どうしてこうなった?
新撰組の名を聞いて最初に浮かぶ事柄は何か?
その質問をするとやはり思い浮かぶのはこれだろう。
「池田屋事件」
ぐだぐだ邪馬台国に参加していたマスターなら知識があるだろうが知らない人もいるだろうので事件のあらましを少し説明しよう。
ーーーー文久3年8月18日
政変により反幕府勢力の中心として京都朝廷に取り入っていた長州藩が幕府の京都守護役を任されていた会津藩などの勢力により京都中枢から追いやられ、佐幕派が主流となる。
尊王攘夷派の浪士達はその流れを変えるべくある計画を立てた。
それが京都御所に火をつけ混乱している最中に会津藩主・松平容保や中川宮を暗殺、さらに孝明天皇を長州に拉致してしまおうという過激なテロ行為を企てただったのだ。
当然この計画が実行に移された場合京都どころか日本中が大混乱に包まれてしまうのか想像に堅くないだろう。
新撰組による三条大橋付近の見回りが強化されていく緊迫した空気が京都を包んでいた。
1864年(元治元年)6月5日 早朝。
京都守護職会津藩お預かりの浪士組として治安維持にあたる新選組は、過激派浪士中心人物の一人である古高俊太郎を尋問することによりこの計画が真実である事を知る。
ちなみにだがこのとき古高俊太郎はなかなか口を割らなかったために土方歳三が
ドギツイ拷問を行い、情報を吐かせたと言われている。FGOの土方の拷問スキルはここから発生したとかなんとか。
興味があったら調べてみると良い。
一応先に言っておくがこの時代の拷問は結構エグいしグロい。調べるなら注意されたし。
同日 22時頃。
京都のある旅館池田屋に近藤、沖田、永倉達壬生狼が討ち入りを行った。
この事件が池田屋事件。
京都大火という計画を未然に防いだ新撰組の名は瞬く間に一躍日本中に広める事になる。
そしてこの事件により長州藩論は硬化をし、禁門の変の原因となるという歴史が続いていく。
長倉新八は緋村剣心も斉藤一も事件に参加したような介護録を残したいようだが二人とも事件には参加してはいないから間違えないように。ここテストに出ます。
◇◇◇
時代は流れ明治の東京。
野良犬の遠吠えがどこか遠くに聞こえる5月の風が気持ちいい静まった夜。
時刻は22時を過ぎた頃だろう。
日中は日が多く行き交う大通りもこの時刻になると人気がまるでなくなりひっそりとした空気に包まれている。
そんな中に一人の少女が誠の文字を刻み込んだ羽織を着込み、颯爽と歩いている。
今夜はいい夜である。
こういう夜はとても“暗躍”がしやすい・・・・・・。
目的地に着くと黒いマフラーを鼻先まで持ち上げ少女は仕事の時の意識に切り替えた。
そして事件は突然起きた。
あの祇園祭の夜、新撰組が池田屋を襲撃した時の再来だ。
沖田は高らかに勇ましく声を上げる。
「御用改めです!! 手向かいする者はことごとく切り伏せます!!」
◇◇◇
とある貧乏長屋の中。
そこの住人である相良左之助は今日も行きつけの店である赤べこで食い逃げをし、
満腹になった腹をさすりながら気持ち良さげに寝入っていた。
相良左之助。
この男、相良左之助は性格のいい兄気分的な男なのだが
食い逃げはするし、ツケはなかなか払わない少々困った男であると牛鍋屋の店員からため息まじりに相談されたのが今日の昼。
どうにかツケの分だけでも着ぐるみ剥いてきて欲しいとかなんとか。
行き倒れしていた私を看病してくれた上においしい御飯も出してくれたお妙さんに報いなければいけない。人として当然だ。やってあげましょう。
討ち入りを。
ところでこの相良左之助という男は中々の手練れであると聞く。
あの緋村剣心も一目置いているとか。
・・・・・・ふーん。いや別に深い意味はありませんよ。
ただあの緋村さんが高い評価をしているっていうほどの男っていうなら沖田さんも直々に検分する必要があるのではないでしょうか?
ええ。そうですとも。
ならば手加減抜き。最初から飛ばしていくしかないですね。
ーーーーー沖田さんは弾けた。
というか暴走した。
「我が神速の空間ジェット殺法、受けてみよ!
