ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
しばらく雑談を繰り広げる事数時間。
ここで、仕掛けていた蛇釣り用の竿に反応が…、これはもしや、ヨルムンガンドが掛かったのか?
最初は微動だったはずの竿は激しくしなりはじめる、これは間違いない。
「あ! 掛かった掛かった!」
「やだこれもー、絶対スネーキーな感じじゃん」
ーーー本日初めてのスネーキーな当たり。
激しくしなる竿を慌てて掴み折れないように腰を落とすカルナ。だが、やはり馬力が凄い、掛かったヨルムンガンドは御構い無しに底へ底へと逃れようと足掻く。
と、そこで負けじとブリュンヒルデとトールが釣竿を支える手伝いに入る。
それを皮切りに皆、重さに耐えられそうに無さそうなカルナを補助せんと次々に竿を引っ張り上げる手助けに入りはじめた。
激しい引きに一同は力を合わせて、必死に釣り上げようとあがく。
そして、何時間かの格闘の末、ついに…!
「上がったぞー!」
馬鹿でかい蛇が頭を出してその姿を見せた。
遥かにでかい巨体、これが、幻の蛇ヨルムンガンドである。牙からは毒が滴り落ち、その凶悪な眼は釣り上げたカタッシュメンバーとトールを睨みつけていた。
この光景にカタッシュ隊員達は目を丸くする。
あまりにデカすぎる、その事に関してベディはこんな感想を述べはじめた。
「これモンスターハンターみたいじゃない?」
「じゃあ俺たちベテランハンターだな!」
「くっそー! 大剣持ってねぇ!」
ーーー海賊の次はハンターに転職。
と、冗談はさておき、この馬鹿でかい蛇に睨まれたカタッシュ隊員達は思わずその圧倒的な巨体に後ずさりする。
だが、彼らとて、蛇ハンターの名は伊達ではない、幾たびのハブと戦い不敗、沖縄で培ってきた蛇ハンターとしてのプライドがある。
動いたのはまず、蛇ハンター歴ベテランのカルナからだった。
「くらえ! これが、エル取り棒じゃー!」
エルキドゥが変身した巨大な蛇取り棒を使い、見事にヨルムンガンドの首元を捉えた。その長さはかなりの長さ、間合いを取らなければこちらがやられてしまう。
だが、一人でこの蛇取り棒を押さえ込むのは困難、なので、皆も加わってヨルムンガンドを抑えにかかる。
ヨルムンガンドVS農業アイドル。
火蓋は切って落とされた! さらに、蛇取りベテランのリーダーもカルナの助力に加わりヨルムンガンドが必要以上に暴れないように抑えにかかる。
「あかん! このロケの前に保険見直しとらんかった!」
「リーダーそれ今言うかな!?」
ーーー忘れてしまった生命保険の見直し。
ヨルムンガンドが相手となれば、確かに命の危険もある。だが、生憎、生命保険は昔には無い。
そうこうしているうちにヨルムンガンドとの決戦も長引く、トールさんもハンマーなどでヨルムンガンドを出来るだけ攻撃してくれるので多少こちらに部があるか?
「シャアアアアア!!」
「綱引きやな」
「とりあえず運動会の曲流そうよ」
「AD! よろしく!」
巨大なヨルムンガンドとの綱引きの最中、そうお願いするカタッシュ隊員達。ADフィンはその言葉を聞いてBGMを流す。
それは、懐かしの音楽。皆さまも一度は聞いたことがあるだろう。
耳を澄ませばその言葉が鮮明に頭の中で浮かび上がってくる。
ーーー紅組の皆さんも頑張ってください。
ちなみにどちらが紅組なのか白組なのかがわからないが、細かいことは気にしてはいけない。
とそれから数時間の格闘の末、ヨルムンガンドはだんだんと弱りはじめてきた。これなら、捕獲できそうかもしれない。
「はぁ! せい!」
ブリュンヒルデの振るうスカサハから手渡されたゲイボルク(鍬)で連続殴打の攻撃。
流石はワルキューレ、この攻撃にはヨルムンガンドもひとたまりもない。
そして、頃合いを見計らいここで、トールさんが渾身の一撃。
ハンマーで後頭部を叩かれたヨルムンガンドはドスンと気絶し倒れた。
長い長い綱引き対決はどうやらカタッシュ隊員達に軍配が上がったようである。
いままでとは違った毒蛇の捕獲に流石のカタッシュ隊員達も苦労した。しかし、皆で力を合わせればなんとかなるものである。
巨大なスネーキーを前にしたディルムッドも顔を真っ青にしていた。ヌメヌメした鱗に巨大なヨルムンガンドの横たわる姿。
それを目の当たりにした彼は思わず。
「オェェ! おぇ!」
「そんなに嫌いなのね」
ーーー嗚咽してしまう。
蛇嫌いに拍車がかかっている。嫌いな蛇がこれだけデカいなら尚更そうなってしまうのも致し方ない。
とはいえ、流石にこんなに馬鹿でかい蛇をカタッシュ村には持って帰れそうに無い。どうしたものか。
「うーん、困ったねぇ」
「塩焼きにして持ってかえるのか」
「まあまあ、落ち着きたまえ皆の衆、気持ちはわかるがこの子をとりあえずオーディンさんに見せよう」
「それが良いだろうな、父には私から報告しよう」
とりあえず、ヨルムンガンドが起きても暴れ出さないように毒のある牙は重機を使って全部取り除いておき、さらに、巨大な縄で身体を固定する。
こうしておけば、噛まれる心配もなく毒の危険性も薄まる。
そして、その状態のまま、とりあえずオーディンさんにヨルムンガンドを見せることにした。
さて、用事は済んだ。ひとまず、毒蛇のヨルムンガンドの捕獲は済んだところで、今回の依頼も無事に終了。
