ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
島リンピック、ビーチフラッグ三回戦。
さて、一勝をもぎ取ったYARIOホワイトだが、YARIOレッドは次を勝ちトントンに持っていきたいところ。
最終戦だけあって、誰が選出されるのか注目が集まる。
「満を持して! ファラオである私が大トリですっ! さぁ崇めませい!」
「はい、かいさーん」
「納屋作りにもどっかな、さて、腕がなるぜ!」
「ちょっ!? 私のこの期待度の薄さはなんなんですかっ! おかしいでしょう」
チームホワイトからはなんとニトクリスちゃんが立候補、しかし、周りは何故だかわからないが諦めムードに入っていた。
というのも? ニトクリスちゃんはリーダーも真っ青のうっかりポンコツちゃんなのである。
ポンコツファラオの異名は伊達ではない、大事な場面、ここぞという時にそれは発揮される事を彼らは経験から学んでいた。
そして、赤組も…。
「沖田さん参上! いえーい! 土方さん見てるー?」
「これは解散じゃな」
「誰ですか、この病人を大トリにしようと言った馬鹿者は…」
「沖田さんの扱い雑過ぎィ!?」
そして、こちら赤組の大トリに任命された沖田さんもまた雑な扱いを受けていた。
自称病人と豪語する割には、白くフリルが付いた可愛い露出度が高い水着を身につけている沖田さん。
泳ぐ気満々なのは側から見てもわかるのだが、病弱な人間が海で泳ぐというのはいかがなものだろうか。
汚名を挽回と意気込んでいる沖田さんは果たして白組のニトクリスを退ける事は出来るのだろうか?
「あのー…一応、救護できるようにスタンバッてて貰えますか? 婦長?」
「とりあえずAEDは持ってきてますので、心肺停止状態からでも蘇生が可能です」
「ビーチフラッグで心肺停止するケースなんて初めて聞きましたよ僕」
そう言って、水着のままサムズアップしてくるナイチンゲール婦長に顔を痙攣らせるヴラド。
彼女も水着であるあたり、なんだかんだでこのこのカタッシュ島を楽しんでる様子だ。ビキニ姿のナース長とは一体…。
さて、そういうことで、最終決戦はこの問題だらけの不安要素が盛りだくさんの二人だが、果たして勝つのは?
「位置についてー、よーい!…ドンッ」
「どりゃあああ!」
「負けませぬっ!………っへぶっ!?」
そして、火蓋が切って落とされたと同時に砂浜に見事なヘッドスライディングを披露するニトクリス。
一同はその光景に思わず頭を抱える。
予想はしていたが、まさか、ここまで見事にニトクリスがスタートダッシュと共にすっ転ぶとは予想だにしていなかった。
それを尻目に、見事にスタートを決めた沖田さんはどんどんと加速していく。
「はっはっはっー! この勝負! 頂きましたね! いやー! 相手がポンコツな方で助か…」
だが、加速して、フラッグに向かっていた沖田さんにここで異変がっ!
スタートダッシュを決め、後は旗を奪取すれば良い話なのだが、どうやら、そうは問屋がおろさないらしい。
砂浜を力強く蹴り出し駆けていた沖田さん、歩調を崩すと、次の瞬間、盛大に…。
「…ゴハァッ!」
沖田さんは吐血した。
そして、力なく地面に伏す。なんとまあ、予想通りというか、この泥仕合の模様をなんとも言えない表情で見守っている一同。
ーーー意外といい勝負。
血を吹き出した沖田さんはまるで、ゴキブリの様に地を這いながら旗に向かい前進し、そして、立ち上がったニトクリスは砂を振り払うと慌てて旗に向かい駆け始める。
「もらったぁー! あっ…!」
「ゴフゥッ…!」
「お、沖田ちゃーん!」
が、足元が疎かになっていたのか、地に伏していた沖田さんの横腹になんと勢いよく足を引っ掛けて、二、三回転し、ニトクリスはそのまま海に頭から突っ込んだ。
横腹にいい蹴りが入った沖田さんは吐血したまま、ピクピクと痙攣しており、海に顔から突っ込んだニトクリスもまた気を失っている模様。
ここで、レフェリーのヴラドが仲介に入ると、10カウントを待たずに左右に大きく手を振りKO宣言。
どこからか、カーンカーンカーンッ! とゴングの音が幻聴で聞こえてくるようであった。
この結果に思わず、観戦していたベティ達も。
「あれは、いいの入ってるよ」
「横っ腹だったもんな、横っ腹」
「ガンッ! 言うてたで」
そう言って、互いにKOしてしまった二人のおっちょこちょいを心配そうな眼差しで見つめる彼ら。
まさか、本当にビーチフラッグでAEDが必要になってしまうとは、とはいえ、沖田ちゃんに関しては霊草のアルギン酸をたくさん食事で摂っているため死ぬ事はないのだが。
だが、流石はナース長ナイチンゲール。準備に関しては全く余念がない、まさしくプロである。
さて、というわけで、三回戦は引き分け。
つまりこの勝負は結局、決着がつかないまま終わりを迎えることになった。
とはいえ、ある意味、平和的に終わったようで何よりである。さて、それでは気を取り直して、浜辺の散策をしはじめるYARIO達。
「いやーなんか落ちてねーかな」
「あ、これ…」
そう言って、なにかを見つけて足を止めるディルムッド。
そこには、なんと、発泡スチロールの断熱マットらしき大きなものが、これは、使えそうだ。
ーーーで、閃いた!
