金色の髪は潮風に揺れた。   作:えるれあ

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Fateシリーズで時々名前が上がり、Fate/GOで敵サーヴァントとして出たイアソンの一生を回想形式で書いてみました
個人的妄想が多数入っていますので、嫌いな人は見ない方が良いです
初作品ですので拙い点が多々あるでしょうが、お楽しみいただければ幸いです


金色の髪は潮風に揺れた。

ーーーーーああ、くだらない事ばかりだった

誇りも棄てて、愛情すら棄てて

高貴で崇高で、人類が成し得る事は『無い』だろう偉業

完全なる平和

完全なる幸福

完全なるカタチの元に成る

『完全な理想郷』

 

ーーーーーああ、我ながらなんて、なんてくだらなく

なんて身の丈に合わない高望みをしてしまったのだろうか。

 

 

 

 

テッサリアと呼ばれた地、そこにあった王国

その国を治める王の子

端的に言えば私は王子だった

だが私の父親が死んだ時、叔父だったペリアスは私の代わりに王座に着いた

その事は特段問題はない、まだ幼かった私に統治など出来る筈も無いからだ

その後私はケイローンと呼ばれた賢者の元に預けられ

暫くの間王国から離れて色々な事を学んだ

ケイローンはまるで化け物の様な見た目だったが、その知識は確かなものだった

残念な事に、あの馬......いや、彼は恐ろしく、涙も叫び声も上げられぬ苦痛を伴う毒矢を受け、不死の身であるが故の絶望を受け入れきれずに不死を捨てて死んでしまった

もしも私が理想を叶えたら補佐官にでもしていたのに

まぁそんな事はいい

あの馬小屋.....違うな、あの塾からようやく出れた時、私はすっかり成人していて、自分の立場を分かってしまっていた

だがその頃はまぁ、まだ希望があった様に思う

王国に帰り、ペリアスに謁見し、王座の返却を求めた

あの屑、ペリアスは王座を渡さず、コルキスと呼ばれる地の宝物、金羊皮を持ってこいなんて試練を言い渡した

まぁ、まぁこれもいい

急に現れた青年に王座を渡せなんて言われたら、俺だって首を叩っ斬っているだろう

その頃の俺、いや私はまだ純粋だった様に思う

少しは不満を覚えたが、受け入れられたのだから

あの屑が王の座に拘っているなどと知らなかったとはいえ

 

 

その後、私は難題を達成する為の船を手に入れた

アルゴスと呼ばれる者にアルゴー船を造らせたんだ

その姿はまさに美しかった、試練に挑む勇者にぴったりだなんて自惚れるほどに

次に仲間を探した

そこで俺は、この理不尽だらけの人生で唯一尊敬し、友と呼べ、仲間と呼べる者を見つけた

ヘラクレス、その名は既に広まっていて、俺の耳にも届いていた

正直な話彼の逸話を聞いた時、怖いとも思ったし、格好良いとも思った

だからこそ、周りの人間が化け物を見る目で彼を見る事が許せなかった

神々の試練を全て乗り越え、神々に認められた『英雄』

いや、『大英雄』

何故そんな彼を畏怖するのか、遠ざけるのか、理解出来なかった

だから俺は彼にだけ自分の理想を語った、今まで自分でも馬鹿らしいと考えていた遠く、果てしない道の果てにある理想を

彼は黙って聞き入り....俺の提案を受け入れてくれた

仲間になってくれると

友になってくれると

それだけで俺は、とてもとても嬉しかった

憧れの、尊敬の『大英雄』と共に冒険できるのだから

 

今になって考えてみれば、彼は俺に自分を重ねていたのかもしれない

神々に翻弄された者同士として

 

ヘラクレスの名を使い、順調にヘラクレスを含めた50人の勇士が集まった

 

 

 

そして、アルゴノーツは旅立った

様々な苦難があった、様々な冒険があった

その間に別れもあったし、出会いもあった

ようやくコルキスに着き、そこの王と......王女、メディアに出会った

コルキスの王は、宝物は軽々しく渡せぬと言い

再び私に試練が降りかかった

それは結局はただの人間だった私には無理難題にしか思えず

今度こそ諦めるべきなのだろうかとも思った

.....だが、王女メディアは、俺に手を貸すと言った

本当の本当に

その代償として婚約をねだってきたが、勿論受け入れた

 

ああ、彼女の愛が、神々の祝福(呪い)だと知っていたなら

もう少し考え方は違っていたのだろう

 

彼女の力を借り、どうにか金羊皮を手に入れた

だがやはりと言うべきか、コルキスの王は激怒して俺を追った

アルゴー船を出港すると、すぐにコルキスの船も出港した

彼等の船が追いつくのも、私の船が逃げるのも、五分五分だった

それは恐怖でしかなかったし、メディアに助けてくれと願ったのも、間違ってはいなかったと思う

 

その時、俺は彼女の狂気を

神々に汚染された愛(呪い)を

見てしまった

 

