ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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閑話2 YARIOは人理を救えるか

 

 人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 

 人類の未来を語る資料館であり、時計塔の天体 科を牛耳る魔術師の貴族である、アニムスフィア家が管理する機関。

 

 魔術だけでは見えず、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐ為の機関なのである。

 

 さて、そんなカルデアにいるマシュ・キリエライトはある伝承についてマスターである女性、藤丸立香と共に医療スタッフであるロマ二・アーキマンの医療室を訪れていた。

 

 三人はいつものように録画していたある番組(伝承)を見るためにここに集まって、毎週の楽しみであるそれを見に来ていたのだ。

 

 

「いやーやっぱり今週の鉄腕カタッシュも面白かったわ! ねっ! マシュ!」

「はい! やっぱり作るなら木からですよね!」

「そうだね、間違いない! やっぱり無人島なんかに持って行くなら彼らみたいな人達が理想だよね!」

「わかるー、私、面接の時にそう言ったもん」

「素晴らしいですねー」

 

 

 そう言いながら、テレビの前であっている鉄腕カタッシュの感想を各自述べる彼女達。

 

 やはり、国民的アイドルだけあって、皆に愛されている。

 

 特に不可能な事がほぼ無さそうなところとか、メンバーが皆仲良しだとかそういった部分が好感を得ているのだろう。

 

 すると、そんな声を聞いていたカルデアの所長にしてアニムスフィアの後継者であるオルガマリーはバン! と勢いよく部屋の扉を開けるとほのぼのとテレビを眺めている彼女達に声を上げた。

 

 

「そうじゃないでしょ!? 伝承っていうかテレビで歴史がこんなに変わってるのになんで特異点が出来ないの!? おかしいわよね!」

「えー、そんな事言われてもー」

「最近、世界の歴史学者が頭抱えて農家に転身する事態にまで発展してるのに何言ってるのよ!」

 

 

 そう、なんとここ最近、名だたる歴史学者が相次いで農業をはじめるという珍妙な出来事が起こっていた。

 

 しかし、副業として始めたりという方がほとんどであるからして、正確には歴史学者としての仕事をしつつという話だが。

 

 とはいえ、この事態に流石に所長のオルガマリーも顔をひきつらせるほかなかった。

 

 

「わかってる? ねぇ! ちょっと!」

「とはいえねー、彼らのおかげで人理も修復する必要無いしねー」

「そうですよー、人理修復のプロだし、あの人達」

「だいたい捨てちゃう人理は回収しに行きますからね」

「いやー、平和って良いものだねぇ、あ、この後、医龍あるけど所長観ます?」

「え!? 本当に!? やったー! 私、朝田先生大好きなのよねー!」

 

 

 そう言って、皆と同じようにテレビの前に集まるオルガマリー所長、毎週の楽しみはやはり欠かせない。

 

 しかも、オルガマリー所長は大の朝田先生のファンである。

 

 なんでも、あの大人でクールな部分と熱い情熱を持ち合わせているギャップがたまらなく好きだとか。

 

 という個人の好みはひとまずすみに置いておいて。

 

 

「…はっ! って違ぁう! 違うわよ! この人達をどうにかしないといけないんじゃないのって私は言いたいの! ねぇ!」

「そうは言いますけど、所長、なんやかんやで彼らに救われてるじゃないですか」

「そうだよ、冬木で彼らが協力してくれたから今の君があるんだよ?」

 

 

 そう言って、声を上げて否定するオルガマリーに諭すように告げるロマ二。

 

 それは、数ヶ月前、彼らが人理焼却予定にされていた冬木市に訪れた時の出来事だった。

 

 人理修復のために訪れた燃え盛る冬木市、その地で同じカルデアの魔術師であるレフライノールの裏切りにあい、肉体が死亡した状態で精神だけが特異点にレイシフトしてしまったオルガマリーは彼から消滅させられそうになっていたのだ。

 

 しかし、急遽、燃え盛る冬木市を元の街に復興させようと訪れたカタッシュ隊員により、彼女の命は救われたのだ。

 

 その時の光景がこちら。

 

