ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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新章 人類未踏領域開拓地カタッシュ島。
世界を救う戦い(工事現場)


 

 

 ーーー遠い未来。

 

 荒れた荒野の大地に唯一残る豊かな場所

 

 かつて栄えた人類の終着点、そこでは人が人として生きることができる唯一の国。

 

 かつては島だったその場所には最後の人類が生きていた。

 

 栄える為の知識を奪われた人間達はその王より生かされている。

 

 争いもなく、そして、それ以上の繁栄は無い。

 

 第一次産業という名を冠するもの全ての知識が失われた大地が広がるこの世界における最後の楽園。

 

 

「酷い有様だね…これは」

「ふん、奴が反転すればそうなるだろうよ、想定していなかったわけでもあるまい」

「栄えもせず、滅びもしない、進歩もなく退化も無い…。虚無だね」

 

 

 そう告げる魔法使いは悲しげな表情を浮かべ、そびえ立つ居城を見つめていた。

 

 まるで、それはかつての仲間達と作った物を彼自身が自らの手で再現したかのようにそびえ立っていた。

 

 耐え難い孤独との戦い、そして、彼が抱えているだろう深い絶望と悲しみが分かる。

 

 

 ーーー挑戦を奪われた人類史。

 

 

 この世界はifの世界、だがしかし、その世界は実在していた。

 

 彼の心が生み出した虚無、仲間達と再会出来ず、あまつさえ、人類史を正しくたどらされた結果、かつての仲間達の死を目の当たりにした彼がこの結論に達してしまった。

 

 文化、叡智、そして伝統。

 

 全てを知って、そして、その全てをこの世界に生きる全人類から奪い去ってしまった。

 

 

「創世王と呼ばれておるみたいだがな…、あんな小さき場所に限られた人間、限られた知識に限られた生活、これが人類最後の場所とは笑えるわ」

「…英雄王、そろそろこの場を離れた方が良いと思う、彼の宝具の影響を受ける可能性がある」

「ふざけた宝具だ…全く」

 

 

 そう告げる英雄王ギルガメッシュはだん吉に足を進め忌々しいと言わんばかりにその居城を睨みつけた。

 

 暗闇が広がるこの世界に光が灯ることはいつになるのか、はたまた、永久にこのままで人類は滅びぬまま虚無を生かされるのか。

 

 それは、まるで、この状況を生み出したであろう元凶である彼の心情を覗き込んでいるかのような錯覚さえ感じる。

 

 

「…奴らの協力が必要になるかもしれんな」

「こればかりは…流石にね…」

 

 

 神々とて干渉できない、否、人々の信仰すらこの世界には存在しはしない。

 

 この世界に生きる人類は何かを信じるということさえ思いつかないからだ。

 

 別に信じなくとも彼さえいれば生活は豊かになるという考えなのか、はたまたその知識さえ無いのか。

 

 この世界における人類は彼から与えられる最低限の知識だけで生かされているのだから。

 

 

「人類の可能性を極限まで無くした世界、人類は滅びもせぬが繁栄もせぬ、神すら存在せぬ、そして…。この世界を作り出した原因が人類自らの責任だと言うのだから笑えるな」

「……………」

「しかしあやつらならこの世界を変えられるやもしれん、例え、雪降る山であっても、火山であろうと、どんな場所に行こうともあやつらは決して挑戦を止めぬ」

 

 

 生きることをやめない、挑戦することから逃げない。

 

 敢えて、困難な道を選び、そして、自らの手で切り開いていく彼らの生き方こそ、人類が目指すべき場所。

 

 英雄王はこの世界を見て、彼らの力が必要だということを改めて確信した。

 

 

 

 ーーーー人類の命運はある五人のアイドルに託される。

 

 集結せし、歴戦の職人達。

 

 それは、忘れ去られた小さな島で、海を、大地を、空を拓く戦い。


 神々から祝福されし五人でひとつの英霊達が一から世界を創り上げる。

 

 

 

 ザ・特異点カタッシュ! 人類未踏領域開拓カタッシュ島。

 

 

 

 異様な特異点発現から数日前。

 

 人理継続保障機関フィニス・カルデアでは突如として現れたこの特異点について緊急事態対策を練る会議が行われる事になった。

 

 人の文化、伝統、そして全ての知識が失われた未来の発現、これは未だかつて無いほどの大事件である。

 

 

