仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか?   作:神浄刀矢

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ISの世界 研究所決戦篇 2

クロエ・クロニクルとの戦い(?)を終え、和真は更に先へと足を進める。外観からは想像できない程、内部は迷路のように入り組んでおり、何度も迷子になりかけながらも、奥へ奥へと歩いていく。

何度目の部屋か分からないが、遂にそれらしき扉を見つけた。いかにも篠ノ之束らしいドアで、ピンクやらなんやらの装飾で彩られている。しかしこの中にはヒトを辞めた人間がいるのだ、何があろうとも

決して動揺せず、十全に装備を整えて行かねばならない。

背中からショットガンを取り出して肩にかけ、ハンドガンをベルトに差し、アサルトライフルを構えて扉を蹴破る。

「オラァ!八坂和真だ、挨拶に来たぜ!」

「....誰?どーでも良い奴だね、私は愛しの妹へのプレゼントの準備で忙しいから。んじゃ」

「ほぉ〜、クロエが死んだってェのに呑気なもんだな。さっすがIS開発者は違うなぁ」

ワザとらしく言ってみるが、篠ノ之束の手が止まることはない。

和真を無視し、紅椿をいじり続ける。

これでもクロエの事は信頼しているのだろう、やられる筈がないと。

何はともかく、このままでは紅椿は完成し、臨海学校に届けられてしまう。

(クソッタレ...思ったより上手くいかねえじゃねえか)

だがここで諦めて、ルームメイトである織斑一夏を生死の境に追いやるほど、和真とて鬼ではない。

それにここで紅椿は壊せば、箒の事は知らないが...基本的に上手く物事が回り始めるはずなのだ。

腹をくくり、和真はアサルトライフルを紅椿に向け、引き金を引いた。連射で撃ちだされた弾丸が見事に紅椿に当たる直前、それら全ては弾かれた。

たった1人の女性によって。

「やっぱ...そうなるわな。紅椿は妹への愛がこもってる訳だしなァ」

マガジンを半分ほど使った所で、和真はアサルトライフルを肩に担ぎ、束を見る。

紅椿の手前で魔法のステッキじみたものをくるくると回す、篠ノ之束。恐らくそれで弾丸を全て弾いたのだろう、驚くべき身体能力である。

「私の箒ちゃんのプレゼントに傷を付けようとしたね?これはギルティ確定ダネ!」

「ハッ、ヤケにテンション高えじゃねーか。なるほど...なら、どんどんいくぜ!」

マガジンに残った弾丸をありったけ篠ノ之束に向けて放つ。が、当然ながら弾かれる。しかしそれは想定内、ライフルを捨てて今度はショットガンを握る。

床を蹴り、紅椿へと迫りながらショットガンを撃ちまくる和真。

だが当然ながら意味はなく、弾かれてしまい、ショットガンも全弾命中ならず。

(強すぎだろ、このオンナ。絶対本気すら出してねえな...クソッタレ)

散弾もなくなり、ショットガンを投げ捨てる。

銃が効かないならもうやるしかない。例えこの身がアンデッドに変わろうとも。

ブレイバックルを取り出して「変身」と叫び、和真は仮面ライダーブレイドへと姿を変える。

「こっからはテメェごと殺る気で行くからな。覚悟しろ、篠ノ之束」

ブレイラウザーを抜きはなち、束に肉薄。

高速でお互いの得物が繰り出され、1秒とて気の抜けない剣戟が始まった。

だが突如として束の姿が消え、刹那、背中を衝撃が襲った。

「がっ...はっ...」

口の中に僅かに血が流れ込む。

だがそんな事には構わず、素早く後ろを振り向き、蹴りを繰り出す。

かなりのスピードで攻撃したのにも関わらず、束は余裕を保ちながらステッキでその蹴りを受け止めていた。

(普通ならこの速度反応できないはずだ...いや、ひょっとしたらベルトさんの言ってる事が確かなら...)

