前回でメンバー結集しましたが、まだまだ物語は続きます!
μ'sのメンバー全員が揃ってから一週間後。私は、篠原さんに呼び出されていた。
<<もしもし、星空さんですか?緊急の用事があります。要件はそこで話しますが、とにかく駅前のファミレスに来てください>>
そんな電話がかかってきたのだ。
身支度を手早く整え、外に出た。
今は、9月。
すごく暑くはないけど、まだまだ暑い。でも、私はこういう運動にぴったりな天気の方が好きだ。なんとかっていうもののせいで、最近雨が多かったし。春雨前線だっけ?とにかく、身体が動かし足りない。
駅前のファミレスに入ると、ひんやりした空気がやってきた。その空気の奥に、篠原さんと、そして、絵里ちゃんがいた。
「絵里ちゃんー篠原さんー、
今日は一体どうしたの?
随分深刻そうな顔をしているにゃー?」
「来たわね・・・凛。大変なことになっているのよ。」
「ええ、これは大きな問題ですね・・・」
私たちはついこの間、激しい不幸に見舞われ続けた身である。ここにきて、また何かあったというのか。
「い、一体どうしたのかにゃー?」
「これをご覧ください。」
篠原さんは一枚の紙を出してきた。
内容にざっと目を通す。
そこには、衝撃の内容が書かれていた。
「こ、これは…。」
その午後。
篠原さんと絵里ちゃんは机の前に立っている。私もその横にいる。
そして、机の向こう側では、穂乃果ちゃん始め、七人のメンバーが正座させられていた。
「あなたたち・・・これはよくないんじゃないかしら?」
「これは、アイドルがどうこう言ってられない問題ですね・・・」
篠原さんは、私たちを何かしらの方法、とにかくすごいやり方で救ってくれた。
その感謝は、どんなにしてもし足りない。
なんどもお礼を言ったし、そのための食事会なんかを企画したりもした。
・・・全部、断られたけど。
でも、メンバーが揃った以上、もう手を借りなくてもよいはずだった。でも、にこちゃんが、
「「篠原、あんたまだ手伝うわよね?」」
と言い出したのだ。
「「え?」」
「「にこちゃん、もう篠原さん十分すぎるくらい手伝ってもらったし・・・」
「「穂乃果、私たちはまだメンバーが揃っただけ。こいつに助けてもらうのが一番よ。」」
「「いや、流石に…危ないんじゃないかしら?」」
「「西木野さん、どう言う意味です?」」
「「自分でわかってるくせに・・・ニヤニヤするな!」」
篠原さんは、また真顔になって、
「「ま、いいでしょう。まだ、いくつか答えが見つかっていませんから。」」
と言った。
こんなわけのわからないやり取りがあって、今目の前にいる篠原さんは、真摯に私たちの手助けをしてくれている。
「い、いやー、それは・・・」
「ことり。言い訳しても始まりません。私たちは、また厳しいトレーニングをしなくてはなりません。」
机の上にある一枚の紙。
そこには、いわゆるスポーツテストの結果が書いてあった。
「まず、みなさんの運動能力を把握しましょう。」
それが、篠原さんが最初に言い出したことだった。
そして、その週末に、私の学校にこっそり忍び込んでスポーツテストを行ってみたのだ。
そして、その結果がつまり、そういうことだったのだ。
「えーまずあまり関係ないところからですけど?握力、まあこれはいいです。ただ、小泉さん?南さん?それと、西木野さん?12キロってどういうことです?買い物袋とか、持ったことあります?」
「え、えーと、それは・・・」
「まあ、調子が悪かったのよ!」
「かよちん、そんな低かったの?」
「ごめんなさい…でも、にこちゃんは高いんだね?」
「私はこの前まで鍬持ってたのよ?当たり前じゃない。」
「矢澤さんは高すぎて女っぽくない。」
「黙れ篠原!」
「次に50メートル走。これも、まあ大丈夫かと思いますが。ただ、東条さん、南さん、園田さん。10秒台は普通によくないのでは?」
というか、希ちゃんとことりちゃんは違う原因のような気がするのだけれど。
