仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
「ほう、外から窓ぶち破って堂々と入ってきたか」
「バリアとかずる賢いこと考えてくれたせいで、遠回りする羽目になったよ。それに何より薫と桜木を人質に取ったのは許せん」
「言うようになったな、八坂和真」
「なぜアンタは俺のことを知ってる?俺はそんな全身パワードスーツ野郎は知らねえが」
和真の疑問に答えるかのように、男はパワードスーツを脱ぐ。いや、変身を解いたというのが正確だったのかもしれない。
「あの時惑星保護機構で敗れてから、俺はお前らへの復讐を誓った。今日までそれで生きてきたと言っても良い」
「ニャル滝…牢屋にぶち込まれたって聞いたが」
「そんなの脱走してきたに決まってるだろ。お前ら八坂の一族は揃いも揃って邪魔ばかりしやがる。手始めに最近痛い目を見せてくれた、息子のお前から始末してやろうと思った次第だ」
傷だらけになったニャル滝の顔には、かつて母とローコストドライバーを巡って戦い、ブレイドとして和真と戦った時の面影は最早ない。
彼にあるのは八坂和真と八坂ニャル子、八坂真尋への復讐。恐らく腕輪のそれが新しい変身アイテムであり、先程のパワードスーツになるのだろう。
和真の視線に気付いたか、ニャル滝は腕輪を指差して言う。
「これも俺が作ったものだ。ローコストドライバーもブレイバックルも必要ない。このミリタントアマゾンズレジスターは、俺の復讐を完全なものにする」
「お前の復讐と言っておきながら、たくさんアマゾンを投入してるじゃねえか。アレか、皆、溶原性細胞ってやつでアマゾンになった、元人間てンだろう?」
「復讐には手段は選ばん。獄中で俺は持ち得る全ての知識を生かし、溶原性細胞を作り上げ、ミリタントアマゾンズレジスターを設計した。脱獄を成功させた後、ある製薬会社で俺はようやく溶原性細胞の量産化を成功させた。ミリタントアマゾンズレジスターも完成し、そしてようやく、復讐を始められる」
「お前、ふざけるなよ」
「なんだ」
「復讐したけりゃしろ。それは人の好き勝手だ。でも見ず知らずの他人をも巻き込むな!ましてや俺の仲間をも!薫や桜木を人質に取ったのは、絶対に許さねえ!」
「お前に俺の復讐心など分かるものか!勝者は敗者のことなど知ろうともしないだろう……アマゾン」
腕輪の鼻の部分を倒し、ニャル滝はパワードスーツを身に纏う。
「俺はネオアルファ。始まりでも終わりでもない、新たな存在だ」
「ネオ、アルファ?」
問いには答えず、アマゾンが数体、彼を狙って飛びかかってきた。ネオアルファが操っているのか、特殊なマインドコントロールが施されているのか、そこまでは分からないが。
「ハッ!」
ほぼ同時に繰り出されるハイキック。従来のハイキックは片足を床や地面に付けているため、どう足掻いたところで1人の相手しかできない。
足を両方使った蹴りとて、相手は2人が限界だろう。
しかしその空間、その瞬間、飛びかかってくるアマゾン全てに対し、同時に蹴りが放たれていたのだ。
「よし…」
吹っ飛ぶアマゾン達。壁に穴を開け、天井に穴を開け、そしてバリア発生装置に体をぶつけ、アマゾン達は沈黙した。
そしてバリア発生装置が動きを止めたおかげか、バリアは消えた。
「アマゾンなどただの玩具にすぎん!復讐は俺の手で遂げてみせる!」
「やるならやってみろ!今度はブラックホールに送ってやる!」
声を上げる和真とニャル滝。もはや今の彼らに、細かいことを問うたところで無意味だろう。
一方は復讐者、もう一方は怒る普通のゴリラ・サピエンス。
復讐者は失うものは何もない。ただ殺すべき相手を殺す、それだけのためだけに動く。
しかしゴリラ・サピエンスもとい和真には守るべき者達、助けなければならない仲間達がいる。
「ミンチにしてやるぞ、八坂和真!」
腰のベルトを操作し、ネオアルファは右腕にチェーンソーとガトリングが一体化した狂気的な武器を生成。
ネオアルファはガトリングを、和真ではなく意識を失ったままの薫と桜木に向け、撃ち放つ。毎秒何百発といったレベルで撃たれているのだろうことは想像に難くない。
「させるか!」
刹那よりも速く、和真の身体は動き、2人の前に立ち塞がる。
そして薫と桜木に向けて放たれたガトリングの弾は全て和真へと命中し、鮮血を飛び散らせるのだった。
僅かばかり時間は遡る。
場面は変わり、バリアの外にいたスミレと雫へと視点は映る。身動きが取れずに悩んでいたが、通路を塞いでいた障壁がなくなったことがわかると、カメラを手に2人は動き出した。
どちらへ行くべきか判断しかねたが、奥の部屋から聞こえてきた銃撃音が、彼女達をそちらへと導いた。
「こっちだね」
「ええ」
ドアを開け中へ飛び込むと、そこには。
無数の薬莢と硝煙、床に広がる鮮血。
パワードスーツを身に纏った謎の男が、銃口を下ろす。
全身から血を流しながらも立ち続けているのは、和真だ。
「カメラ…頼むよ?良い映像が撮れるから…な」
「和真!そんなじゃ、死ぬって!」
「気にするな…死にはしない」
