01
震電偵と二式艦上偵察機が並んで飛ぶ。
その時、震電偵の液晶ディスプレイでカウントダウンが始まった。その横の大量のランプの中で、1つだけ点いている。「SUICIDE BOMB」、つまり自爆だ。
「どうして!? とにかく、自爆シーケンスを止める!」
川内は計器に触れようとする。しかし、雪風がそれを止めた。
「触らないで!」
「でも!」
「丹陽は、深海棲艦に捕まるくらいなら、自爆するつもりなんです!」
「お前……」
その間にも、カウントダウンは進んでいく。そして――
川内は目覚めた。座っているのは、震電偵の後席だ。周りを見渡しても、フェアリィの海と空が広がっているだけだった。
――戦闘艦娘雪風 Operation.5――
川内の自室で、彼女はブーメランの翼を削っていた。雪風は、ソファに座って眺める。川内は木屑を吹き飛ばし、その曲線を撫でた。
突然、視界が暗くなる。いや、突然暗い部屋に変わったのだ。家具も雪風も姿を消した。
キィという音に、川内は振り返る。その先には、開いた檻。
「雪、風……?」
突然ブザーが鳴った。川内は驚く。ここは特偵戦のブリーフィングルームだった。
川内は鳴っている電話を取る。
「はい、特偵戦」
〔川内さんですか?〕
それは、オペレーター・羽黒からの電話だった。
〔長門さんがお呼びです。司令センターまで来てください〕
「分かった、すぐ行く」
電話を切り、川内は椅子に腰掛けた。
エレベーターによって、震電偵は地上へ運ばれる。
「『出撃の目的が不明』……ひどく不安定だわ。困惑して落ち着かないみたい」
膝にノートパソコンを置き、震電偵のコクピットに座った千歳が言う。すると、雪風が計器を弄り、口を開いた。
「雪風から丹陽へ。情報分析行動を続行、機体の安全を最優先に行動せよ。これは明確な作戦行動である……心配しないで、丹陽」
すると、震電偵のエンジンの振動が小さくなっていった。千歳は驚き、雪風を見上げる。
「何をぐずぐずしてるんだ?」
川内が、エレベーターの方を見る。ここは、滑走路脇の原っぱだった。そこに、円卓とティーパーティーのセットが用意されている。
「待たせてすまないな、2人共」
長門が口を開く。すると、このパーティーのゲストである加賀と扶桑が応えた。
「構いません、長門」
「しかし、変わった趣向だと思いますけどね」
やがて、雪風と千歳がやってきて、パーティーが始まった。
「フェアリィ海軍最高司令官の加賀と、空技廠長官の扶桑に来てもらったのは、意見を聞くためだ」
長門の言葉に、ティーカップを持ち上げた扶桑が言う。
「意見、とは?」
「例えば、貴女達が霧島にさせようとしている、反乱について」
そして、フェアリィ鎮守府 中央司令センターでシステムダウンが起こった。
誰もが困惑する中、中央司令センターは爆発で吹き飛んだ。
地下居住区を走る路面電車が突然停止、そして車内から、一式半装軌装甲兵車が出てきた。人々が突然の出来事に立ち止まる中、一式半装軌装甲兵車は突然機関銃を乱射し始めた。
さらに特二式内火挺が主砲をぶっ放し、ビルを破壊する。
【Ise DEAD】
【Roma DEAD】
【Hatakaze DEAD】
【Mutsuki DEAD】
【Uduki DEAD】
【Sazanami DEAD】
【AREA WIPE OUT】
【WARNING: ENEMY TYPE NORMAL×8】
長門の言葉に、扶桑は俯く。そして、加賀を見た。その反応に加賀は頷き、扶桑は渋々口を開いた。
「彼女は、深海棲艦になろうとしていました。裏切りという、誠に人間らしい方法で」
「深海棲艦に……!?」
扶桑の言葉に、千歳が驚いた。
「情報戦とは、敵の懐に忍び込んで行うもの。彼女にとって、深海棲艦を知る事は何よりも生きがいだったのです」
一式半装軌装甲兵車が停車し、64式7.62mm小銃で武装した艦娘達が降りてきた。周囲を警戒する中、霧島が降りてくる。
フェアリィ鎮守府 中央司令センタービルが爆発で倒壊するのを見ながら、霧島は薄ら笑いを浮かべた。
その時、霧島はある事に気付いた。死体に血生臭さが無い……
フェアリィ鎮守府 第3滑走路から、烈風改の編隊が離陸していく。上昇し、やってきた深海棲艦戦闘機とドッグファイトを始めた。
更に、フェアリィ鎮守府のレーダー連動式25mm連装対空機銃や12cm多連装対空ロケット砲が迎撃を始める。
深海棲艦戦闘機の後ろに、無人の烈風改がつき、20mm機銃で射撃する。その残骸と流れ弾は滑走路脇の原っぱに突っ込み、炎上する。
燃え盛る炎の中で、長門は口を開いた。
「分かったか? これが、お前達の招いた戦局だ」
「……それでも、私達は知らなくてはならないのよ。深海棲艦とは何か、をね」
加賀は呟く。扶桑は周りを見渡し、こう言った。
「もう、いいでしょう。ここはもう、潮時のようですし」
長門は頷き、雪風を見た。そして雪風は、無線で震電偵に指示を出す。
「雪風から丹陽へ。ミッションをステップ2へ移行。当該データを削除し、安全を確保して」
【ROGER】
【Kaga】
【Fusou】
【Nagato】
【Sendai】
【Thitose】
【Yukikaze】
【DELETE】
エレベーターは下降し、震電偵は地下格納庫へ戻っていく。
そして、6人は消えた。