仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
修学旅行先の島を舞台に、和真の戦いが始まる。
逃げるようにゲートを開き、突っ込んだまではよかったのだが。
テキトーに操作したせいでどこに出るのか、和真自身分からないのであった。
「やっべ....どうしよ、一応逃げれたけど....」
周りを見渡しても、当然ながら白い光の中である。
だがしばらくすると、前方に分かれ目が生じた。向こう側からも光が射し込み、和真の視界を奪った。
しばらくして目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。まあ当たり前ではあろう、突然別の世界に来れば誰でもそうなる。
確認の為体を起こすと、自分が居るのはベッドの上であることが認識できた。
「うっわ...またベッドの上始まりかよ」
文句を垂れながらも、ベッドから降りる。今着ているのは制服のようで、どうやら予想するに保健室のベッドに寝ていたようだ。
来禅高校の制服のようではあるが。
ひとまずは担当の先生が居るはずなので、出てみた。のだが.....
「なんで誰もいねーんだよオイ」
そう、誰も居なかったのだ。あるのはベッドの他に、机その他必要なモノだけ。肝心の先生は居ない。
「ま、教室行ってみるか。誰かいるだろ」
腕時計を確認すると午後3時を過ぎたあたりだった。つまりまだ学校には人がいるはずである。
その前にこの制服の持ち主...つまり和真が入れ替わった可能性のあるヤツが誰なのかを調べなければならない。
名簿を漁っていく。だが、
「コイツ元誰なのか分かんねえええええ!」
そう、誰もいないので聞きようがない上、確認も取れない。名前すら呼ばれないので、聞けないのである。
「どうしようかなぁ....いっそ職員室行ってみるか」
結局職員室行ってみることにした。リュックを担ぎ、いざ職員室へ。
こういうのは大体、適当に歩いていれば行けるものなのだ。
少し歩くと、職員室と書かれた部屋に辿り着く。荷物を置いていざ入室。
「失礼します、あの....(名前分かんねえし、どうすりゃ良いんだ?!)」
「あれ、殿町じゃないか?どした?」
「あの...教室行きたいんですが」
「てかお前ホントに殿町か?かなり畏まってるぞ」
「はあ」
殿町宏人は確かに、そんなに畏まってるキャラではなかった...気がする。
だが今の言葉から察するに、八坂和真はココでは殿町宏人というわけだ。
「ま、いいか。教室戻りたいんだろ?修学旅行の班決めもあるからなぁ....」
「なるほど。ありがとうございます」
リュックを背負い、教室へと向かう。確か殿町は五河士道と同じクラスで、2年生だったはずだ。小説での記憶が正しければ、4組だった。
到着してドアを開ける。
「ただいま帰りました!殿町宏人帰還であります!」
沈黙。『誰コイツ』のような目で見ないで欲しい。ただでさえ殿町のこのキャラ使った事ないのだ。苦労するのも当たり前ではないか。
まあ彼らに分かるはずも無いだろうが。
「ありゃ?先生もどうしたんです?俺ですよ?殿町宏人ですって」
「「「「「「誰?」」」」」」
「酷くね?!俺だよ、殿町だってば!」
「なんかあれ殿町じゃないね」「知らないヤツに見える」「誰だよあいつ」「五河君、なんか分かるんじゃないの?」「ホラ親友でしょ?」「そんな事言われてもなァ」
イジメじゃないのか、これは。などとなっていると、教壇に立つ29歳独身の岡峰教諭が口を開いた。
「はい皆さん、殿町君も戻って来たことですし、修学旅行の班と飛行機の席決めますよ?」
そうだ、修学旅行の色々を決めるらしいのだ。皆が席につき、残ったところに座らせてもらう。恐らく殿町の席なのだろう。
席に着いたところで、再び岡峰教諭が話し始めた。
数十分後、班は綺麗に分かれていた。
五河士道は犬井拓海。殿町宏人(和真)は立花咲夜というヤツと同じ部屋になった。男子女子それぞれで20名ずつだったようで、余りが出ずに偶数で分かれることが出来た。
最も決まるまでに、夜刀神十香が男子になろうとしたり、士道が女子になりかけたりしたが。
