ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS
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男爵ディーノの改修(完了)

 

 あれから三日後。

 

 カタッシュ村の農業の片手間、男爵ディーノの改修をしていたYARIO達だが、その作業も無事に終わりを迎えることが出来た。

 

 アグラヴェイン卿の意外な一面を垣間見ることができた今回の船改修作業だったが、大きな事故もなく安全に作業を遂行できたのは幸いだ。

 

 

「ふむ、良いではないか、良い出来だと思うぞ」

「ギル師匠のお墨付き頂きました!」

「ありがとうざいあーす!」

「良い、特に船頭についているあれが気に入った」

 

 

 ノアの男爵ディーノの出来栄えを我らが師匠の一人、ギルガメッシュ師匠に見てもらい感想を頂いたカタッシュ隊員達もこれには満足だ。

 

 そんな最中、刀を携えた一人の桜色のセイバーが不満げに彼らの元へふらりと現れる。

 

 そう、カタッシュ村の緊急搬送の申し子という二つ名を持つ沖田さんその人である。

 

 今日はめでたくカタッシュ病院からの退院日なのだが一体、どうしたというのだろうか?

 

 

「沖田さんじゃん! もう身体は平気?」

「…ええ、今日退院でしたから、もう大丈夫ですよ」

「それは良かった良かった! それで元気ないみたいだけどどうしたの?」

 

 

 完成した男爵ディーノの前で首を傾げながら彼女にそう問いかけるカルナ。

 

 すると沖田さんは指をツンツンとしながら視線を逸らすと言いずらそうにこんな話をぽつりぽつりと彼らに語り始める。

 

 

「実は私的には大正ロマン溢れる立ち位置的なものを期待していたのですが、最近、病院に運ばれるばかりで」

「ほうほう」

「それで…ヒロインとしての立ち位置がですね…。私もスカサハさんやモーちゃんみたいに可愛い! とか、沖田さん大勝利! 嫁ルート確定! みたいなイベントがあって然るべきだと思うんですよ、セイバー枠ですし! アルトリア顔ですし!

「それ言いはじめちゃったらこの村にいる人達、王様含めて全員親戚じゃんとか言われるから」

 

 

 ーーーアルトリア顔の濃い聖地。

 

 いつのまにかどこかの社長さんが大歓喜しそうな村になってしまっているカタッシュ村、おんなじような面影があるもののキャラが濃い面子が集まって来ている。

 

 そんな村でヒロインを張ると宣言する沖田さん、正直な話、この村では全員がヒロインを張れてしまうため厳しそうと思わざるを得ない。

 

 というより具体的に沖田さんが言っているヒロインとは何を指しているのかがそもそも疑問なのだが…。

 

 

「つまり、乙女ゲームの様に…沖田さんを巡りYARIOの皆さんが私と共に熱い恋に落ちていく恋愛模様を…」

「はーい、作業に入るとすっか」

「いやー忙しい忙しい」

「ちょっと!? だからなんでそんな扱いなんですか私!」

 

 

 そう言いながら、再び別の作業に取り掛かり始めようとする彼らを制止する沖田さん。

 

 これがピチピチのイケメンアイドルならともかく、中身が平均年齢40歳以上の中年英雄アイドル達に何を求めているのだろうかと一同はそう思わざるを得なかった。

 

 とはいえ、確かに沖田さんも年頃の乙女、そんな恋にロマンスを求める気持ちもわからないでもない。

 

 

「とりあえず沖田さん、男爵ディーノの上でタイタニックでもしとく」

「改修したばっかなのに沈没すんの、この船」

 

 

 ーーーラブロマンスといえばタイタニック。

 

 しかし、待ってほしいタイタニックをするのは良いが、船の頭には珍妙な船首像があるためどうしてもシュールな光景しか思い浮かばない。

 

 しかも、タイタニックは沈むので船を海に浮かべる前から縁起でもない。

 

 

紅に染まったこの儂を〜! 慰める奴はもういない〜、おー、元気になったようじゃの沖田…モガっ!」

「ノッブ、その口閉じてください。それトラウマです」

「むしろ紅に染まったのおっきーだけどね、吐血的な意味で」

 

 

 しかもタイミング悪くどデカイギターを担いだロックなノッブまで現れる始末。

 

 ーーーまためんどくさい事になって来た。

 

 毎度お馴染みの展開に一同の思いも計らずも合致する。まあ、この場に集まって来ている面子が面子だけにそれは致し方ないのではあるのだが。

 

