女神再び   作:resot

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どうも、こんにちは。今回は、あの人たちが登場します。
ごゆっくりご覧ください!


第16話 みんな その1

「よし、これで曲順も決定ね?」

 

「そうね、お疲れ様。」

 

ふう、と言って手を後ろにつく絵里ちゃんとにこちゃん。

 

「お疲れ様!」

 

とベットの上から声をかける。

 

「だあああ!穂乃果、あんたも考えなさいよ!頭パンクしそうだわ!」

 

にこちゃんが顔を上げて思い切り叫んだ。

ほんとに申し訳ないと思う。この話し合いが始まったのはお昼過ぎ。

曲順会議のほとんどは私以外が盛り上がるようにと、考えてくれた。その間私は、ベッドの上から少し意見を言ったりとか、ご飯持ってきたりとか、饅頭食べたりとか、えーっと、えーっと、漫画読んだり?とか?

 

うん、ごめんね、ほんと。

 

でも、私はほんとに昔からそういうのを考えるのが苦手だった。盛り上げたい、とは思うけど、じゃあどうするの、なんで言われてもわからない。

 

「ご、ごめん…でも、みんなが考えた方が絶対いいものになるし…」

 

「あんた、サボってるわけじゃないでしょうね!?」

 

「そ、そんなことない、と思うけど…。」

 

にこちゃんがジト目で睨んでくる。

 

ツインテールのにこちゃんは、背がずいぶん伸びた。

当時の私たちくらいはあると思う。

そして、当時の可愛さはそのまま。何で、にこちゃんは卒業の後、アイドルやらなかったんだろう…

 

まあ、とにかく。

 

蛍光灯の光に照らされた部屋の中。

その中で、また一つ進展があった。

 

 

ただ、それだけではない。

私の家に、またみんなが来る。

たったそれだけの事が、どんなに嬉しいか。

 

高校の時は、この部屋でいっぱい集まった。学校の部室の次くらいに、ここは使われてただろう。

 

みんなで私の家で余ったものをつまみながら、次のライブに向けて色んな話をしていた。

そう、そして今も、こんな風に話している。

 

私がどうしてもまた見たかった絵だった。

 

「お姉ちゃんたちー?もう遅いよー?」

 

可愛い妹の声が外から響いた。

 

「あ、雪穂、今日はいるのー?」

 

「久しぶりに帰ってきたの。」

 

襖を開けて入ってきたのは、妹の雪穂。

大人になって、本当にグッと美人になった感じ。そんな妹をテレビで見るのは、誇らしくもあり、羨ましくもある。

 

いつかわたしもそのステージに立ちたいと強く思っている。そして、今、それは現実になるかもしれない。

 

ここまで来たら、ステージはそこまで。

頭の中で描き続け、思い返し続けたあのステージ。

ワクワクが止まらない。

 

「あ、雪穂!最近人気よね。亜里沙をいつもありがとう。」

 

「いえいえ、絵里さん。亜里沙には、本当にいつも助けてもらってますから。」

 

「雪穂、私たちもすぐ追いつくからね。見てなさいよ?」

 

「いやー、にこさんに追いかけられるなんてなんというか・・・」

 

「不愉快よねー?」

 

「真姫、あんた最近態度悪いわね。」

 

「もう先輩も後輩もないじゃない?」

 

ははは、という笑い声。歳はとったが、この声が響くだけで若返る気分だった。

 

ずうっとずっと聞きたかった。

にこちゃんと真姫ちゃんの憎まれ口も、絵里ちゃんのなだめる声も。

 

ああ、嬉しい。楽しいな。

たったこれだけの会話が、嬉しいのだ。

 

少し涙を流してしまったのは、バレてないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあねー!」

 

「穂乃果、早く寝るのよ。明日から準備しなくちゃいけないんだから。遅刻したらダメよ。」

 

「うん、大丈夫!またねー!」

 

みんなを見送って、中に戻った。

明日から、準備だ。つまり会場の準備。

 

会場に関しては、ことりちゃんのお母さんにも頼みつつ、今の理事長さんと話をした。幸い、私たちを応援する、と言って、すぐに了承してくれた。以前に学校を救った英雄として、名前が残っていたらしい。ことりちゃんのお母さんの押しが強くって、理事長さんたじたじだったな。

