仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
そうして和真とエレンのバトルが始まったわけだが....
正直なところ、和真はここでケリをつけるつもりはなかった。
ここでエレンを消すと後々の展開に影響を与えかねないし、ストーリーの進行に問題が出る。
確かに先に倒すことに越したことはないが....やはり和真は第三者視点でもあるわけだから、あまり介入するのは良くないかな〜と思ったりする次第なのである。
と考えつつも、素早く振るわれるレイザーブレイドの刃を受け流して
行く。
「っとと...危ないな〜まったく」
「そう言っていられるのも今のうちですよ」
悪役じみたセリフを吐くエレン。そして突如として空中に飛翔した。
今思い出したが、CR-ユニットは飛べるんだった。
空を切り裂くようにエレンは飛行し、レイザーブレイドを構えて和真に突っ込んできた。
原作よりも弱く見えるのは気の所為だろうか。
きっとこっちの戦闘力の方が上だからだと思う。
和真もブレイラウザーを握りしめて、衝撃に備える。
が、エレンが接触する直前になり、行動を起こした。
『アブソーブクイーン』『フュージョンジャック』
翼が生えたジャックフォームへと変わって接触までの残り1秒を耐え、
そして全力で飛び上がった。
エレンはバカみたいに砂浜に頭ごと突っ込んでおり、一言でいうなら
アホっぽかった。
ギャグ時空でもあるまいに。
とは言え、これではわざわざジャックフォームまで変身した意味がない気がする。
変身解除しようとした時、視界の端に数機のメカが見えた。
バンダースナッチだった。
「なるほどアレを壊せば....ってもう結界の効果効いてねえ!MPゼロだし!うっわどうしよ、エレンも気絶してるしこのアホめ」
とりあえず自称カメラマンの金髪女エレンは放置し、和真はバンダースナッチと空中艦〈アルバテル〉の殲滅を優先させることにした。
まずはバンダースナッチ3機を秒単位で斬って、次は〈アルバテル〉を見やる。
まあどうせエレンはユニットさえあれば帰還できるわけだし、空中艦は破壊しても問題なかろう。
むしろこれを壊すことで、ウェストコットやDEM社の行動が鈍くなる可能性もある。そんなことは殆どないと考えられるが。
さてバンダースナッチを殲滅したのは良いが、相手の空中艦をどう壊すかが悩みどころなわけだが。
下手に地上に落とせば、宿泊先が壊れかねない。いっそ高火力で叩き潰す手もあるが、目覚めたエレンに邪魔されたら元も子もない。
薄闇の空に浮かぶ空中艦を睨みながら、和真はうーんと唸る。
視力が人間よりも遥かに良い和真が悩むのは、他にも理由があった。
あのアホ空中艦〈アルバテル〉とラタトスクの空中艦〈フラクシナス〉がさして距離を置かずに居たからである。
通信が切れた今、フラクシナスの副司令のドM神無月がここでどのような指示を出したかは知らない。
もう本来の世界ではないので、和真が来たことにより僅かでも何かが変わっているかもしれないからだ。
とは言うが、戦闘シーンを見られるのも少し厄介なのだ。
そう、色々と厄介な事情があるのだ。
けれど悩んでいたところで事態は進まない。よし、気合を入れて和真は行動を開始した。
まず空中艦〈アルバテル〉の直上へと飛翔し、
『エボリューションキング』
ジャックフォームから重厚なキングフォームへとチェンジ。
『♠︎10・J・Q・K・A』の音声と共に5枚のラウズカードをキングラウザーにラウズし、『ロイヤルストレートフラッシュ』を発動させる。
〈フラクシナス〉に当たらない角度で、和真はキングラウザーを〈アルバテル〉へ向けて振り下ろした。
そして放たれた光の奔流は確実にその巨体を捉え、随意領域(テリトリー)などを完璧に無視して全てを破壊した。
爆音と閃光が辺りに広がり、立ちこめ始めていた雨雲さえも消しとばした。
その後の和真はというと.....起きたエレンを敢えて殴って気絶させ、旅館まで運んだまではよかったのだが、時間も時間だったせいで教師達のきついお叱りを受けてフラフラになって部屋に戻る羽目になった。
けれどそれで良かったと思う。エレンが気絶しているお陰で、士道の精霊攻略もスムーズに進んだはずだ。ウェストコットへの連絡手段も途絶えて、今は何も出来ないと思われる。
ユニット以外の機器はエレンから全て奪っておいたのだ。愉悦愉悦。
そんなこんなで夜は更けていった。
最終日になり、帰る時間が迫ってきた。
荷物を纏めて全員がロビーに集まる。しかしそこには1人居ないヤツがいた。エレンだった。
今朝から姿が見えないらしく、部屋にも居ないんだとか。
「おい殿町オマエ何かしたのかよ」
「してねーよ何でだよ」
「いや、だってカメラマンさんの部屋に入ったじゃん。なんかその時したのかなーってな」
「ばっ、声でけえよ!」
皆がこっちを見た。うっわコイツ何やってんだ、みたいな目で見てくる。それを言ったら五河もそうだと思うのだが、そこらへんは情報操作されているのか話題になっていない。
これでは変態扱いされてしまうッ!
