マテリアルズRebirth   作:てんぞー

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カミング・ウィズ・ザ・ドーン

 日の出が出てくるのと同時に、廃墟都市を挟む様に二つの陣営がその姿を並べていた。朝日を浴びながら鈍い鉄色に輝く機械的な姿を、管理局側のカメラやサーチャーは姿をとらえていた。一分ごとに更に数を増やし、地平を機械で埋めて行くガジェットと名付けられた彼らの姿に終わりはないように思えた。それだけ、ガジェットは大量に存在し、そしてその数を増やし続けていた。それに対応する様に管理局側も持てる人員と、そして導入できる人員全てを持って整列していた―――だがその数はガジェットの総数と比べてこの時点ではるかに少なかった。

 

 戦争とは人数である。故にこの時点での管理局の不利は避けられない事実だった。それ以前に管理局が人間を使って戦い、そして魔法を武器としているのに対して、スカリエッティが使っているのは機械と、そして魔法へのアンチとして存在するAMFだ。故に最初から不利だという事実は解りきっていた―――特に地上本部のテロに対して防衛を行っていた魔導師達は、その性能差を自身で感じ取っていた。

 

 だからと言って、そこに震えながら終わりを待つ者は一人として存在していなかった。戦えるものが全員その場には存在していた。ガジェットが集まりつつあるという報告を受けてから数時間後には空・陸、そして聖王教会騎士団の混成部隊が布陣してあった。確実に古代の戦乱以来の大戦以来の大規模な戦闘行為だった。今まで管理局がまさに恐れていたような状況だった。

 

 だからと言って諦める理由になりはしない。

 

 

                           ◆

 

 

「壮観ってやつやなぁ……」

 

 そんな言葉を零しながら前方に広がる光景を見る。そこには何十、何百人という武装局員の姿が存在していた。だがこの数の武装局員でも今現在管理局がミッドチルダで出撃させられる総数のうちの一割程度もない。それでも目の前には数百人の武装局員が―――全員が自分に従うと思うと改めて壮観だと思う。

 

「大隊指揮官資格はそりゃあ試験で取っておけば有利やし取っておいたよ? せやけど実際にこうやって数百人一度に指揮する時が来るとは思わんかったなぁ……」

 

『はやてちゃん大丈夫ですか?』

 

「へーきへーき。やる事はそう変わらんしある程度話は事前に通してもらったからぶっつけ本番って訳やないし、むしろ状況としてはこっちの方がある程度自由に動き回れるわ。こっちの事を配慮してくれた中将には感謝せんとなぁ……嫌われてるやろけど」

 

『はやてちゃん……』

 

 ユニゾン状態のツヴァイが呆れた様な視線と声を送ってきているのが解る。そんな事をされてもレジアスが此方を嫌っているという事実に変化はない。何せレジアスにとってこっちの存在は目の上のたんこぶだ―――まあ、それもある意味今の状況のおかげで改善されつつある。共通の敵が出現すれば人類は団結する。一体誰の小説のセリフだったろうか。そんなフィクションめいた言葉が現実になるとは思いもしなかったが。まあ、制約は確かに存在するがこの状況は好機だ。

 

「機動六課を含めて、陸士武装局員約二百三十二名私の指揮下で戦わせる事が機動六課を好きに動かす事の条件、か」

 

『これ、矛盾してません?』

 

「別に矛盾してへんよ。此方に好き勝手やる権利と同時にある程度の責任を押し付けてきたんよ」

 

 リインとの適性めっちゃ高いけど、どっかの馬鹿みたいに融合レベルじゃないからなぁ……。

 

 ツヴァイには口で説明する必要がある。これがイストであればユニゾン中、考えるだけで思考を共有できるので非常に楽なのだろうが、それとはまた別にどうして正気を保ったり、混ざったりしないのかも不思議な話だ。ユニゾンデバイスのロードとして、そこらへんの危険性は理解しているのだが、やはり真正のベルカには常識が通じないのだろうか。身内で言えばヴォルケンの様に。……ただなのはを見ているとベルカじゃなくて個人の問題じゃないかと思えてくる。昔は真面目な子だったんだけどなぁ、と思いつつも、

 

「ええかリイン。ぶっちゃけるとな、私達今首輪をつけられた状態なんやで?」

 

『そうなんですか?』

 

「せやで」

 

 実際やっている事は非常に解りやすい。

 