「…それで所長…、発現した特異点って」

「過去最大級の規模ね、人類史がこのままだとその歴史に修正される可能性が高いわ」

「では! すぐさま行かなくては…!」

「いいえ、ダメよマシュ、それは自殺行為だわ…その世界には原因があると思われる場所を中心に世界規模で謎の霧が展開されてるのよ?」

「せ…世界規模!?」

 

 

 深刻な表情を浮かべ、オルガマリー所長は現時点でのレイシフトの危険性についてマシュに語った。

 

 世界規模、地球を覆い尽くすそれは知識を奪う。

 

 第一次産業についての知識はもちろん、自分の存在すらも頭から抹消しかねようなそんな力。

 

 これらの力を行使する者があの場所にいることは明白なのだが、レイシフトで藤丸とマシュをあの場所に行かせるのは非常に困難を極めた。

 

 人から挑戦というもの自体を全て消し去ってしまった魔鏡、虚無の世界。

 

 

「こうなってしまった以上、彼らを呼ぶほか無いわ」

「…ま、まさか! 彼らを呼ぶ気ですか!」

「それしかないわ、呼ぶなら今よ! あの五人の人理修復のプロを!」

 

 

 バン! っと音を立てて机から立ち上がるオルガマリー。

 

 ーーー彼らしかいない。

 

 アイドルという身でありながら常に挑戦をしてきた五人の男達。

 

 彼らの歩んで来た道は既に軌跡となり、そして、奇跡を引き起こしてきた。

 

 ちなみに人理修復のプロと呼ばれている彼らだが、本業はアイドルであることを皆さまは忘れないでいてあげてほしい。

 

 そんな訳で。

 

 

「その世界がそんな大変なことに…」

「リーダーなんとかしてあげられないかな?」

「てか、人理ってどのレベルから作るの? やっぱりネアンデルタール人から作るのか…」

「いや、ビックバンからじゃね?」

「スケールデカすぎだから、修理するだけでいいの」

 

 

 ーーー人理修復のプロを呼んだ。

 

 人理修復をし始めて数年、着実に成長してきた彼ら、壊れた人理なら貰い修理してきた。

 

 それは、中世のヨーロッパだったり江戸時代だったり多岐に渡る。

 

 さて、今回はことがことだけに彼らはサーヴァントとして現界している。藤丸ちゃんの魔力供給を受けた彼らの身体は英霊と化している訳なのだが。

 

 

「ついに俺らも幽体離脱できるアイドルになっちまったか」

「来るとこまで来ちゃった感あるよね、わかる」

 

 

 そう言って、腕を組みながらしみじみと語るバーサーカーとなったベディにキャスターのクラスとして現界しているヴラドが納得したように頷いていた。

 

 キャスターはキャスターでもヴラドの場合はキャスター違いのような気がするが気のせいだろう。

 

 気を取り直して、YARIOの面々は招集をかけられた今回の件について語りはじめる。

 

 

「てなわけで、我々は今回、特異点というものを修復するわけなんですけども」

「いやー、特異点修復って久々だよね」

「何年振りくらい?」

「結構経った気がするね? てか、俺たちバカンス真っ最中だったしね、ついさっきまで」

「むしろ、僕らが特異点を作ってた気がするんやけども」

 

 

 リーダーの一言で辺りに笑いが起こる。

 

 確かにここ最近の行動を振り返ってみると、逆に特異点になっていたような気もしないわけではない。

 

 すると、そこでディルムッドがすかさずフォローに入る。

 

 

「ほら、俺たちの場合はさ、突き抜けちゃってるから」

「ほう」

「出る杭は打たれるっていうけど、もうぶち抜けたらむしろいっかってなるじゃん、多分そんな感じだと思うよ」

 

 

 ーーー確かにわかる。

 

 出すぎた杭は打たれるが、出てしまえばなんてことはない。

 

 釘を打ちまくっていた職人が言う言葉には説得力があった。

 

 頷くカタッシュメンバー達、そんな中、カルデア所長のオルガマリーはコホンと咳払いをすると改めて今回の件について話を始める。

 

 

「今回の特異点は特殊なの、甘く見ない方が良いわ」

「そうですか、今回のロケ地って寒いの?」

「いやー、待て待て、南国ってオチなんじゃない? アマゾンとか」

 

 

 オルガマリー所長の言葉に楽しそうに会話を繰り広げるカタッシュメンバー達。

 

 これにはオルガマリー所長も顔をひきつらせる。なんで緊急事態って言っているのに楽しそうなのだろうかと突っ込みたくて仕方ないといった様子だ。

 

