息ができるのは非常にありがたい、これなら、きっと海底まで難なく辿り着く事ができる。

 

 それからさらに数時間、ひたすら海を潜り続けるクー・フーリンとディルムッドの二人。

 

 すると、ようやく、海底まで近づいてきたのか…彼らの前に光り輝く海藻が目に入ってきた。その海藻はユラユラと揺られながら、わかりやすく光を発光している、これは…。

 

 

「ゴポポポポ…」

「ゴポポ」

 

 

 間違いない、探し求めていた霊草だ!

 

 海の底で蓄えた豊富な栄養分、そして、神秘めいたその海藻はまさに探し求めていたそれに違いないとクー・フーリンとディルムッドの二人は水中でサムズアップして満面の笑みを溢している。

 

 そして、霊草をむしむしと無心で毟る二人はとりあえずそれをできるだけ大量に持ち帰るべく持ってきた容れ物に押し込んだ。

 

 これだけあれば、霊草を使った薬も作れるであろう。二人は互いに頷くと草を回収して深淵の海から数時間かけて浮上していく。

 

 

「プハッ…! 師匠! 取れましたよ! 大漁です大漁!」

「おぉ、霊草を手に入れてきたか!?」

「とりあえずたくさん毟って残りもある程度残してきたんで」

「これならまた一年くらいしたら大量に海底に生えて来るやろうしね」

 

 

 そう告げる二人は深淵の海に浮かぶ船、『つれたか丸』に登り、回収した深淵の霊草を師匠であるスカサハの前に置く。

 

 大量にある霊草を前に興味深そうにそれを見つめるスカサハ、知識にはあったがこうして目の前にある実物を見るのは彼女も初めてだ。

 

 霊草は海から揚げてもなお綺麗な光を帯びている。後はこれを持って、砦に持って帰り加工するだけだ。

 

 

「霊草、海藻、霊薬…ふむ、うーん、閃いた!」

「ん? なんやディル? どないしたん?」

「あぁ、しげちゃん、これさ、ラーメンの出汁に使えんじゃないかなって思ってさ」

「らーめん?」

 

 

 そう言って首を傾げるスカサハ。

 

 らーめん、聞いた事がない言葉である。『つれたか丸』を漕ぎながら、ディルムッドはスカサハ師匠の言葉に力強く頷いた。

 

 そして、そのディルムッドの話を聞いたクー・フーリンはその画期的なアイディアに賛同するようにこう応える。

 

 

「おぉ! ええやん! けど、材料がまだ足らへんね」

「だよねー、どうせならこの良い海藻を使うなら良いもの揃えたいしね」

「なぁなぁ、らーめんとは一体なんなのだ? どういった物なのだ?」

「あ、師匠は食べた事なかったんかな? ラーメン? ラーメンってのはやな…」

 

 

 そう言って、二人が話すラーメンについて訊ねるスカサハにラーメンとは一体どういったものなのかを説明しはじめるクー・フーリン。

 

 そして、その聞いたこともない食べた事も無いラーメンの話をクー・フーリンから聞かされたスカサハはそれについて興味深そうに聞いていた。

 

 

 まず、彼が話したのは以前、仲間達と作ったラーメンについてである。

 

 まずは出汁から取る事からラーメン作りは始まる。

 

 通常の鰹節よりも、力強いパンチのある出汁を生む宗田節。朝4時から船に乗り込み、高知県土佐清水沖で捕ったソウダガツオを、静岡県西伊豆で行われている伝統の「手火山式」で2週間かけて燻して作り上げたものを以前はラーメンに使った。

 

 宗田節からはイノシン酸と呼ばれる旨味成分が出る。

 

 そして、旨味成分として知られるグルタミン酸を多く含む真昆布。

 

 前回のラーメンに作りに使ったのは、「昆布の王様」と呼ばれている北海道函館南茅部町白口浜で採られる真昆布。

 

 彼らの仲間の一人が自ら海に潜り、4mの長さのある漁具を使って、長さ2m、厚さ7㎜の肉厚な極上の真昆布を手に入れたものを旨味を最大限に引き出すため、3日間天日干したものを使った。

 

 これらの出汁のベースにまた様々な高級素材をふんだんに使い作った小麦の麺が入った食べ物、それがラーメンである。

 

 クー・フーリンから話を聞いたスカサハは納得した様に頷く。なるほど、確かに聞けば聞くほど美味しそうな食べ物であると。

 

 

「して、この霊草で霊薬を作り、その残った余りを使ってそのラーメンとやらを作ろうかと考えているんだな?」

「えぇ、そうなんですよ」

「けどやね、今回はちょい趣向を変えようかと考えてまして」

「ほほう、なんだ、その趣向とやらは、聞かせてみろ」

 

 

