マテリアルズRebirth   作:てんぞー

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クレイジー・ジャスト・クレイジー

「―――全ては予想通り。全ては計画通り。言葉にしてみれば実にすばらしい言葉だ。何故ならばそれはつまりイレギュラーが起きずに全ての未知が既知へと変換されつつあるという証だ。だが、それは楽しいか? 未知を既知に変える、それが一生の作業であるかもしれない。なるほど、確かに未知を想像し、それを既知へと変える事で人間は、人類は今まで”未来”を創造してきた。だが結局の所それは想像できる範疇内の話でしかない。私から言わせてもらえれば―――まあ、何ともつまらない話だよ。データ通り、計画通り、予想通り、予測通り、言葉は何でもいい。結局は”既知”であるという事だ。何ともつまらない事だろうかそれは。私から言わせればそんなもの腐っているよ。予想通りのプログラムなんてつまらない。ドラマにしたって、やはりプログラム通り進んでいる事よりも間に少しアドリブが入っている方が圧倒的に楽しい。それがそのまま番狂わせに繋がってもいい。あぁ、そう……ドラマ化やアニメ化で良くある改変、改悪であれ改善であれ、アレに関しては私は完全な肯定派だ。何故か解るかね? ―――見た事がない、からだ。いいかい、私の欲望とはつまり強欲、欲しがる欲望、求める欲望、尽きる事のない欲望。故に完成された事には、知っている事には一寸の興味もないのだよ」

 

 腕を広げながらモニターに映る戦争の様子を眺める。先ほど”猟犬”の侵入がアジトに感知された。おそらくこの中央制御室へと至るルートも後半刻以内には発見されているだろう。態々奇を狙って戦場の真下にアジトを作ってそこから指示を出していたわけだが、それを看破されたようだ。流石レジアス、もしくは聖王教会だろうか? 自分の事をよく理解している。楽しければそれでいい。欲望に従順なのだから”一番楽しそうな場所”を探せば自分はそこにいる。深く考えるから自分の事を見つけられないのだ。

 

 さて、と一息を付く。ウーノが聞き上手なので少し熱をいれて一気に話し過ぎた。本当はもっと大きなオーディエンスに自分のこの気持ちや言葉を分けてあげたい所だが、ごみを投げつけられる光景しか思い浮かばないので実に困った話だ。割と真面目な話をしていても直ぐにネタ扱い。これだから悪人は愉快過ぎて泣ける。特に悪い事してなくても悪いやつ扱い。せめて責めるのは悪い事をやっている時にしてほしいものだ。

 

「―――まあ、私は番狂わせが欲しいのだよ。圧倒的な武力や生産力、どう考えても管理局が勝てない環境を用意した。もし、もしもだ―――これを管理局が覆す事が出来たら実に素敵だと思わないかね? 古の超兵器を破壊してガジェットの生産を止め、私を倒して我が娘達を諦めさせ、そして聖王を倒して完全に戦いを集結させる。どこからどう見てもムリゲークソゲーの類だ。だがそんな困難を突破できる人材は間違いなく存在するし、そして用意してあるはずだ。その手も打ってきているのだろう? だとしたらいい、それでいい。私の―――ジェイル・スカリエッティという名は永遠に忘れられない存在として歴史に刻まれた。ざまぁ見ろ脳味噌ども、私は超有名人だぞ。……ふふふははは……さて、そろそろ始めるかね」

 

 モニターに映る姿は二つの巨大生物だ。その二つが出現してから戦場は一気に管理局側へと揺らいでいる。地上はベルカの騎士団によって一気に斬りこまれ、そして空中はストライカー級と、そして化け物による砲撃で殲滅されている。進行率が六十から一気に四十台まで落ちてきている。それは相手が手札を切り始めて来た事を表している。さて、ここで頭のいい人間であれば適切なカードを敵に弱点に叩き込む戦いをするだろう。

 

 それが賢い人間の戦い方だ。

 

 だがこのジェイル・スカリエッティは戦術なんて知らない。世紀の馬鹿だ。そう、愚か者だと言っても良い。端的に言えば戦術なんて糞食らえ。

 

「そう、楽しければそれでいいともさ―――望むまま、欲望のままに。そう、それが私の信条だ。私のスタイルだ。それでこその私だ」

 

 椅子から立ち上がり、右腕を確認する。そこにはガントレットの様なデバイスが装着してある。稼働確認は済ませてあるし、テストも済ませてある。故に後は稼働だけだ。つまり―――自分も戦える。それは実に、未知的だ。楽しそう。まあ、その前にやるべき事はいくつかある。

 

「まずはアレだ。ヴォルテールと白天王。アレをそのままにしておくのは実にムカつく。私は今決めたんだけど科学論者なんだ。だから自然の産物に科学の力を超えられるのは実に心苦しいって事にしておいてくれウーノ君」

 

