前回のあらすじ
揃わないメンバー。すれ違う思い。そして、ついに篠原浩介が動くのであった….
かよちん視点です。
真姫ちゃんとの事件の数日後。
穂乃果ちゃんに呼ばれて、私と凛ちゃんはまた穂乃果ちゃんの家に集まった。
気は進まなかったけど、そうも言ってられない。
しばらく考えたけど、想いは変わらない。
諦められない。
どうしても、諦められない。
真姫ちゃんの本当の思いを聞くまで。みんなの真の声を聞くまで。もし今までのが本当にみんなの声なら、
私はもう、何も信じられない。
「すいませーん。」
穂むらの入り口で声をかけると、すぐに穂乃果ちゃんが現れた。店はまだ開いてない。
「二人とも、いらっしゃい!入って入ってー!」
「おじゃましまーす!」
いつもの穂乃果ちゃんの部屋で、机を囲んだ。ことりちゃんはもう着いていて、饅頭を頬張っていた。
「あ、花陽ちゃんに凛ちゃん、おはよ〜」
「おはよーにゃ〜ことりちゃん」
何気ない会話だけど、まだみんな少し暗い。まだ、私たちは立ち直れていないみたい。私も座って、名物のウグイス饅頭を食べる。この味は当時のままだ。
あの時のことを思い出すだけで、なんだか泣きそうになってしまう。
「それで、今日はどうするの?穂乃果ちゃん?」
と聞くと、穂乃果ちゃんは身を乗り出してきて、
「うん、今日はね、二人に紹介したい人がいるんだけど・・・。」
「ごめんくださーい?」
表に誰か来たみたい。男の人の声だった。
「あ、来てくれた。ちょっと待っててね。」
穂乃果ちゃんは出て行った。
何のことかよくわからない。
しばらくすると、ドアが開いて、穂乃果ちゃんと、その後ろに男の人が立っていた。
丁寧に整った髪の毛に細身の体。
全体的にシュッとしたイメージ。
そして、切れ長の鋭く、そして怪しく光る目。
かなりの美男子、いや、美男性に思えた。
え、ちょっと待って。え?
「ええええええぇ!穂乃果ちゃん?」
「ちょっと、どういうことにゃ?穂乃果ちゃん?」
「穂乃果ちゃん、私に何で言ってくれなかったの?ずっと一緒だったのに?」
いや、彼氏さん?
いやいや待って!ことりちゃん泣きそうになってるし!
「あ、いえ、そうではなくてですね?」
とその男は言った。
「そうだよ、どうしたのみんな?そんなにびっくりすること?」
「あの、高坂さん?そういう言い方はやめましょうね。今、この方達の殺気を感じませんか?主に私に対する。私、死にますよ?このままだと。」
その人は何もわかっていない穂乃果ちゃんを制して、口を開いた。
「はじめまして。あなたが南ことりさん、そして小泉花陽さん。星空凛さん。そうですね?僕は篠原といいます。芸能プロダクションに一応勤めています。この度、あなたたちに協力させていただくことになりました。
どうぞ、よろしくお願いします。」
…えーっと?今、なんて?ゲーノー?キョーリョク?
呆然としたまま、名刺を受け取る。最近よく聞く事務所の名前が書いてある。
アイドル好きには、自明の事務所じゃん。
超すごいじゃん。
「えっと…協力って、どういうことです?」
「勿論、あなた方の復活、の協力です。」
その人は、私達に目を合わせることなく、淡々と話した。
「どうしてにゃー?」
と凛ちゃんが聞いた。そう、そこだ。
その人は、少し悩んで、
「わかりません。」
そう、言った。意味わからないんですが….
「大丈夫!この人は悪い人じゃないから!この店の常連さんなの!」
そう言って、穂乃果ちゃんは篠原さんが手伝うことになった経緯を話した。うん、篠原さん、優しい人じゃん。
イヤイヤ、信用できないって!最初かっこいいと思ったけど見てあの目!ヤンキーじゃん!絶対そうじゃん!3人で目を合わせた。うん、多分考えてること、みんな一緒だ。マフィアだ、絶対。
でも、穂乃果ちゃんの言ったこと、か。
ふと考えてみる。この子の周りに、悪い人はいない。
それは、穂乃果ちゃんの魅力というべきだと思う。穂乃果ちゃんの信頼した人か。
だとしたら、間違い無いのかもしれない、とは思ったのだが、その鋭い目は、やっぱり何となく悲しいような、信じ難いような、そんな感じがした。
この目は、一体…?
私達はまた机を囲んだ。まあ、一応話を聞こう。それからでも、遅くない。
篠原と名乗ったその人は立って、パソコンを手で持って見せて来た。
「この2日ほど、他のメンバーの皆さんについて少々調べました。勿論、合法的に、ですよ。」
その前置き、いる?