 そう言ってにこやかな笑顔を浮かべているクー・フーリンに訊ねるスカサハ、異なる趣向、それは是非とも聞いてみたい。

 

 クー・フーリンとディルムッドの二人は互いに顔を見合わせて頷くと、今回作るラーメンについてスカサハに話をしはじめる。

 

 今回はクー・フーリンとディルムットの二人が海へと潜り、真昆布の代わりにこの取ってきたグルタミン酸がたくさん含まれてそうな霊草をラーメン作りに使用しようと思っている訳である。

 

 この深淵の海の海底にあった霊草ならば、旨味成分がたくさん詰まったグルタミン酸も数多く含まれているはずだ。

 

 そして、今回、ディルムッドとクー・フーリンが考えているのは以前作ったこれらの醤油ラーメンの為に取った出汁とは違う作り方。

 

 つまり、出汁から異なるものを作ろうと思っていた。

 

 

「以前は醤油だったんやけど今回は」

「豚骨ラーメンを作ろうかなと思ってまして」

「豚骨? …うむ、なんだか、また興味深そうだな豚骨ラーメンか」

 

 

 豚骨ラーメンとは、豚骨でとっただし汁をスープに用いたラーメンで白濁したスープが多い事で知られている。

 

 豚骨ラーメンの有名な地名なら博多が挙げられるだろう。細い麺が主流で麺の硬さをバリカタ、カタ、普通といろんな硬さの細麺を頼めるのが魅力の博多の伝統のラーメンである。

 

 さらに、この博多の豚骨ラーメンの魅力として挙げられる細麺。

 

 この細麺の理由としては麺がスープに溶けやすい様にと考えられた手法である。

 

 これにより、簡単に細麺を湯上げできる事から、替え玉などの独特な文化はこの博多ラーメンが発祥とされており、ご当地料理としてよく知られているラーメンなのだ。

 

 さて、前回は醤油ラーメンだったが、今回は豚骨ラーメンにと趣向を変えたクー・フーリンとディルムッド。

 

 当然、これには訳があった。

 

 

「して、なんで豚骨ラーメンなんだ? 今回も醤油でもよかったじゃないか」

「いやー、最初はまた醤油にしようかなと思うてたんですけどね、前回も醤油やったし…」

「それにほら、豚骨ラーメンなら、最近、いい出汁取れそうな豚骨が頻繁にウチの畑荒らしてるでしょ?」

「あ……」

 

 

 ディルムッドがそう告げた瞬間に話を聞いていたスカサハは全てを悟った。

 

 なるほど、確かに言われてみればそうだ。最近、凶暴な魔猪がフィオナ騎士団や村人が耕した畑を荒らしているという話が以前、彼の口から語られていた事を彼女は思い出す。

 

 なんと、この二人。豚骨ラーメンを作るために魔猪の豚骨を使って作ろうと考えていたのである。

 

 深淵の霊草の出汁をベースにした、魔猪の豚骨スープ。

 

 きっと美味しいに違いないと二人の中では確信があった。この豚骨スープならば、皆が喜ぶ豚骨ラーメンが作れるはずだ。

 

 

「…くっくっくっ! あははははは! お前たちは本当に天才だなぁ! あはははは!」

「いやー、やっぱり出汁は良いもん使わないとね」

「まぁ、まだ麺とかは揃えられへんやろうから食材の確保だけしときたいんですよ」

 

 

 スカサハも流石に二人の話を聞いて腹がよじれそうになるほど久々に笑ってしまう。しかし、二人はなんの問題も無さそうにスカサハ師匠に笑顔で応えていた。

 

 第1の食材、もとい、フィンを若返らせる為の霊草を採取したYARIO一行はこうして深淵の海から再びアルムの砦を目指す。

 

 次の目標は第2の食材、魔猪の豚骨、それを手に入れる事である。果たして彼らは無事に伝説の豚骨ラーメンの素材の一つを確保できるのか?

 

 まだ、失われた仲間達との再会も果たしてはいない中での挑戦! クー・フーリン、ディルムッド、スカサハの3人のカタッシュ隊員はこの第2の目標、魔猪の豚骨を手に入れる難題に果敢に挑戦していかなければならない! 果たして、それを手にする秘策は彼らにあるのか!

 

 そして、次回は初めての薬草加工に、クー・フーリンとスカサハ師匠が挑戦! 果たして、霊草を用いた霊薬は無事に作ることはできるのかだろうか。

 

 まだまだ、これからも我らがYARIO達の挑戦は続く!

 

 ザ・鉄腕/fate! 伝説の食材達で美味しい豚骨ラーメンはできるのか?

 

 この続きは…! 次回の鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 伝説の食材でラーメン作りーー←NEW!!

 

 薬作りに挑戦ーーーーーーーー←NEW!!

 

 深淵の海底まで海藻取りーーー←NEW!!


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