私は、一冊のノートを手に取った。中は何も書いてない。できるだけ無機質だが、おしゃれなやつをわざわざこの街には似合わないようなおしゃれな店から選んできたのだ。
ここには、私がこれからある物語を書くのだ。1日かけて。
夕方からはパーティが開かれることになっている。それに間に合うかはわからないけれど、頑張ってみようと思う。
まずはタイトル。
さて、どうしようか。私は、この物語のタイトルが一番大事かもしれない、と思い始めた。一番書きたいことが伝わるように。これから来る大事な人たちに、自信を持って読んでもらえるように。
ーー私は、あなたに、自信を持って読んでもらいたい。
迷った挙句、ぽんっとある一つの名前が浮かんだ。それにしよう。
ネームペンをとって、キャップをはずす。そして大きく書いた。
「女神再び」と。
これは、彼と彼女たちの物語だ。そして、それを取り巻く人たちの物語。その中に、私もちっぽけだったけどいたと信じたい。きっとみんなの中に、私もいたと信じたい。客観的に、ではなく、中から見ていた一人として、この物語を書きたいから。
栄光への架け橋という歌がある。まさに、この物語は栄光への架け橋だ。ただし、歩んだ道は、決してまっすぐな道じゃない。
でも、かといって、回り道でもなかった、遠回りじゃなかった、と信じたい。
この歩みを、少しでも否定したくない。
とりあえず私が書くのは、始めの夏からの物語。
ーーーまあ、そこに私はいないけどね。
でも、このストーリーの全部が始まった、その瞬間を抜いたら、この物語に意味はない。それに、一番、彼を近くで見て、ずっと活動を共にしてきたのは間違いなく彼女たちなのだから。
一ページ目を開く。ボールペンを出して、書き始めた。
μ's。彼女たちの物語が、始まりの合図だ。
これからは、全部、彼女たちから聞いた話を基にして、私も一つの小説を描くことになる。できるだけ、読んでくれる彼女たちに喜んでもらえるように。みんなに、楽しんでもらえるように。
ーーーー読んでくれるかしら?
考えるまでもない。優しい彼女たちのことだ。きっと読んでくれるだろう。
ふと考える。μ'sというアイドルがいなかったら、一体どうなっていたのだろう。私に、こんな未来は訪れなかった。もちろん彼に、こんな未来は訪れなかった。彼は、どんな人間になっていたのだろうか。それだけじゃない。
たくさんの人に笑顔を与えて、希望を与えて、信頼を与えて、生きる楽しみを与えて。競争を与えて、協力を与えて。
生きてるということを、そのまま楽しんだのが、彼女たち。そのおかげで、みんな頑張ることができたのだし、今もそうだ。
そして、ふと考える。彼がーーー。
篠原浩介という男がいなかったら、一体どうなっていたのだろう。私に、こんな未来は訪れなかった。彼女たちに、こんな未来は訪れなかった。私や、彼女たちはいったいどんな人間になっていただろうか。
彼女たちの迎える結末は、悲劇的だったかもしれない。
彼は、なにかを素直に与える人ではない。捻くれているし、性格も最悪で、思いやりってものもあんまりない。いつも自分の都合で動く。
でも、彼は「見つける」手がかりをくれる。探し物なら、まっすぐにそこにあるとは言わないけれど、今まで探したことのない場所を教えてくれる。そんな彼のおかげで、私も彼女たちも成長してきた。
筆が進む。
この物語は、始まったばかりだ。