『マッハ』のカードをラウズして加速、全身全霊を込めてブレイラウザーを振るっていく。

身体の内に在る邪神の力を限界まで高め、身体がアンデッドに変わっていくのを感じながら、それでも和真は剣を振るい、その刃を篠ノ之束へとぶつけていく。

しかし当の束には本気が感じられない。遊ばれているのだろうか。

事実そうなのだろう、篠ノ之束と本気でやり合えるのは織斑千冬だけであり、また束自身が好敵手と見ているのも、織斑千冬だけなのである。

(この野郎、織斑千冬と織斑一夏、あと篠ノ之箒以外は眼中にねーもんなァ)

やれやれ、とため息をつく。我ながら何故このような厄介女を敵にしたのか、改めて疑問にしか思えない。紅椿輸送阻止という目的はあるが、やはりこのオンナは面倒だ。

ふらつく身体に気合を入れて、なんとか和真は立ち続ける。

予想以上に彼女の動きが速すぎる。まさかとは思うが....

「お前、外見はヒトだが...中身人間じゃねえだろ?」

「だとしたらどーするの?」

ベルトさんの言葉と、先程の瞬間移動にも等しい動き。それで確信できた。あれは、ワームの能力。

「さっきの動き、あれクロックアップだな?他の世界で目撃されたって聞いたから不思議に思っていたが...自らの身体すら変えてしまうに至るとはなぁ」

「私の身体にはたしかにクロックアップする力はあるけどねー、ホントにそうかなー」

「黙れ、嘘をつこうが直ぐに分かる。それにまぁ、俺の身体も既にヒトである事は放棄した。あんたばかりが特別じゃあないんだぜ」

沈黙の時間。

瞬間、2人は加速した。束のステッキは剣に変わり、和真もノーマルフォームからキングフォームに変身する。

束が加速し、和真はそれを追うように。それを繰り返し、2人の速度はいつしかクロックアップと見紛うほどになっており、周りが停滞して見えるようになっていた。

クロックアップに和真が対応出来るようになってきているのだ。

邪神としての力は100%以上限界を超えて出しているし、もう身体は既に完全なアンデッド化を果たしてしていると見て良いかもしれない。

「けほっ...これでも、無傷かよ...」

「あーれー?おかしいなぁ、とっくに死んでてもおかしくないのに」

「ははっ、悪りぃな...俺はもう死ぬこたぁできねえよ」

キングラウザーを杖代わりにしつつ、和真は束を睨む。

反対に余裕10割で此方を見る篠ノ之束。

いくらクロックアップに和真が反応しきれたとしても、そもそもの実力が違いすぎるのだ。

キングフォームになっても勝てる気があまりしない。

「んじゃー雑魚はそこで這いつくばってるのをオススメするよ?私は箒ちゃんにプレゼントを届けに行くからサ」

「っくそ!行かせねえ!」

なんとか束を追うが、それでもあちらは余裕で出口へと行ってしまう。明らかに差をつけられた。

こちらが外に出た時にはもうあのウサ耳姿は見当たらず、代わりにブルースペイダーが出口に停まっていた。

「...なに、してやがる?」

『追うのだろう?分かっているさ、お前のやりたい事は。彼女は黒と緑のバイクで、臨海学校の行われる海岸へと向かっている。』

「おかしいぞ。何故篠ノ之束はバイクを使うんだ?あいつの身体能力を考えれば、生身で行っても問題はなかろうて」

『そこらへんは知らんが...あまりもたもたしている暇はないぞ。早く行かねばならんのだろう』

「ああ!」

体力も考えて変身を解除し、ブルースペイダーに跨る。

アクセル全開でバイクは走り出した。

 

そんなに時間を経ずに、高速道路でそいつは見つける事が出来た。

このAIの探知機能のおかげでもあるが、何より彼女、篠ノ之束は外見故に相当目立つ。

(見つけたぜ...篠ノ之束!海には行かせねえ!)