 

なにもかも、花陽ちゃんのおかげだ。

 

高校でライブ…

最後にやったのは、多分ことりちゃんを連れ戻した後が最後、かな。

私たちが何か切れた糸を握ってる時、そして、それが繋がった時。その時は、必ず高校でライブをしていた。

 

私は会場を考えていた時、ずっと何か引っかかる思いがあった。

ほしい答えは知ってるはずなのに、喉に引っかかって出てこない、みたいな感じ。それを、花陽ちゃんが引っ張り上げてくれた。

 

ぴったりな場所だ。

 

そして、そのきっかけをくれたのはやっぱり篠原さんだった。

 

あの人、ほんと何者なんだろう。

私は、彼のことを何も知らない。歳が近いらしいってことと、芸能プロにいるってことくらい。

あ、でも、にこちゃんの同級生か。

 

 

 

でも、この人は大丈夫。

信頼していいよって、心が叫んでる。

だから、大丈夫!

 

 

この人がどうやって私たちを繋いでくれたかは正直知らない。

 

でも、私たちの一回切れた糸を繋いでくれたのはこの人だった。

 

 

すごかった。あの時の舞台を思い出す。

 

 

 

 

 

 

変な匂いがするからって周りにいた皆さんを外へ出す篠原さん。私たちもほかの演者さんに紛れてこっそり忍び込んでいたけど、篠原さんに言われた通り、端の方で待っていた。

心臓がドキドキしていた。

 

手を繋いでいたことりちゃんの手も震えている。

これって、犯罪だよね?多分。

 

<ほ、穂乃果ちゃん…>

 

<だだ、大丈夫だよ、きっと…>

 

そして、全員が出た途端、鍵が閉まった。

ロックの音にびくっとする。やっちゃったよ…。

 

<そっち閉めてください、高坂さん。>

 

言われて、後ろの扉を閉める。

海未ちゃんのため。多少強引でも、これが一番だと説得されていた。

 

ずっと友達で、なにもかも海未ちゃんのことは知ってる。

だから、あの性格の海未ちゃんだから、それくらいはしないとと思ったけど、それを話を聞いただけで見抜いた篠原さん。

 

すごい。って、そんな場合じゃないよ、これは!

 

<し、篠原さん。これ、大丈夫なんですか?犯罪じゃないですか?>

 

<わかってますよ。でも大丈夫です。>

 

ドアの後ろで、大騒ぎの声がする。声をあげたくなったけど、我慢した。

 

<さ、行ってもらいましょうか。きちんと連れ戻して来てください。さっさと終わらせましょう>

 

<でも…>

 

ーーー犯罪は、と言おうとした。

だけど、その次の篠原さんの言葉が、私の思考を止めた。

 

<うっさいなぁ、もう。>

 

その篠原さんの声のトーンは、今までのものとは違っていた。

 

相談サービスとかで聞くような、すごく丁寧な声だったはず。

でも、その声は完全にマフィアとかの声だった。

マフィアとかの声、聞いたことないけど。

 

身体中の細胞が、叫んでる。

怖いって。

 

篠原さんは、きっと怒ってる。

 

<復活させたいんだろ?さっさと行けよ。なんのために俺はここまでしたんだ?

 

やりたくないなら、最初からやめちまえ。>

 

だけど、それを聞いて、思い出した。

 

怖かったはずの、震えてた身体がぴたりと止んだ。

そっか。

 

やりたくない…いや!

 

そうだ。やりたかったんだ、私。復活したかったんだ。

 

浅い覚悟じゃなかったはず。

乗り越えたい。絶対に復活させたい。

それくらい、私たちの前の壁は大きい。

だから、賭けるんだ。賭けるためにここにきた。こんなの、乗り越えてみせる!