ジェットパックスタンバイ! オキタ・J・ソウジ、出ます!」
剣客というより明治の時代では考えられないオーバーテクノロジーな装備に身を包んだ沖田さん。
沖田さん改めオキタ・J・ソウジは冷酷に且つ速やかに目標を補足。切り捨てようとする。
今日の沖田さんはセイバーではない。
アサシンさ。ならば何の問題ないな。
この姿を見たらきっと剣心は目を丸くしてひたすら「おろっ!?」とつぶやき頭の中がオーバーヒートし続けていただろう事間違いなし。
いくら飛天の先読みでもこれは想像できなかったはずだ。
沖田の十年間に一体何があったのか?
十年前と若さが変わらない謎はまさかコレの影響か?
文明開化どころか文明をワープ進化させすぎた彼女に思わずドン引きしまくるだろうから詳しい事は知らない方がいいだろう。
秘密は女をより美してくれるのである。
沖田さんは永遠の十七歳である。
「ふんふふふ~ん♪」
沖田は腰についているジェットパックの出力を全開にして豪快に長屋に突っ込む。
ズドンッと突入し事態をまるで把握できていない鶏冠頭の目標を補足。
速やかに攻撃に移る。
「光子ミサイル、斉射三連!」
光子バルカン、光子ミサイルを遠慮なくぶち込む。
撃って撃って撃ちまくる。
容赦などかけらもない。
新撰組の信念すなわち悪・即・斬。
斬どころか爆な所はご愛敬。
どどどどどどどど!!!!
ミサイルにバルカンの外道な怒濤の攻撃。
吹き飛ぶ家具に吹き飛ぶ左之助。
池田屋もこうした壬生狼の奇襲があったのだろうか?んな訳ない。
室内はすでに大惨事だ。大家さんになんて言えばいいんだろうね。
沖田さん絶好調!!!!
この沖田さんすがすがしいほど好き放題やりたい放題である。
シリアスな空気をぐだぐだに瞬く間に変えてしまった。
るろうに剣心は明治時代が舞台?
ーーはっ
知ったこっちゃない。
この小説のイメージは和月さんでなく経験値さんなので多少ぶっ飛んでもいいのです。
沖田さんは時代を先取りする女です。
「ぐぉおお!?」
もちろん寝込みを襲われた左之助は訳がわからない。
何が起きたのか!?
本当に訳わからない。
いきなり蜂の巣にされそうになるわ、ミサイルでぶっ飛ばされるわ、これは夢なのだろうか。
とんだ悪夢である。
「なんだってんだ!!? ちくしょう!!!!」
夢の中だとしてもこのままじゃズタボロにされるのは死ぬほど悔しい。
だがこの戦力差は覆しにくい。
なんだよ、生身の人間相手にミサイルにバルカンって。
あの武田観柳以上の外道に間違いないだろう。
だがこのままでは悔しいが間違いなくヤラレル。
こんなやられかたは正直かっこ悪いしあの女に一矢報いなければこっちの気も収まらないというものだ。
家の中を飛び交う弾幕の嵐をちゃぶ台を盾にしながら虎視眈々と勝機を伺う。
それにしてもどうしてこんなことになった?
俺が何をしたってんだ?
喧嘩屋家業でいろんな奴から恨みを買われてきたのは自覚しているがこんな銃撃、爆撃されるほど恐ろしい恨みを買った覚えはないと思うのだが。
そのとおり。沖田の恨みなど買ってはいない。
おまえさんの食い逃げのツケがたまりにたまっていたのが悪い。
だからこんないかれた女がおまえを追い詰める事になったのだ。
自業自得ともいえるだろう。悔い改めてほしいと思う。
「隙あり! 必殺、沖田さんアタ――ック!」
オキタ・J・ソウジが菊一文字ブレードを煌めかせながら左之助に切り込んでいく。
ジェットの勢いをつけたこの一撃まともに食らえば有象無象の輩など瞬く間に倒せるだろう必殺の一撃。
左之助は躱せない、いや躱さなかった。
なんと顔面で受け止めるという馬鹿げた戦法を繰り出したのだ。
これにはさすがの沖田さんも思わずギョッとしてしまう。
「ってぇえな! なにすんだ!