「安心しろ、何も見てねえからよ」
「俺たち友達だろ?」
「解決になってねえよ!ったく...もう良い、俺が探してやろうじゃねえか!」
立ち上がり部屋へと向かう、と見せかけて和真は裏口から外に出た。
手元にあるヤツの機器を駆使すれば、場所は特定できるはずだ。
色々吟味しながら歩いていると、建物の陰に見覚えのある金髪が見えた。
音を立てずに近づくと、どうやらどこかに連絡を取っているようだ。
空中艦は破壊した以上、連絡相手はウェストコットぐらいだろう。
確かにエレンの言葉の中に「アイク」という単語が聞き取れる。
連絡相手はウェストコットで間違いない。
さりげなく話し掛けることにした。
「よォカメラマンさん....集合の時間だぜ」
「?...あなたは....」
「まあ待てよ身構えるなって。とりあえずアンタが来ねえと帰れねえんだよ皆」
「そうでしたか。では行きます。決着は帰路にて」
「意味わかんねえよ、さっさと行けよ」
「年上は敬いなさい」
「あ、年増なのか」
「喧嘩売ってるの?」
「さあねぇ」
ギャーギャー言い合いながらもロビーへと戻り、空港へと向かうバスに乗り込む。帰り道に決着をつけると言っていたが、まあさして気にすることでもないだろうと思い、のんびりとバスに揺られることにした。
空港に着き、チェックを済ませて搭乗口へ。
全員問題なく乗り込み、無事に飛行機は飛び立った。
その後も特に何も無く、和真達は全員揃って東京へと帰還した。
士道は色々あって疲れていたようではあったが。
エレンも特に何もアクションを起こさなかったので、決着をつけると言っていたのはただの脅しだったのだろう。
その後は学校までのバスに乗り、再び何時間かの旅。終わるまでが修学旅行なのだ。
学校へ向かう途中の高速で、それは起きた。
突然バスが衝撃と共に止まったのだ。頭をぶつけたりする生徒もいたようで、車内は少しの間混乱に陥った。
だが間髪入れず、どこからか声が聞こえてきた。
『おいそのバスに殿町宏人というヤツが乗っているだろう?そいつを引き渡し、変な行動を取らなければ攻撃はしない!』
ありきたりすぎる&くだらない事を言っているが、この声は...いやまさかアイツはこの世界に来ていないはずだ。加工音声か何かか。今気付いたが、エレンはこのバスに乗っていない。
決着というのはそういうことなのか?
と、クラス全体がこっちを見ていた。
((((お前が行けば俺たちは助かるんだよ))))
仲間というのを大事にしないのか。やはりマトモなのは士道だけか。
だがこの状況。敢えてこの誘いに乗ってみるのも一興だろう。
降り口へ向かうと、フロントガラスから向こう側が見えた。前方に居たのは
「吹雪と....バンダースナッチだと?」
予想に反し、前方に待機していたのは仮面ライダーレンゲルに変身する吹雪とバンダースナッチだった。
ということは風香が変身したカリスもいるのだろうか。しかしバンダースナッチがいるのならば、DEM社が絡んでいるに違いない。
つまりエレンが居る確率も高いということだ。
和真はバスを降り、吹雪へと話し掛けた。
「なあ吹雪、どうしたんだよ?お前ら何してんだ?」
「そりゃ当然あなたを連れ戻す為ですよ」
「いやだからなんで、DEM社と協力してる?」
「それは....」
吹雪レンゲルが続けようとした時、バスの上から声が聞こえた。
「それは、目的が一致したからよ!」
「そうですね」
バスの上に立っていたのは、風香ことカリスと最強の魔術師エレンだった。
よく見ると空中にも何やらメカが展開している。
「おいどういうことだよ!暴力振るうつもりなのか?!」
「いいえ、貴方を捕まえるだけです」
「それで目的が一致したから、一時的に協力してるの」
なるほど。どこで接触したとか、そういうのは今は関係ない。
「俺を捕まえる、それだけの目的で協力体制か」
「ええ」
「....くだらねえ。俺を捕まえるなんてできるわけねぇ」
「ならばやりますか?」
「いつでも良いわ」
「バンダースナッチ攻撃開始」
命令に応え、バンダースナッチが攻撃を開始する。
「させねえよ!クソ野郎!」
取り出したバールでバンダースナッチを叩きのめし、バスのフロントを背に和真は立つ。
エレンはユニットを既に装着しており、そのまま降りてくる。
風香、吹雪、エレン、バンダースナッチと睨み合う和真。
「「「変身」」」
『Turn Up』『Change』『Open Up』
同時に3人は仮面ライダーへと変身、エレンもレイザーブレイドを構える。
クラスのメンバーがバスの中から見ているのが、なんとなく分かる。
そりゃいきなりこんな状況になれば、驚きもするし興味も湧くだろう。
とりあえずそれは置いておいてだ。現在の状況は非常に不味い。
3対1な上に、相手もトップギアとみて良い。
(畜生やってくれるじゃねェか。これじゃあ俺はこのバスも守らないといけないしなァ....クソ戦い辛え)
わざとこの状況にしたのだとすると、これは考えられた作戦と言える。それゆえに通常フォームでは太刀打ちできないだろう。
人数差と戦力差的にも。
ならば現状やる事は1つだ。全力で倒すしかない。
『エボリューションキング』
ジャックフォームをすっ飛ばしてキングフォームへ変わり、キングラウザーとブレイラウザーを両手に構える。
「どりゃああああああああああ!」
そして剣を構え、地を蹴った。凄まじいスピードとパワーに、レンゲルとカリス、エレンは圧倒されていく。
だがそれも少しの間だった。予想に反し、彼女たちにも策があったのだ。
『エボリューション』
『アブソーブクイーン』『フュージョンジャック』
カリスはワイルドカリスへ、レンゲルは分厚い装甲を纏ったジャックフォームへと変身した。
「その姿は....」
「ふっふっふ、策が無いとでも思ったか!」
「これで勝ったも同然ね」
「油断はできませんが」
こうなるとは予想外だが...バスの奴らを傷付ける訳にはいかない!
