仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか?   作:神浄刀矢

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10人の少女達

どうやらこの隣界という場所は、薄々感じてはいたが、現実世界とは構成自体が異なっているようだった。

明るさはあっても太陽のような光源があるわけではないようで、時崎狂三が言うには太陽は『大きすぎる』のだという。

宇宙ステーションか何か、あるいは小惑星あたりの位置付けなのだろうか。

「細かい説明は後回しにしましょうか。できるならば、ですけれど」

「!」

「わぁ…」

そこは教室だった。やや薄汚れた部分は見受けられるが、和真も知っている日本の教室。

黒板にはチョークでだろう、乱雑に文字が書かれている。

そして教室の椅子にはエンプティや時崎狂三と同年代と思しき『少女』達が座っていた。

恐らく時崎狂三が言ったのはこの少女達の事なのだ。

皆それぞれに服装は異なり、制服らしき者もいれば私服の者もいる。

「良かったぁ…やっぱり生きてる人がいたんですね」

先ほど時崎狂三から準精霊を殺しに行くと言われておきながら、エンプティはだいぶ呑気なものである。

肝が座っていると捉えるべきか、半ば浮かれているのか、エンプティには分からないようだ。

この空間が敵意、悪意、殺意に満ち溢れているということが。

(下手すりゃこっちを殺しかねない勢いだぜ)

各々の武器もしっかりと手にしているあたり、本当に下手をすれば洒落にならなそうだった。

教壇には誰が置いたのか知らないが、小さな子供くらいの人形が2体腰掛けていた。

栗色の長髪に赤い着物の少女のような人形と、金色の短髪の少年のような人形。

本来なら綺麗や可愛らしいとかの言葉が当てはまるのかもしれないが、和真には何故かそれらが酷く歪で気持ち悪いものに見えた。

すると着物の人形が両手をぱたぱたと振ったかと思うと、教壇を飛び降りて近づいて来た。

自分の力で、誰かに操られるでもなく。

「人形って動きました…っけ…?」

「いや動かないだろ。普通は」

「ええ、普通は動きませんわね」

人のように動く着物の人形は、鈴を転がすような声で問いかけた。

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

人形の口が普通に動いている。

どこかから録音した声を流しているでもなく、当たり前のように喋っているのである。

もう深く考えない方が良いのかもしれない。

「新たにエントリーした、時崎狂三ですわ」

人形の動きが止まる。

「招待状をお持ちでなければ、このゲームに参加はできません」

「あらあらあら、何という偶然でしょう。わたくし、招待状を拾ったばかりですの」

時崎狂三の放ったその言葉に、教室にいた10人の少女から剃刀のような視線が彼女へ向けられた。

(招待状を拾った…そういうことか)

先刻殺したツインテールの少女の姿が脳裏をよぎる。

彼女が本来ここに来るべきだったのを、時崎狂三は殺してその権利を奪って来たというわけである。

(結構なやり方してんだな、時崎)

人形は渋々といった風で首を縦に振った。

「…承りました。そちら2人は?」

時崎狂三は笑顔で答える。

「彼女は囮、彼は奴隷ですわ。どちらもこちらに着いたばかりのようですし、折角なら使わない手はありませんので」

「そうです、わたしは狂三さんの囮…囮?!囮ですか!?」

「デコイの方が良かったかしら?」

「意味同じでしょう!」

「じゃあ何で俺が奴隷なんだ?囮2人目にすればすっきりするのに」

「肉体労働ならできるでしょう?珍しい男性の準精霊なのですし」

「そういう?」

奴隷扱いされたのは非常に気に食わない(囮2人目というのもアレだが)事だが、和真を準精霊だと誤解してくれたのはこちらにとっても非常に好都合であった。

和真の服装は明らかに私服だが、ここを見る限り準精霊といえど霊装は常時纏わず、何もなければ普通の服で過ごしている。

彼もそういう類だと認識されたのだろう。ただ勘づかれるのも時間の問題といえるが。

「確かに、霊結晶(セフィラ)の力は彼女は砂利のようにちっぽけですし、彼に至っては無に等しいです。わかりました、囮及び奴隷としての扱いを認めましょう」

そう赤い着物の人形が応じ、

「感謝いたしますわ」

時崎狂三は慇懃に礼の言葉を述べた。

そして教壇に少年の人形が立ち、ぱん、と手を叩いた。

続けて2、3度叩く。

「皆様、これにて今回の参加者が規定に達しました。エントリーを締め切らせていただきます」

教壇に戻り、着物の人形が告げる。

「申し遅れましたが、わたしの名前は朱小町。ゲームの審判を務めさせていただきます」

「同じく、審判を務めることになるリュコスという。我ら2人の言葉は即ち、“人形遣い(ドールマスター)”のお言葉である」

“人形遣い(ドールマスター)”という言葉に全員が複雑な反応を示す。

恐怖、不安、怯え、闘志、憎悪…いくつもの感情が教室の中に入り乱れた。

「それでは順番に名前を呼ぶ。手を挙げ、自己紹介を始めよ。なお、武器と霊装の虚偽申請はこちらで指摘する」

リュコスが朱小町に促し、朱小町はリストらしきものを手に、ゆっくりと教室を巡って呼びかけ始めた。

 

 

 

 




なかなかバトル始まらなくてすいません。
できるだけ早く始めたいところなんですがね。
次の話は今日挙げられるかな…今日か明日か。
がんばります。
じゃあまたねー

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