それ、また大きくなってない?大人になった感じが私は全くしない。不公平だ。
次に絵里ちゃんが口を開いた。
「ここからが大事なのよ。まず反復横跳び。数値が低すぎる。全体的によ。一番高い海末でも29回ってどういうこと?そしてにこ。あなた、たったの20回じゃない。」
「そ、それは・・・」
「それに、あなた柔軟性も低すぎる。これじゃあ、踊るなんて言ってられないわ。」
「私も、今の柔軟性ではダメですね・・・昔は柔らかかったんですが。」
そう、海末ちゃんとにこちゃんの長座体前屈の数値は低い。これでは怪我をしてしまう可能性が高い。
「そして、筋力。高坂さん、小泉さん。これ、全力でやってます?」
「も、もちろんです!」
「かよちん?腹筋がこれだけで終わってたら、始まらないよ?穂乃果ちゃんもこれじゃダメだにゃー?」
実際、問題は多々あった。
しかし、何よりも問題なのは・・・
「最後に体力。全員ひどいわ。」
その通り。私は体育の教師をやっていて、絵里ちゃんはアメリカで厳しいトレーニングをしていた。
しかし、他のメンバーはとても体力を酷使していたとは言えない。
海末ちゃんも、まだ足りていないと思う。もう私たちも30歳の方が近いくらい。この衰えは、決しておかしなことではない。でも、私たちがやろうとしていることを考えたら、話は変わっちゃうよね。
「あなたたちの強みはわかっています。強い思いを全力で伝える。納得はいきませんけど、とにかくそれが皆さんのやりたいこと、できることなんでしょう?でも、皆さんはもう高校生ではない。大人で、プロなんです。プロである以上、もう甘いものは見せられないんです。わかりますね?」
「はい!!」
声が綺麗に重なった。
「あのさー。」
真姫ちゃんが口を開いた。
「そもそも、私たち、何を目標にすればいいの?」
「え?」
「いや、だから・・・みんなを笑顔にっていうのが目標じゃないのかにゃー?」
「わかるわ。でも、それだけじゃダメなの。具体的なある一つの目標があって、それは、むしろ信念として頑張るものじゃないかしら?それを目標にするのは、流石に無理がある気がする。私は、目標が見失われるのが怖い、かな。」
「へえ、結構いいこと言いますね。」
「なんか文句ある?」
「ないですが?で、皆さん何か思いつくことは?」
誰も何も言えなかった。
「それに、考えなきゃいけないことはまだあるよね?」
次に口を開いたのはかよちんだった。
「私たち、プロになろうっていってるんだよね?それなら、事務所に所属しないとお仕事はできないんじゃ・・・」
「それは花陽の言う通り。」
「うちも絵里ちに賛成。仕事なんやから、そういうことも考えんと。」
「そうよ、わたしたちは仕事でやるのよ?このにこに仕事に見合ったお金を払ってくれなきゃならない。
つまり、会社の助けがどうしたって必要。」
「み、みんな、そんなに熱くならなくても・・・」
「ことり。わたしたちは、大きな危機を乗り越えました。それは、穂乃果の思い、それと、私たちの思いと、篠原さんの助けがあったから。わたしたちは、今度は現実を変えなければならないのです。篠原さんは、自分の仕事をこなしながら私たちを助けてくれました。私たちは、自分で自分のことを決める必要があるのでは?穂乃果、どう思います?」
「海末ちゃん・・・そんなの、わからないんだけど・・・」
言葉が途絶えてしまった。
「とにかく、です。」
篠原さんがその空気を破った。
「皆さんは体力を戻しつつ、答えを出すこと。そしてまとまったら、僕に教えること。いいですね?」
前途多難。想像以上に先は長そうだった。
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「ことり、ラストよ!頑張って!」
わかってる。上で絵里ちゃんが待ってる。
「ことりちゃん、頑張って!」
穂乃果ちゃんが待ってる。
やっと揃った。みんなが揃った。
私だけ、置いていかれるわけにはいか
