仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
翌日早朝。
特にこれといって問題も起きることはなく、皆時間通りに例の学校へと集まった。スミレが既に撮影の許可は取ってあるとのことで、こんなことができるのなら、和真や薫を気絶させて参加させることもなかったのではなかろうか。
今更それを問うたところで、何か変わるわけではないが。
「で、まずは?」
「和真、レナ、薫で母校を訪れるシーンだね。基本ノーカットで行くつもりなんで。基本アドリブで」
「無理あると思うけど」
「5年ぶりに再会したってことにするか」
「テキトーだな。ま、それで行こうか」
「じゃあ位置について」
指示に従い、校門から少し離れたところで3人はスタンバイ。
ほとんどシナリオも何もない映画の撮影が始まろうとしていた。
「3!2!1!アクション!」
***
八坂和真、桜木レナ、平島薫の3人は、かつての母校へと向かっていた。5年ほど前、彼らが過ごした学び舎である。
「久しぶり、だな」
「5年ぶりくらいか。ほとんど変わってねえ」
「でも少し古びたかも」
「そう言われるとそう見えなくもないな。で、ここにタイムカプセルがあんのか、薫」
「どこに置いたか忘れたんで、ちょっと手伝って貰おうと思って」
「お安い御用だ」
「でもあんまり覚えてないのよね。タイムカプセルとか」
「ま、今日は日曜だし、1日かけてもいいだろ」
そうして3人は門をくぐり、懐かしの学校へと入っていった。
学校は異様な雰囲気に包まれていた。日曜だし学校に生徒がいないの当たり前、静かなのはそうなのだが、どこか殺伐とした何かというか、殺意じみたものが漂っている。
「俺たちの学校、こんな感じだったか?」
「別に改修工事とかしてないし、何も変わってないだろ」
「何かおかしなところでもあるの?」
「いや…なんでもない、と思う」
気のせいだと薫とレナには言うが、和真はこの学校に潜む『何か』の存在を感じ取っていた。
昇降口で靴を脱ぎ、校舎内へ入る3人。
「教師の1人くらい居るかな」
「どうだろ?見てくるか?」
「そだな、一応声かけとこう」
慣れた足取りで職員室へと進む。階段を上がって2階が職員室だったと記憶しているが、階段を登りきる直前。
「2人とも待ってくれ」
「なんだよ、急に声も小さくして」
「シッ…何かいる」
「ふざけてるのか?肝試しなんかしてるわけじゃないぞ」
「知ってるわ、そんなこたぁ。なら俺が行ってくる」
和真は1人、職員室へと向かうのだった。
近付くにつれて徐々に強くなる、異様な雰囲気。先ほど感じた殺意に近いそれが、この職員室の中から発せられている。
ゆっくりとスライド型のドアを開けると、中には人影が。
いやアレを人影と言うのか、むしろ異形の姿といったほうが的確な気がする。奴の周囲は赤く染まっていて、奥には最早意識すらないような肉塊が転がる。
強烈な鉄の匂いは、その赤色の液体が何なのか、和真に否応にも理解させる。
「何なんだ、コイツは」
和真の存在を認めたその異形は、人のものとは言い難い叫び声をあげ、飛びかかってきた。
「クソッ!」
一撃一撃が鋭く放たれ、和真は躱しながら職員室から後退する。
打ち込む隙はあるが、和真は打てないまま。
(今ここには桜木レナがいる。彼女には…)
彼女にはこういったことを知って貰いたくない。
だがそれは彼女に異形の存在を知って欲しくないのか、彼自身が手を汚すのを知ってほしくないのか、彼には分からなかった。
しかしここから先にこの異形を通せば、確実にレナと薫の元に行く。
踏みとどまり、彼は拳を握り締める。
刹那に放たれるストレートパンチ。