「まず、東城希さん。東城さんは有名な企業に勤められていますね。最近、仕事には来られているそうですから、職場に行けば会えるでしょう。次に、園田海末さん。ご存知の通り、名家の跡継ぎであることは違いありません。」
「希ちゃんには、会えるんだね!」
ことりちゃんは言った。
「そうですね、今度行ってみてください。
この2人は、コンタクトが取れている分、声はかけやすいと思います。ですが・・・他の方々はそううまくいきそうにありません。」
「どういうことです?」
と聞かないではいられなかった。
そう、そこだ。なんでこの人、そこまで知ってるの?
「まず、絢瀬絵里さん。皆さんこそ、絢瀬さんの動向には詳しいと思っていましたが、何も知らないようですね?」
意味がわからなかった。確かに、絵里ちゃんとそんなに連絡はとっていなかった。
「いいですか?彼女は今、日本にいません。」
「・・・え?どういうことかにゃー?」
「言った通りです。彼女は今、アメリカにいます。」
「なんで、どうしてそんなところに・・・?」
「そこまでは知りませんがね。ともかく、間違い無いですね。出国の記録がありますから。」
言葉が出なかった。絵里ちゃんがアメリカ?何が起こっているの?
「そして西木野真姫さん。小泉さんと星空さんは前にお会いして、誘いを断られた。そうですね?」
「はい、間違いありません。」
「そりゃ、そうでしょうね。こんなことがあれば。」
篠原さんは、パソコンを机の上に置いた。そこには一枚の記事が出ていた。
<手術中に患者死亡、医師のミスか?>
昨日、××市の総合病院で、手術中に男性患者が死亡する事故が発生した。
手術内容はいたって単純なもので、患者の死亡事故か起きたのは5年ぶり。
病院側は、手術に立ち合った西木野真姫医師(26)が術中にミスをしたことが原因であると説明した。>
「なん、ですか、これは・・・」
穂乃果ちゃんの声は震えていた。
私も、凛ちゃんも、何も言えなかった。
ミス?真姫ちゃんが?
「真相はわかりかねますがね。
これがその原因であることは間違いないでしょうね。」
私達の間には暗い空気が流れていた。みなショックを隠せない。そんなことがあったなんて。あの時の真姫ちゃんの顔を思い出した。言葉を思い出した。そんな辛い状況にあるなんて、思いもしなかった。あの涙。
そっか、そういうことか。
私は、高校生の時からみんな変わらないと思い込んでいた。
違う。苦しんでる仲間がいた。気がつけない自分がいた。
思い切り、怒った自分がいた。
夢を否定された友達に、思い切り怒った私。
なんてことを、してしまったのか。
大切な友達に。
「それと、ここで、このタイミングでこれを言うのはすごく気がひけるのですけれど。」
ショックの抑えられない私達に、次の篠原さんの冷淡な言葉はパニックを起こすには十分だった。
「最後に、矢澤にこさん。彼女には、最近人っ子一人会えていません。」
彼はパソコンを持ち上げて、続けた。
「彼女は、3ヶ月前から失踪しています。要するに、行方不明なんですよ。」
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あれから2日が経った。
私は、ひどい熱を出した。
穂むらの店番を休まなけれなならないほどの、ひどいひどい熱だった。体がだるくて、何もしたくない。原因は明らかだった。体が、精神が、疲れていた。
あれから、ことりちゃんや凛ちゃん、花陽ちゃんと連絡をとっていない。
3日後、熱はなんとか引いた。
みんな、ショックをうけている。
あの時、パニックになった私たちに、篠原さんは声をかけて、なんとか帰らせてくれた。
「はぁ…」
私は、夜道を散歩した。熱は下がっていても、体は重い。
その日も、夏らしい、ジメジメした夜だった。汗が服に張り付いた。
川にかかる橋まで来た。
生暖かい風が強く吹いている。
橋の中腹に来て、川を眺めていた。
ほんとに、思いつきだった。
こんなにみんなが、辛い状況にあるなんて考えもしなかった。事情があるなんて、思いもしなかった。
ただただ、辛かった。
また、みんなに迷惑をかけてしまったのだ。
まだ、自分は子供だったのだ。大人になって、文字通り戦うみんなをまた見ることなく、自分勝手に振る舞った。
「僕は、あなたたちに復活してほしい。それが請け負った仕事ですから。ただ、このような事情がある以上、決めるのはあなたたちです。答えが出たら、教えてください。」
そう言って、篠原さんは帰っていった。
「無理です・・・もう。」
それが、答えだった。
やりたくない。もういいや。
涙が溢れて来た。
「何で、泣いているの?」
その時だった。
後ろから声がした。
振り返ると、そこには何度もテレビで見た顔ある顔があった。サングラスに帽子を被っていても、そのスター性は隠せていない。驚いた。なぜ?
なんでこんなところに、天下のスーパーアイドルが?
「綺羅・・・ツバサさん?」
友達の秘密を知った時。
それが一番怖くて、そして、試される時なのだろう。
ちなみにですが、篠原さんの姿見のモデルは
『三月のライオン』の滑川さんをイケメンにしたイメージでやってます。
気になる方は検索してイメージして見てください。目つきはアニメデレマスのPさんイメージです。