打ちひしがれる穂乃果の前に、突然現れた綺羅ツバサさん。果たして何を語るでしょうか。
穂乃果視点です。
「久しぶりね、穂乃果さん。」
そう言った現役のスーパーアイドルのツバサさんは昔とあまりかわらないように思えた。慌てて涙を拭った。
「一体、どうしてこんなところへ?」
「ごめんなさいね。穂乃果さんの家へ伺ったのだけれど、雪穂ちゃんしかいなくって。散歩に出かけてるって聞いて、探してたの。」
「そうだったんですか。ってえ?私に何か用事が?」
A-RISEは今をときめくトップアイドル。つまり芸能人。一般人の私に用があるとは思えなかった。てっきり、たまたまかと思った。
ツバサさんはにっこりと笑って、
「μ's、復活させるんでしょ?」
と言った。
「どうして、それを知っているんですか?」
まだ他の誰にも言っていないはずだった。
いや、もう語ることは多分ないけど。
「篠原浩介。彼のマネジメント力は業界でも神がかってると評判よ。そんな人が、裏で何か動いていると知ったら、誰だって調べたくなるわ。」
「あの人、そんなにすごいんですか?」
「知らないの?最近出て来たSohhiってグループ。あれは彼のマネジメントの力よ。」
その名前。確か新人注目アイドルとして最近よく見る。
「まあ、何だか人付き合いは苦手みたいだけどね。ともかく、彼が絡んでいるなら今回の噂は現実ものだと思って。一度、挨拶したかったの。昔のライバルとしてね。」
でも、それは無理だ。今さっき出した答えだった。
「あーでも、ちょっと、止めようかなーって思ってます。」
できるだけ明るく言ったつもりだった。
「え?どうして。何かあった?」
「いやー、ちょっと色々ありまして。はは、ははは」
私は顔を下に向けて、必死に顔を作った。人にあんなこと言えないから。しばらくツバサさんは黙っていた。
私も顔を上げなかった。時間が流れていく。
突然、すうっと、息を吸う音が聞こえた。
「♪たのしいね
こんなゆめえがおで
喜び歌おうよそれが
はじまりのあいず」
ツバサさんは突然歌い出した。
ぶわっとあの時の記憶が蘇る。
何年前の歌だろう。ああ、10年前だ。
はっきりと、あの景色を思い出した。
「♪いっぽずつ、きみから
いっぽずつ、ぼくから
どこかへ、いきたい、こころのステーップ」
その曲を忘れるはずがなかった。
顔を上げると、笑顔で歌うツバサさんの顔。
染み通ってくる歌声。
「さあ、一緒に。」
ツバサさんは、そう言った。
忘れもしない、SUNNY DAY SONG。
それは、スクールアイドルみんなで作り、歌った曲。ツバサさんとも一緒に歌った曲だった。
「♪受け止めて
あげるここで
さいしょはすこし
ためらっても
受け止める
ばしょがあるって
もっともっとしってほしくなるよ
なるよ!」
私もつられて歌った。
受け止める場所がある。それを知ってほしい。
それは、当時と全く違う意味で、私に向かってくるみたいだった。
受け止める場所?今の私を受け止めてくれる場所…。
「「「「「「「「穂乃果!」」」」」」」」
当時は昼だった。今は夜なのに、まるで太陽の光に当たっているかのように体が熱くなる。
「♪SUNNY DAY SONG
SUNNY DAY SONG
高く飛びあがれ
どんな、壁も、乗り越えられる
気がするよ
SUNNY DAY SONG
SUNNY DAY SONG
口ずさむときは
明日への期待がふくらんでいい気持ちー!」
歌い終わると、ツバサさんはにっこりとして、
「ほら、笑えるじゃない。」
と言った。
私は笑っていた。久しぶりに歌った。下手くそだった。それでも、すごく楽しかった。
「私ね、あのライブが忘れられないの。私達は第1回のラブライブで優勝した。2回目はあなたたちに敗れた。忘れもしないわ、あの悔しさと達成感。
それからも続けて、人気も出た。たくさん、たくさんライブをした。プロになっても同じよ。
それでも、あんなに楽しかったライブは今までにないの。あんなに、みんなを楽しませられたって思えたライブは今までにないの。何度も挑戦した。でも、あの頃のあなたたちすら、私達は超えられていないの。
だから、この歌は宝物。
私達にまだまだ頑張れって言ってくれる曲。」
「そんなことないですよ、今の皆さんはあの頃の私達なんかより、歌も踊りもうまいし、人気もあります。」
「そうじゃない。そんなのじゃないの。私達が手に入れているものは、当時のあなたたちの感覚とは全く違う。
ねえ、穂乃果さん?何があったのかはわからない。すごく大変なんだと思う。
でも、私はあなたたちにもう一度ステージに立ってほしい。あのステージを見せてほしい。私達にとっての、ライバルにまたなってほしい。
あなたは、何度も立ち上がったはずよ。遠いようで、私たちはとても近くから見ていた。
仲間に何が起きても、信頼して、自分の気持ちを訴え続けたはず。」
昔の私なら、どうしただろう。
そうだよ。そうだ。どうして無理だ、なんて思ったんだろう。
まだだよ。みんなにまだ、伝えきれていない。昔の私は、こんなところで諦めなかったはずだ。悩んで、苦しんで、それでも先に進もうとしたはずだ。
「待ってるわ。それじゃあ、また、会いましょ?」
「はい、ありがとうございました!」
そう言って、ツバサさんは帰って行った。
私も走った。体の重さは、いつのまにか消えていた。
大丈夫。まだ、きっと間に合う。まだ、伝えられる。まだ、みんなから聞きたいことがある!
家に戻ると、私はすぐに3人に連絡した。
ツバサさんに会ったこと。言われたこと。それでも、やめたくないこと。
そして、篠原さんにも連絡した。
会って数週間。彼のことを、私は何も知らない。
なのに、彼の言葉を思い出す。
「答えが、ほしい。」
その意味は未だわからないし、聞いてもはぐらかされた。
でも、彼は信じていい。断言していい。
彼の目は、絶対に信頼できる人間の目だ。
そして、最早彼にしか頼れない。
ピロリン♪
篠原さんからのメールだった。
「1ヶ月自分に時間をください。」
そして、篠原さんは動き出す。一歩目で止まった足。
私たちの新しい歩みが、始まろうとしていた。
ライバルは最高の存在だ。
それは、相手の弱みにつけこまず、純粋に高め合おうとする、正しいライバルに限るのだけれど。
ついに天才が動きます。
他のメンバーはどこで何をしているのか。
歌の描写はどんどん入ってきます!好きなので。よければ頭の中で流しながらご覧くださいw