仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? 作:神浄刀矢
クトゥグア・八坂クー子と、八坂和真は炎の中で対峙する。
この炎はライターやマッチなどの外的要因ではなく、クー子自身の身体から放たれている炎。
やがて炎はひときわ激しく燃え上がると、荒涼としつつも、周囲を炎に囲まれた赤土色の空間へと変化する。
「ここは?」
「…不連続時空間、邪神フィールド。フォームチェンジした邪神のみが使える、戦闘用空間」
「こんなことできたんだ…」
「…私も日々強くなってるから。ニャル子には負けない」
「それは構わないけど。1つ、聞きたい」
「…何?」
「なぜクー子さんがここに?」
「…臨時のバイト。決して新作ゲームとハードを買うためのお金が足りなくなったとかではないから、信じてほしい」
「ああ、なるほど。で、俺を倒すバイトってこと?」
「…蘇生はする。背に腹は変えられない」
「ならこっちも、さっさとこんなフィールドから出たいとこだよ」
拳を構えようとする和真に対し、今度はクー子から問うてきた。
「…和真は、あの少女、桜木レナのことをどう思ってるの?」
「どうって…仲間だよ。映像研究サークルの仲間だし」
「…それだけ?私にはそうは見えないけれど」
「何が言いたいんだ?俺が、その、桜木のことを、好きだとでも?!」
「…そこまで言ってないけど。少なからず、想ってる。違う?」
「うるさい!俺の問題だろ!いい加減にしてくれ!」
半ばヤケになりながらも、和真はフィールドを蹴ってクー子に迫る。しかしながらクー子も応戦、空中機動砲台(正式名称を忘れた)を10以上展開し、ビームをこちらへ撃ち放つ。ビームを躱しながら、タイミングを見計らい、和真は跳躍して空中機動砲台を蹴り砕く。
「まずは1…か」
クー子本人もそうだが、空中砲台もちょこまかと動き回るのである。
そのせいで近付いて蹴ることができたと思っても、破壊できたのはアレだけ。
クー子は続ける。
「…でも彼女をこのまま見殺しにはしたくないんでしょ?」
「そりゃな。でも変かもしれないけど、その、彼女と話してると、どこか落ち着くんだ」
「…それで?」
「彼女には死んでほしくない。生きていて欲しい」
「…ならどうするの?」
「答えは1つ、だと思う。クー子さん。アンタを倒して、このフィールドから脱出する。そして桜木を助ける」
「…分かった」
どうやらフルチャージで撃つらしい。クー子は残った空中機動砲台の照準を全て和真に定める。エネルギーが収束し、放たれる膨大な黄昏色の奔流。
避けることはできないだろうと判断し、和真は敢えてビームの中へと突っ込むことに。
「こんちくしょうッッ!」
身体が焼けるのを感じながらも、空中機動砲台の放つビームの中へと飛び込んでいく。
母はバールでこれを打ち返したらしいが、今の和真にそんなものはない。己が肉体を信じることだけが、勝利への道である。
そしてようやくクー子の元へと辿り着いて。
「捉えたッ…」
和真の手がクー子を掴み、問答無用で投げ飛ばす。荒涼としたフィールドに転がるも、すぐさま起き上がり空中機動砲台を呼び戻すクー子。
「…やるじゃない」
しかし僅かに目を離した隙に空中機動砲台はほとんど砕かれ、彼女の元に戻ってきたのは1基のみ。
「空中機動砲台だかなんか、使うか?遠距離から撃つなんざ卑怯だろ、クー子さん」
「…じゃあ乙女の顔を殴る?」
「邪神フィールドを解除してくれれば、穏便に済む」
「…仕事だから手は抜かない」
「知ってたよ。俺も桜木のために、全力でやる」
例え八坂クー子が身内であっても、桜木レナの救出を妨げるのなら、和真はやる。桜木レナ、彼女には死んで欲しくないし、生きてまた会いたい。
それに何より。
(人身売買は許さねえぞ、クソジジイ)
赤土色の荒野で、再度生ける炎と少年は向かい合う。
生ける炎であり邪神そのものである八坂クー子と、ニャルラトホテプと真尋のハーフである八坂和真。
不利だとか、有利だとか、レベルの差がどうとか、そんなものは一切合切関係ない。
この世界にレベリングなどありはしないが。
そして仮面ライダーの力も、今は。
残されたのは自分の道をただひたすらに歩むことだけであり、立ちはだかる敵は己が手で倒すしかない。
「アンタは母さんに説教して貰わないといけないしな」
「…それは、悪くないかも」
「なんで頰赤らめるんだよ。相変わらずマゾなこって…けど俺はアンタを超えて、桜木のところへ戻る!」
その言葉を合図に、炎で生成された槍や剣が飛来してくる。
空中機動砲台だけでなく、戦い方も前と変化しているような気がする。
ビーム兵器は正面から突っ込んでもなんとかなったが、槍や剣は刺さると火傷だけでなく、穴が空く恐れがある。それに今穴が空いてしまうと、何も知らない仲間に心配されかねないため、気を付けねば。
