仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
翌日になった。
起きると時計の針は7時を指しており、丁度朝食の時間帯であることを
知らせていた。
和真・風香・吹雪の3人はIS学園の白い制服に着替えて部屋を出、食堂に向かう(まあ和真は風呂場で着替える羽目になったが)。
小規模な結界を張ってあるのでご都合主義な感じで周りに姿はバレておらず、和真達は席に着く。
「「いただきます」」
風香と吹雪は和風定食を食べ始めたが、和真はコーヒーを飲むだけ。
理由は恐らくキングフォームの多用による、自身とアンデッドとの融合割合の増加だと、和真は考えている。2004年でのことを踏まえた上での考察だ。
どうにも最近事情が事情でキングフォームを使う回数は増えていき、上記の理由か腹がすかないのだ。飲み物程度で全て間に合ってしまう。
人間の食べ物が合わない身体になってきているのかは不明だが、和真としては普通に食事も取りたいところではある。腹が空かないので元も子もないのだが。
「はあ....」
溜息をついて再びコーヒーを啜る。舌に感じる苦い味が人間の作り出したものであることが、何故だろう和真の心を落ち着かせてくれる。
やはり飲み慣れたブラックは自分に最適なのかもしれない。
「食べないの?おいしいよ?」
勧めてくれるのはありがたいが、和真はやんわりと断る。
この状態に関しては和真の独断で誰にも話していない。親に連絡を取るべきかは悩んだが、それも断念した。これは和真自身の問題だと思ったからである。
「「ごちそうさまでした」」
そうこうしているうちに食べ終えたようだ。食器やコップを返却し、和真達は食堂を後にする。入れ違いに織斑一夏やセシリア・オルコット、凰鈴音などが連れ立って食堂へと入っていくのが見えた。
(やれやれ、ハーレム王のくせして朴念仁たァ...不幸な奴だな)
結界の効果は切れていないので、彼女達に発見されることはまずないだろう。織斑先生にはどうだか知らないが。
「そろそろ解除するか」
「そうね。前から燃費がアレだものね」
MPの消費がかなり悪い和真の結界《デッドヒート》を解除し、3人の姿が周りに見えるようになる。ちなみに何故結界の名称が《デッドヒート》というのかは、命名者が親故に分からない。
のんびりと教室まで歩いていると、どうしてか織斑先生に見つかってしまい、外部者待機部屋と書いてあるところにぶち込まれた。
転入生や転校生の扱いってこういう感じだっただろうか。
それともIS学園が異常なだけなのか、和真には理解不能である。
しかし喋りだそうにも、部屋にいる皆が口を開かないせいで何を言えば良いのか分かったものではない。
かと言ってやる事もないので、観察でもするとしよう。
1人目は銀髪に近い長髪、黒い眼帯、高圧的な視線の少女。かつて織斑千冬が居たというドイツのIS部隊の1人だろう。名前はラウラ・ボーデヴィッヒ、階級は忘れた。少尉かそんなところだったか。
2人目は金髪に、中性的な顔立ちの男子。フランスから来た代表候補生であるシャルロ...シャルル・デュノアで間違いない。
記憶が正しければ、だ。使用機体は第2世代の《ラファール・リヴァイヴ》のカスタム機だった気がする。
そうしながらしばらく待っていると、8時を少し過ぎたあたりで名前を呼ばれて部屋から出ることに。
面接か何かなのかという空気の中、教室まで歩く。
小説でもアニメでも教室に来るまでのシーンがカットされているので、結局誰も分からないままであったが、こんなものだったとは。
「...では、転入生を紹介します」
室内から山田先生の声が聞こえ、順々にラウラ、シャルル、風香、吹雪、和真の並びで入っていく。
教室がざわめいたのが和真以外の4人が入ってきた時であることは、言うまでもないだろう。
各自が自己紹介を終えると、女性陣が黄色い声を上げた。
「男の子よ!しかも2人も!」
「なんか守ってあげたくなる系の!と、なんか微妙なの」
「なんだろー日本人ってのが織斑くんと被るからかなー、微妙だよねー」
