仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
くじ引きを引いた結果、時崎狂三は綺麗に最後となっていた。
最後の方ではなく一番最後。
当然和真とエンプティも彼女と同じ扱いになるわけで、特にエンプティは気にしているらしかった。
「最後だなんて!狂三さん、くじ運どうなってるんですか!もう今日は厄日ですよ!」
「うるさいですわね。ま、わたくしにとってはいつでも良いといえば良いのですけれど」
「わたしの命、ちゃんと考慮してます?」
「まさか」
「この和真さんは?」
「死ななければ良いですわ」
「わたしよりマシじゃないですかあなた!」
「どこがだよ、奴隷扱いなんだぞ。奴隷解放宣言しようぜ、リンカーン呼べって」
奴隷扱い云々は置いておいても、エンプティが死ぬのだけはどうにかして回避する必要がある気がした。
彼女は空っぽで、何も無い、何も持たない少女だが、今の彼には彼女は守るべき存在であるように思えたのだ。
なぜかは分からないが、死なれたら困るような。
「ならあなた、わたくしの役に立ってみせる気はないかしら?」
「それやったら生き残れます?」
「前向きに善処くらいは致します」
時崎狂三の提案に縋り付くように、エンプティは何をすれば良いかと尋ねた。
「簡単です。皆さんが抜けて行く前に話を聞いてくるだけです。何を願い、何を以って戦うのか。幸いあなたが無力であることは知られていますから…心を開いてくれるかもしれません」
「やってみます」
それが命の保証というには程遠くとも、彼女はどうにか生き残らなければならない。死ぬのは容易いことだが、ここで死ぬのはエンプティとしても嫌な事なのだろう。
(ここから出りゃいつ始まるのか分からないっつーのに)
エンプティが話を聞き、1人、また1人…と教室から少女達は出て、戦場へと赴いて行く。
五臓六腑を撒き散らして死ぬか、華々しく綺麗に散るか。
少なくとも血生臭そうなここで名誉の戦死を遂げるのは難しそうではあったが、どのみち彼女達はいずれ死に、最後に1人だけが残る。
「生きて帰れるといいんだけどな」
「保証はできませんけれど」
「それで実は提案があるんだけどさ…」
「何ですの?」
やがて時崎狂三の前の順番の少女が教室を後にし、残されたのは3人だけとなった。
「時間です、それでは時崎狂三様」
立ち上がって教室から出る寸前、狂三は残された和真とエンプティに声をかけた。
「行きますわよ、目撃者さん達」
「あ、うん…分かった、行くよ」
「ああ」
和真とエンプティは時崎狂三についていくような形で、教室を後にした。
誰もいなくなった教室で2人の人形、リュコスと朱小町は再度宣言する。
「出席9名、欠席1名、代理1名」
「汝ら準精霊の名を冠する者達よ。無銘天使と共に敵を屠る殺戮装置よ」
「渇望と希望、絶望と願望を身に纏い、踊り狂え」
「血と魂を全て差し出せ。神座に至る道を作れ」
「さあ、私たちの戦争(デート)を始めましょう」
応える者はない。
静かな空間に、手を叩く音だけが響く。
だがそれは明確な殺し合いの始まりを意味していた。
教室を出た途端、エンプティは怯えたのか時崎狂三の背中にへばりついた。
「何ですの」
「いや、だって、もう始まってるんですよね?」
「ええ」
「奇襲を仕掛けられる心配とかは?」
「ストップ」
和真は2人に声をかけた。殺気が強い。
「時崎!エンプティを連れて早く!」
エンプティを掴み、廊下の窓ガラスをぶち破って時崎狂三は外へと身を躍らせる。
最も言われてなくても彼女はそうしたろう。理由は明確。3人のいた場所が、どろりと融解したからである。
「チッ…厄介だな」
遅れて飛び出しつつ、彼はサブマシンガンを取り出した。
丁度ヤンキーのような少女が槍を手に、2人を攻撃しているところだった。先に出た準精霊達は、唯一の精霊である時崎狂三の戦いを見るべく、小競り合いをせずにこちらを見ている。
「せっかちですわねぇ」
「あと1000年くらい待って欲しかったです!」
(そりゃすぐだな)
よく見るとどうにもヤンキー少女の扱う槍はただの槍ではなく、毒か何かが放出される仕組みらしく、恐らく廊下を融解させたのもそれであろう。
「舐めるな!」
彼女の槍から放出された液体は落下せず、曲がりくねって空中の2人を追尾して行く。
「最初はこっちが相手だ!名前忘れたけどヤンキーっぽいヤツ!」
「乃木だ!覚えとけ!」
叫んだ乃木は声が聞こえた方を見て、驚いた。
先ほど飛び出たのは時崎狂三とエンプティの2人のみで、もう1人はどこに行ったのかと思っていた。
殺れたかと思い込んでいたが、思い込みだったようであった。
生意気にも生きており、武器まで手にしている。
「行くぞ!ターボタァァァイム!」
叫び、和真のサブマシンガンが火を噴いた。
当然乃木は回避行動を取るが、意識は時崎狂三から和真へと移り、毒の軌道も彼の方へと向かう。
「って、おいおいこいつは洒落にならんてば!」
回避しつつも和真はサブマシンガンの引き金を引くのを止めない。
彼女に効いているかいないかで言えば、効いていない。
勿論和真もそんな事は承知している。
彼の役目はそこではない。
「時崎!」
「分かっておりましてよ」
乃木が振り返るが一足遅かった。
彼女の古式短銃の銃口が乃木に向けられており、そして引き金が引かれた。
最新話ですね。
クオリティはいつも通り低いですが、できるだけセリフに色々仕込んでみました。
次の話は明日か、1000年後か。
ウルトラマンで何か書いてみたいんで、少し休むかもしれません。
この流れだと書き続けたいけどな。
ではまたねー