仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
どれくらい寝ていたのだろうか。目を覚ますと、既にあたりは暗くなっていた。発作の影響で、今だに頭が痛い。
「あら、起きたの?」
「ああ、って何これ?!」
「膝枕」
「いやそうだけどさぁ....まぁいいか。今何時?」
「7時よ?」
なるほど。それならこの暗さも理解できる。だがこれだと家に帰れないかもしれない。帰った所で怒られるのがオチだろう。
だがマミさんの家に泊まるのもいけない気がする。
「そういや俺マミさんって呼んでるけど、マミって言った方がいいかな?今関係ないけどさ」
「呼び捨てってなんか親しい感じがするわね。なんというか嬉しい...」
「あ、うん。じゃあ今度からマミって言うぜ」
とまあこんな事は今ぶっちゃけ関係無い。今後の展開に多少影響はあるかもしれないが。
体を起こし、仕方なく教室に戻ることにする。荷物が全て教室に置きっ放しなのだ。
教室で荷物を取って外に出、マミと共に家へと向かう事にした。
「ただいま...って居るわけねーか」
マミと別れ、家に入る。既に父親もまどかもリビングに居らず、寝ているであろうことが推測された。そこに居たのは、母親だけだった。
「カズマ、遅かったじゃないか。話があるから座りな」
「ああ」
多分朝の件だろう。1日授業サボったのもあるかもしれない。
そう思いつつ、椅子に座った。
「学校から電話が来たんだよ。武装した不審者撃退したんだってな?」
意外と褒められているのか。そもそも誰が話したのか、大方クラスの奴らであろうが。
「まぁ...そう言われてるなら良いけどさ。アレについて言われてないならまぁ、うん。」
「だけどな、その時のお前が壊れていたっていう証言があるんだよ。
狂っていたというのか、そんなところらしいが」
「そう....か。やっぱ言われたのか.....」
「カズマ、こっちは普通におまえを育ててきたつもりだ。まどかもそうだ、普通の生活を送っていたはずなんだよ。それなのに....なんでこんな事言われんだろうな?」
これには黙るしかない。「俺はカズマじゃない、和真っていう別の人間なんだ」と吐くのは簡単だ。だが、そんなことをする勇気は和真にはない。この家族を苦しませたくないのだ。
「なんかあったのか?マミと上手くいってないとか?」
「...違う、そうじゃないんだ...俺は...俺は.....」
後の言葉が言えない。「ここの子どもじゃないんだ!」と言いたくない。親の驚き、悲しみ、苦しむ顔を見たくない。家出同然の感じでこの世界にきたのに、言える立場ではないだろうが。
「まぁ今言えとは言わないさ。後で話してくれても良い、けどいつかは話してくれると嬉しいよ」
「ああ....そうだな....いつかは...ね。ここに居られるのも、そう長くないんだがな」
「それってどういう...」
「いや、なんでもないさ」
それだけ言って和真は部屋へ向かった。親の顔をできるだけ見ないように。自身の秘密を知られ、怖がられるのは嫌だった。本当の親じゃない人には特に。
そしてその日は何も考えずに寝た。
次の日になり、また次の日になる。毎日が何もなく繰り返される。
ある日はまどかが沈んで帰ってきたり、またある日はさやかが遊びにきたりした。
何日目だろうか、その日も普通に学校だった。
休み時間の時、教室に1人の少女が入ってきた。
「失礼します。鹿目カズマ、という人はいますか?」
「オイ鹿目、どういう事だよ!なんで下の学年の暁美ほむらがここに居るんだ?しかもお前に用とか!」
クラスメイトの1人(剣崎とかいうらしい)が言ってくる。
騒ぎすぎだ、喚き立てるな。
「は?知らねーよ。暁美ほむらァ?暁美ほむら?!」
振り向くと、やはりその少女は暁美ほむらだった。声で少女とは認識できていたが。斎藤千和さんのファンなら気付くべきであった。
確かにルッキーニは分かりにくいが。
「鹿目先輩、すいません。用があるので来てもらえませんか?」
「はぁ...」
重要な用事でもあるのだろうか。時間を操る魔法少女直々にお出ましとは。そして後をついていくと、ある渡り廊下のところで止まった。
振り向き、彼女は口を開いた。
「あなたは何をしてくれているんですか。時間の流れに狂いが生じているんですが。死ぬはずの人が死なない所為で、所々がおかしくなっているんです」
「死ぬはずの人...だと?命を軽く見過ぎだぞ!そんな軽くねえんだよ!人の命はよ!」
「ですが、狂いが生じているのは事実です」
「ほう?例えば何だよ?」
「佐倉杏子と巴マミ。この2人です。」
「さやかは問題ないのか?」
「彼女は既に手遅れです」
なるほど、もう魔法少女になってしまったのか。
「クソが!で、佐倉杏子と巴マミに何かあるのか?」
はぁ、と溜息をついて暁美ほむらは続けた。
「本来外部から来るはずの佐倉杏子。これまでの《時間》でもそうだったのに、この世界で急にこの中学校に通うようになっている。巴マミもあなたが助けた所為で、まどかの魔法少女に対する更なる憧れの的になったんですよ。」
「だからどうした?てか魔法少女って何かなー」
和真のセリフに息を飲む、暁美ほむら。言ってしまった!という顔をしている。そう、彼女は魔法少女の存在を和真の前で口にしたことは無いのだ。