喧嘩を売られているのか。こちらとて望んでこの場にいるわけではないのだ、全てはヨグソトースの所為なのだから。
まあ問題は色々ありそうだ。ラウラが一夏をビンタした事とか喧嘩を売ったこととか。
「そういや部屋割りって変わるんですか?男子3人で奇数になるんですけど」
シンプルかつ的確な質問をありがとう誰か。本来ならばシャルルを女子達と組ませるのが妥当だが....いやそうするべきではないか。
「別に俺は1人でも構わないぜ。寧ろその方が良い」
「逃げようったってそうはいかないわよ?」
「そういうんじゃなくてな....」
確かに逃げたいが、ここで投げ出しては男ではなかろう。
己が務めを果たすことが、男の為すべきことなのだ。
「だってさァ、1人の方が楽だぞ?色々な意味で」
「よし、なら俺が1人部屋に行くぜ」
「織斑てめえ何目の前の事避けようとしてんだ?」
ギャーギャー言い争っていると、織斑先生が出席簿で2人の頭にキラキラキラと星が舞うレベルの強さで、出席簿シャイニングストライクを叩きつけた。勿論出席簿で叩かれただけだが、織斑先生だから相当な痛さである。
「ギャーギャーギャーギャーやかましい。空いている席につけ。それから部屋割りに関しては今日中に、山田先生から伝えてもらうから安心しろ」
「「はい...」」
若干涙目になる和真と一夏、そして残りの女子達も席についたところで、織斑先生は続けた。
「今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。第二グラウンドだ、各人遅れるな」
それだけを告げると、織斑先生は山田先生と共に教室を出て行った。
微妙な空気が漂うが、兎にも角にも第二グラウンドに行くのが先決だろう。
「んじゃあ、行くか」
シャルルを案内しろとは一言も言われていないが、無視するほど薄情ではない。
軽く2人も返事をし、教室を出た。
が...そう簡単に行くものでもなかったらしい。他学年と思われる生徒達がクラスの前に、待ち構えていたのだ。女子の情報網は甘く見ない方が良いようだ。
人が少ない場所を選んで強行突破し、和真達は更衣室に向かって走り出した。
「おいどうすんだ?彼奴ら、バケモンみてえに追っかけてきやがるぜ?更衣室着く前に振り切れるのか?」
「安心しろって。抜け道があるのさ」
「抜け道?」
シャルルの疑問に答えるように、織斑一夏はある所で急に方向転換。
階段を一気に飛び降りた。
「なんだこりゃ?知らねえぞこんなの」
「まあ当たり前だろ。ここ教師くらいしか使わない通路だけど、その点女子達をまくには丁度良いんだ。っと!」
またある程度走ると、男子更衣室と書かれた部屋にたどり着いた。
各々がIS専用のスーツへ着替え、グラウンドへと向かう。
とは言ってもシャルルは既に下に着ていたようだが。
2人と違い、和真は体操服である。まだスーツは支給されていないからか、バッグに入っていたのがこの体操服だったからか。理由などどうでも良いが、ISを操る気など毛頭ない。
「まったく....困ったもんだな」
何度目か分からない溜息をつき、一夏とシャルルの後を追って和真も
外に出るのであった。
グラウンドについて早々、セシリアや凰から色々と言われたが、その愚痴も織斑先生の出席簿ストライクによって黙らされたので、特にこれといった問題もなく授業はスタートした。
のは良かったのだが。
「なんで見学なんだ?」
「知らないわよ、こっちが聞きたい」
「ISないからじゃないの?」
和真、風香、吹雪の順である。そう...授業は始まったのに、こちらは見学なのである。仮面ライダーという理由だからだろうか。
それは否と断定できる。なぜなら和真達は、自分たちが仮面ライダーであると明かしていないからである。和真は微妙だが、恐らくバレてはいないはずだ。
現状原作と違うところがいくつかある気もするが、気の所為だろう。
「「「暇だぁ〜」」」
結局ぐだぐだになってしまった。ぐだぐだIS学園というイベントもアリかもしれないと思っていると、織斑先生の声が飛んだ。
「暇なら手伝いでもしてこい、女同士なら問題ないだろう」
