仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか?   作:神浄刀矢

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剣ノ王と黒十香

さて前回の続きから始まることになるのだが、各々が攻撃をしかけても軽くあしらわれ、ほぼ何も出来ていないというのが現在の状況であった。

霊力の波動だけで和真達は何度も吹っ飛ばされ、近づくことはおろか、攻撃を当てることで精一杯だった。

「っくそ...ンだよ、強すぎだろッ!」

「分かってたんじゃないのか?そんくらいはよ」

「そりゃそうだがよォ...」

膝をつき、肩で息をする和真と立花とは反対に、〈鏖殺公〉を杖のようにして立ち上がり、再生の焔を纏いながらも何度も向かっていく五河士道が居た。1人の少女の為、命を賭ける高校生。

その姿は、さながらお姫様を助ける為に戦う勇者のようであった。

「ぐあっ......」

霊力の塊をぶつけられ、ボロ雑巾のように五河の体が宙を舞い、和真達のところへ落下する。

「.....ッ、と、十香っ....」

「無理すんじゃねえよ、お前まだ半分以上人間なんだぞ?これ以上やったら死ぬぞ!」

「と、殿町....どいてくれ....俺、は、十香を...」

「だからって目ェ閉じんなァ!起きろォォォ!」

彼には悪いが、ガクガクと体を揺すって無理矢理起こさせる。

応急処置とは言えないものの、五河は一応目を開けた。

「もう後は1回チャンスがあれば良いトコだろうな。俺たちの体力とか鑑みると、そうなっちまう」

「そう...か。1回で充分だ、十香を....助けに行こう」

ボロボロの五河に肩を貸し、和真・士道・立花は立つ。

だが既に和真と立花も変身が解けてしまっていた。

(なんかこれ前回もやった気がするな)

「人間ごときが、私の前にまだ立つというのか?愚かな。身の程を知るが良いッ!」

魔王が剣を振り上げ、強力な霊力で和真達を飲み込もうとした瞬間、

何かが剣を抑えていた。それはまるで、バールだった。

否、名状しがたいバールのようなモノだと言うのが適切か。

「作戦変更で悪いな。魔王は俺が倒すぜ」

「なっ?!そしたら十香は....?!」

「そこらへんも考えてある。っと、うおおおおおおおお?!」

剣に違和感を覚えたのだろう、十香は大剣に力を込め、バールを粉砕した。

「まだ生きていたのか。今度こそ跡形も残さず消し去ってやる!」

十香は霊力を凝縮し、塊として放ってくるが、和真はありったけのバールを投擲して相殺とはいかないが、なんとか打ち消すことに成功した。

しかし、このままでは埒が明かない。

「ったくそっちがその気ならな、こっちだってガチで行くぜ!...変身!」

『Turn Up』

再度仮面ライダーブレイドに変身し、和真は魔王と独り、対峙する。

今の状況で、五河は絶対に守らねばならない。和真はそう思った。

(アイツ、この魔王に対抗できる唯一の手段だしな)

キスによって精霊を封印するのが、現時点での五河士道のメインの能力である。その力がなければ、この魔王は封印できない。

いくら火力で攻めたところで所詮はカス同然なのだ。

「おい、五河。おまえは今はそこの歌姫さん守ってやれ。好感度アップにはなるぞ?」

「マジか?そうは思えんが」

「良いから良いから。早く行ってやれ」

とりあえず美九の元に走り寄る五河を見送り、和真はカードを取り出した。ブレイドと十香の戦いが始まれば、〈氷結傀儡(ザドキエル)〉を否応でも使う羽目になるはず。それで美九を守る事で、好感度アップを狙うのが作戦だ。

「...で、俺はなにをどーすんだ?」

「あーそだな、立花お前は外で、精霊達の助けでもしてみたらどうだね?」

「雑な指令だなー、別に面白そうだし良いけどよ。ま、おめえも死ぬなよ?」

「お互い様ってか」

ジャックフォームになって飛び立つ立花を見送り、改めて十香の方を向いた。

「待っててくれるたァ、随分と良い魔王じゃねえかよ」

「待とうが待つまいが、私の勝利は揺るがないのだからな」

「へいへい、そいつは嬉しいねェ」

言い合いながらも、お互い睨み合う。

『エボリューション・キング』

キングフォームへと変わり、キングラウザーを握る。

十香も〈暴虐公〉を構え、魔王へとブレイドは床を蹴った。

 