「だからどうしたァ!俺は負けねえ!」
迷いなく一直線に突っ込んだ先に待っていたのは、ギャレンとカリスのダブルキック。内臓のあたりをやられたか、口から血が溢れる感触がした。
「もうあなたに勝ち目はない」
「投降した方が身の為よ」
エレンからの無慈悲な宣告。確かにここで負ければ、バスの奴らは助かるだろう。だが今の和真にその選択肢はなかった。
「...確かにな。俺が大人しく捕まれば、それでこいつらは解放されるだろうさ。けどなァ俺にはやる事があんだよ!」
先のダメージでHPの半分くらいを持っていかれた。しかし力を振り絞って、和真は立ち上がる。
「何を言ってるんだ?」
「さあ?」
『♠︎10・J・Q・K・A』
5枚のカードをラウズし、『ロイヤルストレートフラッシュ』を発動。
彼女達と和真の間の空間に、光るカードが5枚現れる。
「お前らが知る必要はねえよ」
一気に剣を振るい、そのカードごと光の奔流が3人を吹っ飛ばした。
さすがにダウンまでは出来ず、なんとか起き上がってきた。
「しぶといな、クソッ!」
「元はと言えばあなたの責任なのだけどね」
「そうなんですか」
「細けえ事は良いだろ!もう俺は行くからな」
「誰も行っていいって言ってないんだけど」
「帰る時間遅くなると怪しまれるだろ?」
「「「ふむ」」」
今がチャンスと見た。バスに向かって叫ぶ。
「バス出せ!フルスロットルだ!」
「は、はい!」
和真が乗り込んで、バスは全速力で走り出した。
後ろからバイク2台と特殊車両が追ってくるが、それはなんとかするしかない。
「あれ?何でみんな俺避けてんの?」
「「「「いや、だってうんまあ殿町っぽくないし」」」」
「そんな理由か」
「あとあの姿なんだ?ブレイドじゃねえか」
「そこらへんも纏めて後で説明するから!」
ひとまず黙らせて、窓から屋根へと登る。既に変身は解除したので、
戦力は銃器とカブトだけになる。
先程の血に薄い緑が垣間見えたのは気のせいだろう。
後方から迫る特殊車両とバイクを睨みながら、和真は屋根に立つ。
アサルトライフルを取り出して構えて刹那、引き金を引いた。
凄まじい銃撃音が響き渡り、バスから悲鳴が聞こえてくる。
それでも引き金を引き続ける。
バイクには余裕で避けられ、特殊車両にも大して効果はないようだ。
「チッ...これだから女ってのは」
「よっ、1人で行けるか?」
悪態をつく和真の前に現れたのは、友人(多分)の立花だった。
意外にも和真と同じようにバスの上に余裕で立っている。
「お前、何しに来たんだよ?バスん中いろって。死ぬかもだぞ?」
「ふっ...死ぬのは怖くねえよ。俺は1度死んでるからな」
「まさかのゾンビ発言?!」
「そうだ。俺は1度死んでる。アンデッドに殺されたんだ」
「ごめんそれだとお前、マジで橘朔也になるんだが」
「だからそうだと言ってるだろ」
「マジか!?」
「マジだよ」
ならば心強い仲間だ。和真と立花でブレイドとギャレンという事にもなる。
「ならやろうぜ!俺たちライダーなら出来る!」
「ああ、そうだな」
『Turn Up』の音声と共に、立花はギャレンに変身した。
和真は弾が尽きた物を捨て、新しいアサルトライフルを2丁取り出した。
ギャレンラウザーとアサルトライフルの銃口が、後方車両へと向く。
修学旅行最後にして、和真の命運を賭けた戦いが始まろうとしていた。