そんな事は些細なこと。決まればそれでオーケーなのである。
だが肝心の場所が分からない。
「そういや場所ってどこなん?」
さりげなく聞いてみる。
「ああ、或美島だってさ。まったく急に変わるなんてな....」
「或美島ねェ.....」
そしてある程度話も纏まったところで、岡峰教諭は改めて言う。
「では土曜日に、学校に朝6時に集合ですね」
クラス全体で了承の返事。時計には今日が木曜日と表示されている。
時間なさすぎではないのか?自業自得な気もするが。
そんなこんなで解散、放課後になった。
日直で教室に残っていた士道に、和真は話し掛ける。
「よ、よぉ...五河。」
「どしたんだ、殿町?変だぞ今日」
「...は、ははは...まぁその話じゃなくてな」
「何?」
「家の場所分かんねえ」
「アホか。なんで自分の家の場所も覚えてねえんだよ!」
「面目無い」
はぁ、と溜息をつき、五河は教室を出る。
「途中まで行ってやるから。遅くなると面倒だろ?お互い」
「そーだな」
五河士道に先導され、和真は殿町家の近くまで来た。
「ここまっすぐ行けば家だから。にしても...なんでいきなり忘れんだろうな?」
「さあな?俺も知らん」
そう答えてバイクを押していく。インビジブルを発動させているので、士道にはバレやしない。ただのバイク程度にしか認識されないだろう。それから薄暗がりの道を歩き、家に着いた。
その後、夜は特に何もなかったようなものなので、割愛しよう。
次の日は準備日ということで、休みになっていた。そんなものこっちは知らないが、そうなっているのだから仕方ない。
殿町宏人というヤツは妙に真面目だったようで、既に荷物は準備されていた。ので、和真のやる事はなくなっていた。
「あークソ暇だ。暇すぎてやる事ねえ」
或美島への修学旅行。島に行くとか、無駄に金をかけていると思う。別に和真が金を払っているわけではないので、問題ないのだが。
というかジャックフォームで飛んだ方が節約になる気もする。
なんて考えてもどうしようもないが、かと言ってやることもない。
昼寝で1日潰すことにした。
土曜日、朝5時に和真は起床した。目覚ましが起動したので、問題なく
起きられたのである。さっさと制服に着替え、キャリーバッグを引きながら学校に向かう。
学校に着くと、既にある程度の奴らは揃っていた。
和真とコンビになった立花も既にいた。本人曰く、「ボドボド」になるまで楽しむらしい。意味が分からない。
まあともかくバスも来ていることなので、乗り込んでいく。
部屋の順で席は座るようになっているらしく、和真は立花と隣同士で
座る羽目になった。
発車して数十分後、立花が口を開いた。
「ブレイド観るか?公式配信されたんだぜ。漢字違うけど、俺と同じ橘朔也ってヤツが出てるんだ。それに面白いしな、ブレイド」
「ブレイド?仮面ライダーか?」
「そそ」
自身が仮面ライダーとはとても言えない。遠回しに断り、外を眺める。全く...遠くの島が修学旅行とは。クレイジーにも程があろうに。
そして眠気が和真を襲ってきたので、そのまま寝た。
肩を叩かれる感覚と共に、和真は目を覚ました。寝すぎて、もう空港に着いてしまったようだ。自分としたことが。
眠気を覚ますように首を振り、立ち上がる。そして最後にバスから降り、クラスの列に並び搭乗ゲートに向かった。
(あ、バイク置いて来ちまったなァ....ま、いいか)
金属探知機を通りながらそう思っていると、機械がピーッピーッと
高い音を立てた。
「あのお客様、金属類をお持ちでしたらここで外して頂けると.....」
「持ってないんだけどねぇ....(ブレイバックルとか銃とか心当たりかなりあるけど)」
一回戻って再び通ると、今度は音は鳴らなかった。
偶然だかなんだか知らないが、通れたのならば良い。和真はさっさとクラスの列についていった。
1時間もしないうちに、飛行機の搭乗時間がやってきた。
立花達と話しながら、搭乗口へと歩く。
「そういやさぁ、さっきから金髪の女性が居るんだが」
「カメラマンらしいよ?同行するんだとさ」
