仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
本来ならば前の話に記すべきだったのかもしれない。今更ではあるだろうが、例の映画製作の顛末をここに述べておこう。
結局あの後ラストシーンを撮影し、1日かけた撮影はお開きとなった。
しかしまぁ学校はあの状態のままというわけにもいかず、そこは人外ファミリーに相談したところ、特殊な機械を使って学校を壊れる前の状態に戻す事ができるらしい。それで学校を壊れる前の状態に戻してもらい、お咎めなしということになった。
ニャル滝に関しては母・ニャル子が回収し、ブラックホール監獄というところへ文字通り放り込んだのだとか。
なんでも正規名称はダークネビュラというらしいが、ボドボドになりそうなので聞くのは控えておいた。
多少編集作業はしたものの、戦闘シーンはしっかりと残すことになり、そのため一時アマゾンプライムで配信するかという案が出された。アマゾンズフィルターを付けることで事なきを得たが。
そのせいもありタイムカプセルを探すという序盤のシーンが無意味になってしまい、桜木と薫の影が薄くなってしまった。
ともかくそうして文化祭前日までにポスターやら機器の準備やらを終え、上映準備も無事に終えることができていたのだった。
そして上映を控えた初日朝、5人は行動順などを決めるため、部室に集まっていた。
「で、明日の当番どうする?」
「当番?上映する時の係か」
「それと、自由に見回る組ね」
「俺は傷治ってるし、別にどっちでもいいぞ」
「いや撮影最後見た時、お前全身血だらけだったぞ。全然何があったのか知らんが、よく生きてるよな」
「ガトリングで全身撃たれて、チェーンソーで右肩から首あたりをやられて生きてるあたり、バケモノだよね和真は」
「肉たくさん食って、酒飲めば治るもんよ」
「普通は肉と酒じゃ治らんの」
「いや包帯とか使うと面倒だしさ。自力でやらなきゃ」
「ゴリラの話はとにかく、どうするの?明日の係は」
「2、3で分けるかな。私の独断と偏見で、和真とレナ、美山先輩と薫は私と。これでいい?」
「あっさり決めるなぁ」
「まぁね。先に和真とレナが店番で良い?」
「ああ」
「分かった」
ということで午前中は和真、レナが接客などの対応を行い、午後から薫、雫、スミレの3人に交代する形となった。
今更思うのも変かもしれないが、邪神というわりに、スミレが戦闘に参加したことはこれっぽっちもない。
まぁ監督役だったからといえばそうなるが。
(ま、何かワケでもあんだろ)
知るつもりもないし、知ったところでどうもしないので問いはしないが。
店番を始めてしばらく経つ。客はちらほら。まぁ3流の素人映画に400円支払って観てくれる人がいるだけでも、有難いものである。
3度目あたりの上映だったろうか、黒い帽子に黒いコートの怪しげな風貌をした老人が姿を見せた。
やたらと長く、もっさりとした髭を蓄えており、サンタクロースと言われればそう見えなくもない。しかしサンタクロースにしては眼光が鋭い上に、服装も赤と白のクリスマスカラーではない。
そもそもサンタなんて信じてはいないのだが。
「400円になります」
「これで、いいかな?」
「ちょうど頂きます。ごゆっくりどうぞ」
「ふむ」
怪しげな老人はそうして部屋の端の方の椅子に腰掛けた。
どうやら映画を見に来ただけの、一般男性のようではある。
最も風貌は不審者そのものなので、否応にも目立つ。
(気を付けてはおくか)
「ねえ、じろじろ見るものでもないでしょ。仕事まだあるんだから」
「ああ、うん」
視線を戻し、不慣れながらも接客を続ける。その後はこれといって怪しげな人が訪れることもなく、順調に仕事は進んでいった。
そして昼休みになり、薫たち3人と交代。無論昼休みも仕事はあるので、ここで交代して3人は食事を取りつつ仕事を進める感じだ。
午前中を担当した和真とレナの2人は自由時間となるわけで、2人して色々な出店を見回ることにした。
のはよかったのだが、この前と違い、何故か話題が浮かばない。
そりゃこんなところであの旅の話をしたところで、ラノベの語りでもやっているのかと思われるのがオチだろう。
内容は強ち間違いではないが。
歩きながらもこれといった話題が思いつかず、自分たちが撮影した例の映画の話を振ることに。
「桜木さ、こないだの映画で殆ど気絶しちゃってたし、なんかごめん。俺が1人で突っ走ってしまった感じだし」
「別に構わないわ。それに後から話聞いたのと映画観て思ったのだけれど、低予算でできたのって、和真のおかげよね」
「地味に酷い言い方するなぁ…まぁそうだろな。ネオアルファやアマゾンとガチで殺りあったから、あの映像ができたわけだし」
「なるほどね」
自販機で立ち止まり、レナは紅茶を購入し、ブラックコーヒーも追加購入。和真に「100円ね」と値段をご丁寧に教えて黒い缶を手渡してきた。
レナは自分の紅茶を飲みながら口を開く。
「それで、あなた何者なの?」
「何者って、八坂和真だよ」
