仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
まだ目的地には、辿り着かない。
いや、意外に遠いのかもしれない。
実際に足を運んだ事がないので、実感が湧かないだけなのだろう。
もっとも、そもそもの場所が日本から赤道を超えた南半球である。
日本を出て、台湾を過ぎ、フィリピンを超え、パプアニューギニアを通過して、ようやくオーストラリアの北の端が近付いてくる。
ダーウィンである。
(にして、案外燃料保つんだな)
ここまで一度も燃料の補給を行なっていないが、不調をきたした様子は見受けられない。
途中、未確認機として戦闘機に追われる羽目になり、危うく撃墜されるところだったものの、無事にこうして逃げ切れた。
皮肉にも、悪運だけはあるらしかった。
ダーウィンを過ぎれば、最早そこはオーストラリア国内。
そこからオーストラリアを縦断すれば、メルボルンのある南部へと入る事ができるはずだ。
操縦桿を握り、機体の高度を少しばかり下げる。
地上が見下ろせる高度を維持しつつ、和真は南下していった。
小型機にしては、この機体はかなり性能が良かったようだった。
29日の昼間に出発し、現在時刻は同日23時を回った頃合い。
空港までの移動時間、手続き等の時間を加味した上で、通常のジェット機でのフライト時間と比較しても、かなり無駄を省けた方だろう。
空港を経由する分の時間がないのが、大きなメリットか。
しかしメルボルンまで間もなくといったところで、唐突に変化は訪れた。
機体の高度が下がり始め、計器からは警告音らしき音が発せられ始めたのだ。
「え、おい!もうすぐ着くんだってのに!勘弁してくれよ!」
和真の叫びも虚しく。
墜落した。
姿勢はなんとか維持し続けたが、機体は勢いよく地面に叩きつけられた。
「…全く…ハァ…」
彼自身怪我はさしてせずに済んだのは不幸中の幸いと言えたが、機体は無惨な有様に。
再度飛ばせるようにするには、それなりの時間が必要になるか。
可能な範囲で調べると、どうやら燃料切れの模様。
先ほどまで問題なく飛べていたが、それも空元気に過ぎなかったというわけである。
(これをどう運べと?)
あれこれ試行錯誤を繰り返しているうちに、なんとか元通りのようなサイズには戻ってくれたものの、その見た目は正直歪というほかなかった。
例えていうならば、消しゴムを1個丸ごと使って、出来た消しかすを纏めても、元の消しゴムにはならないのと同じようなものだろう。
軽く息を吐いて、その飛行機だったモノをバックパックに詰め込む。
「さて…と」
ここはどこなのか、ということはある程度は割り出せている。
明確な座標までは知りようがないが。
少しばかり西へ下ると、メルボルン・タラマリン空港がある。
周囲の風景と地図の道路を照らし合わせてみると、どうやら空港からは反対の東側に位置する、ウェストメドーズの近くかと考えられた。
(待ち合わせ場所のサザンクロス駅まで、どういくか)
時刻は夜中、あたりに迷惑をかける事は避けたいところ。
正直先程の墜落も、騒音にならないか心配でもあり、できれば早くここから移動したい所存。
ならばと、バックパックに手を突っ込み、移動手段になりそうなものを探ることにする。
部屋に置いてあったものや、使えそうな物を片っ端から詰め込んだので、何かしらあるはずだ。
ということで、5分ほど後〜
和真がバックパックから引っ張り出した手には、見慣れぬ端末が。
更に露骨に使えとでも言わんばかりに、黄色の小さなボトルがセットされている。
「何だこれ」
見覚えがあるような、ないような。
イマイチ使い方も思い出せないので、後ろにポイッと放り投げ、残りを取り出していこうとしたのだが。
機械が地面に叩きつけられた音がしない。
ガツンとか、ガシャンとか、あまり聞きたくないような音が出ることがあるはずだが、それがない。
芝生の上に落ちたのとも、また異なるような。
振り向くと、そこには1台のバイクがあった。
先端の歯車のようなものが特徴的で、後部にはボトルのようなものがついている。
(ん?これは、見た事ある…)
「コイツは…」
それもそのはず。
そのバイクは和真がアフリカに行ってしまった際に、真二が助けに来た時、乗っていたものと同じだったのだ。
ではなぜそれがここにあるのか。
真二が持っていたはずのものが、なぜ和真のバックパックに入っていたのだろうか。
その真相は知りようがないものの…真二が意図して置いていったか、アト子さんが試験運用と称して忍ばせていったか。
大方そのどちらかだろう。
詳細は後ほど聞くとして、この際使わせて頂くに越した事はない。
路上販売よろしく広げた各種アイテムを、再度バックパックに入れて背負う。
出立の準備は整った。
(運転に関しては、他のと変わらないか)
バイクに跨ってエンジンをかけ、アクセルを全開に、和真は一路、メルボルン市街へと走り出した。