何分かたったが、両者ともに譲らぬ戦いが続いていた。

正確には十香が【終焉の剣】を使おうとするのを和真が阻止し、それから剣戟が開始され...というのを繰り返しているだけだったのだが。

和真も十香も一歩も引かず、激しい鍔迫り合いになった。

「ぐ、お、おおおおおおおッ!」

「ふん、全力のようだが、この程度か」

口では余裕をかます十香、しかし顔には明らかに焦りが見て取れた。

しかし突然一旦引き、2人は剣を持つ手を下げた。

「俺はお前を殺すつもりはない。五河士道の為にも引いてはくれないだろうか?お前の信じた五河士道の為にな」

「イツカ....シドウ?シドウ、シドウ、シドー、シドー...?」

まさか記憶が戻りかけているのか?

駆け出そうとした五河を制し、様子を伺う。

すると突然床に剣を突き刺し、十香は左手に剣で傷をつけた。

「うぐっ....はぁ、はあ、ッ面妖な手を....!私を惑わすつもりか、人間ごときがァ!」

「畜生...傷付けて己を保ったか!夜刀神十香、いや魔王!」

和真の叫びに応えるように、黒化十香はその片刃剣に霊力をこめる。

刹那、漆黒の玉座が出現し、分解したかと思うと、その黒き片刃剣と

一体化し、1つの黒い巨大な何かへと変わった。

それはもうただの黒い剣と呼ぶには遠い存在で、その名の通り【終焉の剣】と呼ぶに相応しい姿をしていた。

「ならば我が一撃を持って、貴様らを消し去ってやる!」

十香が巨大なそれを振り上げると、刃の部分に黒い粒子が集まって行き、十香の体も空へと上がっていった。

まるでエネルギーの充填のようだ。

「こうなりゃヤケだな。五河、美九、お前ら絶対動くなよ!」

『♠︎10・J・Q・K・A』『ロイヤルストレートフラッシュ』

【終焉の剣】が黒い輝きを増すのと並行し、ブレイドと十香の間に、光り輝く5枚のカードが出現していく。

だが十香の目は和真ではなく、五河士道を捉えていた。

名前を呼んだからだろうか、あるいは混乱しているのか。

「十香?...どうしたんだよ?帰ろうぜ、俺たちの家に」

馬鹿なのか、この世界の五河士道は。

五河の声が届くと、十香は絶叫じみた声を上げ、剣を振り下ろした。

「〈暴虐公〉....【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】!」

五河士道と美九を守る為、負けじと和真もキングラウザーを振るい、

「うおおおおおおおおおおおおッ!」

全力で放たれた光と闇の奔流が空中でぶつかり合い、凄まじい明るさがあたり一帯を照らした。

視界の端で捉えただけでも、スクエアにいた精霊達やAST、数多くの人達がこれを目撃していた。ま、そんなことはどうでも良いのだが。

「ぐっ....クソッ....!」

予想を上回る強さの天使である。アニメの時よりも火力が明らかに向上している。下手をすれば負けかねない威力に思えてきた。

だがこんな所で負けるわけにはいかない。

体に違和感を感じ始め、血の味も鉄ではなく、別の何かになり始めたが、剣を離さない。寧ろ体の底から力が湧いてくるようだ。

「ここで....負けるわけには....いかねぇんだよ!」

和真の意志の強さに呼応するかのように、金色の光はさらに輝きを増した。

「なっ?!にん、げん、如きに?!」

「そんなセリフはなァ!雑魚の言うセリフなのさぁ!」

叫び、和真は渾身の力でキングラウザーを振り切った。

闇夜を包み込むが如き光の奔流は、最強の天使〈暴虐公〉を砕き、十香をビルの壁に叩きつけた。

変身を解き、和真と五河は十香に歩み寄る。

「....く、はっ...どうやら私の、負けのようだな」

「ああ、そうらしいな」

「イツカ...シドウか。良い名の少年に出逢えて良かったな...『十香』」

静かに黒い十香は目を閉じる。

原作とは違い、珍しく優しい雰囲気を出している。

再び永い眠りにつくかのように、目を閉じると、着ていた霊装も自然と消えていき、メイド服へと戻る。

和真と五河は、眠れる姫を見下ろし、呟く。

