昼休みの最中だというのに異様な空気に包まれている。
川神学園学長である
川神鉄心……川神学園の学長。現在では人材育成に尽力。普段は
「まさか彼を呼んだだけでこんなことになるとはのう(軽はずみで彼を動かすのは間違いであったかのう)」
「貴様が原因だったのだな、鉄心」
ヒュームは鉄心を睨みながら言った。彼の行動によって今の現状がある。
「こうなっては仕方ありません」
クラウディオはヒュームを諌めて川神学園の門の方を見ていた。
「皇さんなら大丈夫だと思うぞ」
「皇様なら切り抜けられるでしょう(アイツがそんな簡単にくたばるかよ)」
「百代とあずみの言う通りです、彼なら大丈夫だと判断します」
百代、あずみ、マルギッテの三人は腕を組みながらクラウディオと同じで学園の門の付近を見ていた。
「御三方モ、お忘れですカ? 彼がどのような存在カ?」
鉄心、ヒューム、クラウディオの三人に話しかけたのは、川神学園の体育教師を務める。ルー・リーという人物だ。
ルー・リー……常にジャージなのが特徴だ。体育教師も務めながら川神院の拳法師範代でもあり、指導スタイルは熱血である。正義感あふれる良識人で、生徒の面倒もを見つつ鉄心のサポートもこなす。武道家として天賦の才に恵まれてはいないものの、血のにじむような努力と根性で"強さの壁"を乗り越えた秀才。
「ふっ、そうだな」
「そうじゃの」
「そうですな」
三人とも何かを悟り頷いた。
「それにしても皇さんが近づいてくるのが分かるが……」
門の付近を見ながら言う百代はすでに異変に気づいている。百代だけではない、この場にいる全員は感付いている。
「空気が重くなっている」
マルギッテが言った言葉は本当だ。空気が重く、自分達に重くのしかかって来ているのだ。
そして――
彼の姿が見えた瞬間に途方も無い圧力が襲う。
『――くゥッ』
押し潰されそうに大圧力、骨まで砕けそうになる存在感、まるで重力が自分達の周りだけ百倍になっているとしか思えない。身動きもとれずに地に両膝を着いて屈服させられる。
この場にいる全員が彼を直視し、彼の存在感を認識した。
自分達から見て彼が歩くだけ地面が
「あ、ぁ……」
誰の声か分からないが呼吸をするのも忘れてしまう存在が目の前にいるのだ。その彼が一歩一歩近づいてくる。
金髪と造形上なんの欠点も見つけられない、切れ長で、涼やかで、黄金瞳を持つ。
「――失礼、舐められないように少々威嚇した」
その言葉と同時にこの重苦しい重圧が嘘のように消えさり解放された。
目の前にいる人物がさっきまでの重圧を放っていた人物とは思えない。今では満面の笑みで
鉄心達を見て、嬉しそうに話してくる。
「久しぶりですね皆さん、お元気そうで何よりです」
笑みをたやさずに鉄心達に話しかける彼は先程のことなどなかったようにしている。胸に手を当て頭を下げる。
「うむ、ご老体にはちょっとキツいもんがあるのじゃがな(まだ皇くんは成長しとるということか)」
鉄心は自分の頬に垂れてきた汗を手で拭い話す。
「相変わらず凄いプレッシャーだ、皇様(まさか俺も膝をついてしまうとはな、去年とは比べものにならんな)」
ヒュームも執事服のネクタイを結び直し、冷静を保とうとする。
「これはこれは、皇様もお元気そうで何よりです(私達年配組に膝を着かせるとは……)」
クラウディオは久しぶり会った皇に驚愕した。
「お怪我はございませんか、皇様(あたいが本能的に膝を着いちまうなんてな、こりゃダメだ)」
皇の前で膝を着いて心配するあずみは内心で悟る。この人には逆らえないと。あずみ自身なんで自分が膝を着いているのかを分かっていない。
「お久しぶりですね、あずみさん。今まで英雄を支えてくれてありがとうございます。これからも宜しくお願いしますね。(猫を被らなくてもいいのに)」
皇も彼女が何故自分には本当の性格を出してくれてないか分からなかった。英雄の前では純真なメイドを演じているのに、他の人の前では黒い本性を出しているのを知っているのにも関わらず。
「お、お久しぶりです、九鬼皇(先程の彼は彼でなかった。でも今の彼は本物だ。彼のことを見ると心臓が早くなる……これは)」
皇の顔を直視せず話しかけたのはマルギッテだった。少し横を向きながら、ちょくちょく皇の顔を見る彼女はあまりにも不自然すぎる。
