失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー IF 作:九十九夜
シュメール神話の中には強力な権能持ちの神が多数存在するがその中でもエンリルという男神がいる。
そう、皆も知っての通り
後の妻であるニンリルにしたことが原因で神々の主導者なのに冥界逝きになったり、繁栄する人間たちを見て「コレ増え過ぎじゃね?」と言って洪水起こしたりした
彼は現在、己が娘のようにかわいがっている少女の両肩を掴んで泣きながらガックンガックン揺さぶっていた。
「ねええええホント考え直してくれないウルレシュテム。ね、いい子だからっ。」
「ほら、こないだいいなっていってたアンズー1頭あげるから」と必死に訴えるもその交換条件に「ああ、いいです。もう自分今は鳥より猫が回ってきてるんで。」とウルレシュテムは素っ気無く答えた。
そんな彼女の腕の中で丸まる猫が一匹。この猫が現在の親子喧嘩(笑)の発端だったりする。
この黄金の猫を見た時エンリルの中に渦巻いたのはあの天の楔が猫とかww受けるwwなどという嘲りよりも先にうちの娘が誑かされた!?という焦燥だった。
近頃は使いにやった鎖のおかげもあってか幾分穏やかになっているようだがこの猫の今までの所業を顧みると貞操含め娘にとって不安要素しかない。
故にいったのだ「元居た場所に返してきなさい。」と。
直後言われた「嫌です。」と。
エンリルは泣いた。号泣だった。
その様子を見ていた猫・・・ギルガメッシュとエンリルの目が合う。と、ギルガメッシュはこれでもかというほど馬鹿にした表情をして「はっ」と鼻で笑って見せる。エンリルの中で何かがブチリと切れた。
「テメエエエええこのクソ猫おおっ。表に出ろっ今すぐお前の××××を切って潰してミンチにして不能にしてやるウウウうっ」
そして切れたエンリルに恐れをなしたかのように少女の腕を飛び出した後少女の肩に飛び乗りその体を少女の後ろに隠して怯えた声を出した。
「なう(怖いぞご主人。我は何もしていないのにあの爺我を怒りおった)」
「怯えてるじゃないですか。人間じゃないんだから、そんなに怒らなくとも・・・。」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あっ」
そうじゃない。そうじゃないんだっ。
悲しいかな父親の心を、そして箱入りだったが故に世間の事情を娘は知らなかった。
「にゃー。」
ギルガメッシュの満足そうな鳴き声が室内に響いた。
◇ ◆ ◇
ギルガメッシュは現在滅茶苦茶幸せである。
人間の時は当たり前であったのだが冷たくとも広い風呂にのびのびと入り丁寧に全身を洗ってもらい、用意された(猫用ではあるが)おいしい食事を食べ、上質な羽毛を集めた特製の寝台で眠りにつく。
ちょっとメタいことを言えばこれでゲームやパソコン、ネット環境さえあれば現代のニートと呼ばれる人種にとっては万々歳の生活である。と思うくらい快適であった。
「にゃ・・・(もうこのままでよいな・・・。)」
ついでにその世話をしてくれるのは己の飼い主であるギルガメッシュの好みに割と近い少女である。
瞳の色が赤でなく碧眼なら完璧なのに・・・いや、それ以前に我今猫だからことに及べんなと思いつつまあいいかと自堕落に、人類初のニート(というよりヒモ)への道を邁進しかけていた。
「なーう。(日向ぼっこきもちいーねー)」
朋友もこうして気に入っているようだし・・・もうここで猫生を全うするというのがせいかいなのかもしれない。
と思っていると嗅いだことのないにおいが、正確には見覚えのない人間の手がギルガメッシュを持ち上げた。
「にゃ゛あああああああっ(何をするかっこの下郎っ)」
「あ、こら。暴れるな。
こうしてギルガメッシュは部屋に無断で侵入した重臣の手により捕らえられ、王への献上品として着飾らされた。
勿論いまだ眠りこけているエルキドゥも一緒に。
「ふう、これで王への言い訳が立つな。」
「ああ、献上品の数が足りないと聞いたときは背筋が凍ったぞ。」
重臣たちは笑いあう。その間にその手の者らしき女官がギルガメッシュとエルキドゥを神事用の湯を張った湯殿へと連れて行った。そして、ここで予想だにしない出来事が起きる。
なんと、湯殿に放り投げられた二人の身体が突如として人に戻ったのだ。
コレには担当していた女官もびっくり仰天。泡を噴いて倒れた。
それって顔を見合わせた後二人揃ってニヤリと笑うと「オレのターン!!」と言わんばかりに走り出した。
全裸で。
この騒動は後にキシュに伝わる七不思議のひとつ。
「夜でもないのに全裸で追いかけてくる輝ける不審者」
として末永く語られることとなる。
◇ ◆ ◇
一方そのころウルレシュテムはニンリルの神殿に呼ばれていた。
「いい、男はみんな狼よ。羊の振りをして狼をうまく操って、搾り取れるだけ搾り取りなさい。この時代、清純派とか清楚とか箱入りとか
「はい。お母様。」
「それでも所かまわず誘ってくるような奴だったら・・・そうねえ。イチモツが見えた時に鼻で笑って粗品ですねって言ってやりなさい。きっとショックで暫く立ち直れないから。」
突然始まったニンリルの護身術講座に必死でついていこうとするウルレシュテムに美しい笑顔を向けているがその雰囲気やらとは全くかみ合わない何とも俗っぽい講座であった。
「それでもだめならこれを鳴らしなさい。お母さんもお父さんも駆けつけるから。」
そう言ってウルレシュテムに手渡されたのは防犯ブザーだった。
「え、や、あの。お母様?」
「ああ、急にごめんなさいね。でも近々貴方に起こるであろう出来事に私もエンリルもいてもたってもいられなくて・・・今日はその贈り物をしようかと思って。はい。こっちはわたし。そしてこっちはエンリルからよ。」
渡されたのは金色のリンゴのような果実と巨大な箱だった。
「わたしからは食した者に内なる強さを与える暖かな果実をそして、こっちは・・・開けてごらんなさい。」
言われるがままにウルレシュテムが箱を開けると、入っていたのは黄金に白と黒の布とエメラルド、ラピスラズリで装飾された巨大な鏡と半透明の羽衣が入っていた。
「エンリルから貴女へ・・・いいえ、もともとあなたが担うはずのものだったのだから貴方に返すというほうが正しいのかしら。名前はまだありませんが貴女の武器です。使い方は自ずとわかるでしょう。・・・強く生きなさい。」
「ですが、お母様。私は・・・」
何か言いかけて口をつぐむウルレシュテムにニンリルは優しい笑顔を返し、続けた。
「いいえ。
その言葉を聞いて、ウルレシュテムは覚悟を決めたかのように果実を口に含んだ。
ポロリと涙が頬を伝った。
「お、おいしいです。お母様。とっても。」
プレゼントの果実はちょっとだけしょっぱかった。
エンリル「娘にへんな虫がっ逃げろ娘!!孕まされるぞ!!」
ニンリル「おまゆう」