「割と頭の湧いている発言ですが了解しました―――ナハトヴァールをヴォルテールと白天王へと向けて放ちます。以降リミッターや制御装置は完全に利きません、制御不能です」

 

「あ、ごめんウーノ君、そこ私が言いたかったところなんでいい所で邪魔しないでくれるかな。地味にここら辺映像撮ってるからほら、後々捕まった場合に備えてかっこつけるための映像の準備とかさ……」

 

「面倒なのでオフにしました」

 

 軽くかっこつけた意味は何処にあったのだろうか。若干鬱に入りそうな気持ちを何とか堪える。自分にスカリエッティはできる子、と言い聞かせながら軽く体を捻り、動かし、そして準備を完了する。それでは、と前置きをし、そして通信を製造したクローンと、そしてナンバーズ、そして知っている犯罪者全員へと繋げる。

 

「―――それではこれより全員の自由行動を認める。各々、己の欲望の為に最大限の行動をするといい。以上解散! 皆様良き戦争を! 良き一日を!!」

 

 聖王も、ゆりかごも、ナハトヴァールも、完全に自分にも人類にも手に余る代物だ。過去にはアルカンシェルでなくては破壊できなかった化け物を、人類は戦艦の助力無しで超えられるのだろうか? 自分達を抑える為に全兵力を動員している管理局に兵器を持った犯罪者たちを抑えるだけの戦力が残されているのだろうか?

 

 考えれば考える程に愉快でしかない。

 

 さあ―――切り札全部一斉投入だ。どう対応する、管理局。

 

 

                           ◆

 

 

「やっぱ来たな……!」

 

 巨大な姿が一つ、大地を突き破りながら出現するのを目撃する。杖を、そして夜天の書を握る手が少しだけ強くなる。前方に出現した巨大な姿を表現する言葉は一番正しく”異形”だ。金属的であれば生物的であり、そして鉱物的な装甲を持っている。それでいて巨大な口を持っていると思えばそれが体で、と表現するには難しすぎる姿をその存在はしている。只一つ確かなのはそれが完全な異形であり、その姿に見合う醜悪さを兼ね備えた生き物である事だ。

 

「ナハトヴァール……また見る事になるとは思わんかったで……!」

 

 リインフォース・ナルの製造の本当の理由はおそらくこれだ。ユニゾンデバイスの方がオマケで、本命がその闇の再現だったに違いない。多種多様のフィールドで身を守り、そして無限に再生し続ける究極の生物。なるほど、確かに極悪だが―――まだ戦う方法はある。

 

「任せたでキチロリーズ! 報酬はエリオや!」

 

 ホロウィンドウから返答の声が上がってくる代わりに背後の地上でヴォルテールと白天王の咆哮が響く。エリオからの悲鳴は迷う事無く拒否設定にして無視する。昔、十年近く前にナハトヴァールには皆で挑んだ上で、最終的には火力が足りなかったからアルカンシェルで葬る、という手段しか取れなかった。だが今は違う。ヴォルテールと白天王の火力であれば、

 

「十分殲滅可能や」

 

 廃墟を吹き飛ばしながら二体の怪獣がナハトヴァールへと向かって直進する。その肩の上に乗る小さな主を落とさない様にしつつも全力で二体は直進し、通り道のガジェットを全て吹き飛ばしながら到達する。先に到達したヴォルテールが慣性の乗ったパンチをナハトヴァールへと叩き込む。その姿がヴォルテールの一撃を受けて大きく吹き飛ぶ。一気にガジェット側へ、最前に吹き飛んでゆく姿を眺め、ヴォルテールが咆哮を響かせる。それを抜く様に白天王が一気にナハトヴァールの姿へと追いつく。そして、倒れたナハトヴァールへと向けて足を振り下ろす。ナハトヴァールの巨体がズシリ、と音を立てながら大地へとめり込み、砕く。

 

「―――!!」

 

 ナハトヴァールから触手が伸びる。それが踏みつけてくる白天王の足を掴むと、そのまま白天王の姿を転ばせ、そしてそのまま投げる。

 

「どこの怪獣決戦や」

 

『ゴーサインだしたのははやてちゃんです―――あ、あと周りから抗議の文章が』

 

「幼女けしかけるって言っておき」

 

『全員黙りました』

 

 ほら、皆幼女が怖い。

 

 リカバリーする白天王と向かってくるヴォルテールへと向けてナハトヴァールが巨大な口を開く。四足をしっかり大地へと固定し、そして口の前に貯めるのは巨大な魔力の塊だ。次の瞬間に何が放たれるかは解る。

 

「総員あの怪獣大決戦の繰り広げられているエリアから退避! 並びにあの大決戦が終了するまで絶対近づくなぁ―――!!」

 

