女神再び   作:resot

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第11話 役目

まだ小さかった頃。

親の転勤で引っ越しを繰り返していた私は、一人でいることが得意だった。一人遊びの天才だった。人付き合いが苦手だった。

そんな時に、ふと出会ったのがタロットカード。それは、私が何か決定に迷った時、指針をくれるものになった。

穂乃果ちゃんからきたメール。

私は迷った。それは、マルかバツか、ではない。そんなの、マルに決まっている。

ただ、今すぐ、かそれとも・・・

タロットカードは今ではない、と言っていた。

 

朝起きると私は必ずタロットカードを引く。

 

 

 

 

 

 

 

今日は出社することにした。

手早く身支度を整えて、マンションを出る。

職場から徒歩で15分。我ながら完璧な立地のマンションを選んだと思う。

 

あっという間に会社の中のひんやりとした空気にあてられた。

 

オフィスにはもう何人か人がいた。

 

「おはようございます。」

 

「ああ、東条さん。おはよう。今日は大丈夫なのかい?」

 

「はい、何とか。」

 

もう入社して5年ほどになるだろうか。

仕事にも慣れ、成果をあげることもできてきた。フリーダムが売りのこの会社は、自宅業務もかなりできる。

 

だからこそ、休暇が許されているのもある。

 

席で、パソコンをいじっていると、あっという間に昼を回った。社会人というのは時間が経つのが早すぎる。

 

思えば、高校生の時間はそれに比べて随分長かったように感じる。それが、多分青春って時間なんだろう。

 

その時だった。

ドアが開いて、誰かが入ってきた。

ふと顔を上げて、びっくりした。

 

「こんにちは、あのー東条さん、いらっしゃいますか?」

 

それは、紛れもなく穂乃果ちゃんとことりちゃんであった。

 

「あー!穂乃果ちゃん、あそこ、希ちゃんいたー!」

 

「二人とも、何をしてるん?」

 

「決まってるじゃん、ちょっと話そ?」

 

なるほど、そういうことか。

あのことについて二人は話に来たのね。

 

「あー、えっとね。」

 

「何だ、東條。知り合いか?」

 

「ええ、社長。ごめんなさい。穂乃果ちゃん、ことりちゃん。わるいけど、今仕事してるんよ。」

 

「いいよ、行ってきな。」

 

「え?」

 

「社長さん、いい人ー!」

 

「気にしないでくれ。東條はこの会社にたくさん貢献したしな。こんな美人のお友達が来たら、追い返すわけにもいくまい。」

 

「ちょっとー、照れますよ!」

 

この二人はいつのまにおじさんキラーになったのだろうか。

まあ、何の話かはわかっている。

 

私たちは私の馴染みの、近くの喫茶店に入った。

コーヒーを頼む。二人はなぜかオレンジジュース。子供みたい。笑ってしまった。

 

まもなく飲み物が届く。それまで、私の会社のことについて話していたのに、二人の目が変わった。

 

「希ちゃん、返事くれなかったの、何で?」

 

「随分単刀直入やねえ?」

 

コーヒーをすすりながら、できるだけのんびりとした声で話す。

 

「そう、きっと希ちゃんならわかってくれるんじゃないかなーって思ってたんだけど。」

 

ことりちゃんは言った。

 

穂乃果ちゃんは、ちょっと暗い顔をした。

 

「ねえ、何かあったの?私たち、ほんとにもう一度挑戦してみたい。色んな事情はみんなあると思う。でも、諦めたくないの。

私たちなんか、頼りにならないかもだけど、話くらい聞くよ?」

 

ーーー私は、何もない。私は。

 

「そう、ありがとね。でも、うちは大丈夫。」

 

「それなら、何で・・・」

 

「穂乃果ちゃん、ことりちゃん。うちが高校の時、どうやってメンバーになったか覚えとる?」

 

「えと・・・確か絵里ちゃんが入った後に・・・」

 

「そう。私は最後に加入した。絵里ちをメンバーに入れてから。

そこから色んなことがあった。私は下から支えることしかできない。でもね、それに誇りもあるんよ。私の一番得意で、ずっと守りたい役割なんよ。

二人とも、私はまだやることがある。

その時が来たら、私は必ず戻ってくる。だから、待っててほしい。」

 

やることをやる。それが、今私のすべきこと。

私がμ'sにいるためには、その役割を全うするしかない。

 

「じゃあね、また今度。」

 

出来るだけ素早く立ち上がる。

なんだか、このままだと泣いてしまいそうだった。

 

「待って、希ちゃん!」

 

ことりちゃんに呼び止められた。

 

「嘘じゃ、ないよね?ちゃんと帰ってくるよね?」

 

私は、その泣きそうな顔を見て、覚悟を決めた。

 

ーーーもう終わらせよう、と。

 

「勿論や。またね。」

 

その週末に、私は超朝早くから身支度を整えた。

ていうかまだ夜だ。

 

目指す場所は、東京から遠く離れた群馬の山奥。

とはいえ、今日中には帰る。いや、帰ってみせる。

そう決めて、駅へ向かった。

 

改札前は朝ということもあり、比較的混んでいる。

電車は確認済み。

行こう。

 

「希、待ちなさい。」

 

後ろから声がした。振り返ると、そこには随分長いこと見ていない顔があった。

真姫ちゃんだった。思考が一瞬ストップする。

 

「真姫ちゃん、一体どうしたん?」

 

できるだけ平然と聞いた。

その時、缶コーヒーを飲みながら近づいてくる人影があった。

 

「西木野さん、東条さんは・・・

あ、見つかったみたいですね。よかった。」

 

それは身長が180はあろうかという大きな男だった。

細身の体にぴったりとあったスーツ。そして、切れ長の目が印象的な人。誰?

完全にあっち系の人にしか見えない。とっさに身構えてしまった。

 

「どうも、こんにちは。いや、おはようございます、ですね。これは失礼。それはそうと、こんな朝早くからどちらまで?」

 

その男は聞いた。

 

「えーっと、いや、ちょっと・・・

そもそも、あなたは?」

 

「まあ、ゆっくり話しましょうよ。

我々も、準備して来たんですから。

では、行きますか?」

 

「希、さあ、早く行きましょ。」

 

手を真姫ちゃんに引っ張られる。

 

「ちょ、ちょっと真姫ちゃん?私、すぐそこまで買い物行くだけ・・・」

 

その時、男がずいっと私と真姫ちゃんの間に割って来た。そして、目を合わせて来た。

その瞬間のなんとも言えない感覚を、私は忘れない。まるで、その人に命を握られているような、そんな気がした。

怖い、と感じたのはいつ以来だろう。

動悸が激しくなる。

 

何?

 

「嘘はよくありませんね?もう隠す必要もありません。とは言え、僕も西木野さんも知りませんから。」

 

「希、後で説教だから。」

 

そう言って、真姫ちゃんは改札を指差して、

 

「それじゃあ、連れて行って。にこちゃんのところへ。」

 

図星だった。その男の目と、真姫ちゃんの有無を言わせない口調は私に案内するしかない。という気を起こさせた。

黙って、引かれた手に従って歩き出すことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの役割を全うする。それは大切なことだ。ただ、それと一人で背負いこむことの違いも、また紙一重なのだ。




はい。後味悪く終わっちゃいました・・・。
こういうの、書いてみたかっただけですw
ちゃんと続きも書きます!その時はまたゆっくりとご覧になっていってくださいね!
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