彼女が一緒に連れてきた弟の手を握ると、何かぶつぶつと唱えていた

次の瞬間、彼女はまだ幼く小さな弟の身体を

 

『海へと放り捨てた』

 

 

恐怖した、まだ幼い子供には、海を泳ぐ事すら叶わないのに

だが、だがコルキスの船に助けさせ、その間に逃げるのだろうとも思った

そうであってくれと、願った

 

今更思うと、俺の願いは叶わない様だ

海に落ちた弟がバシャバシャと小さな飛沫を上げ、コルキスの船が救助しようと動きを遅めた時

彼女はまたぶつぶつと唱えていた

それに気づかなかった

海に落ちた弟が少し膨らんだのも、さっきまで姉に握られていた手のひらに、魔術の紋様が付けられていたのには気づいたのに

 

 

耳を削ぎ落としたくなる様な悲痛な叫びが、膨らんだ肉に遮られ

くぐもった叫びは雄叫びに変わり

次に瞬きをすると

 

海は、少し赤黒く染まった

 

 

 

『肉親殺し』

 

 

あのヘラクレスでさえ、狂気に犯され起こしてしまった大罪

それを彼女は、これが必要だったのでしょうと

こうしなければダメでしょうと

これが『貴方の望み通りでしょう』と

平気な顔で、愛する者を只々素直に愛する眼で

微笑みで、まだ若く瑞々しい唇を開けて

そう言った

 

怖かった

恐かった

只々、怖くて怖くてしょうがなかった

その時以外は

ただただ普通の、恋をしている可愛らしい女性だったのに

その時以来、イオルコスに帰るまで彼女に何かを願うことはなかった

無いように、したかった

 

 

 

イオルコスに戻った時

ペリアスはもう老いぼれになっていた

金羊皮を見せると大きく口を開け、驚いているのがよくわかった

ああ、これでようやく王になれる

ようやく理想郷を創れると

そう、そう想った

 

『残念だが、お前を王にする事は出来ない』

 

 

 

 

 

 

コルキスで起きた事が知らされていたのかもしれない

肉親殺しをした者を妻にすることを、許さなかったのかもしれない

 

今なら、様々な憶測が諦めを呼んでくれる

だが、だが

 

王子でありながら王になれず

王子でありながら馬小屋に養子として預けられ

王子でありながら無理難題を渡され

王子でありながら、王子でありながら

王子、王子、王、王!

 

 

王になるはずだったのに!女神ヘラに加護を渡され!

人の身で理想郷を創るはずだったのに!

誰もが俺を敬い!慕い!俺の元で幸福で平和な世界を過ごすはずだったのに!!

ただ!ただ!尊敬される様な!!

 

『英雄』に、なりたかっただけなのに

 

 

 

 

気がつけば、俺は彼女に叫んでいた

『あいつを殺せ!殺すんだ!約束を破棄した裏切り者を!』

彼女は、変わらぬ笑顔で言った

『ええ、それが貴方の望みなら』

 

 

それから何があったのかは

思い出したくもない

ただ分かることは、彼女は言う通りにしてくれたという事だ

結局イオルコスを追い出され

メディアと共に旅をする事になった

だが、もう限界だった

メディアが恐かった、恐ろしかった

嫌だった

そもそも、私は彼女を愛していたのだろうか

もう、もう分からない

 

コリントスという地に着いた時

コリントスの王とその娘、グライアは結婚してくれないかと提案した

俺は提案に乗った

ただメディアから逃げたかった

彼女は言う事をなんでも聞いてくれる

だから大丈夫

コリントスで何かあったらまた

彼女を使えばいい

そんな楽観的な考えをしていた

 

 

結婚の日

 

国は燃えた

 

 

メディアがグライアのために作った花嫁衣装

それをグライアが着た瞬間、2度と見たくなかった魔術の紋様が浮かび

グライアは手足の先からじりじりと燃え焦がす様な火に包まれ

焼け爛れた喉から出る叫びは、メディアの復讐心の現れだった

 

メディアは、最後にこう言っていたと思う

愛していました、とも

貴方を許さない、とも

どちらにせよ、俺はただ独り放浪する目にあった

そして、今

アルゴー船の残骸に出会った

 

 

 

 

「...........俺は..................彼女を、愛せていただろうか?........」

「俺は...........皆と、旅をしていた頃が、1番、1番楽しかったんじゃあないか.............?」

「...........俺は....................理想郷を.........誰もが、誰だろうと友愛し、平和で、幸福で...........................」

「.....................................................................................................王に、なりたかっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

木材の裂ける音がし、少し上を見上げると、金具が

まるで最期の処刑の様に俺に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......フン、マスターに使わされるなんぞ性に合わないんだがな、まぁいい、精々屑みたいなサーヴァントを使って俺を守ってればいいさ」

「ああ?何?名前?」

「ふん、その貧相な耳を広げて良く聞くが良い、この俺の名をな」

 

 

「イアソン、大英雄すら従えた、英雄が集う船の船長」

「『イアソン』だ、覚えておけ」

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