 次の瞬間にはナハトヴァールから巨大な砲が放たれていた。まるで先ほどのダメージが通じてないかのように、無傷の姿を見せながら放った砲をヴォルテールが正面から受け止める。一瞬その衝撃で揺らぐが、正面から砲を受けきったヴォルテールは多少の傷を見せるも、余裕の姿を見せながら一気にナハトヴァールへと掴みかかる。その背後から白天王が追いつき、空間を振るわせるようなパンチを掴まれたナハトヴァールへと繰り出す。その一撃で爆風が発生し、周りの瓦礫が宙に舞いあがることなどお構いなし、そのまま二撃目を叩き込み、ナハトヴァールの巨体を抉る。

 

「任せても良さそうやな。んじゃ―――」

 

 と言った次の瞬間、ヴォルテールと白天王が両方ともそろって吹き飛ぶ姿が見える。素早く視線を戻せば、そこにありえないものを目撃する。それはナハトヴァールの姿だ。まず先ほどまで拘束され、抉るように殴られていたナハトヴァールは既にその箇所を半分再生し終わらせている。だがそれとは別に、その横には新たな姿が出現している。

 

「……んな馬鹿な」

 

 目撃するのは”二体目”のナハトヴァールだった。それが一体目の横に、大地をかき分けながら登場していた。考えられない事ではなかったが、それにしても十分に頭のおかしい事だ。

 

『はやてちゃん、フェイトさんから交戦信号受信しました! 位置特定しました! 同時にスバル、ギンガ、ティアナの三名が交戦状態に入ったのを確認しました。魔力反応を察知しました。敵陣中心点にてデータベース登録されている魔力波形を探知しました……照合……シュテル・バサラとレヴィ・バサラのものです!』

 

「うわぁー、私ってモテモテやなぁー。報告いっぱいくるー」

 

『現実逃避してないでください!』

 

「解っとる……解っとる」

 

 混乱しそうな脳を無理やり落ち着ける。混乱している部分をマルチタスクで切り離して、冷静な部分だけで判断する。現状はどうしている。六課の大半が同時に戦闘状態に入った。これは―――間違いなく狙われているからだ。じゃあその目的はなんだ。六課の壊滅か? いや、スカリエッティがそんな小さな枠組みにとらわれる男には見えない。現状此方側はなのはを抜いた全員が交戦状態に入った、という所だろうか。

 

 ……なのはだけ戦闘に入っていないという状況に何か意味はあるのだろうか?

 

「あー、考えても解らへん!! リイン、突っかかってくるやつははっ倒せって伝えるんや。んでエリオ君にはしっかりお姫様を守る様にな。たぶん、やけどレヴィとシュテルの二人は囮や。わざと派手にやって引きつけてくれてる。目的は……いや、確実に―――ゆりかごや」

 

 空に浮かぶ黒い戦艦を見る。何百人という魔導師が破壊する為に動いているというのに、まだその姿は揺らぐことを見せない。これが古代ベルカの最終兵器、というやつだろうか。考えてみればアレが戦場に出現してから、まだ一歩も前へと進むようなことが無ければ武装を使用している姿を見せない。

 

「リイン、連絡つくんならなのはちゃんへゆりかごへ向かう様に伝えておいて。私は―――」

 

 夜天の書を開き、そして杖を振りかざす。二対二という状況になってヴォルテール達とナハトヴァールの勝負は一気に膠着状態へと持ち込まれた。生物的に同じレベルの存在だ、両者は。―――ただナハトヴァールの方が再生力を含め、持久戦となれば敗北する可能性が濃厚になってくる。それ以前にキャロとルーテシアの未熟な体ではどれだけ持つか解らない。ここは自分が援護しに行きたい所だが、そうなると確実に指揮を放棄する必要が出てくる。それだけは絶対にすることができない。前線から人員を回してもらいたい所だが、ストライカー級を一人増やしたところでは全く力にはならない、むしろ無駄に命を散らすだけだ。

 

「がぁぁぁ! もう! めんどやなぁ!!」

 

 スカリエッティ側が一気に攻勢に出たのは理解できた。ただピンポイントで此方を狙いに来るとは全くの予想外だったが。おかげで戦力が不足している。今シャマルがヴォルケンの治療に全力を尽くしているが、それまであの怪獣タッグが持つかもわからない。

 

 心底戦力が足りない、そう思った瞬間、声が響いた。

 

「―――ほう、何だ。助けてほしそうな顔をしているな?」

 

 声の方向へと視線を向ける。

 

「久しいな、夜天の主」

 

 腕を組み、背後の羽を三色に染め、バリアジャケット姿に身を包む紫天の王の姿がそこにはあった。




 スカさんが妙にウゼェ回。

 ナハトさんが何時一体だけだと決めた。スカさんのシャイニングブラックな脳細胞だったら数年あれば2体ぐらい余裕に違いない。そんなわけで超怪獣大決戦始動。もはやどう収集付けるんだこれ何て状態に更に王様参上。

 ミッドチルダに未来はあるのか。

 そして犯罪者達のイメージは世紀末モヒカンなイメージのてんぞー。脳内で何故かアインヘリヤルが火炎放射器に変換される……助けて……。

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