仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
少々歩き、ある一軒家の前で時崎狂三は足を止めた。
「…ここでいいかしら」
「え?ここですか?」
「どう見ても普通の家だけどな」
何か特別な物を隠しているとか、そういうアレだろうかと思っていると、時崎狂三はあっさりとドアを開けて中に入り込んだ。
「ちょ、ちょっと狂三さん?くーるーみーさーん?他人の家ですよね?」
「いや人はいないってば。どうせ家も形だけだろ」
続くように中に入った先には、何もなかった。いや、何もない空間が存在していた。
とりあえず特別な物は少なくとも無さそうであった。
「そう。家の中なんて、ここでは存在しなくても良い。外側さえあれば街として成立するんですわ。住んでる人がそもそもいないのですから」
「ははー…なるほど」
「とはいえこれだと不便ですし。少々造った方がよろしいですわね」
彼女はそう言ってしゃがむと、白い空間に手を乗せた。
特に魔法陣的なものは出ないようだが、時崎狂三に何かを創造する能力があったろうか。
違和感を感じつつも、造り出された空間はなかなかのものだった。
色彩があり、各所にインテリアが置かれ、人が暮らすに相応しい。まぁ「てーい」という気の抜けた掛け声で造り出されたにしては、充分と言える。
「もう休みますわ」
「あ、はい。狂三さんお風呂とか、入りません?できれば一緒に」
ぱたぱた可愛らしく手を振るエンプティに、時崎狂三は露骨に顔をしかめる。
「結構です。入りたいなら好きになさい」
素っ気ない言葉に少々落胆した表情を見せるエンプティ。
「あ、はい。…おやすみなさい」
残されたエンプティと和真。
「覗かないでくださいね」
「誰が覗くか!はよ入れ!」
そうしてエンプティが1人優雅に風呂に入る頃、和真は家の屋根に上がっていた。
夜討ちはルール上ないというが、念の為見張りは必要かと思ったのである。いくら傷をつけようとも、命さえ取らなければ未遂扱いになる可能性があり、それを狙ってやってくる連中がいないとも限らない。
未遂が警告で済むというのもアレだが。
(けどまぁ準精霊も風呂入るんだな)
エンプティの風呂シーンを覗く気がないといえば嘘になるが、多少打ち解けているとはいえ、会ってまだ1日と経っていない少女の風呂を覗くのも紳士ではない。
まあ命が惜しいのでそもそも覗きはやらないが。
(星空か…久しぶりに見たかもな)
パッと見れば本物のように見えるが、もしかしたらこの星空は作りものかもしれない。
この世界自体、全て誰かが創り上げた箱庭の可能性だってある。
「さてと…」
そんなやや浮世離れした事を考えつつも、和真はアサルトライフルを取り出してマガジンを確認。弾は充分、グレネードランチャーも問題なし。
念には念を入れ、家の周りに防御線を築き、地雷も張り巡らしてある。
(何もなければいいけどな)
静かに夜は更けていく。
昨晩は特にこれといった襲撃もなく、平和に過ごすことができ、時崎狂三とエンプティもしっかり睡眠を取れただろう。
和真は一睡もしていないので睡眠不足ではあったが、それを言っては彼女達に変に心配をかけかねない。
心配をされるかどうかは別としてもだ。
(ん?なんか美味そうな香りが)
香りにつられて下りていくと、ダイニングテーブルに向かい合って時崎狂三とエンプティが座っていた。
良い感じの色合いに焼けたトーストとコーヒーが置かれており、これが今朝の朝食ということらしい。
「おはよ」
「おはようございます、和真さん。和真さんは何か欲しいものとかあります?」
「え、なんで?どっか行くのか?」
トーストをかじりながら問い返す。
「ショッピングモール行くらしいですよ」
「ショッピングモール?そんなものが?」
「ええ、ちゃんと店員もいますのよ」
「へえ…なんかよく分かんないけど行ってみるか。面白そうだしな」
「そういえばお金は…」
「この世界でお金なんて、鼻をかむ紙にもなりませんわ」
「「世紀末!」」
というわけで食事を終え、出発しようとして外に出ると、人形が立っていた。右は赤、左は青を基調としたゴスロリ衣装を着ており、人形のくせしてバイオリンやフルートを手にしている。
「こんにちは」「こんにちは」
人を真似たそれらしい声。
「はい、こんにちは」
「何ですの」
エンプティは律儀に返すが、時崎狂三は不機嫌そうに応じる。
人形は表情を変えずに淡々と告げた。
「昨日の戦闘において乃木あいあいが時崎狂三に、指宿パニエがシェリ・ムジーカに、佐賀繰唯が蒼に殺されましたよ」
当たり前のように人形はそう言う。
準精霊達の名前はあまり覚えていないため、名前を言われたところでどんな風貌だったかすら大して覚えていない。
覚える以前に殺されないようにしなければならないのだ。
「敢闘賞のメダルです」「どうぞどうぞ」
「…結構ですわ」
時崎狂三は人形を今にも蹴り飛ばしそうなほど苛立っている。
何がそうさせているのか分からないが。
「そうですか」「残念です」
「精霊の本当の力、今日こそは見せて貰えると」「とっても嬉しいです」
「…ええ、前哨戦も終わりましたしね」
「今日、狙われるのは確実なので」「覚悟してくださいね」
「そうですわね」
気付けば彼女の手には短銃が握られていた。
「何ですか」「この銃は」
「精霊故の気紛れです。次はもう少し、こちらを苛立たせない人形にしてくださいね。支配者(ドミニオン)さん」
避けようとしたが遅かったようだ。
彼女の放った銃弾が人形は砕かれ、醜くその屍を晒した。
「うう、朝から嫌なものを…」
エンプティは血が流れなくとも、こういうのは苦手意識が消えないらしかった。和真は特にこれといって感想も抱かない分、エンプティがどこか新鮮に感じられた。
「ところでコレ、怒られませんか?」
「怒られたところで、どうなるものでもありませんわ。わたくし、精霊ですもの。さあ行きましょう」
時崎狂三と和真は歩き出し、人形に南無南無と手を合わせてからエンプティが追いかけてくる。
(何事もなけりゃ良いけど…絶対襲われるよな)
もしかしたら変身する必要も出てくるかもしれないと思いながら、彼はショッピングモールへと歩いていくのだった。
最新話ですね。
続けて書きたいけど、ウルトラマンの方も書きたいし、でも悩んで結局こっちをまだ書いてるわけですけど。
今回はネタは1つかな?
ま、次の話は今日の午後か明日には挙げられるかと。
じゃ、またねー