「そうじゃないわ。あなた、人間なの?普通のホモ・サピエンスとかゴリラとか色々言われてるけれど。肉と酒だけであの傷が癒えるのは超人的よ」
「そうかもしれない。でも、もう俺は人間なんだ」
「もう?前は違ったと言うこと?」
「まあな。少し、こっちに行こう」
出店が並ぶ構内を歩いていたが、和真はレナを促し、少しばかり文化祭の中心部から外れる事に。
「どうして?」
「ちょっと、尾けられてる」
「尾け、えっ?」
慌てて走れば向こうの思う壺だろう。あくまで自然に、しかし早足で歩く。
見れば先程の黒服の老人ではなく、20〜30代の男性。人数は把握出来る限りでは3人、皆総じて黒いスーツを着ている。銃を忍ばせているが文化祭に乗じているということもあり、エアガンに見せかけた麻酔銃といったところだろう。
「走るぞ」
「う、うん」
桜木の手を引き、駆け出す。
黒服の男達もこちらに合わせて走り出し、銃を抜いて引き金を引いてくる。しかし撃ち出されてくるのは鋼の薬莢ではなく、先端が針のようになった麻酔弾。
運良く躱せはしたが、これも最初だけで、徐々に狙いが正確になるはずだ。
再び放たれる麻酔弾。今度も躱せたが、紙一重だった。
「クソッ…」
しかし逃げた方向がまずかった。行き止まりに来てしまったのだ。
「どうするの?」
「俺も麻酔には勝てんしな。どうにかせんと」
男達が撃ち放つ麻酔弾を掴んで投げ捨てるが、追手ばかりを気にしていたせいもあり、和真は遠距離からの攻撃を眼中に入れていなかった。
そして音もなく飛来し、ぷすりと刺さる感触。見れば右腕に麻酔弾が命中している。
「…やべ」
「どうしたの?撃たれた?」
「右をやられた。…俺は良い、逃げろ…」
「でもそんなこと言われたら、余計逃げにくいじゃない」
「いいから…クソ…」
近付いてくる複数の足音。和真の意識は朦朧としていき、そして途切れるのだった。
目を覚ますと、そこは和真が意識を失った大学構内ではなく、どこかの建物の入り口だった。
例えるならバイオハザードで出てきそうな洋館とでもいうべきか。
そこそこ豪華そうな造りのドアで、何か文字が書かれた紙が挟まっている。
手にとって広げてみると。
「探…せ?桜木をってことか?」
彼女の姿は見当たらないが、先程の男達に捕まった可能性は捨てきれない。となれば探し出すしかあるまい。
この建物がどこにある、何の建物なのか分からない。それでも、探せというのならやるしかない。
扉を開き、和真は体を中に滑り込ませる。
しかし外観に反し、中は異様なまでな静けさが支配していた。
「いや、文化祭の何か出しもんだろ、たぶん」
そう言い聞かせて進むが、しかしこれほどのものを文化祭の出し物と考えるには無理がある。恐らく本物の建物を使っているのだろう。
だが本物にしろ偽物にしろ。桜木を誘拐し、こちらが建物内に踏み込んでおきながら、何も敵が姿を見せないというのもおかしなものだ。ただただ静かな空間が続く。
奥へ進むと、重厚な扉が1つあり、その向こうから何やら声が聞こえてくる。
「ここか…」
ゆっくりと扉を押し開けると、そこはトーナメント会場のようでもあると同時に、何かの競売会場のようでもあった。様々な人が中心の空間を囲むような形で座り、異様なまでに盛り上がっている。
そしてその中心には。
「桜木…!」
気を失った桜木レナが倒れていた。駆け寄って確かめると、どうやら外傷はないらしい。
すぐにも肩を貸し脱出を図ろうとすると、和真が通ってきた通路に電磁柵が起動し、行く手を阻む。
「折角来てくれた客人をもてなさずに帰す真似はせんよ」
そう言って現れたのは、やや古めかしい衣装に身を包み、杖をついた老人だった。
「アンタ、昼間にウチに来た…」
「覚えていてくれて何よりだよ」
「あんな怪しい格好したのはアンタくらいだ。そのヒゲもな。それよりここはどこだ?あの怪しい黒服の奴らは?なぜ桜木を?!」
「一度に聞くな、少年。黒服の男達は私が差し向けた部下だ。雰囲気が出るだろう?」
「ここがどこなのか。なぜ桜木を誘拐したのか、答えてないぞ」
「ここがどこなのかは答えんよ。全て終われば分かる」
「桜木を誘拐した理由は?なぜ俺だけを残した?」
「彼女が適任だったのだよ、私のプロジェクトに。そして君という存在もまた、使える存在だった」
「何をするつもりだ?」
「ウォッチャーを宿していた彼女は、人間としては異質。森羅万象を見通すほどの力を持つというその力を有していた彼女は、力を失いこそすれ、その器は私達の中では重宝されるのだ」
「人身売買でも、するつもりか?」
「君のような勘の良いガキは嫌いだよ。しかし来てもらって追い返すのも無作法だ」
老人がパチンと指を鳴らすと、赤い魔法陣が突如として現れ、そこから炎を纏った女性が現れた。
「クー子…さん?」
「…久しぶり」
「久しぶりで済むの?これは」
「…手加減はしない。私も仕事だから」
クー子はそう言い、炎を自身と和真を包むように展開していく。
「クソ、桜木ッ!」
遠くなる彼女の姿はやがて、炎に包まれて見えなくなっていった。
どうも、日常編で日常の話が書けません。
頑張りますけど。
何しよう。
本でも読もうか。
ぼちぼち書きます。
じゃ、またねー