「パワーポイント内に必要量の核を置き、私達が通過した後で起爆する。後には何も残りません」
ディスプレイのCGを見ながら、扶桑がそう説明し、長門が付け加えた。
「上層部では、何十年も前から繰り返し検討されてきた事だ」
それを聞き、千歳は衝動で言葉を放った。
「早い段階で出来たのなら、何でもっと早くやらなかったんですか!?」
「……欲が出たんですよ」
扶桑が呟く。
「考えてもみてください。未知の惑星、見た事の無い環境、豊富な資源……余りに魅力的過ぎた。でもそれも、深海棲艦の作った、幻だった訳です。いや、もしかしたらこの星そのものが深海棲艦だったのかも……」
そこへ、大淀がやってきた。
「長門さん、川内さんからお電話です」
長門は受話器を受け取る。
「私だ……何? 丹陽が?」
アマギー格納庫――
「ええ、帰投後すぐに憲兵隊が。整備員すら近付けなくて」
川内はちらりと震電偵を見る。しっかりとロープで固定され、四式自動小銃を手にした憲兵隊が囲んでいた。整備員達が話をするも、憲兵達は取り合わなかった。
長門は受話器を大淀に返し、扶桑を見た。
「地球への手土産に震電偵の情報を――そんな魂胆か?」
それを聞き、扶桑はゆっくりと口を開いた。
「あれの情報を持ち帰る事が、唯一私が出来る、死んでいった者達への弔いですから」
雪風は震電偵を見ていた。しっかりと固定され、もう飛べないようにも見える。が、雪風にははっきりと分かる。
丹陽は、まだ飛べる……
「やっぱりここか」
声がし、雪風は振り返る。そこには川内がいた。
「せめて整備をって、あちこち回ったんだけど、取り付く島も無かったよ」
雪風は震電偵を見る。川内は、雪風をそっと見た。
「……まぁ、心配はいらない。ちゃんと丹陽と一緒に連れ帰ってやるからさ」
川内はそう言って、去っていった。
「キャリア1、前進します!」
「キャリア1、前進。ガンシップ隊は重防御態勢を保持しつつ、キャリア1を援護せよ」
無人の零式輸送機が加速し、二式大型飛行艇が弾幕を張りながら護衛する。
その時、二式大型飛行艇の電探の画面が異常な表示になった。
「何だ? 電探が急に……」
加古は計器を操作する。
そして、空が突然暗くなった。
「〈通路〉が消えた?」
浦風は辺りを見渡す。その頭上で、零式艦上戦闘機 52型が次々と爆ぜていく。
〔アマギー! うわぁぁぁ――〕
〔敵は何処!?〕
〔深海棲艦が辺り一面に――〕
パイロット達の悲鳴がアマギーの艦橋に響く。
「前衛の部隊は至急避難しなさい!」
飛鷹が叫ぶ。その横で、比叡が目を白黒させながら言った。
「あれ全部が……深海棲艦? ヒエェェ……」
遥か前方に、黒く巨大な物体。