***
目的地がどこなのか解っていれば、辿り着くことはできる。
それは至ってシンプルな事実であり、経験から導き出される不変的な答えでもある。
ただし、その過程に何があるかまでは100%予測はできない。
今バイクを走らせている和真自身とて、サザンクロス駅の場所を調べていないわけではない。
墜落地点のウェストメドーズから、所要時間がどれくらいなのかまでは、視野に入れていなかったが。
ただハイウェイに沿って下っていけば、道はそこまで難しくはないようであった。
エッセンドン空港を通り過ぎ、右方向に折れると、ウッドランズ・パークやクィーンズ・パークといった公園を横切ると、次第にあたりは都市部の様相を呈してくる。
メルボルン動物園やロイヤルパークといった場所が見えてくれば、間もなくである。
「案外早く着いたな…」
ふぅ、と息を吐く和真。しかし現在時刻は午前9時を目前にしている。
目的地であるサザンクロス駅の前まで来るのに、かれこれ8時間以上を費やしている計算になる。
決して早いとは言い難い。
とはいうものの、ウェストメドーズを発ってから30分程度で、実際に和真はサザンクロス駅まで着いていた。
では残りの時間は何をしていたのかと言うと、綺麗な景色を楽しむためにバイクを東西南北、あちこち走らせていたのである。
至ってしょうもない理由だが、未踏の地にほっぽり出されるよりかは遥かに動きやすく、突然怪物に襲われることもない。
(とはいっても、それはそれで物足りないような)
景色を楽しめたのは事実なので、良しとしようか。
「…んで、どこに迎えに来んだ?」
サザンクロス駅に迎えに行くと言ったのはレナである。
しかし彼女はどの入り口、どのバス停を目印に、などと言っていない。
流石に駅のホーム、という事はないだろうが。
試行錯誤しつつも元の端末の形に戻し、バックパックに仕舞うと、駐車場や駅前の駐車スペースを、転々としていくことにした。
そうすれば、いつかは迎えに来るレナとも会えると踏んだのだ。
時間はまだ1時間はある。
55分後〜
(思ったより広いな…この駅。もう残り5分しかねえ…)
焦りつつ駅のフロアを駆けて出てきたのは、見覚えがある場所。
最初に和真がバイクを止めた、入り口付近だった。
回りまわって、元の場所に戻ってきたわけである。
(どこにいんだよ…!ったく、場所くらい事前に言っといてくれ…)
最も、サザンクロス駅とは言っているので、場所を伝えていないわけではない。
言葉のやりとりは難しいものである。
ベンチに腰掛け、脱力して背もたれに体を預けると、女性が1人、彼を見下ろしていた。
「あ、久しぶり。無事に着けたぞ、サザンクロスまで」
「まぁ…みたいね。その割には、かなり息が上がっているようだけど」
レナの言葉もごもっともなのだが、ここまで来る過程でなにがあったのか、説明するのは非常に躊躇われた。
それとなく言葉を返すことに。
「身体が鈍ったみたいでね」
「しっかりしてよね。これから家に行くんだから」
「…家?キミの?」
「それ以外どこがあるの?両親にも話をしてあるから、行くわよ」
「いつの間に…」
「先日、29日までの間」
「わお」
首をすくめ、和真は、さっさと歩き出したレナの後を追う。
「しかし、迎えに来たって…何使って来たんだ?」
「ほら、これ」
そう言ってレナが指したのは、1台のオフロード車だった。
所々傷みがあるようにも見えなくはないが、4、5人は少なくとも乗れるらしく、おおかた家族で使っているものなのだろう。
「なるほどねぇ…運転できんの?」
「そこはご心配なく。というか、運転できないと、ここまで来てないでしょうに」
「それもそうか」
助手席に乗り込み、レナの運転でいざ出発。
故郷と口にしていたところで、家にお邪魔することになるのは、考えていないわけではなかった。
どこか期待していたフシもあったのは、否めないところだが。
いざ親御さんに会うとなると、なかなか緊張もしてくる。
言葉にならない焦燥感。
ややワイルドな運転ではありつつも、車はサザンクロス駅から遠ざかっていくのだった。
はい、どーも。
低クオリティに定評のある作者でございます。
毎度の事ながら、テンポ良く進めろよと思われてそうだし、自戒もしているんですが。
そうもできないのが悲しいとこで。
まぁ次の話では、家に着いてレナの両親も登場すると思いますし、それ以外でも触れたい話もあります。
ルルイエも、もう一度出るかもしれないしね。
オーストラリア着いて、彼女と合流して〜っていう映画みたいなトントン拍子のじゃなくて、泥臭くて無駄の多いのが、この物語の特徴でもある。
次の話の冒頭でさっさとレナの家行くんで、勘弁してくださいな。
ていうか、ホントこの物語(と呼べるのか怪しいが)通して、自身の変化ってなんとなく感じるところある。
ま、それはともかく。
じゃ、ぼちぼち書いてきます。
近いうちに、別のクロスオーバー考えるかもだが。
じゃ、待たねー