 

その時、篠原さんと目があった。

冷徹だった。暖かさも何もない。

だけど、私たちをしっかりと見ている。

 

彼が、見てくれている。

 

<本気じゃん。行ってこい。>

 

表情を、変えず、私たちの方へやってくる。

もう、逃げない。

 

<ことりちゃん。>

 

<うん、行こう!>

 

背中を向けた。

 

背を、押された。

そのまま、私たちは舞台に出て行ったーーー。

 

 

 

 

 

 

彼がいなければ。彼がいなかったら、きっとこうはなってない。

 

大きな壁を目の前に、やりたいことに蓋をして生きていっただろう。

 

だから、ただの復活ライブにはしたくない。

あの人に、きちんと見てもらえるライブにしたかった。

 

 

明日、会場の準備だ。残り1週間。

季節は、もうすっかり冬だ。

 

随分長い時間がかかった。正直言って、私たちの体は戻ってないし、踊りとか歌もあの頃に比べたら不完全だと思う。それほど、ブランクという壁は大きかった。

 

ちなみに、明日から、高校は冬休み。私たちは、何とも壮大な年の瀬ライブを実行しようとしていた。

 

たしかに緊張する。準備の不完全さ自体は、当時の比じゃない。でも、きっとできる。自信はあった。

 

今まで、練習を積みながら、ビラを配り、安いチケットを売ったりした。やればやるほど、今までライブというものを企画していた人たちの苦労がわかった。

それでも、一つ一つ進んでいくあの感覚が、私には懐かしくて、やめられなかった。

 

積み上げたものが、きっと答えをくれるはずだ。

 

ただ、明日からは、更に忙しくなるだろう。何せ、9人しかいない。会場を作るとは、一体どの程度大変だろう。

 

篠原さんはたまに手伝ってくれるけれど、毎日来てもらえるとは限らない。明日から、本当に時間との戦いになりそうだ。機材とかの手配や準備は希ちゃんが請け負ってくれた。

会社がその関係なんだという。

 

いろんな巡り合わせで、奇跡みたいな確率で、私たちのライブは完成しようとしていた。後は私たちが頑張るだけ。

 

篠原さんに、応援してくれる人に、届くように。

 

どんなに大変だって、好きなことだから頑張れる。

 

私は、今は店の手伝い半分、練習や準備半分といった形で行動している。

 

自分の好きな事がたくさんできて、嬉しい限りだ。

このまま、復活ライブに向けて、本当に楽しんで頑張ろう。

 

「お疲れ様。」

 

「お母さん!お疲れ様!」

 

和室に戻ると、こたつに入っていたお母さんに尋ねられた。

 

お母さんも、わかってくれた。

私の気持ちを聞いて、応援してくれた。

 

<穂乃果のやりたいことをやって、気が済んだらまた和菓子作ってくれればいいわ。

あなたは、一つのことしかできないものね。>

 

そう言って笑われた。

…なんか不服だけど、仕方ない。

ほんとのことだ。わたしには、何もない。

 

不器用だし、バカだし。

 

<でも、あなたを応援してくれる人に、助けてくれる人に、きちんと答えられる人になりなさい。>

 

絶対、成功させてみせる。

それが、リーダーの役目だから。

 

明日から、私が一番頑張るんだから!

 

「今日は、他の子達は?」

 

「うん、海末ちゃんとことりちゃんは家の人と色々話してるみたい。これから、どうするのかーってね。花陽ちゃんと凛ちゃんも、学校と話し合ってるんだって。真姫ちゃんも同じかな。」

 

みんな、それぞれの元の居場所をどうするか。それは、大きな課題だった。気持ちが許しても、立場というのは待ってくれないのだ。

 

でも、みんなの意志は固い。今更揺るぐはずがない。それは、この数ヶ月で感じた、本当の自信だった。

私たちの考えは、きっと、同じ。当時と変わらない。

 

ーーーみんな、同じ気持ちだ。

 

布団に入って、天井を見ていた。

思えば、何年も何年もこの光景を見ていた。

高校生の時も。

 

なんでか、最近は高校の時も、なんて考えることがおおくなった。

 

あの頃のことを何回も思い出すのも、今楽しい証拠なんだ。

 

私は、明日からの準備にワクワクしながら、目を閉じた。

 

なんの音もしない部屋。なのに、私の頭の中には、いつか聞いた、美しい音楽が流れていた。




さあ、いよいよ会場準備です!
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