 

『生きたまま無限の死を楽しみたまえ』

『いやぁ! まだ死にたく…』

 

 

 自然に宙に浮き、引きずり込まれそうになるオルガマリー所長。

 

 しかし、ここで、彼らは宙に浮いているオルガマリー所長の足に縄を括り付けるとリーダーが操るクレーン車でなんとか彼女の消滅に待ったをかける事に成功する。

 

 そして、そんなオルガマリー所長を消滅させようとしているレフさんにベディは驚いた表情でこう訪ねた。

 

 

『えっ…! もしかして、その所長、消滅させちゃうんですかっ!』

『いや…その、まぁ見ての通りだが…』

『そんな! 勿体ないですよ! …良ければ僕らが頂いちゃっても』

『…貴方達がそこまでおっしゃるなら、構いませんが…精神だけですよ?』

『ほんとですか!? AD! これは…!』

『セーフです』

 

 

 こうして、オルガマリー所長は無事にカタッシュ隊員に鹵獲され、後になんか新しい肉体を与えられる事になった。

 

 しかも、当然ながらこれだけではない。冬木市に訪れた彼らは人理焼却の話をレフから聞くと彼にこんな話を持ちかけはじめたのだ。

 

 皆さんはもう予想がついているとは思うがいつもの流れである。

 

 

『えっ…! この人理も燃やして捨てちゃうんですか?』

『なら僕らが頂いちゃっても良いですかね?』

『我が主人は大変あなた方を気に入っておりますので、全然構いませんよ、こんな人理で良ければいくらでも差し上げますとも』

『やったー! なら有り難く頂きますね! うわぁ、人理なんか貰っちゃったよリーダー』

『町興しのしがいがあるなぁ…』

 

 

 ーーーベディは人理を手に入れた。

 

 こうして、ベディの一声でなんとカタッシュ隊員は0円で人理を手に入れる事に成功した。

 

 これには、冬木市に来ていたカルデアのメンバーもポカンとするほかなかった。

 

 いや、まさか、敵だと思われていたレフにこうも好待遇で接され、なおかつ、人理修復する前に焼かれるはずの人理を彼らは難なく手に入れてしまったのだから無理はない。

 

 国民的人気アイドルにもなると捨てるはずだった人理すらも貰えてしまう。やはり、YARIOって凄いと彼女達は素直にそう思った。

 

 ちなみに燃えていた冬木市は鎮火後、恐るべき速さで復興し、さらには、農業地域が増え今では作物もよく取れるより近代的な街になったとか。

 

 その時の出来事を思い出したオルガマリーはなんとも言えない表情を浮かべ顔を引きつらせるほかなかった。

 

 

「いや…、まぁ、その…。そういう事もあった気はするわね、というかあの人達、燃やす予定の人理を毎回貰いに行くから私達の仕事がほぼ無い…

「えー? そんな事ないですよ! 町興しにわざわざ出向いたじゃないですか!」

「被害が出た町の復興に魔獣狩りとか色々してるでしょう?」

「ごめんなさい、こう言ってはなんだけどそれってもうボランティアとかそういう類だと思うの」

 

 

 そうオルガマリーが告げると一同は目を逸らしてシーンと口を閉じ沈黙してしまう。少なからずそんな風に感じてしまっている部分があるからだろう。

 

 確かにやってることはここ最近ではそんな事ばかりだったような気がする。

 

 もちろん、彼らがカルデアに足を運んで来てくれた時は…。

 

 

『はーい! ダヴィンチちゃんの店だよー好きなもの買ってい…』

『俺たちに買うっていう発想はない』

 

 

 

 ーーーダヴィンチショップは閉鎖した。

 

 それに加えて、さらに、こんなところにも彼らは目につけた。そう、カルデアの召喚システムである。

 

 なんでも、虹色に光る聖石が召喚に必要だとか、そのため、財を削ったり、地方を飛び回り集めていたマスター、藤丸立香は彼らからこんな提案を持ちかけられた。

 

 

『あ、この石くらいならできそうだよ?』

『えっ! ほんとですか?』

『そんなたくさん使うなら自家生産した方がええやろうしなぁ』

 