異形の身体はくの字に曲がり、背後の職員室のドアごと吹っ飛び、職員室の奥の壁に叩きつけられた。起き上がろうとすることすら叶わず、異形は床に倒れ伏す。
「…人間の感触じゃない」
どろりとした、生々しい感触。
ハンカチで手に付いた血を拭き取るが、嫌な匂いは残ったまま。
「黒鉄、これも撮影の何かか?」
「こんなの準備してないって。見たことないバケモノだよ」
「私はこんな話聞いてないわ!学校来るだけでこんなのに襲われるなんて」
「なんだかんだいってカメラは回してたんスか。メンタル頑丈なんじゃないですか」
「帰りたいわよ!でもこういう時逃げたら死ぬじゃない」
「まあそすね。なら、薫と桜木は!?」
慌てて階段まで戻ると、丁度2人が何者かに連れ去られていくところが見えた。
ちらりと見えただけだが、どうやら先程のバケモノと同じような姿をしていた。
「撮影続けるの?2人の救出を優先させた方がいいと思うけれど」
「いや全て映そう。何かの証拠になるかもしれない。良いよな、監督」
「分かったよ」
タイムカプセルなどとアドリブで最初は言っていたが、どうやら割とマジでやばい状況になってしまったらしい。
あのバケモノを倒し、薫と桜木を助けなければならなくなったのだから。
ともかく階段を降り、2人が連れ去られていったと思われる方へ向かい、手当たり次第に部屋を調べていくが、一向に2人は見つかりそうになかった。
教室にも入ってみたものの、やはり2人の姿はない。しかし戻ろうとしたところで、教室のテレビの電源が付いた。
『よう、和真?2人は見つかったか?』
画面に映る謎の男。しかしパワードスーツらしきものに身を包んでおり、その素顔を知ることはできない。
「…誰だ?なぜ俺の名を知ってる?薫と桜木を捕らえてるのか?」
『まあそう焦るな。そうだ、ゲームをしよう。今手元にあるのか何か分かるか?見えるよな?』
「注射器か。何をするつもりだ?」
『こいつは溶原性細胞って言ってな、人をアマゾンってバケモノに変えちまうんだ。さっきお前がぶん殴ったヤツもそうなんだぜ』
「何?」
『最もアレは死体を使ってるから、大した出来じゃあねえ。やっぱ生きてるヤツじゃねえとな。つーわけでお前のお仲間の、平島薫と桜木レナには実験体になってもらう。止めたきゃこの部屋まで来るんだな』
「古典的なやり方だな」
『だが止めなきゃそっちのスタッフ2人も狙われるぞ?最も、この部屋を見つけられれば、だがな』
嘲るような声と共に、テレビの映像は切れた。
「…野郎ッ!」
怒りと焦りと、様々な感情が和真の中で入り混じる。やり場のない感情を勢いに任せ、沈黙したテレビを殴り付ける。
「…どうするの?だいぶやばい状況になってきたよね、全てホントだとしたら」
「アイツを見つけ出すしかない。どんな手を使ってでも」
映像は恐らくこの学校の中から放送されたもの。
この学校のテレビは学校内からしか映せないポンコツなのだ。
全ての部屋をしらみつぶしに探せば見つけられるだろう。しかしヤツは間違いなくあの異形、アマゾンを送り込んでくるし、時間が勿体無い。
(アイツはアマゾンはもとは人間だと言っていた。俺に倒すのを躊躇させるつもりか)
それともそれが単なるブラフか何かの可能性もある。
焦燥感に駆られながら、和真は廊下を歩き出す。
冷静にならねばならないのは重々承知しているが、いつあの溶原性細胞とかいうのが、薫と桜木に打たれるのか分からない。
急ぐ和真の前に現れる異形、アマゾン。
獣のような呻き声を上げ、アマゾンは和真を見据える。
1歩、2歩とアマゾンに近づく和真。
アマゾンは彼より遥かに恐ろしい見た目をしているにも関わらず、徐々に後退していく。本能的な恐怖か、それとも生存本能か。