このすっとこどっこい」
左之助の自慢はこの人並み外れた驚異的な耐久力だ。
馬鹿みたいに頑丈な身体は並大抵の攻撃など跳ね返してしまうのである。
ーーーー肉を切らして骨を断つ。
彼女の細腕をがっつり掴み離さない。
そしてお返しとばかりにそのまま背負い投げで彼女を勢いよく投げ飛ばした。
えっ!?ちょっとまったまったまったぁあ!!とあたふたする沖田。
しかし丁度ジェットの調子も悪くなり空中で体勢が整えられない。
えっえーーーーー!!!!?と大きな叫び声を上げながらぶん投げられてしまった。
「いたっ、あたっ、ひぃー!あいたたた……」
しかも投げ飛ばされた先にあったノッブによく似たハニワの置物に思いっきり頭をぶつけて悶絶してしまった。うぉおっと頭を抱えてゴロゴロ地面を転がり回る。
これは痛い。
「んな玩具みたいなもんの剣ではな。剣撃は魂がこもっていないんだ。
剣心の龍槌閃に遠く及ばねえよタコ」
中指を立ててメンチを切る左之助。
頭からピューッと派手に血が吹き出ているのが少しダサいが一矢報いた。
「いたた。いやぁ正直舐めてかかりすぎましたね。
ただのチンピラレベルのバーサーカー男と思っていたらこれはなかなか。
まさかガッツ持ちの耐久タイプで体力が減ると攻撃力が上がるなんて。土方さんみたいな人でしたか。
評価を改めますね。あなたの強さは今現在でいうとそうですね・・・・・・デカノッブ3人分というところでしょうか。相良左之助とノッブ。ふむ。サノッブというのが妥当でしょうかね」
たんこぶのできた頭をさすりながら沖田は朗らかに笑いかける。
服装がいつの間にか水着からダンダラ模様の羽織を羽織っていた。
「緋村さんが評価しているのもまぁなんとか納得しました。
でもこの程度ではまだまだですね。
この先の戦いには戦力不足です。サノッブはいりません。
もっと種火を食って霊基再臨して強くなってから私の前に立ってください。
そしたらお遊びじゃなくて本当の真剣勝負してあげますから」
沖田がお尻の埃をポンポンと落としながらすくっと立ち上がった。
「緋村さん以上の技 特別に見せてあげましょう」
ーー縮地を発動する。神速を超えた超神速。
左之助は目を離してなどいなかったし意識をそらしてなどいなかった。
にも関わらず左之助の視界から一瞬で姿を消した!?
ジェットじゃない。本当の彼女の体術の奥義。
信じられない。マジかよ。
これは嘘だろオイ。剣心を超えるスピードなんて存在していいものじゃない!?
あいつは一体何者だ!?
「どこを見ているのです? ……こっちです。
我が秘剣の煌めき。受けるがいい!!」
ーーーーー無明三段突き(むみょうさんだんづき)!
ガッツの切れたバーサーカー左之助ではこれは耐えられない。
意識が一瞬でぶっ飛ぶ。
完全な敗北を突きつけられてしまった屈辱と敗北感だけが消えず残ったのだった。
◇◇◇
「ということがあって目が覚めたら家財全部なくなっていやがった。
びた一文残ってねえ」
左之助が起きたのは昼過ぎ。
彼の家はあちこち蜂の巣だらけになり彼の少ない有り金までなにもかももってかれていた。
唯一残っているのはノッブに似た埴輪のみだった。
呆然としていたところに剣心がやってきて現場検証をしてみる。
「んーー左之の傷跡から見るに間違いなく下手人は新撰組一番隊組長沖田総司だろう。
三段突きの後がくっきり残っておるし・・・・・・だが沖田がミサイルにバチカン?おぬし酒に酔ってたんじゃござらんか?」
「嘘じゃねえ!!あのいい歳こいた水着女がミサイルをぶっ放しまくりやがったんだ!!
30歳超えたあの女が水着なんて着て!年甲斐もないとんでもない痴女だった」
くやしさから拳をガンガン地面に殴りつけながら沖田の悪口を垂れ流す左之。
まぁまぁと落ち着かせながら剣心はふと空から飛来してくる物体に注意を向ける。
「なるほど。ミサイルとはこんな感じでござるか?」
「そう。コレ」
二人に向かいどこかから光子ミサイルが1000発ほどぶっ放される。
沖田の可憐な水着を馬鹿にするからだ。
おろっーーー巻き添えを食らった剣心はそこから全力で逃げ出す。
そして剣心に併走しながら逃げる左之助。
「幕末ってのは恐ろしい奴らばかりだったんだなオイ」
「少なくとも拙者の知っている幕末は世紀末ではなかったでござるよ!!」
どかーーんと大きな爆発が起き。
クレーターの中心で剣心も左之助もやけこげボロぞうきんになっていた。
そんな二人を見て新撰組三番隊組長はコロッケそばを食いながらおなじみの台詞を吐き出す。
「阿呆どもが」
本日の教訓。
女性の水着姿は褒めましょう。
飲食店にツケはしっかり払いましょう。
沖田さんはかわいい。