「ふーん...カメラマンね...」
「彼女を知ってるのか?」
「いや、まぁ別に....」
やや含みのある言い方に、立花や士道が首をかしげた。
無理もあるまい、こちらは全て知っているなどと言えるはずもなかろう。
ちらりと金髪の女性(本名はエレン・メイザース)を見やり、和真は飛行機に乗り込んだ。当然気付かれてはいない。
さて、どうなることやら。この修学旅行。
だが和真が1つだけ言えることもある...この世界は救う価値はある、ということだ。
飛行機の座席は和真は、やはりというか立花と隣になった。
士道は折紙と十香に挟まれているのだ。
当然と言えば当然なのだろうが、羨ましい。まあ主人公はアイツなので、仕方ないのだろう。
せいぜいこちらとの共通点といえば、同じ窓側の席だということくらいだろうか。しかし座席の背は高く、話しかけられない。
「なんかねえの?暇つぶしにちょうどいいヤツ」
「殿町お前なァ...なんか変だぞ?一昨日から。」
「人って変わるもんだろ?」
「言い訳になってねえよ。まあ良いけどさぁ別に」
はあ、と深い溜息を立花はつく。そしてごそごそとリュックを漁り、
何かを取り出した。本のようだ。
「それは?」
「プリズマイリヤだけど」
「ロリコンかお前」
「失礼な!クロエは可愛いだろ!あの褐色肌!最ッ高だ!」
「何言ってんだ、イリヤ一筋だろうそこは!あのいかにもロリな感じが良い!SNでもZeroでもGOでも可愛いんだぞ!イリヤは!」
などと言い争ってると、声が掛けられた。やや機嫌が悪そうだ。
「「「うるさい」」」
「「スイマセンデシタ」」
声の主は女子。3人組なので、いつものアイマイミートリオだろう。
なので、そこからは静かに過ごす事にした。
飛行機に揺られて数時間ほどだろうか、アナウンスが流れ、目的地に
到着した事がわかった。
クラスごとに降りて行き、ゲートをくぐって空港から外に出る。
外はひと言でいうのなら、そう....
「すっげえ夏だな!」
「南の島だしなぁ、そりゃそうだろ」
「ふむ、なるほど。ってあれ?五河どこ行ったんだ?」
「そういえばそうだな....さっきまで居たはずだけど」
「まあすぐ見つかるだろ」
そうして和真達は、クラスの奴らについて行く感じで宿に向かった。
宿と一口にいうが、泊まるところはホテルに近い造りだった。
ビジネスホテルを少し大きくしたようなところ、といえば分かりやすいかもしれない。
ロビーに全員集まったところで、自動ドアが開き、五河が戻ってきた。正確には五河+十香+美少女2人というべきだろうか。
美少女2人の正体は精霊である、ということは周りの奴らは知らない。
和真以外に知ってるのは、ラタトスクサイドの村雨解析官と士道くらいだろう。
岡峰教諭に一言二言言ったところで、精霊達を連れて村雨解析官は
去っていった。
あの2人は転入生ということを伝えられ、その場は解散となった。そして各自部屋に戻るように言われた。
部屋に戻る道中、犬井と立花はかなり興奮して話していた。
「よう五河、美少女2人も連れてくるなんてやるじゃあねえか」
「紹介してくれよ!頼むぜ」
本当に欲望に素直なようだ。
「彼女達...やはり...」
「どうした殿町?また考え事か?」
「あ、いやなんでもない。お前ら先に部屋に戻っててくれ。やる事があるから」
「お、おう」
彼らを先に部屋に帰し、和真は1人になる。自身の部屋番号は既に先生から聞いてあるので、問題はない。
それに、今から向かうのは関係ないところだ。
まずは担任の岡峰教諭の所へ。
「すいません、タマちゃん先生。カメラマンの人の部屋ってどこですか?」
「エレンさん?それなら....」
その後部屋をなんとか聞き出し、向かう事に。
途中まで来たところで、追跡者達に声を掛ける。
「お前ら何してんだよ。犬井に立花も」
「「ナンデモナイヨ」」
「怪しすぎだろ」
理由を聞くと、どうにも和真の動きが怪しかったらしく、追跡してみようということになったらしい。まったく何を考えているんだか。
だが今回は連れて行くわけにもいかないので、何も言わずに目的地へと歩みを進めていった。