 そこで、そんなオルガマリー所長にベディが一言。

 

 

「ちなみにロケ弁って、出ます?」

「出ません」

「ほらなー、俺ぜってー出ねぇと思ったもん」

「作るしかないかー、ちょっと調味料だけ持って来させて」

「あのねぇ、そういう問題じゃないんだけどねぇ!」

 

 

 そう言って、味噌や調味料を用意し始めるディルムッドに顔をひきつらせるオルガマリー所長。

 

 しかも、既に特異点先をロケ地とか言っている。おまけに訂正するつもりもないようだ。

 

 そんな中、カタッシュ隊員について来たモーさんから随伴する予定の新人の藤丸隊員とマシュ隊員に一言。

 

 

「お前ら! なんだその格好! 怪我するぞ! ちゃんと作業服着ろよな!

「え!? で、でもこれ、霊装…」

 

 

 モーさんからの指摘に戸惑うマシュ。

 

 着替えろも何も、普段からこれを着てレイシフトを行なっている藤丸隊員とマシュ隊員にとってはいつもの格好。

 

 だが、モーさんのその指摘にリーダーは拍手をしてこう告げる。

 

 

「お、モーさん、ええこと言った!」

「これだからトーシローは! 良いか! 現場ってのはな! 常に危険がつきものなんだぞ! ヘルメットの確認もしっかりしとかないと怪我しちゃうんだからな!」

 

 

 ーーー建築現場で培ったプロ意識。

 

 建築現場を経験して数年、もはや、現場監督としての才覚を見せつつあるブリテンの時期王様の一言は重い。

 

 藤丸隊員とマシュ隊員はこうして作業服に改めて着替え直すことに。

 

 

「えーと、着替えて来ました」

「よし! それじゃ安全確認するぞ!」

「えー…」

「返事!」

「は、はい!」

 

 

 ーーー安全確認は大事。

 

 こうして、作業服に着替え、ヘルメットを持ち、レイシフトの前で集合した藤丸隊員とマシュ隊員にモーさんが指導を行う。

 

 

「復唱! 作業服良し!」

「「作業服良し!」」

「ヘルメット良し!」

「「ヘルメット良し!」」

「安全靴良し!」

「「安全靴良し!」」

「建築道具良し!」

「「建築道具良し!」」

「安全確認良し! 今日も一日ご安全に!」

「「ご安全に!」」

「ちょっと待って今から貴女達何しに行くの?」

 

 

 レイシフト前に建築現場に向かう勢いのモーさんとカタッシュ隊員達に突っ込みを入れてくるオルガマリー所長。

 

 すると、ここで、ディルムッドが何を言っているんだお前はとばかりにオルガマリー所長にこう告げる。

 

 

「ロケ前に安全確認は大事でしょうがぁー!!」

「特異点修復じゃなくて家建てに行く勢いでしょうがぁー!!」

 

 

 そう言って、咆えるディルムッドに盛大に突っ込みを入れてくるオルガマリー所長。

 

 それを見ていたカルナとリーダーは顔を見合わせて肩を竦める。

 

 何もおかしいとこはない、至って普通のことである。

 

 

「所長さん、何が不満なん?」

「流石にクレーンとかシャベルとかは持って行けないよー」

「違う、怒ってるのはそこじゃないのよ」

 

 

 的外れな二人の一言にがっくりと項垂れるオルガマリー所長、そもそも、クレーンとかシャベルとか以前の問題である。

 

 現場は文字通り戦場だ。激しい戦いになることが予想される。

 

 オルガマリーには不安が募るばかりだが、リーダーは満面の笑みを浮かべて彼女の肩をポンと叩くと一言。

 

 

「よし! 今から戦場を洗浄してきますわ! 容赦せんじょう! なんちゃって」

「……あ、…うん、もう行ってらっしゃい…」

 

 

 寒いリーダーの親父ギャグをかまされ、もう色々と悟ったオルガマリーの目にはハイライトは無かった。

 

 こうして、我らがカタッシュ隊員達はカルデアの藤丸隊員とマシュ隊員を加えて、いざ特異点に向かわんとしている。

 

 果たして、彼らを待ち受ける困難やいかに!

 

 

 この続きは…! 次回の鉄腕/fateで!

 

 

 

 

 特異点修復のプロになるーーNEW!!

 

 モーさん現場監督に昇格ーーNEW!!

 

 新章スタートーーNEW!!


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