「機動六課は好き勝手やっていい。せやけど面倒を見させる大隊を此方に寄越す。つまり好き勝手やり過ぎて崩壊したら全部お前の責任だぞ、と。言葉では伝えないけど此方の良心を利用して動きを止めに来とるわ。どう理由をつけても与えられた部隊を壊滅なんかさせたら私の首が飛ぶわ。だから好き勝手はさせる、ただし陣営として被害が出ない分には―――つまり確実に私や一部の特級戦力を確実に戦陣に加えられるような手段やな、これは」

 

 大隊指揮官資格を機動六課で所持しているのは自分だけだし、与えられた部隊だけで運用するなんてことは絶対にできない。全体の生存率を上げるためにも此方の戦力と与えられた戦力を二つ共混ぜて上手く運用する事は必須だし。まあ、つまり自分が前方でズドンズドンする事は出来ず、後方からズドンズドンする機会が増えたと考えればいい。それに悪い事ばかりではない。そう、悪い事ばかりではないのだ。

 

『なんだか味方で足の引っ張り合いをしている気がします……』

 

 ツヴァイの言葉に思わず軽く笑いを零し、

 

「そんな事ないでリイン。ぶっちゃけた話、私らよりも階級が上の人って結構おんねんで? なのにまだ十八、十九の小娘に資格持ってるから言うて普通は大隊預けたりせんわ。ま、確実に直接交渉してくれた連中がおるんやけど……ま、まずはバックだとして―――それ以外は、な?」

 

『誰なんです?』

 

「そこは宿題や」

 

 えー、と声をツヴァイが漏らしてくるが、それを軽く聞き流しつつ脳内でプランをくみ上げる。いや、プラン自体は既に組み上がっている状態だ。ただそれが通じるかどうか、不備はないか、それを何回、何十回、何百回と脳内でシミュレートしている。ただそれはどれだけシミュレートしても意味のないものであるとは理解している。完璧にしようとすればするほど、スカリエッティの用意している不確定要素によって未知数が増えてしまう。だから作戦には臨機応変に動けるように柔軟性を残さないといけない―――めんどくさい。

 

 だがそれを差し引いても送られてきた大隊の、その中に混じっている魔導師の実力は嬉しい。エース級だけではなく半ストライカー級とも言える人材が送られてきた中には混じっていた。これであれば間違いなくなのはやフェイトを自由に動かす余裕が出来る。ライトニング分隊とスターズ分隊も配置してきたし、ギンガとルーテシアもいる。状況はむしろやりやすいと考えた方がいいだろう。戦力増えているし、自由に動かせる人員が増えたと、そう解釈していいのではなかろうか。ともあれ、なのはとフェイトには中隊を指揮する資格を持ってないので、代わりに入れた中隊長に連絡を入れなくてはならない。

 

 まずはライトニング分隊を配属した方の中隊へホロウィンドウを出現させ、そして通信を入れる。データやら何やらで姿は知っているが、こうやって合流したり顔を合わせるのは時間の都合上、初めてになる。ここは一発ガツン、と決めた方がいいのかもしれない。そう思い、ホロウィンドウを付けた瞬間、

 

『―――幼女様だぁ―――!!』

 

「……!?」

 

 ホロウィンドウの向こう側が盛大にお祭り状態だった。

 

 

                           ◆

 

 

「もう嫌だ、実家に帰りたい。助けてティアナさん、スバルさん、ギンガさん! フェイトさんじゃ役に立たないんだ!!」

 

 そう声に出して叫ぶが、声は届かない。それどころか周りは緊張感に包まれるどころか熱狂していた―――集団の先頭に立つルーテシアとキャロの存在に。アイドルを通り越して宗教的勢いに達しているキャロとルーテシアの幼女信仰的何かは二人を肩に乗せて担ぎ、盛大に見せるという崇める行為に及んでいる。頭が痛い。胃が痛い。

 

『何や平和そうやし大丈夫そうやからそっちはノータッチで良さそうやな』

 

 音源へと声を向ければ中隊長がはやての顔を映し出しているホロウィンドウに向かっていい笑顔でサムズアップを向けていた。中隊長の横へと迷う事無くダッシュし、ホロウィンドウを両手でつかむ。

 

「八神部隊長! 助けて! 助けてください! 今からでも遅くないから比較的に頭のおかしいティアナさんと僕を交換しましょうよ! ねえ!」

 

「問題ありませんよ八神部隊長!! 我ら一同、キャロ様とルーテシア様の為に命を捨てる所存!」

 

『うん、何というか本部の連中、問題児しか送らなかったという事は理解できたわぁ……。というか経歴欄がやけに空白多いな、と思っとったけど、確実にバレない様に隠しとったな。というか芸風的になのはちゃんの教え子……? まあええわ。では中隊の指示の方をお任せしますわ。此方は大局を眺めつつ指示出すので』