ディルムッドはおもむろに服を脱ぎはじめ、見つけた発泡スチロールの断熱マットを高く上に掲げると、浜辺を駆け出し海へ一直線。
「サマードリーム♪」
そして、海に突っ込んだディルムッドはぷかぷかと海に浮かび、スイスイと泳ぎはじめる。
それを砂浜から見ていたモーさんは羨ましそうにこんな声を上げる。
「あっ! ずっりー! 楽しそう! 俺も俺もー!」
そうして、海に浮かぶディルムッドの元へと駆け出す、モーさん。
だが、発泡スチロールでぷかぷか浮いているとは言え、体重がかかれば、これも危うい。体重に負荷が掛かれば沈没してしまうことは明白である。
ディルムッドの元へと泳いで行ったモーさんはすかさず、小ぶりなお尻をマットの上に乗せようとするが?
「あ! ばかっ! 沈む! 沈む!」
「良いじゃん! 乗せろよー! 沈まねーよ!」
と、なんとか沈まずに海に浮く発泡スチロールのマット。
前にモーさん、後ろにディルムッドとなんとかバランスを保っているようである。仲良くぷかぷかと海で浮かびながら夏にふさわしい曲を口ずさんでいた
すると、それを見ていたカルナも落ちていた漁業に使う丸状の発泡スチロールを発見し、それを抱え海へ。
「あー! 夏休みー♪」
だが…。海に入った途端。
丸状の発泡スチロールがクルリンと一回転、海にドボンと虚しく顔面から突っ込む結果に、これには、マットの方に乗っていた二人もゲラゲラと笑い転げる。
良い年した英雄が、海で何をはしゃいでいるのか、一方、こちらはベディがズルズルと何かを引きずって持ってきている。
これは一体…。
「ロープ見つけた! ロープ!」
「ロープ!?」
「ロープ見つけてどうすんの!?」
そう言ってズルズルとロープを引きずってくるベディに顔を引きつらせる一同。
すると、ベディは自信満々な表情を浮かべて、彼らにこんな事を告げ始めた。
「海で遊ぶんだったら引っ張ったりできる」
「ロープ引っ張って遊ぶの!?」
ーーーロープを引っ張る遊び。
ロープをひたすら犬のように引っ張って持ってくるベディの姿に思わず、ヴラドは笑いをこぼしたままこんな一言を。
「ロープ引っ張って遊ぶってこのご時世楽しいのかな?」
「もうすでに楽しい」
というわけで、何故かロープが遊び道具に。
とりあえず、使えそうなので置いておくことにした。使えるものはなんでも使う、それが、彼らのポリシーである。海から流れ着いたものならば尚更だ。
そして、歩くこと数分、彼らはあるものを発見した。それは…。
「あ! まな板だ!」
「お、まな板!」
「あ! エリザちゃん!」
そう、なんと奇跡的に砂浜に落ちていたまな板だった。
これを見た一同はすかさず、それを拾い上げると嬉しそうに皆、集まってくる。これは大発見だ。
そして、ベディは首を傾げたままこんな一言を発する。
「でもさぁ、エリザちゃんじゃ遊べないでしょ」
「いやいやいやいや」
「お前はね、お前は、全然まな板のすごさをわかっていない」
「ちょっと待ちなさい? さっきから私のことさりげなくまな板って言ってるわよね? 言ってるわよね?貴方達」
そう言って、青筋を立てたエリザちゃんが彼らの話を聞いてポキポキと指の骨を鳴らしていた。
しかし、ディルムッドはまな板を構えたまま、素早くビュッビュッ! と動かしはじめる。
これには周りからオォ と感心したような声が上がった。だが、直後に全員にエリザから拳骨が飛んできたのはいうまでもない。
こうして、ビーチフラッグを含めた、賑やかなリゾラバは終わりを迎えた。
次からはついに本格的な開拓に取り組みはじめることに。
久々に訪れたカタッシュ島、果たして彼らはどんな風に開拓していくのだろうか?
この続きは!
次回! 鉄腕/fateで!
今日のYARIO。
1.ビーチフラッグ引き分け。
2.AEDがいるビーチフラッグ
3.まな板認定を受けるエリザちゃん