 

 という訳で、彼らからだん吉で聖石を定期的に送ってもらえる事になったのだ。

 

 その数は毎月増えはじめており、そろそろカルデアの召喚機材が壊れるんじゃなかろうかとスタッフからも懸念されている。

 

 そんな背景もあり、カルデアとしては友好的な彼らとの関係は切っても切れないものとなっていた。主にマスターだが。

 

 

「そう! そうですよ! オルガマリー所長! 私達はアイドル活動をしてるんですよ!」

「魔物倒したり町復興が?」

「そうです、さらに農業したり釣りしたりしはじめたら間違いなくアイドル活動になりますし!」

「いや、ここアイドル養成所じゃなくて人理継続保障機関なんだけど」

 

 

 ーーーごもっともである。

 

 だが、オルガマリー所長としても彼らから命を助けて貰った恩もあるので藤丸立香に強い反論はできない。

 

 何故なら、彼女も毎月送られてくる彼らが作った果物や野菜のお裾分けを楽しみにしている節があるからだ。

 

 人理修復のお手伝いも一応してはいるし、カルデア的には多分問題はないだろう。

 

 

「とりあえずあの人達はああいう人たちなので」

「…反論する言葉が見当たらないのが怖いわね…」

「私も彼らとの初対面の時は茫然としちゃいましたし」

 

 

 そう言って、彼らと出会った当初を思い出すマシュ。

 

 カルデアが爆発し、マスターである藤丸立香と共に炎上汚染都市冬木市に飛ばされたマシュ。

 

 そう、燃え盛る冬木市で重機やトラックに乗り颯爽と現れた彼らから彼女が言われた初めての言葉が…。

 

 

『あれ? 浜風ちゃんじゃん!』

『久しぶり! 鎮守府以来だね! ん? 俺たちが前に作った12.7cm連装砲積んでないじゃん。なんで、そんなまな板担いでんの?』

『すいません、人違いです! これ盾ですから!』

『あ、ほんまやよく見てみ? 髪の毛茄子みたいな色してんもんな、もしかしてイメチェン?』

『地毛ですっ!』

 

 

 以前、彼らが出会ったどっかの誰かさんと間違えられてしかもこの言われようである。

 

 世界にはそっくりさんがたくさんいるという、そのうちの一人に間違えられたのだろうがなんだかマシュはこの時なんとも煮え切らない心境であったとか。

 

 そして、そんな中、ディルムッドからマシュが言われた言葉が…。

 

 

『あ、マシュちゃんシールダーなんだ! じつは俺もシールダー属性あってさ! ちょっと盾見せて?』

『え? あ、べつに構いませんけど…』

 

 

 そう言って、マシュから盾を手渡して貰うディルムッド。

 

 彼女の盾をマジマジと見つめ質感を確かめたディルムッドは確信したようにマシュにこう告げた

 

 

『やっべぇ、かなりまな板だよ! これ!』

『だから盾ですってば!』

 

 

 ーーーまな板認定を受ける。

 

 まあ、そんな些細な事もあったが彼らのおかげで冬木市の人理焼却は免れることができた。

 

 そして、再び人理を燃やされる事になれば、また彼らはその場所に現れるに違いないとカルデア一同は確信している。

 

 

「あ、次会った時サイン貰わないと!」

「え! 貴女貰ってなかったの!」

「次はしっかり書いてもらいましょう! マスター!」

 

 

 いつ現れるのかは誰にもわからない。しかし、彼らが現れる時、その時はきっと誰かを幸福にしようとする時だろう。

 

 少なからず、カルデアがこんな風に平穏でいられるのは五人のあるアイドルが彼らの元に訪れてくれたからだ。

 

 こうして、今日もカルデアにいる藤丸立香達は何事もない平和な1日を謳歌するのだった。

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.捨てられちゃうカルデア所長を貰う。

 

 2.ついでに捨てちゃう予定の人理も0円で貰う。

 

 3.聖石が自家生産で作れる。

 

 4.ダヴィンチショップが閉店する。

 


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