「だって!だって!これじゃ.....」
「鹿目まどかは魔法少女になってしまって、助からない。とでも言いたいのか?」
「.....何故、あなたが....あなたは何者なんですか?」
「さあねぇ、通りすがりの者じゃないのかなぁ」
「嘘!まどかが魔法少女になることを知っているのは、この世界で私1人のはず!」
「おいおい、自分1人が特別だとか思うなよ?それにお前が魔法少女になったところで、アレには勝てないんだ。」
「アレっていうのは?」
「何だろーな!じゃあ俺戻るから」
立ち尽くす暁美ほむらを置いて、和真はさっさと教室に戻った。
そしてその日の放課後、和真は美樹さやかの家を訪れていた。
場所は当然まどかに聞いたのだが。最もマミに気付かれるのが一番心配ではあったけれど。
ピンポンを鳴らすと、時間を置かずにショートカットの頭がひょこりと現れた。
「あれ?先輩じゃないですか、どうしたんです?」
「うん、ちょっと聞きたいことがあってさぁ」
「あーそこで聞くのもなんですし、上がってください」
「悪いな」
で、上がらせてもらったわけだが。マミの時とは違う部屋の感じに、
少しばかり驚く。別にどうこうするわけではないが。
お茶を運んできてお互いの所にコップが置かれた所で、和真は肝心の話題を切り出した。
「それでだ、さやか。実は聞きたいことがあったんだ」
「うん、さっき言ってましたね。何ですか?」
「ソウルジェムって聞いた事があるか?」
沈黙。なぜ知っているのか、という表情だ。
「.....それをどこで知ったんです?」
「そうだなぁ、そう例えばだ。例えばの話」
「(コクコク)」
「俺がこの世界じゃない所から来た人間で、全てを知っている奴だって言ったらどうする?」
「.....つまり異世界の人だとしたら、という事ですか?」
「そう。どう思う?」
「驚きますけど...なんかカッコいいですよね。全てを知っているのって」
「....なるほど。カッコいい、か。仮に俺がその全てを知ってる者だとして、ソウルジェムって聞いたことあるかい?さやか」
そして、若干観念したような表情を浮かべたさやか。逃げられないと思ったのか、ぽつりぽつりと話し出した。決して脅したわけではないので、あしからず。
所々抜けているところはあるが、さやかの話を聞き終えたので。
「なるほどね。んじゃ、ソウルジェム見せてみな」
「どうぞ」
さやかの手にのるそのソウルジェムは既に黒いところが大半を占め、
光る所はあと僅かだった。
「これじゃマズイな。さやか、おまえ一回暁美ほむらからのグリーフシード、断ったろ?」
「....ふふ、よく分かるんですね。さすが自称全てを知ってる者なだけありますね。」
「ああ、そうさ。それと、悪いがこのソウルジェムは壊させて貰うぞ。」
「えっ.....」
まずは自身とさやかの指に指輪をはめる。形は当然給料3ヶ月の方に近いが、能力はウィザードリングに近いモノである。
そしてソウルジェムを右手で握り、超人の如き握力でぐしゃりと潰した。黒と水色の光が溢れ出て、部屋を満たしていく。だが同時に別の現象も起きていた。
『『コネクト』』
という音声と共に、黒と水色のそれを塗りつぶすレベルの赤い光が、指輪から放たれたのだ。
「まっ...眩しい!」
「やったぞ、発動したぞッ!」
その全ての光が消え去ったとき、そこには先程までのあまり元気のないさやかではなく、ウェイクアップフィーバーなさやかが居た。
要するに回復したのである。
「あれ?ソウルジェム消えたのに....わたし生きてる?」
「ふんふん、俺も自信なかったんだがなぁ....まさか発動するとはな」
「どゆこと?」
「うむ、では説明しよう。先程までソウルジェムの中にさやかの魂が入っていたんだが、それがそろそろ違うモノ....つまり魔女のそれに変化しかねない危ない状況だったんだ。んで、それじゃあマズイなと。
んで潰したわけだ。」
「はい、しつもーん!」
「なんだ?」
「この指輪は何ですか?あの....結婚指輪とかじゃないですよね?」
やはりそう言われるか。仕方ないのだが、これは否定しづらい。
「まぁうん、違うと言えばそうなるし、それが今重要なんだよね」
「というと?」
「さっきソウルジェム割って、さやかの魂は消えるはずだったんだ。けど今は、その指輪で俺の魂がお前のに接続されているというのか.....」
「えーとつまり、先輩の魂と私の魂を共有しているってことなんですか?」
「うーん、なんていうのかなぁ....厳密にはお前自身の魂今ないんだわな」
「へ?」
あまりそう驚かないで頂きたい。確かに魂ないとか言われれば驚くだろうが。
「俺の魂がお前の魂でもあるというべきなのかな。俺の1つの魂を、さやかと共有しているってのが正しいか」
ボンッ!とやかんの如き音がした(と思った)。見てみると、さやかが
顔を真っ赤にしている。やはり魂の接続共有なんてのは、やるべきではなかったのかもしれない。
「さやか?問題あったら違う手もあるから、そっちにする?」
「あの、いえ、問題ないです。なんか恥ずかしいですね...魂を共有してるなんて...」
「そうかなぁ....まぁ用事は済んだし俺帰るよ。あ、絶対その指輪外すなよ!絶対だからな!」
そして和真が帰った後、さやかが両親から薬指の指輪について聞かれることになるのはまた別の話である。