失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー IF 作:九十九夜
相も変わらず騒音にまみれながら趣味に没頭していたウルレシュテムの手がぴたりと止まる。
足元に目を遣れば、黒と白の体毛に赤いマントのような鬣のようなものを生やした猫のような、ライオンの子供のような大きさの生物が足に纏わりつき、甘えたように鳴いている。
「ん?ああ、ごめん。呼ばれてるんだったね。」
不思議な生物を一撫でしてから、果物やら何やら判別のできない謎の肉だったりを混ぜて餌らしきものを作ると包みに詰めて縮小し、肩に担いだ。
「それじゃ、
◇ ◆ ◇
突然だが、キシュには帰らずの森といわれる森がある。この名前の由来は安直に入ったらもう二度と出てこられない人喰いの森だという噂からだ。
入らなければいいだけではと言われればそうなのだが、いかんせんそうもいかない。
なんせこの森、否森といっても差し支えないほどの緑を保有している
そんな恐ろしい森に入っていく少女が一人。
彼女は何の躊躇いもなくたった一人で(後ろから猫のような動物が一匹ついてきているが)森へ入って行った。
どさりと担いでいた荷を下ろした少女はついてきていた猫(のような何か)にGOサインを出すとそれは一目散に走っていった。
暫くして地鳴りのような足音が響いてくる。
まず、最初に見えたのは周りの木々どころか王宮の支柱より太くたくましい黒白の毛皮に包まれた前足。
そのままメキメキという音とともに木を踏みつぶして虎・・・どちらかといえば獅子を連想させる巨体が現れた。
低く唸り声を上げるそれは、ここではない何処かの世界で帝釈天の武器『ヴァジュラ』の名を冠するアラガミそのものであった。
「久しぶり。また大きくなったね君も・・・で?新しい子は?」
その言葉にふいっと自身の斜め後方へと首を向けたヴァジュラにああ、そこねと少女は笑顔を向ける。
瞬間、何かが少女にとびかかってくる。少女はにこにこと笑ったままそれを自然な動作で張り飛ばした。
吹き飛んでいくそれ・・・さっきまで少女と相対していたおそらく成体であろうものとは二回りほど小さいヴァジュラを見て「いやー今回の子も元気だねえ」などとのんきに少女は言った。
その様子を見ていた成体のヴァジュラが謝罪するかのように首を垂れる。実際謝罪しているのだろう。
「ああ、別に気にしてないよ。それより、
その問いにまた唸るような鳴き声でヴァジュラは答える。
その報告を黙って聞いていた少女はふうんと妙に納得した風に頷いて見せた。
「慎重に慎重を重ねて結界まで張って移したんだからすぐにはばれないと思ってたんだけど・・・さすがにここまで何もないと逆になんかありそうだよね・・・。」
考え込む少女の元にヴァジュラがどこからともなく一つの毛玉・・・ならぬ一匹の猫がいた。
美しい緑色の毛色の長毛種だ。ヴーヴー唸って警戒しているところを見るにここのコミュニティにいたわけではなく余所からやってきたのだろう。美人ならぬ美猫である。
「・・・あ、そう。君、結界の術式に引っかかっちゃったんだ。」
猫から湧き出ている力からおそらくこの猫(元人?)が神からの抑止だったのかな・・・とか思いつつ、とりあえず新しい子にあげるはずだった離乳食を与えてみる。元が人間だったりしたらおそらく食べてくれないだろうがいまはこれくらいしか手持ちがないためダメモトだ。
猫はその袋いっぱいの離乳食に鼻を近づけふんふんとにおいを嗅いだのち・・・食べた。
いや、食べるんかイイイイとか思わずウルレシュテムが心の中で突っ込むが肝心の猫は食べるのに夢中で気づいていない。
結局満腹になったらしき猫は最初の警戒は何処へやら、猫が指示した土地につく頃には行儀よくにゃあと鳴いて首を垂れ走っていった。
微笑まし気にそれを見送ったウルレシュテムはさてとと浮上の準備にはいる・・・はいろうとしたのだが、そこに現れた、ヴァジュラとはまた違った白い毛皮の女神像のような顔面のアラガミ・・・プリティヴィマータの姿に目を見開いた。
「何食べちゃってんのおおおお君イイイイ。」
モッチャモッチャとプリティヴィマータは何かを咀嚼している・・・いや、正確にはその一部が口からはみ出しているため何かではない、はみ出たそれは・・・人の腕だった。見ない腕輪などの装飾品から余所の国の者なのだろうと思いつつこのままでは国際問題になるのではないんだろうかと考え必死に咀嚼を止めようと試みる。
「そんなの食べちゃダメだっ。ペッしなさい。ペッ。」
はもっとはみ出た腕を口に含んだところでやっとプリティヴィマータがペッと何かを吐き出した。
草の上に転がったそれは、金に輝くヘルム(中身なし)だった。
「なんでだああああ。」
さっきまで腕あったよねえ?!なんでそれ出さないのっと問い詰めるも既に飲み込んでしまっているため後の祭りであった。
困り顔のプリティヴィマータがまた何かを吐き出すが、今度はグシャグシャの鎧だったものが出てきた。
そこでウルレシュテムはふとあれ?これどこかで・・・と心当たりを思い出していく。
「・・・これ、うるく。の・・・。」
自分の時とはデザインがだいぶ変わってしまっているが、最近王宮に来ていた兵の姿を思い出しウルクの兵がこんなデザインの鎧を着ていたことを思い出した。
無言でそれを回収し、異空間に収納する。
「・・・まあ、今更何言ったって戻れっこないしね。」
一瞬郷愁じみた感情が胸中に過るが既に自分の次に世代が移り、自分の居場所などあそこにありはしないのだと言い聞かせる。
本音をいえば帰りたい。が、帰るとなるとこの童女のようななりでも一応元王。かつ、神からも厄介者扱いされているときた。下手すれば神人両方から追われる身になってしまう。それは本意ではなかった。
「さて、嫌がらせの続きしますか。」
そう言って少女は帰らずの森の入った籠を今度こそ動かし始める。
進行方向は神々の森。現在少女が己の作り出した
余談ですがこの件がきっかけで鎖は猫缶が好きになったりならなかったり・・・。
はい、こっち書いてる暇あるなら向こうも進めろや、という話なわけですが・・・。