ないんだ。もう、引っ張っていってもらうだけの私じゃダメなんだ。
思い切り最後の段を駆け上がった。
「うん、まあまあね。ことり、大分戻ってきたじゃない。」
「うん、でも、まだまだだよね・・・」
「そんなことないよ、ことりちゃん。焦らなくて大丈夫だから。」
「穂乃果ちゃん、ありがとう。」
嘘だ。わかってる。あの話し合いから約3週間がたった。わたしたちは、高校の時の練習をしている。場所は神社だ。人目が気になるけど、そんなことは言っていられなかった。希ちゃんの助けのおかげで、裏手のスペースを借りられた。
そうして、あの頃のように階段を上り下りしたり、体操をしたり、踊ったり、歌ったりといった練習をしている。まずは出来る限り私たちの「力」を元に戻す。それが方針に決まった。
でも、想像以上に大変だ。
そうなのだ。みんな、20代の後半。余りにも遅いスタート。その衰えは、明らかだった。そんな中でも、みんなの努力が本当に少しずつ形を変えてきた頃。まだ足踏みしているのが私だった。一向に体力は戻らなかった。
「さあ、次はダンスの練習しましょう。」
相変わらず海末ちゃんと絵里ちゃんがダンスの練習を引っ張っている。
「1、2、1、2、ほら、花陽?遅れています!ことりと希、手が逆ですよ!」
ダンスも同じこと。そもそも、振りを間違えてしまうのだ。何回も同じミスをしてしまう。それも、かなり大きいのを。私たちに、当時の面影はまるで残っていなかった。
「はい、休憩にしましょう。」
そんな言葉が出るときには、わたしたちは汗だくになっていた。もう気温は30度まで上がらない。夏の面影などもう無いというのに。
「きついよねーほんと。」
穂乃果ちゃんが水を差し出してくれた。
「ありがとう・・・ほんと私、足引っ張ってばっかだね。」
「そんなことないよ!」
「そうね。そんなこと言ってる場合じゃないわ。頑張らないと。」
そう言う真姫ちゃんはこの3週間での成長がすごい。
そもそも、当時と比べて背も高くなって、本当にモデルみたいだ。
他のみんなも周りに集まってきた。
みんなゼエゼエ言っているのに、凛ちゃんと絵里ちゃんはやっぱり息が切れていない。二人は、海末ちゃんと一緒に次の練習を考えているみたいだ。
「そう言えば、希?家のベッドに置いておいた今月のアイドル誌、どこかにいったんだけど?」
「え?あれ最新刊やったん?今日資源ごみやったし、古いやつかと思って、一緒に・・・」
「ええ!?ちょっと、全然読んでないのよ!」
笑いが起きた。
にこちゃんは希ちゃんの家に居候しているらしい。絵里ちゃんは何か不満そうだったけれど。
「なんかさあ、ほんと、こういう空気は昔と変わらないんだね。」
穂乃果ちゃんが口を開いた。
「私ね、ずっと考えてたの。私たち、何を新しい目標にすればいいんだろうって。
『私たち以外の、みんなに笑顔を届けたい。』
それは、確かに私たちの目標だよ。みんな、そうやって集まってくれた。でも、昔みたいに全然うまくいかないし、とても仕事にーなんて想像できなかった。」
「言い出したの、穂乃果よ!?」
「はは、にこちゃん、そうだね。でも、私思うの。結局、変わらないこともあるんだな、って。だから、変わらないことから始めてみない?」
「穂乃果・・・それは、どういうことなのです?」
「私、ライブがしたい。それで、どれくらい今の私たちが思いを伝えられるか、試してみたい。それからでいいんじゃない?目標を決めるのは。それを、まず第一歩にしたらいいんじゃないかなーって。」
何か、暖かい記憶が蘇る。
ふふっ、と笑った。
子供の頃の木登りを思い出した。いつだって、そうだ。
私たちを引っ張っていってくれるのは、穂乃果ちゃん。だから、リーダーなんだ。
どんなに変わっても、変わらない気持ちは絶対ある。たまには素直に従ってみてもいいんじゃないだろうか。
さあ、この先μ'sはどうするでしょう・・・
彼女たちの歩みを、追えていけたら、と思います!またお会いしましょう!