「マルギッテさんも見ない内にまた魅力的になって。どうです、今度二人だけで食事でも?」
マルギッテに言葉をかけられて皇は彼女に近づいて正面に立つ。マルギッテは彼が目の前に立ってきたので、ビクッと反応してしまい、真正面にいる彼のことを見てしまった。
満面の笑みでマルギッテのことを見ていた皇はマルギッテが、やっと自分のことを見てくれたので喜び、勢いで食事に誘った。
「あ、あ、あ……宜しくお願いします」
皇の顔を見た瞬間に頭が真っ白になってしまい、言葉が思いつかずにそのまま了承してしまった。その状態のまま石化してしまったマルギッテを見つつ視線を彼女の横に移した。
「噂は海外まで届いているよ、百代。お兄さん的には妹のような存在が頑張っているのは嬉しいよ」
「ありがとうございます、皇さん(妹か……)」
百代のことを見つけると頭に手を乗せて撫で始める皇。百代も別に嫌がることなく受け入れていた。だが、少しだけ寂しそうな表情を浮かべていたのに皇は気付く。
「妹というより一人の女性と見た方がいいですかね……」
「……へっ!? い、いま、何て言いました?」
皇はわざとらしく自分と百代に聞こえるぐらいの声で喋ったのだ。だが百代はその一瞬を聞き逃してしまう。というか思考が追いていなかったようだ。
「私を倒したら教えてあげますよ」
「よしッ、今すぐ勝負しましょう!」
百代は聞こえていなかったが直感的に感じ取った。「絶対に自分に良い事だと」そう感じ取り、闘気を纏い、拳を皇に向けて闘志向き出しで挑もうとする。
「貴様が挑むのは百年早いぞ、小娘」
「やはり貴方が立ちはだかるのですね、ナルバレックさん」
彼らの横から割り込んできたのは一人のメイド。ナルバレックは黒鍵を構え、刃を百代に向ける。
「ほらほら、二人ともやめて下さい。どれだけ成長したか私も見たいですから、また今度にして下さい」
二人の間に入り仲介する皇。二人も彼がいうならという理由で闘気と黒鍵を収めた。
「鉄心さん、このまま職員室で挨拶したいのですが、ちょっと他の従者の皆にお礼が言いたいのでいいですか?」
「うむ、行っておいで、百代達も教室に帰りなさい」
軽く頭を下げて門の外へ出て行く皇の後を林沖、シオンが付いて行った。百代達も皇と話せたのが嬉しかったのか満足気に教室に戻った。
百代やマルギッテは見るからに嬉しそうにしているのが分かる。鼻歌を歌っているのだから。あずみは「何故だ何故だ何故だ」とブツブツ呟いている。
~ 年長者組 Side ~
百代達が教室に帰り、皇も外へ行ってしまったので残っているのは鉄心、ヒューム、クラウディオ、ルー、ナルバレックである。
「私が残った理由は報告のためだ」
腕を組み、話し始めるナルバレックに対して他の面々も真剣な表情で聞く。
「お前が残るということは相当重要なのだろう」
「あぁ、私だってこんな連中と居たくない」
お互い睨み合いながら言葉を交わすナルバレックとヒューム。
「まぁいい、率直に言うぞ。番外組が増え、元々居る、レディリー=タングルロード、ユークリウッド・ヘルサイズ、メルトリリス、パッションリップの他にだ。アルクェイド・ブリュンスタッド、安心院なじみ、
予想外の言葉の数々に驚きを隠せずにいる。ナルバレック以外の全員が目を見開き、ありえないという表情を浮かべている。彼女の口から出てきた名前はどれもこれも世界の表の人間が知る者ではないものだ。裏の世界を知っている者なら誰もが知っている者達であった。
「この全員を打倒したのは七割強は皇様だ。あとは私やシングルナンバーズ、ラストナンバーズと懲罰部隊の美哉でやり遂げた。例外もいるがな(皇様の実力は私ですら軽く凌駕している、美哉の方は私と拮抗しているがな)」
ナルバレックの次の言葉にも絶句する面々を無視し、彼女は話し続ける。
「詳細を知りたいようだから言うが、アルクェイド・ブリュンスタッドは前々から皇様と面識があったようで、皇様の高校生時代には出会っていた事が分かった。彼女から話を聞く限りでは元々皇様といると吸血衝動が再発して血を吸いそうになってしまうので一時期は離れたようだが、欧州に居た皇様と偶然的に出会ってしまって自分を制御できずに暴走して襲い掛かってしまったと言っていた。だが、暴走したアルクェイドでも皇様の敵ではなかったようだ」