しかし和真は刹那よりも早く眼前のアマゾンを掴み、投げ飛ばす。アマゾンは壁をぶち抜き、隣の部屋に転がる。
「親玉の場所はどこだ?」
ボロボロになったアマゾンを見下ろし、和真は冷たく問う。
首を勢いよく横に振るアマゾン。答えないということか。
「お前らアマゾンを殺す気はない。今の所はな。指差すなり、何か言うなり、案内するなりしろ」
とはいえ流石に理不尽といえばそうではあるが、今の和真に異形を殺さないという選択肢はないようなもの。
アマゾンは机からペンと紙を出すと、『3階』とだけ書き、急いで逃げるように去っていった。
「追わないの?ゴリラ」
「必要な情報はくれた。殺しはしない。あとゴリラじゃないから」
そしてアマゾンからのメモを手に、3階フロアへと和真達は向かう事したのだった。
2階フロアから3階フロアにかけ、異様な匂いと雰囲気が漂う。
更に3階には何かバリアらしきものが貼られており、容易に近づく事はできそうにもなかった。
「結局2人のとこまで行けないじゃない」
「罠だったのよ。それに後ろ…」
雫の震える声に振り向くと。
彼らが3階に近付いたことを知ったのだろう、どこにいたのか階段を埋め尽くすほどのアマゾンが迫っていた。
いや先程取り逃したアマゾンが情報を漏らしたのか。
むしろこれほどのアマゾンにこれまで遭遇しなかったのは、ここで一気に彼らを殺すためだったのかもしれない。
スミレと雫をバリア側、和真の背中側に移動させ、和真は大量のアマゾンと向かい合う。
「結局あの野郎の手駒か」
変身さえできればとは思うが、もう今の彼はそれに頼る事はしない。
否、できない。
己の肉体のみでやるしかない。
拳を強く固く、握り締め。
迫り来るアマゾン達に鋭い拳撃、蹴撃を放つ。あるものは顔面を刹那に無くされ跡形もなく溶けるか、あるものは壁に穴を空けるほどの威力で吹っ飛ばされるか。
どちらにせよ、僅かばかりの後、残っているアマゾンはゼロだった。
「あなた誰かに乱暴だって言われた事ない?」
「あるかもな。覚えてないけど。バリアは解除する方法あるか?」
「急に普通のホモ・サピエンスの思考に戻るのやめて?こっちが困るんだけど」
「バリアっつったら解除だろ。いや、行けるのかな」
これといって幻想殺しのようなものもないので、こういうサイバーっぽいものには対応できないところがある。
そもそもこのバリアがどういった形で貼られているのか分からないが、通路だけを塞いでいるものだとすれば行けなくはない。
(迷ってる暇はねえ。一気呵成に畳み掛ける)
恐らく映像から見るに、使われなくなった教室という可能性もなくはないが、映像を送れるのはそういった設備があるところのみ。
放送室、あるいはPCルームか。
素早く脳を働かせ、正解を導き出さねば。天井を見上げ、ふと和真は思い付く。
「一度フレームアウトすると思う。でも撮影は続けてくれ」
「えっ?」
和真はそういうと窓の外に出、ベランダを走りながら中の様子を確認していくことに。
「ここか」
当たりはパソコン室。外からも例のパワードスーツの男と複数のアマゾンが認められ、薫と桜木の2人もいるのが見てとれる。
恐らくアマゾンが守るようにしている謎の装置が、バリア発生装置なのだろう。
躊躇なく和真は窓をぶち壊し、中へ突入。
開口一番。
「よう、薫と桜木は返してもらうぜ。悪いが、躊躇うつもりはない」
タイトルは悪夢の遊戯って付けましたけど、この敵と和真ってどっちの方が悪夢なんですかね。
書いてて思うけど、和真の存在が悪夢なんじゃないかって。
ここまで来ると弱体化のさせかた分からんしな。
ま、今日テネット見てくるんで。
ぼちぼち。
じゃ、またねー