そう言う和真に対し、再度ガトリングが撃ち込まれる。
避けることなどせず、和真は正面からガトリングを食らう。
飛び散る大量の血。
「もしかして…」
「どうしたの?」
「和真が動かないのって」
彼の後ろに見えるのは、意識を失っている平島薫と桜木レナ。どうやら2人を守るために彼は仁王立ちを続けているらしい。
撮影側であるスミレと雫が入れないが故、彼は1人で戦っている。
まあスミレや雫が加わったところでガトリングに耐えきれるほどの体力もないし、躱すこともできないだろう。
2人はカメラを回し、見守り、記録することしかできなかった。
血が止めどなく身体から流れ、最早服の色は赤黒く変色している。
だがその瞳から光が消えることはない。
「そこまでやられておきながら、なぜ倒れない?なぜ死なない?八坂和真」
「俺は…仲間がいる。再会したのも、新しく出会ったのも、仲間だ。俺に新しい世界を教えてくれた」
「だが自身を裏切るのも仲間という存在だ。前よりも愚かになったな、八坂和真」
「好きなように言え。それでも復讐だけしか生き甲斐のないヤツに比べりゃあ…遥かにマシだと思ってるぜ」
1歩、また1歩と和真はネオアルファに近付く。向けられるガトリングの銃口は、確かに和真の額に狙いを定めている。今度こそ顔面をぶち抜き、息の根を止めるつもりか。
ガトリングのトリガーが撃ち放たれるのと、和真が床を蹴ったのはほぼ同時だった。だが僅かに和真の方が速く、銃弾は額ではなく、肩を直撃。
「しゃオラァ!!」
パワーとスピードにものを言わせた拳をネオアルファに叩きつける。小細工など用いず、シンプルに正面から殴る。
ネオアルファは吹っ飛び、壁をいくつもぶち抜いて、階段の手前の床に倒れ込む。
ネオアルファがぶち抜いた穴を通って和真は迫り、目にも留まらぬ速さで拳を振るうが、今度は避けられてしまう。
床を転がりながらガトリングを構えるネオアルファ=ニャル滝は、冷や汗をかいていた。
「お前邪神じゃなくてゴリラだろう?親戚にクリス・レッドフィールドか不破諌っているだろ」
「いるわけ、ないだろ。俺は…普通のホモ・サピエンスだ」
「邪神と人間のハーフは普通のホモ・サピエンスって言わねえ!」
ニャル滝の叫びと共に、ネオアルファのガトリングが再び火を噴く。
流血もここまでくれば痛みなどない。撃たれようが、構やしない。
まあ絵面的には、アマゾンズフィルターでもかけた方が良いようなくらいにはなっているかもしれない。
床を踏み砕く勢いで和真はネオアルファに肉薄するが、しかし。
「ぐあッ…ぁ…」
「一度も使ってなかったからなぁ、ここでは。見落とすのも分かるぜ」
「チェーンソーたァ…ずるいぜ…」
「復讐に卑劣も卑怯もあるものか。言ったろう、手段は選ばないと」
ガトリングと一体化するように付いていたチェーンソーが起動し、和真の右肩から首にかけてめり込んでいく。
「和真!」
追いかけてきていたスミレが、薫に肩を貸しながら、叫ぶ。
雫は桜木に肩を貸しており、どうやら助け出せはしたらしい。
「悪りぃな…でも、ここで…こいつに、エンドマークを…打つ!」
勢いよく稼働するチェーンソーを見据え、和真は左拳を叩きつけ、チェーンソーを殴り砕いた。
「なっ…?!」
「俺は親みたいに、フルフォースフォームなんて、ねえからな。変身ベルトなけりゃ、生身の人間だ。だから鍛えるしかねえんだ」
元から強い人外ファミリーと違い、和真は人間の血も混ざった、半邪神にすぎない。そのために途中までは仮面ライダーブレイドの力に頼っていたが、それは壊れた。奇跡のようなものだった円環の理も眠りにつき、彼に残されたのは己の肉体のみ。
それ故に様々なアクション映画を見、アーノルド・シュワルツェネッガーや、ドウェイン・ジョンソンやジェイソン・ステイサムといった鋼の肉体を目指し、トレーニングを始めた。
余計なものは取り払い、ひたすら肉のみを食い、鍛える。
まだ今はひよっこ同然だが。
「俺は例え全て無くなっても、誰かのために戦う。そう決めた。仮面ライダーでなくなっても」
「そう言ってお前はかつて、偶然と奇跡で円環の理の力を手にし、それで俺を葬った!」
「だから!今度こそ、俺の力で終わりにする!俺自身の手で、俺自身の力で!」
ニャル滝=ネオアルファは残されたガトリングを和真の顔面に向ける。
「ちくしょおぉぉぉッ!眉間なんか撃ってやるものか!てめぇも、他の奴らもまとめて、吹っ飛ばしてやるぅぅッ!」
これがお互い最後の攻撃となるのは目に見えている。
ガトリングの弾丸を食らいながらも、しかし和真は左の拳を再度握りしめ、ネオアルファを殴り飛ばす。
ネオアルファ=ニャル滝の身体は窓ガラスを突き破り、吹っ飛んでいく。
「地獄に落ちろニャル滝!」
なんすかね、最後のあたりコマンドーっぽくなったような。
まあまあ、これで星の復讐者もとい、ニャル滝の復讐編は終わりとなりまして。
中途半端なとこで切ったと言われるかもですが、この後は文化祭編にマジで入りますので。
とかいうと大抵変な話突っ込むから言うのやめよう。
ぼちぼち和真のゴリラ化が進行しておりますが、書いていきます。
じゃ、またねー