「「んじゃそういうことだから」」
「そういうことだから、じゃねえよ!俺どーすんだよ!俺男だよ!」
「「頑張れば?」」
「頑張ってなんとかなるもんじゃねーよ!アホか!?」
ツッコミを入れていると、和真のジャージが引っ張られた。
「.....分からない。教えて」
「あの....班に分かれてないんですか?」
「(コクコク)」
どうやらこの和真に教えて欲しい(らしい)少女、班に分かれる際、入り損ねたようだ。確かにこの社会、下手すればハブられる可能性もある。
だが、だからといってIS扱えない奴に教えてもらおうとするだろうか。普通は班に入れて貰えるはずだが....そうもいかないのか。
「あーもう、わーったよ。ほら教えてやるから」
「....ありがと」
この少女の外見、どう見てもロリだ。知らない人から見れば、兄妹にも見えるのかもしれない。どうでもいいが。
(ちなみに犯罪行為はしていないのであしからず)
そういうわけで、ISを扱えもせず、乗ったこともない一転入生が、IS学園の生徒にISの操縦云々について教える羽目になったのだった。
本来ならあり得ないはずなのだが。
どうやら寝てしまっていたようで、目を覚ますと教室におり、周りに人の気配はなかった。だがどうしたことだろう、先程までグラウンドにいた気がするのだ。服も体操服から制服に変わっている。
着替えた記憶はないのに、どうなっているのだ。
おまけに外は夕焼け色に染まっている。時間的には5時辺りだろう。
「ったく...また紅王症候群にでもかかったのかなぁ、やめて欲しいもんだよもう」
仕方ないのでカバンを持って教室を後にする。
だが重大なことが不明だ。
「アレ?俺、今日どこで寝れば良いの?」
寝ていたか紅王症候群にかかったか、そんなものはどっちでも良い。
問題はどこの部屋に入るか、なのだ。
どちらにしろ知らないものは知らない。覚えていないものは覚えていない。どの部屋に行くべきなのか、和真は知らないのだ。
(職員室にでも行ってみるか)
そう思い、職員室へと向かってみることにした。
運良く職員室で山田先生を見つけることができ、部屋の番号くらいは
聞き出すことができた和真。
怪しまれたものの、制服を着ているので深くは聞かれなかったのが
幸いといえば幸いか。
てくてく歩いて着いたのは学生寮の1号棟、通称〈フレイム〉と呼ばれているらしい建物である(建物は全部白なのだが)。どうやらこの世界のIS学園の寮棟にはこういう名前がついているらしく、他にも〈ハリケーン〉や〈ウォーター〉〈ランド〉というのがあり、教師用のは〈ビースト〉で通っているんだとか。
近頃の女子高校生のセンスはあるのかないのか、本当に不明である。
大して関係ないが、風香と吹雪は〈ランド〉に2人組として入ったとの事。属性的にも土が被っていないので、そうした可能性もある。
とりあえず突っ立っているわけにもいかず、和真はバッグを肩に掛けて建物に入る。
階段を登って到着したのは4階。最上階のようだが、イマイチ高いのか低いのか把握できない。
まずはインターホンを押して挨拶をしなければ。
『はーい』
「すいませーん、あの、ここに行くように言われたんですけど」
『ちょっと待って。今開けるから』
「はあ」
「「どもー」」
開けて出てきたのは2つの顔。一夏とシャルルの顔だ。
二人ともテンションが高いのか知らないが、にょきりとドアの脇から二人の顔が見えており、中々に面白い。
事情を説明して、とりあえず中に入れてもらえた。
どうやら2人も待っていたらしく、タイミングは良かったようだ。
「んじゃ、飯でも食いにいくか?食堂開いてるはずだし」
「良いよ。えーっと、名前は」
「八坂和真だ。和真でいいさ」
正直これまでいくつか名前を持ったことがあるので、そのどれで呼ばれても構わないというのはある。
そして食堂に向かう2人の後を、和真もついて行ったのであった。
(どうせまた飲み物だけで終わるんだけどな)
なんか今回の話、いつもにも増してクオリティ下がっちゃってると思います。
ですが!とりあえずこれからも書いていくので、よろしくお願いしたいと思う所存であります。