 

「ん? どうしたしげちゃん? 何か問題か?」

「あ、師匠!」

「サーちゃん師匠と呼べ! 馬鹿者!」

 

 

 そう言って現れたのは木材を担いでいるスカサハ師匠。

 

 そして、この方もなかなかの癖者でめんどくさい。サーちゃん師匠と最近誰も呼んでくれないので自ら広めようという事を無理矢理行い始めていたのである。

 

 どんなになっても女性とは可愛く見られたいそんな生き物なのかもしれない。

 

 

「いやー、サーちゃん師匠。おっきーが私もヒロインになりたーいと言ってまして」

「あの男爵ディーノの先端でどうブレーンバスターしようかと話し合っていたわけですよ」

「あれ? 皆さんちょっと待ってください! ジャンルがラブロマンスからサスペンスになりかけてますよっ!? 沖田さん被害者Aみたいな扱いになりませんかそれっ!?」

 

 

 さっきの話と全然違うことに思わず突っ込みを入れる沖田さん。後ろではみんなの兄貴分ことカルナが屈伸などの準備体操をしていた。

 

 後輩にプロレスを仕掛け続け数十年、男所帯ならではの恒例行事のベテラン、やはり風格が違う。

 

 するとスカサハ師匠はポキポキと拳を鳴らすとニコニコと笑みを浮かべ、沖田さんの肩をポンと叩く。

 

 

「よし、そういう話なら私がやってやろう」

「やめてください死んでしまいます」

 

 

 満面の笑みを浮かべているスカサハ師匠の頭にズビシッと手刀を入れる沖田さん。

 

 スカサハ師匠のブレーンバスターなんて喰らえばそれはそうなるのも致し方ないと言える。

 

 というより沖田さんはか弱い女の子そんな女の子は労らなければならない。

 

 

「まあ、こやつは攘夷志士とやらを何人もぶった切って来た脳筋じゃがの。しかも、剣術も脳筋仕様じゃし」

「何ですって! このあんぽんたんうつけ! だいたい貴女だって墓前に灰投げたりするヒャッハーなキチガイではありませんか!」

 

 

 そう言って言い争いを始める沖田さんとノッブ。

 

 しかしながら、それを眺めていたカタッシュ隊員達は顔を見合わせながらため息を吐くとこんなことを彼女達に語り始める。

 

 

「ねぇ、二人ともこんな諺知ってるかな? どんぐりの背比べって」

「五十歩百歩だな」

「目くそ鼻くそとも言わないっけ?」

「ちょっとお主ら辛辣すぎやせんかの!?」

 

 

 ーーー手厳しいお言葉。

 

 

 カタッシュ隊員達の容赦ない言葉にノッブもこれには思わずツッコミを入れる。

 

 とはいえ、確かに沖田さんも乙女。夢見る乙女の願いを叶えるのも、アイドルとしての使命である。

 

 という訳で?

 

 

「まあ、うちのイケメン担当って言えば顔役のこいつでしょ」

「もー、こじつけ酷すぎだってー、ヴラドでいいじゃんかー」

「こいつ貧弱だから多分、沖田さん海に落っことすよ」

なんだとこの野郎! 何言ってんのよ!? 俺も逞しくなったんだよ! こう見えて!」

 

 

 そうカルナの一言にカチンと来たヴラドが思わず突っ込みを入れながら声を上げる。

 

 確かに生前なら全くもって貧弱枠だったヴラドも今では英雄の身体、それならば沖田さんを支え男爵ディーノの先でタイタニックをしても大丈夫なように思える。

 

 だが、沖田さんは…?

 

 

「あ、私、髭ボーボーな人は好みでは無いので…すいません」

「好きで生やしてんじゃないんだよ!? 元はツルツルだってたんだよ俺!!」

「威厳はあるやけどなぁ…」

「ちくしょう! 髭全部剃ってやる!!」

 

 

 ーーー威厳と逞しさの代償に老けた。

 

 悲しきかな、前世では端麗で綺麗な顔つきだった(自称)のヴラドもこの身体になってから威厳と髭と共にそれが失われてしまった。

 

 ヤケになったヴラドは髭剃りを片手に川辺に向かって駆けだしてしまった。という訳で、結局、沖田さんをタイタニックするのはベディという事に。

 

 船の改修も無事に終わり、それを祝す意味で縁起良く男爵ディーノでタイタニック。

 

