仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
時崎狂三の放った銃弾は見事に乃木を直撃し、彼女は墜ちていく。
血が溢れ、霊装も崩れて。
時崎狂三に抱えられたエンプティが助けようと手を伸ばすが、墜ちる彼女は驚いた表情を浮かべつつも、その手を握らなかった。
とはいえ時崎狂三とエンプティも落下し、和真も2人を追っていく。
(トドメを刺すのか?)
少女とはいえ彼女は準精霊。撃たれたとて並大抵のことでは死にはしないだろう。
地面に着くと同時、エンプティは乃木に駆け寄る。
「あ、あの大丈夫ですか?」
「…無事に見えるかよ、くそ…」
「これで、わたくしが精霊だと認めてくれまして?」
どうやら乃木は時崎狂三を精霊だとは認めていなかったらしい。そんな話は全然知らなかったが…エンプティが話を聞きにいった時にでも話したのだろうか。
「やなこった」
「そう」
時崎狂三は笑顔で短銃を構えるが、乃木は笑みを浮かべてその銃口を睨む。
「さよなら、乃木さん」
「けっ、アバズレが」
最後の最後で力を振り絞って時崎狂三を罵った乃木だったが、しかし時崎狂三が再度放った銃弾によってその霊結晶(セフィラ)を打ち砕かれることとなった。
「え…?」
驚愕するエンプティ。どうやら状況が飲み込めていないようだ。撃つとは思っていなかったのかもしれない。
これはあくまでゲーム。命までは取らないものなのだと。
「何で、撃ったんですか?」
「バカな事を問わないでください。生きていたからに決まっているじゃありませんの」
「でも…」
「一時的でも戦闘不能に陥ったら敗北だと?その再起不能の敗北を誰が認めるのです?それを認めさせるには、殺すしかありません。誰も彼もが死に絶えた先に、勝者だけが残るのです」
「それは…」
そうなのだ。他者を蹴落とし、その血と肉でもって勝者が決められる。現実ではそれが間違っていたとしても、この世界ではそれがルールなのである。
恐らくエンプティもそれを理解したのだろうが。
「それでも…それでも、間違っているんです。間違っていなきゃ、ダメなんです」
「戯れ言、ですわね。そんな甘っちょろい見方で生きていけたなんて、さぞや幸福だったのかしら」
「違います!違うと…思います」
「おいおい、もう争うなって。今ここで争っても何にもならないだろ。ここじゃいつ狙われるか分かったもんじゃないんだぞ?」
エンプティはやはり誰かが死ぬのを見るのが嫌なのだ。
相手が自分の命を狙ってきた人物であったとしても。確かにそれは甘すぎる考え方なのかもしれない。時崎狂三にしてみれば人の死は見慣れすぎて、もう生と死の感覚は麻痺しているのだろう。
(これが一般人と殺し屋の違いってヤツか)
「…とっと離れますわよ。ここは空気が悪いですわ」
時崎狂三はそう告げ、3人はその場を後にした。エンプティは乃木が倒れていた場所を振り返ったが、そこには既に何もなく、一陣の風が吹き抜けるだけだった。
生きてさえいれば良い。だが死ねば無価値、この世界そのものから排除されてしまう。極端だがそれがこのゲーム、さらに言えばこの世界で唯一のルールでもある。
(エンプティが逃げ出したりしないと良いんだけどな)
気付けば陽が傾き、夕方になっていた。
乃木の後は大した戦闘もなく、包帯を全身ぐるぐる巻きにした怪しげな少女(?)とも小競り合い程度で済んでいた。
小競り合いといっても向こうが襲いかかってきたのを、和真の銃弾(機銃弾200発とチェーンガンをフルパック)で追い返した程度で、撃破までは至っていない。
とはいえ先程は色々言っていたエンプティもどうやら順応したらしく、だいぶのんびりしている。
(下手すりゃエンプティの方もメンタルとかやばいんじゃ…)
「1日目だと、こんなものでしょう」
「え?明日もやるんですか?」
「明日も、明後日も。誰か1人が勝ち残るまで」
そう呟いた時崎狂三の顔に、僅かに暗い情念が感じられた。
そして街にチャイムの音が鳴り響いた。
ゲームの一時的な終了を知らせるものだと時崎狂三は言う。
「協定のようなものですわね。夜討ちだけは禁止されているのです」
「へえ。破ったらどうなるんだ?」
「当然ペナルティですわ。未遂なら警告、仕留めた場合は、主催者によって粛清されることになっています」
「でもそれって意味あるんですか?勝てばカングンとかいうじゃないですか」
(カングンて…漢字使えって)
「そうならない為に人形達が見張っています。いくら夜襲を仕掛けたところで、彼女には勝てないでしょうからね」
「彼女?」
「いずれ分かりますわ」
時崎狂三はくすくすと笑うが、エンプティは首をかしげる。
「えっと、すいません。整理させてください」
「どうぞどうぞ」
「狂三さんは精霊で、他の準精霊さんより強いんですよね?」
「それはもう」
「でもこのゲームの管理をしているのは支配者(ドミニオン)っていう準精霊なわけですよね?」
「ええ」
「準精霊さんの作ったルールに精霊が従うんですか?何か、うーん、おかしくないですか?他の準精霊さんが従うのは分かるんですけど…」
「気紛れ、ですわ。ルールはキチンと守らなくては面白くありませんもの」
そのルールの穴を突いているのが和真なわけだが…正直夜討ちのペナルティよりも、先にこちらが粛清をされかねない。
他の準精霊か、人形か、はたまたこのゲームマスターたる支配者(ドミニオン)か。誰が彼を狙うか分かったものではない。
「あなたも気紛れで生かされていることを、お忘れなきよう」
時崎狂三の言葉にエンプティは何度も首を縦に振る。
それは悪魔の囁きか。
気紛れで生かされているということは、気紛れで殺されることもあり得るということである。
(つくづくナイトメアって名前が似合うヤツだなぁ)
最新話ですね。
明日か、1000年後かと言ったな。あれは嘘だ。
嘘でもないけど。今日挙げたわけだし。
つーかタイトルもタイトルだな。
もう乱暴じゃなくてランボーだよ。
そろそろ『デート・ア・バレット』じゃなくて『デート・ア・コマンドー』なんて名前付けてもいいんじゃないか?
無理か。無理だな。すいません、流石に無茶でしたね。
ウルトラマンで何か書きたいっつって、まだキャラすら考えてないんですけどね。
ま、次の話もできるだけ早く挙げるつもりですので。
じゃ、またねー