「わざわざすまなかったのYARIOの皆様」
「いえいえ! 人手がたくさんあったんで助かりました!」
「うむ、しかし…こやつはどうしたものか」
そう言ってヨルムンガンドを見ながら首を傾げるオーディンさん。
確かにこれだけデカいなら、捕獲しても置き場所に困る。しかし、この場所に放置しておくわけにもいかない。
といって、ロキから捨てられたヨルムンガンドを殺すのもなんだか可哀想。そこで、彼らはこんな提案をしはじめる。
「この子小さく出来ませんかね?」
「そしたら捕獲器入れて僕ら持って帰るんで」
「おお! それは名案じゃ!」
「それなら僕も協力しよう」
「私もルーン魔術を使えば助力くらいはできるだろう」
という事で、マーリン師匠、そして、オーディンさん、スカサハ師匠達の魔法、魔術を駆使しこの巨大なヨルムンガンドを小型化する事に。
小型化したヨルムンガンドをハブを入れるための捕獲器に入れ、ひとまずこれでヨルムンガンドを無事に駆除する事に成功した。
巨大な蛇取り棒に変身していたエルキドゥさんも変身を解き、こうして一件落着。
「あ、ついでと言ってはなんだが、ブリュンヒルデの奴も持って帰って良いぞ」
「えっ!」
「ほんまですか! いやぁ、助かりますわぁ」
「鍬の使い方上手かったもんね」
なんと、ヨルムンガンドを捕獲した報酬にオーディンさんがブリュンヒルデさんを貸し出してくれるという。
農業地帯の開拓が最近進んできたカタッシュ村、ゲイボルクという名の鍬の使い方が上手い彼女が加わってくれれば頼もしいことこの上ない。
「基本的ウチの農民英雄ばっかだから」
「本業はアイドルとか領主とか王様とかなんだけどね、きっとブリュンヒルデちゃんもすぐ慣れるよ、癖者ばっかだけど」
「そうですか? それは楽しみですね」
ーーーヨルムンガンドより個性的。
そう、最近ではステゴロが強い特攻服着た聖女が機械弄りに目覚めてバイク作りはじめたり、王様作りの達人である魔法使いが酪農を極めたり、抑止力の守護者が彼らを見習って0円で食堂を開き始めたりとカタッシュ村も随分賑やかになってきた。
しかも、ヨルムンガンドを捕獲した今、彼らには更なる挑戦がこの時点で頭の中にあった。
そう、皆様はもう存じ上げている方もいるかもしれない、納屋山城を作るにあたって、必要不可欠なものがある。
何もない無人島に新たに拠点を置き開拓する事、彼らは懐かしのあの島をノアさんと共に作った男爵ディーノをお借りして目指そうと思っていたのだ。
「ラーメン作りもまだ途中だしな」
「島からなら鰹も釣れんでしょ」
新鮮な鰹を求めて海に出るにしても、日本海に浮かぶカタッシュ島からならきっと釣れやすいはず。
小型化したヨルムンガンドもあの島なら、自由に放してやる事もできるかもしれない。
ちなみにこの捕獲したヨルムンガンドについて、ベディはこんな事を提案しはじめた。
「この子名前なんにする?」
「ヨルムンガンドって名前だとあれだしねー、兄ィなんかある?」
「うーん、そうだなぁ」
なんと、それは小型化したヨルムンガンドについての名前である。
巨大な蛇、ヨルムンガンドではなんだが日本的ではないし、何より、物騒な名前、ここは一つ小型化した事だし違う名前を付けてみてもいいかもしれないという彼らの思いつき。
しばらく思案するカタッシュ隊員達、そして、ヨルムンガンドに付けられた新しい名前がこちら。
「塩焼きにして食べようとしたからな、しかも、釣りで釣れたし」
「よし! なら潮ノ花でいいな!」
ーーーヨルムンガンド改め別名、潮ノ花。
名前がいかにもそうなのだが、塩焼きにして食べようとしたから潮ノ花なのはどうかと思う。
もちろん、由来は塩焼きにして彼らが食べようとしたところから、これをカルナの口から聞いたヴラドはふとこんな疑問を口に出した。
「…関脇くらい?」
「いやいや大関でしょう、元の大っきさ考えたら」
「いや、こいつは絶対横綱取るよ」
ーーー名前が明らかに相撲取り。
何を思ってカルナは横綱を取ると言い切るのか定かではないが、確かに竿の引きは横綱級だった。
生憎、土俵ではなく綱引きだったので今回は彼らに軍配が上がったが、この場が土俵だったら潮ノ花の尻尾でペチンッと弾かれて負けていた事だろう。
何はともあれこうしてヨルムンガンドは潮ノ花という何故だか相撲取りのような名前を彼らから授けられる事になった。
「さ、そんじゃ帰りますか」
「賛成ー! 帰って風呂入ろう! 風呂!」
「ホッホッホ、またいつでも来てくれて良いぞ、若人よ」
「ありがとうございます! オーディンのおじいさん!」
まるで孫を見送るかのように彼らにそう告げるオーディンさん、北欧の地で彼らはこうして新たに暖かい人達に出会う事ができた。
暖かい人というより暖かい神様達であるが。
こうして、一仕事終えたYARIO達は帰路につく、さあ、いよいよ、次からはラーメン作りと納屋を作るために彼らが本格的に動き始める。
果たして、カタッシュ島計画は上手くいくのか?
この続きは、次回! 鉄腕/fateで!
今日のYARIO。
1.ヨルムンガンドを捕獲するアイドル。
2.ヨルムンガンド改名。潮ノ花。
3.蛇に嗚咽するディルムッド。
4.ハンターに転職を考えるアイドル。