 タイタニックだと沈没してしまうので縁起が良いとは全くもって思えないのだが…、突っ込みは野暮というもの。

 

 沖田さんの願いを叶えるため、男爵ディーノの先端へ。

 

 

「お、おぉー…、た、高いですねここ」

「よしやるか!」

「どうせやるなら、シーン再現しながらやろうぜ! 気持ち入れてさ!」

「いいねぇ、やろうやろう!」

 

 

 という訳で、沖田さんとベディの二人は男爵ディーノの先端の付近であの幻の映画、タイタニックの再現をすることに。

 

 ドラマや映画に出て活躍する事何十年のベテラン、すでにベディは気持ちはハリウッドスターになりつつ台詞を話し始める。

 

 見つめる沖田さんとベディの二人、そして、ベディはこんなセリフを沖田さんの耳元で囁く。

 

 

「目を瞑って…、手を広げてみて」

「はい…」

 

 

 顔を真っ赤にしながら、言われるがままに男爵ディーノの先端で手を大きく広げる沖田さん。

 

 改修が終わった男爵ディーノは海に浮かべ、プカプカと浮いている。タイタニックまでの豪華客船とは言わないが雰囲気は十分だ。

 

 

 ーーーついにあの名シーンが蘇る。

 

 

 そして、沖田さんの耳元でベディはこう話しをし始めた。彼女の腰に手を回し、背後からしっかりと支えるベディ。

 

 

「そのまま真っ直ぐ歩いて、さあ、目を開けて」

「……ん…」

 

 

 そして、ゆっくりと目を開ける沖田さん。そう、これこそ、沖田さんが望んでいたラブロマンス的な展開。

 

 暫しの間、様になるその光景を眺めるカタッシュ隊員達、やはり、役に入ると雰囲気が違う。

 

 だが、それを眺めていたディルムッドの一言でこのラブロマンス的で幻想的なシーンは一気に崩壊する事に。

 

 

「北斗の拳で見たことあるよなあれ」

「天翔十字鳳じゃん」

「ちょっとぉ! 今いい雰囲気だったのに! やめてくださいよ!!」

「トドメだ! ケンシロウ!」

「もう! なんでベディさんまで乗っかるんですかそこでー!」

 

 

 そう言って、カルナとディルムッドの一言で崩壊したラブロマンスはもう取り戻せない、愛をとりもどせとはなんだったのか。

 

 だが、ここで一同はあることに気づく、そう、沖田さんの腰に回していたベディの手が離れているという事に。

 

 そうなるとどうなるのか、それは、もちろん…。

 

 

「…あ…!」

「あ…」

 

 

 沖田さんは男爵ディーノの先端からそのまま海へ落下して行く事になる。

 

 それも両手を広げ天翔十字鳳の体制を保ったまま海に綺麗に下の海に落下していく。

 

 

「あーー!! なんで離すんですかーっ…! へぶしっ!

 

 

 それを眺めていたカタッシュ隊員達は海に落下していく沖田さんを見送ると互いに顔を見合わせる。

 

 そんな中、カルナはゆっくりと海から浮いて来た沖田さんを見つめるとこんな一言を呟いた。

 

 

「あれ今の落ち方シンっぽかったよな」

「いやぁ、名シーンだよなあれ」

「いや、とりあえず沖田を回収じゃろ!? 言うとる場合かっ!」

 

 

 そう言って会話を繰り広げるカルナとディルムッドの二人に突っ込みを入れるノッブ。

 

 こうして、沖田さんは男爵ディーノから海へとダイビングしたせいで再びカタッシュ村病院に搬送される事になった。

 

 一応、海から引き上げられた沖田さんはスカサハ師匠による人工呼吸などの迅速な処置で問題なく病院へ引き渡す事ができた。

 

 そもそも、霊草を食べているので命の危険はないのだが念を押してというのはスカサハ師匠の談である。

 

 

 男爵ディーノの改修も無事に終了、さて、ようやくこの船でカタッシュ島を目指せる。

 

 

 さて、タイタニックは失敗してしまったが無事にこの男爵ディーノは彼らを乗せて海を渡る事が出来るのか?

 

 

 この続きは次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.沖田さん男爵ディーノからサラダバー着水。

 

 2.緊急搬送される沖田さん。

 

 3.箱舟を鉄船に改修。

 

 4.タイタニック失敗。








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