「どういうことだ」
ナルバレックの意味深な言葉に疑問を投げかけるヒューム。
「服が汚れた程度で暴走状態のアルクェイドを倒してしまうのだから(私ですら死んでしまうかもしれないのにな)」
「ッ!?(ワシらよりもはるか高みにいるということじゃのう)」
衝撃的すぎる言葉に思考が追いつかなくなってしまう。
「アルクェイドの暴走事件のせいなのか、おかげなのか、黒血の吸血姫『アルトルージュ・ブリュンスタッド』とも関係を築くことになった」
「関係というと?」
「同盟みたいなものだ(だが、アルトはそれだけではないような考えをしていそうだがな)」
クラウディオの言葉にすぐに答えるナルバレック。
「安心院なじみ、八雲紫、第2の精霊『
「
「私が知らぬ間に皇様のベットや隣に居たんだ。まさか感知できないとな」
流石にもう驚くことには慣れてしまったのか、先程よりかは驚きが小さいものの動揺は隠せていない。
「安心院なじみについては『彼には勝てないのが目に見えているから』という理由だ。八雲紫については『協力者でもあり契約者でもある』という理由だ。四糸乃については『安心できるから』という理由だ」
腕を組みながら言った彼女に対して男性陣は絶句が止まらない。裏の世界でも有名な彼女達を知っているからこそ。
「第5の精霊『
もはや言う事はあるまい。
だが、急にナルバレックが表情を強めた。
「問題はキスショットに第3の精霊『
美哉の存在を知っているのは九鬼関係者だけだったので鉄心やルーは分かっていなかったが、相当な実力者であると把握したようだ。
「その後はどうなさったのですか?」
「その後は、弱体化したキスショットを皇様が保護し、傘下に加えている。向こうも了承済みだ。時崎の方も保護したのだが、反抗的だった為に皇様が調教もとい教育をし、傘下に入ることを了承させた。以上だ」
クラウディオに言葉を返す。
ヒュームやクラウディオも小さい頃から皇のことを知っているので成長したのは嬉しいといえば嬉しいのだが、規則外になり過ぎたのではという心配もしている。
鉄心も小さい頃の皇のことを知っており、百代に“武”の心へを教えてくれて、百代に敗北を味合わせてくれたり、心の支えになってくれていたのを嬉しくも思っており、彼が異常になり過ぎたのではないかと心配もしている。
「貴様らが思っていることも、もっともだろう、だが、皇様に限りそんなことはない」
ナルバレックが年長者組に向かって言う。彼女の眼には一点の曇りなく本心を語っているのが分かる。
「皇くんに限ってそんなことはないのは分かっているわい」
「あぁ、あの御方はそんなやわではない」
「はい、彼は私達が認めた存在ですので、そのようなことはないでしょう」
三者共、心配することもあったが彼を知っている身なので、そのようなことはないと理解していた。ただ一瞬だけ思ったことなのだ。
~ 年長者組 SideEnd ~
※名前が分かっている人物だけです。
従者部隊
零位:ナルバレック
1位:バルトメロイ・ローレライ
3位:黒神めだか
5位:???
8位:???
12位:???
14位:???
21位:ミカサ・アッカーマン
31位:斑鳩
34位:詠
56位:???
90位:???
992位:セルベリア・ブレス
997位:大道寺
番外組
1000位:《真祖の姫君》アルクェイド・ブリュンスタッド
1001位:《悪平等》安心院なじみ
1002位:《妖怪の賢者》八雲紫
1006位:《不死に囚われた魔術師》レディリー=タングルロード
1007位:《怪異殺し》キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード
1009位:《第2の精霊》四糸乃
1010位:《第3の精霊》時崎狂三
1012位:《第5の精霊》八舞耶倶矢・八舞夕弦
1013位:《第6の精霊》誘宵美九
1017位:《冥界のネクロマンサー》ユークリウッド・ヘルサイズ
1018位:《サラスヴァティー・メルトアウト》メルトリリス
1019位:《ブリュンヒルデ・ロマンシア》パッションリップ
懲罰部隊
No.01:美哉
次もいっぱいキャラを出していきたいと思います。