 

「お任せください八神部隊長殿、我ら美少女の為ならいつだって全力です」

 

『んじゃまた後で』

 

 ホロウィンドウが消えた。いや、そうじゃない。横で必死に助けを訴えている部下の事をまさか今の上司は無視したのではなかろうか。い、いや、そんな事はありえない。八神はやては身内に対しては激甘だってフェイトもなのはも言っていた。だったらここにいる未熟で憐れな部下を見捨てる筈がない。迷う事無くホロウィンドウを生み出すが、

 

『Connection failed. Negative』(通信拒否されています)

 

「嘘だぁ……!」

 

 まさかの部隊長からのブロック行為という見捨てるような行為に頭を抱えるしかなかった。いや、作戦が開始すればまず間違いなくこのブロックも解除されるのだろうが、それまでに行われる同僚からのハラスメント行為や蛮行を考えるだけで頭が痛くなってくる。横の中隊長は何故か物凄く羨ましそうな視線で此方を見て来るし。

 

「私もあと二十年若ければなぁ……ハンティング側に回っていたのだが」

 

「そっちですか」

 

 最近どんどん心が荒んで行く気がする。こう、最初はもっと平和だったはずだ。キャロとルーテシアが先頭に立ってポーズを決めた瞬間全員はっちゃけた気がする。ここは一瞬でここがキチガイのたまり場だったのを見抜いたキャロとルーテシアを称賛すべきなのか、それとも一瞬で彼女たちを教祖に仕立て上げた部隊の手腕をほめるべきなのだろうか。誰か切実に教えてほしい。頼りになるはずの隊長陣ははやてを除いて”全員”姿を見せていない。あ、だがフェイトはいい。あの人は基本的にオドオドしているばかりで駄目だ。あとついでになのはも除外だ。たぶんアレが諸悪の根源。アレが現れるとキャロとルーテシアが大人しくなるのはいいのだが、その後で今までの倍はアクティブになるので更にヤバイ。

 

 結論、ヴォルケンリッター助けて。

 

「……」

 

 ぽん、と肩に手を置かれる。その方向へと視線を向けると、虚空からステルスを解除しながら人型の黒い虫が出現する。その姿はルーテシアの召喚蟲のもの、ガリューだ。数日前にひたすらなのはによる”胴上げ”を食らっていた事が記憶に新しいが、ガリュー自体本来はかなり強く、スバルとギンガを同時に相手にできる程度には強い。

 

 何でもルーテシアによれば超ベルカ人に格闘を教わったからだと、か。

 

「ガリュー……さん?」

 

 ガリューが何やら疲れ切った様子を見せながらサムズアップを向けてくる。何故か、その動作に今までの、何年分ものガリューが味わってきた疲れを感じた。そうだ、自分とキャロの付き合いはたった数ヶ月だが、この召喚蟲はルーテシアと軽く数年以上の関係なのだ。だとしたらその苦労はたぶん、自分の想像を絶しているのではなかろうか。ともあれ、

 

「ありがとうございますガリューさん、僕、あと少しだけ頑張ってみますよ。ガリューさんが何年間も耐えてきたんです……僕にだってできない事はないはずですよ」

 

 笑顔をガリューへと向けてから、再びキャロとルーテシアの方へと視線を向ける。何時の間にかヒートアップしている宗教団体は何か近くのセメントブロックを削ってキャロとルーテシアの像を作ろうとしていた。ものすごく器用なのはいいが、その技術の使い所は絶対に間違っていると思う。その器用さはもっと専門職か、これからの戦いで披露して欲しい。

 

 とんとん、とガリューが肩を叩いてくる。励ましてくれる相手がいると助かるなぁ、と思いつつ振り返ると、

 

【甘くみてると死ぬよ】

 

「……」

 

【甘くみてると死ぬよ】

 

 ”甘くみてると死ぬよ”と書かれたホロウィンドウを何時の間にかガリューが握り、此方へと向けていた。何を甘く見ているって、誰の事か、それをガリューに教えてもらう必要はない。というか話の流れにそこで高笑いを上げているバーサーカーの片割れに違いない。

 

「家に帰りたいなぁ……」

 

 機動六課って実は身内が最大の敵だったんじゃないかなぁ、と思いつつも目を閉じる。

 

 こんな時、

 

 元、似たような境遇だった鉄腕王はどんな風なリアクションを取るのだろうか……?




 おかしい。俺は戦闘描写を書いている予定だったのに何故茶番が増えているんだろう。

 あとガリュー先輩に敬礼。

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