「ぐぁぁぁぁっ!」
千歳が悲鳴を上げる。ハイGで震電偵は急旋回、震電無も続く。
しかし、震電無は完璧な後方占位、震電偵にペイント弾を発射した。
〔OK、テストは終了ですわ。1日に3度撃墜された感想は?〕
一〇〇式司令部偵察機の隣に、震電偵が並ぶ。その機体は、ピンク色のペイント弾で汚されまくっていた。
「ただのゲームです。どうって事はありません」
そう言う雪風の後ろで、千歳は呼吸を乱していた。
〔わたくし達に足りないのは、その化け物じみた性能だけですわ。今後の研究課題にさせてもらってもよろしくて?〕
川内が、ヘッドホンを羽黒に突き返す。
「あ、あの……いいんですか?」
「ああ……いいんだ」
「こんなのが、これからの空中戦なのかしら、ね?」
一〇〇式司令部偵察機のパイロット・矢矧が言う。後席の磯風も続く。
「そうなったら、私達は失業だな」
すると、熊野は左隣の震電無を見ながら言った。
「この戦争が終わったら、わたくしも失業ですわ……」
しかし、磯風が何かに気付いた。
「6時方向に深海棲艦!」
「こんなエリアに!?」
雪風は震電偵を左旋回させながら、一〇〇式司令部偵察機へ通信する。
「R-3からT-01へ。深海棲艦はこちらで引きつけます、至急退避を」
「待って! 私達だって武装していないのよ!?」
「そうです、でも足があります!」
雪風はスロットルレバーを押した。
〔緊急事態発令、緊急事態発令。エリアZH-382に複数の深海棲艦機、301SQスクランブル!〕
佐世保鎮守府から、零式艦上戦闘機 52型の編隊が緊急発進していく。
「雪風、佐世保鎮守府からSCが上がった! あと10分、いや5分は持ちこたえてくれ!」
震電偵はバレルロール、飛んでくるロケット弾をかわす。
「きゃーっ! きゃーっ!」
「千歳さん! 死にたくなかったらしっかり見張ってて!」
「ぐっ!? 了解!」
震電偵は左へブレイク、深海棲艦機のロケット弾の弾幕をすり抜ける。
「TX-1、離脱! コンバットエリアへ加速中!」
矢矧が報告する。見れば、一〇〇式司令部偵察機から震電無が離れていく。
「一体……?」
雪風はスロットルレバーを押す。が、その時、震電偵のエンジンが突然黒煙を吐いた。
「!?」
「どうしたの!?」
「エンジンが! 出力が上がりません!」
震電偵の速度が落ちる。雪風は必死にスロットルレバーを操作するが、エンジンが言う事を聞かない。
「後ろにロケット弾! 回避!」
千歳の叫び声に、雪風は振り返る。4発のロケット弾が、まっすぐ飛んでくるのが見えた。
回避しようが無い。雪風は悟った。
が、ロケット弾が当たったのは震電偵ではなく、震電無が切り離した増槽だった。
深海棲艦機は震電無を追尾、ロケット弾を発射した。
「TX-1、こっちに向かってくる!」
磯風が叫ぶ。そして、震電無は一〇〇式司令部偵察機を追い抜いた。
「こ、こいつ……!」
熊野が震電無を睨む。その時、磯風が叫んだ。
「ロケット弾がこっちに!」
そして、一〇〇式司令部偵察機は撃墜された。
「TS-1、撃墜。TX-1、再びR-3の支援に――」
そう報告する羽黒の横で、川内がコンソールを叩いた。
「ひっ!」
「エスコートは!?」
「げ、現在急行中!」
雪風は操縦桿を動かし、震電偵を急降下させる。
「千歳さん、カウルフラップを操作出来ますか!?」
「カウルフラップ!? え、ええ!」
千歳はカウルフラップ(空気取り入れ制御板)レバーを自動から手動に切り替えようとする。が――
「駄目よ! 動かない!」
「雪風がやります! 千歳さん、このまま降下!」
「ええ!?」
雪風はカウルフラップレバーと同時に、電気系統のスイッチも操作する。エンジン出力が上がらない原因として考えられるのは、カウルフラップが適切に動かず、それでエンジンが冷却されない事だ。
しかし、やはりカウルフラップレバーが手動に入らない。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
深海棲艦のたこ焼き型戦闘機の、12.7cm機銃の弾幕をかわしながら、千歳が悲鳴を上げる。
その時、3機いたたこ焼き型戦闘機の内1機が突然爆散した。
雪風は振り返る。そこにいたのは、右主翼を失った震電無だった。そして、震電無は自爆する。
雪風は計器を見直し、丁寧に操作する。
(怖がらないで、丹陽――)
そして、カウルフラップレバーが手動に入った。雪風は慎重にスロットルレバーを押し込む。
見る見ると海面に近付く。千歳は死を覚悟する中、震電偵は胴体下増槽を切り離した。
増槽はたこ焼き型戦闘機の機銃弾を受け、破裂する。そして撒き散った燃料にたこ焼き型戦闘機が突っ込み、制御不能に。直後、海面に突っ込んだ。
震電偵が1機、フェアリィ鎮守府 第6滑走路に着陸した。
千歳が救急車で運ばれる中、震電偵を迎えにきた川内が呟く。
「人間は必要無い、か……」
「何ですか? 川内さん」
「熊野っていうのが言ってたんだ。本当に、そう思っていたのかな、って」
「あの時――」
雪風が、震電偵のU字型水平儀を撫でる。
「丹陽が呼んでいたような気がするんです、雪風を」
「ん? 何か言った?」
「いえ」
雪風は微笑む。
「何でも」
特偵戦司令官・長門の個室――
「そうか。やはり、ラバウル基地の烈風のカウルフラップにも、破壊工作の跡があったか。至急、リストを作ってくれ。あと、これは極秘である事を忘れるな?」
"アカギーがいかれちまったんだ。突然、全てのシステムがこちらの指示を聞かなくなった"
"でも、飛ばしているあなたは、艦娘でしょう?"
"艦娘と機械と深海棲艦の戦い、か"
"雪風、アカギーが針路を変えた! 今すぐ脱出するんだ!"
"私は・・・艦娘よね?"
戦闘艦娘雪風 Operation.3 10月28日公開。
空に浮かぶ巨大な空母で、雪風は衝撃の光景を目にする。