「結局何だったんだ?あの黒い十香は」

「さぁ...な。少なくとも悪の塊でない事だけは確かだよ」

全身から血を流しながらも、和真はなんとか二本の足で立つ。

「そういや、あのマインドコントロール的なのはどうなったんだ?」

「あ、そういえばそうだな」

「それならさっき、誰かさんが全力攻撃した途端に解除されてたぞ」

上空から声がし、見上げると立花の姿が。

なぜか両手で風香と吹雪を抱えていた。

「あの...そいつらは?」

「外から隠れて見てたんで、とっ捕まえといた(ドヤ顔)」

まあ2人ともギャーギャー言っているようだが、疲れすぎて何も怒る気にすらなれない。

「んじゃあな、俺は帰るよ」

「最後に1つ良いか?」

「どした五河?何か質問でも?」

「なんでさ、お前の血緑色なの?」

「「「え」」」

 

 

次の日、包帯を巻いた和真と他何人かは、駅前のファミレスに集まっていた。決して打ち上げなどではないので、あしからず。

休日だというのに人は少なく、本当にファミレスかと言いたくなる。

まあこういう所もあるんだろうが。

「んで、昨日から聞きたいんだけど、お前の血って何で緑色なの?」

「.....言っても信じられねえぞ?それでもか?」

「友達の事だ、心配するのは当たり前だろうに」

「まーまー着いて早々暗い雰囲気なのもアレだろ?なんか飲もうぜ」

「「男子だけでファミレスってなんかなー」」

「それ言うな!」

とりあえず各々は席を立ち、ドリンクバーへ。

ドリンクを確保し、再び席に座る。

和真はメロンエナジーソーダ、立花はレモンエナジーソーダ、五河は花道オレンジスカッシュである。決してフルーツ鎧武者は関係ない。

「んで本題に入りたいんだが」

「あら、貴方達もここに居たのね?ちょうど良いところに和真も居るじゃないの」

「連れてく?連れてくよね?!」

「うっせーよ吹雪」

なぜここにカリスとレンゲルが居るのか。

変身はしていないが、充分に和真には迷惑である。

もういっそのこと、この世界を去るという手もなくはない。

ここまで来たのもブルースペイダーだし、いつでも行こうと思えば行けなくはない。

だがやはり友達には話した方が良いと思う、和真の気持ちもあった。

「分かった、んじゃあ端的に言うとするか。ま、長くなるぜ」

メロンエナジーソーダを数口飲むと、和真は話し出した。

 

全てを話し終えた時、外は既に日が傾き始めていた。

立花には簡単にしか話していなかったし、風香も吹雪も『ストライクウィッチーズの世界』で久しぶりに会ったわけだから、別に構わなかったのだが。

「思ったより長くなったなぁ」

「マジかぁ、そんな冒険してたなんてなぁ」

それぞれが聞き入って、こちらもかなり饒舌になってしまった。

肝心の身体のアンデッド化の所は上手に避けてあるのは、気付かれていないようである。

皆が聞き入ってくれてこちらとしても嬉しい限りではあるので、頃合いを見計らってさりげなく金を机に置く。

「んじゃ、俺トイレ行ってくる」

と言って外に出ることに成功。

このファミレスは珍しい2階建てで、うまくいけば座席のピーポーにバレずに逃げられるのだ。

「まちなさーい!和真ァ!」

「逃げられると思うな!」

「マジかよ!?」

いち早く気付いたのだろう、風香と吹雪が2階のファミレスの窓から

飛び降りて来たのである。

追いつかれるわけにいかないので、慌ててバイクに跨る。

和真エンジンを掛けて発進するのと時を置かず、2人もバイクを発進させていた。

「早っ?!」

予想外に迅速な対応に、こちらが驚きを隠せない。

危険なレベルのスピードを出して右折しながら、ディスプレイを操作。

「なんでもいいから別の世界に飛ばせ!」

『OK!START MY ENGINE!』

「喋ったぁ?!」

これまた予想外の出来事に納得できぬまま、和真の身体は光の中に吸い込まれていった。

 


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