スーパーまでは遠くは無く他愛の話をしているとすぐ着いてしまう。
店内は外の気温に合わせてひんやりとした冷房が心地よかった。
「さて、お姉ちゃん今日は何を作るのでありましょうか?」
ビシッと敬礼のポーズを取る。
「今日はね……まだ決めてないや」
照れ笑いをする卯月はカートに店のカゴを上下に乗せる。
「明日から弁当だし、また多く買い込まないといけないからそれでなーんか作ろうかなって思ってて」
「あー、そうかいいなぁ弁当」
「でも美月そのうちこう思うようになるぜ、温かい飯が食いたいってね。特に真冬の時には」
「あー、確かに。私とお兄ちゃん寒いの極端に弱いから真冬のスープは助かるよね」
「うんうん、何度命を助けてくれたことか」
美月の言葉に頷いていると卯月は苦笑いを浮かべながら野菜コーナーで目を光らせながら食材を見つめる。
本気モードきなった卯月は止めることが出来ないため傍らで見守る。
「……こんなもんかな……よし次ぎは魚と精肉コーナーよ」
「「了解」」
カートを俺が持ち変わり卯月は一足先に歩き購入するものを選んでいた。俺の背中では美月が服を掴みながら下を向いていた。
「眩しいか?」
「うん、ちょっとね」
「待ってろ、多分あるかもしれない」
俺は内ポケットを手探りで探すと眼鏡ケースがあった。中にはサングラスが入っていた。
「美月、目閉じて」
「ん、ありがとお兄ちゃん」
直ぐ様サングラスを掛け替えると眩しくなくなったのか、並べられてる精肉や魚を見れるようになった。
その時だった。俺と美月の耳には入りたくない主婦グループの会話が聞こえた。
「まぁまぁ、最近の若者カップルは熱いわね」
「でも顔似てない? 姉妹じゃない」
「ちがうと思うわ、彼女さん見た? あんな肌白いのよ。それに髪色も違うしきっとどこかの国の子よ」
見ると美月の背中にはコンプレックスである銀髪が見えており、本人は肩を震わせ涙をぐっと堪えていた。
俺は美月を胸に抱き寄せて有らぬ事を言った主婦グループを睨み付ける。
「髪色違っても……肌が白くても兄妹だもん……」
「そうだ、美月は俺の可愛い妹だ」
「お兄ちゃん……」
額を胸に当てて美月は泣いた。魚と精肉を多めに持ってきて卯月はカゴにいれる妹の変化に気づく。
「美月、大丈夫。お姉ちゃんとお兄ちゃんがいるからね」
「うん、分かってる。でも嫌なの見た目だけで差別されるのが一番」
美月の涙は止まらず幾たび人の視線を集める。
この常態をおこしたグループはいまだに俺らの事を見ていた。
それに気づいた卯月の目は怒りに満ちていた。
俺らから離れようとしたのを食い止めた。
「やめろ卯月」
だが納得いかないように卯月の口調が強くなった。
「怒れないの? 一言言わないと気が済まないのよ。うちの美月になんて事を……!」
「気持ちは分かるがそんな事して美月が喜ぶか?」
卯月は袖を見ると美月が人差し指と親指を挟んでいた。
いつもの冷房な卯月なら気づくが熱くなり全く気付いていなかった。
「喧嘩や言い争いは絶対ダメ」
争い事の嫌いな美月は俺と卯月が口論すると泣いて止めに掛かるほど嫌いな物だった。
「ごめんね、美月の事知ってたのに熱くなっちゃって」
「いいの、それより早く買い物済ませよ。お姉ちゃんの料理早く食べたい」
「任せてとびっきりに美味しいの作ってあげるからね」
「うん!」
卯月は美月の手を掴んで先へ進む。
その横顔は泣き顔ではなく笑顔が広がっていた。
「お兄ちゃん? 早く行こー!」
「あぁ、今行く!」
笑顔になった妹二人の背中を追い掛けて買い物の続きをした。
そのときふと思い出した。
それは幼い頃親から聞かされた話だった。
髪色や肌の色が極端に違っても兄妹だったために違和感は全く無かったが、あの色が病気によって作られた知った時はもの凄い衝撃だったな。