マキシマムにドライブさせ、ブルースペイダーは更に加速する。

篠ノ之束の跨る黒と緑のバイクに接近し、和真は声を張り上げる。

「おい!篠ノ之束!ここで引き返すなら、見逃してやるぜ!」

「わー速い。けどお断りだネ。ばいばーい」

なんともウザったらしい生き物である。高速をおりて下道に入る束を追って、和真は前方のトラックの荷台を利用してジャンプ。

再度束のバイクに近づく。

法廷基準を軽くオーバーしているバイクが二台もいるのだ、そりゃあ警察も黙ってはいない。

何時間振りだろうか、和真はまた警察に追われる羽目になった。

しかしサツは無視し、束だけを見据える。

そして現在時刻はなんと月曜日の11時。

(オーシャンズ・イレブン....海に着いたら11時というわけか)

これでは僅かに遅れて和真達が乱入することになる。当然織斑千冬からお仕置きを受けることになるだろうが、今は構っていられない。

自身のバイクを束のバイクに並走させ、旅館の手前に来たところで和真は、束のバイクを蹴り飛ばした。

「オラァ!」

ここら一帯は岩が多い。下手に激突すれば爆発も避けられないだろう。案の定黒と緑のバイクは束を乗せたまま巨岩に激突、爆発炎上した。だがこれしきではヤツは死なない。

砂浜にバイクを止め、和真は慎重に現場に近づく。旅館から声が聞こえてくるので、もうすぐ織斑千冬が来ると見てよかろう。

そして爆炎の中からゆらりと立ち上がる影。素早くブレイドに変身して身構える。

炎の中から声が響いた。

「キミ、死刑ね」

刹那、殺気を殺す程の殺気が放たれた。見れば待機状態で腕に付けていたのだろう紅椿が、ボロボロの状態になっている。

紅椿は見た目も中身も、待機状態は非常に脆いと思っていたが。

(でも、やっぱ待機状態じゃあ壊れるのかァ....ま、大変なのはここからだが)

今の篠ノ之束は、死神を超え、悪魔をも上回り、憎悪ですら生温い感情が渦巻く。

これほどまでの妹への愛に溢れた姉など、早々いるものではない。

篠ノ之箒は知るべきだ。自らを想う姉がいる事を。

妹の為にその仇を殺そうとする姉がいることを。

『エボリューションキング』

和真はキングフォームへと変わり、キングラウザーを握る。

道中で聞いたのだが、どうやら束とのクロックアップ戦闘の所為らしいが、あと1回クロックアップ戦闘を行ってしまうと、強制的に別の世界に飛ばされてしまうという。

時空ナントカと言っていたが、よく分からない。つまりあと1回クロックアップしたら、和真は無理矢理別の世界に送られるというワケだ。

「まったく...やるしかねえな、篠ノ之束。決着の時だ!」

無言でクロックアップする篠ノ之束。

和真も呼応するように『マッハ』の能力で加速する。今の和真は13体のアンデッドと融合した状態だ。カードをラウズさせずとも、その能力を使えるのだ。そして邪神の力もフルで稼働させる。

神速の戦いの最中、外からこちらを見る織斑千冬の姿が。

本来ならば抱き着きにいくはずの束だが、今回はバトルにのめり込んでいた。

(クソッタレ...アンデッドになっても勝てやしねえのか?強すぎて笑えるぜよ)

一度剣を下ろし、2人は向かい合う。

箒への愛故に殺意の塊と化した束、彼女を倒す為にアンデッド、ジョーカーと化した和真。

和真の身体は既に半分が消えかけており、どうやらあのAIの言った事は間違っていなかったようだ。バイクも消えかけているということは、バイクも別の世界に送られるということか。

それとこの姿、外からは消えかけているように見えるが、下半身の感覚は別の場所に移っている。何も感じない...が、どこか別の世界だろう。

声と言えぬ絶叫を上げ、バーサーカーと化した束が剣を振り下ろす。

しかし。その刃は彼に届く事はなく、直前に八坂和真はこの世界から消え去った。

見ていた者は全員、何も言わない。言えない。

織斑千冬、八坂風香、八坂吹雪、織斑一夏。

目撃した4人は無言で立ち尽くしていた。目の前の現実を受け入れられなかった。

物語は必ず誰かがハッピーエンドを迎え、必ず誰かがバッドエンドを迎えるという。

この状況は誰も、誰1人として、ハッピーエンドを迎えた者は居なかった。




これからは投稿がかなり不定期になる可能性があります。
ごめんなさい。
まあなんつーかこの話無茶苦茶ですね。
書いてる本人が言うのもなんですけど。
とりあえず頑張りますんで!

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