「これは…ッ!」
正面から放たれるだけだった炎の槍と剣は、突如として方向を変え、真上や背後からも和真を襲い始める。
転がってなんとか回避するものの。
「チッ、遠くなっちまった…」
炎の槍と剣は、確実に和真に狙いを定めている。
怪我など気にしていられない。最早穴が空こうが、五臓六腑を焼き尽くされようが、ここから出る。
和真が地を蹴ると同時、放たれる炎の槍と剣。
「ぐぅ…ッ…あ、づ…」
右腕と左足、そして左腹部を貫く炎の槍。されど膝をつく事は、彼にとって許されることではない。
身体が動くなら、やれる。そう言い聞かせる。
ビー・パワー・ハードボイルドだ。
内容は忘れたが、確か筋肉モリモリマッチョマンの変態がタンクトップで銃を持ってるポスターだった気がする。
日本でのタイトルは『ゴリラ』だったろうか。
「まだ…まだだ」
立ち上がろうとする和真の左腕、右足に立て続けに炎の剣が刺さる。
それでも動ける。
脳味噌と心臓があれば、なんとかなる。
「…もう死んでしまうわ」
「…俺は、死にはしない。死にそうって言われたことは…あるさ。でも、『生きる』って意志がありゃ…死なねえもんよ」
生ける炎が全身を焼いていくのを感じるが、それでも。
「今度こそ!」
荒野を踏み砕き、固く握りしめた拳をクー子の顔面に向けて放…たなかった。数ミリほどのところで止めていた。寸止めである。
「動かないのか…」
「…あなたに私は殴れない。私もあなたを殺すのは忍びない」
「今更…言うか?そんなこと」
「…フィールドは消す。それでいい?」
「金は、どうするんだ?」
「…奪っても大丈夫でしょ」
「そんなんだったね、ウチのアダムスファミリー」
クー子がパチンと指を鳴らすと、邪神フィールドが徐々に薄くなって消えていく。
「…後は頑張って」
「ああ」
魔法陣と共にクー子の姿も消える。恐らく報酬をぶん取りに行くのだろうが、ウチの親世代はそんなことを平気でしていたらしい。
親父はまぁ止められなかったらしい。
やがて和真だけが、あの空間へと帰還する。
さして状況は変わっていないようでなによりである。
「帰って…来たぞ」
「えっ、八坂くん?ちょっと、ここどこなの?知らない人沢山いるし、あの人私のこと器とか言うのだけれど。ていうかその傷何?!」
「少々説明が面倒なんだ、もう少し待ってくれ」
「ふん、クトゥグアは負けたのか。構わん、これもシナリオの内だ」
「へえ、余程余裕あるんだな」
「以前はダメだったが、今回のシナリオは完璧だ。4DXでも上映できるぞ」
「何言ってんだ?というか俺はアンタを許すつもりはないぞ、シナリオがどうであろうと」
「ほう?」
「人身売買なんて許されねえんだよ!この野郎!仮にアンタの中じゃ常識だったとしても、俺は許さねえ!」
「勇ましいじゃないか。だが生憎とこちらも商売なのでね、売る方も買う方もWINWINで行かねばならん。下手に邪魔されるわけにはいかんのだよ」
「じゃあなんだ、俺は帰れと?」
「まさか。彼女が売られるところでも見ていくと良い」
「…八坂くん、なんかもう逃げられないっぽいし…警備の人っぽいの来てるから」
彼女は救えない、それがシナリオだとでもいうのか。商売の面で見れば万々歳かもしれないが、和真からすれば最悪以外の何でもない。
警備らしき人物が和真を掴もうと手を伸ばす。
しかしその手は触れることなく、警備の身体は吹っ飛んでいた。
「最後まで諦めず、不可能を可能にする!それが人間ってモンだろ!逃げるぞ桜木!」
警備を殴り倒し、桜木を抱きかかえて和真は走り出す。
ドアを蹴り開け、壁をぶち壊し、ただ真っ直ぐに外を目指す。
そして窓を見つけて蹴り破り、2人は外へと身を躍らせた。
なぜか脱出した直後に背後で爆発が起きたのだが、まぁダイナマイトでもあったのだろう。
「シナリオ通り、とは微妙にいかんか」
「アンタは20年以上前に懲りたものだと思ってましたよ。まさか息子達を相手にするなんて」
「ただあの時は失敗した。せめて映像の中だけはと思ったのだが」
「それでこんな大掛かりなセットまで用意して?ホントやってやれませんよ、こっちは。クー子はそっちに寝返るし」
「金が欲しいというから組んだまで。最も、有り金を全て取られたがな。もう終わったも同然」
「でしょうね。連行しますよ。ただ今後、彼には手を出さない方が良いと忠告しておきますよ」
「ほう?」
「邪神人間問わず、人は好きな人の為なら、限界を超えますから」
あい、どーも。
クソだるおじさんです。おじさんでもないけど。
従姉の娘、従姉姪とでもいうのかな。とは結構離れてるからね、20歳くらい離れてるのかな。
たぶんあの子が成長する頃には、おっさんだよこっちは。
とかおじさんぽい事を言いつつ。
遅れましたが最新話。
いい加減のんびりとした話書けよ。
毎回ファイトしてんじゃん。
つーわけでぼちぼち。
じゃ、またねー