「戦略偵察隊の彩雲そのものね」
「全く同型よ。しかし、未帰還機の報告も無い」
「では、これは何?」
フェアリイ鎮守 第3戦術会議室にて、査問会議が行われていた。暗い部屋の中、右腕を吊った雪風だけが立たされている。
「よろしいですか?」
「構いません、霧島さん」
手を挙げた霧島に対し、加賀が許可を出し、霧島が眼鏡をくいっと上げながら立った。その手には書類がある。
「『視認の後、交戦』とありますが、あなたはこれが、味方機とは考えなかったのですか?」
そして、雪風は応えた。
「丹陽は、敵だと言いました。ならばそれは、深海棲艦です」
部屋が明るくなり、大半の将校達が出ていく。そして、長い黒髪の女が、川内に説教をして出ていった。川内は敬礼し、雪風に会議室を出るよう促した。
フェアリイ鎮守府最深部の司令部エリアから、地下居住区へ向かうエレベーターに乗る。
「あいつらの顔を見たか? お前の言った事は、何処か図星だったんだよ」
エレベーターの壁に寄りかかった川内が言う。
「私も写真を見たが、彩雲のようで彩雲でない。そう、何処か違うんだ」
「だとしたら、あれは何なのですか?」
雪風が口を開いた。
「もしかしたら、日本からのスパイ機かもしれん。けど、そんなのは誰も口が裂けても言えない。ま、しばらく飛べないくらい我慢しろよ。代わりに私がこき使ってやる」
「じゃあな」
地下居住区にて、雪風は路面電車に乗る。川内は一言掛け、ただ見送った。
翌日から、雪風は川内の手伝いに駆り出された。書類作成に他の戦隊機の整備等々。その間、丹陽が格納庫に帰ってくる事は無かった。
査問委員会は何度か開かれ、そしてある日、川内は特偵戦司令である長門に呼ばれた。
「無人機、ですか?」
「ああ。海軍航空技術廠の作った、新型無人戦闘機だそうだ。特偵戦で、試験運用するらしい」
「受け入れの準備をしときます」
「それと、査問委員会の結果は、友軍機撃墜の証拠は見つからず、雪風は不起訴だと。つまり無罪放免だ」
「…………」
川内は黙っている。
「喜ばないんだな」
「喜んで、ますよ」
「また、丹陽に取られるからか?」
長門がコーヒーをすする。川内は敬礼し、司令室から去った。
〔R-7, Fairie control, request for landing.〕
「R-7, clearance for landing.」
特偵戦7番機が綺麗な三点着陸を決めた。フェアリイ鎮守府の移動式管制室の中から川内が出てきて、佇んでいた雪風に話し掛ける。
「飛べない気楽さを選んだつもりだったんだが、気楽とは程遠い。ちょっと付き合え、パーティーをやらなきゃな」