戦闘艦娘雪風   作:土居内司令官(陸自ヲタ)

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Operation.2
01


「ADC、チェック。TCS、チェック。ターボチャージャー、OK。吸気口可変ランプ、OK……」

 川内が、震電偵の最終チェックを行う。震電偵は、震電無にタンデム複座のコクピットを取り付けた有人偵察機だ。後部のナビゲーター席は回転するようになっており、後部旋回機銃の操作とサブパイロットの役目を担える。

 川内は震電偵から離れ、管制塔に発進準備完了を伝える。

「ランプよりタワー、R-3、離陸準備完了」

 震電偵のエンジンがより大きな音を立て、滑走路へ向かう。

 川内は雪風を見る。相変わらず、脳波測定装置を付けられた雪風は、だらんと車椅子に座ったまま動かなかった。

「雪風、丹陽がお前を置いて飛んでいく。悔しくないのか? 早く目を覚ましてくれ」

〔R-3, clearance for takeoff.〕

 見れば、震電偵がトゥブレーキを解除して離陸していく所だった。地面を毛嫌いするように、震電偵は離陸後、垂直上昇していった。

 川内は雪風の車椅子を押し、地下へ向かった。

「行こうか。丹陽の戦いを見に」

 

 

 

 特偵戦指令センターに、川内と雪風が到着した。すると、特偵戦ではない2人が長門に突っかかっていた。

「あんなものは、必要ないと言っておりますのに聞こえないのですか!?」

「熊野さん、言葉が過ぎますよ。長門さんも一つ考えたら――」

 そこへ、川内が割って入り、長門へ報告する。

「R-3、離陸完了しました。雪風に、ミッションの見学許可を」

「ああ、構わない」

 すると、ポニーテールの女性が川内の方を見、口を開いた。

「あなたが、震電偵の開発責任者ですわね?」

「一体、どちら様で?」

「海軍航空技術廠の――」

 説明しようとした霧島の言葉を、長門が遮った。

「海軍航空技術廠の熊野だ。震電無の開発者だそうだ」

 すると、熊野は腕を組み、川内に問い掛けた。

「納得のいく説明をいただきたいものですわ」

「一体――」

 すると、霧島は離れていった。

「熊野さん、一つ冷静に。特偵戦も、考えたらどうですか」

 そして、動かない雪風を見た。

「これ以上、痛ましい犠牲者を増やさないためにも」

 霧島は出ていった。

 

 一方、熊野は川内にまくし立てた。

「知らないとは言わせませんわ。無人機導入は、大本営コンピュータや連合艦隊司令部の決定事項ですのに、わざわざ有人機に改造するなんて。だいたい、この戦い自体、人間が戦う必要があるとは思えませんわ」

「それは……!」

 反論しようとした川内が、言葉を詰まらせた。彼女の頭に浮かんだのは、震電無を初めて見た時の雪風の顔だった。

「いつだって、戦っているのは、人間のはずなんだ……」

 そこへ、羽黒が決まり悪そうに報告した。

「あ、あの……R-3 丹陽、ミッションエリアに到達しました。ポイントRJ551、505SQは深海棲艦強襲群と交戦中です」

 

 

 

 ラバウル基地の南西4km地点で、ラバウル基地 第505戦術戦闘飛行隊(コールサイン・ドクダミ)の烈風改と深海棲艦たこ焼き型戦闘機が空中戦をする。

 たこ焼き型戦闘機が、烈風改の20mm機銃を喰らって撃墜された。

〔やったわ!〕

 3番機の黒潮が喜ぶ。

〔流石新型! 性能が段違いだわっ!〕

 1番機の陽炎も喜ぶ。が、次の瞬間には黒潮は愛機と共に爆ぜた。

〔黒潮ぉ! くそぅ!〕

 陽炎は操縦桿を左へ倒す。そこへ、浦風が警告した。

〔陽炎! 6o'clockにたこ焼き2機! ブレイクレフトや!〕

〔分かってるって!〕

 陽炎がスロットルレバーを押す。が、烈風改のターボチャージャーが突然火を噴いた。

〔!?〕

 陽炎の烈風改の速度が落ちていく。

〔陽炎! 何やってるんや! 速度上げやって!〕

〔エンジントラブルよこんな時に!〕

 陽炎は何とか復帰を試みるも、烈風改のエンジンは言う事を聞かない。

〔くっ、駄目だわっ!〕

 しかし、爆ぜたのは烈風改ではなく、たこ焼き型戦闘機だった。

〔!? 一体何が!?〕

 陽炎は周りを見渡す。そして浦風が、信じられないという口調で陽炎に伝えた。

〔……残りの敵機は、特偵戦機が撃墜したんじゃ〕

〔特偵戦? 何があっても高みの見物しかしないんじゃなかった?〕

 陽炎は見上げた。そこには、特偵戦の震電偵が飛んでいた。

〔とにかく、空域はクリアやで〕

〔そろそろ帰るか。ドクダミリーダーからラバウルタワーへ。エンジントラブルのため、緊急着陸を要請〕

〔了解したドクダミ1〕

 しかし、陽炎の烈風改と共に震電偵もラバウル基地へ方向転換した。

〔いんや、ちょっと待て。特偵戦機も着陸コースに入ったわ。おかしいなぁ、連絡は受けてないけど〕

〔ラバウルタワーよりR-3、クリアランスはされていない。直ちに反転せよ、R-3〕

 

 

 

 しかし、特偵戦指令センターの画面には、こう表示されていた。

〈R-3: mode AGG: RDY GUN〉

「あ、R-3、対地機銃攻撃用意……」

 羽黒が読み上げると、川内がコンソールを叩いた。

「ひっ!」

 羽黒が縮み上がる。そして長門が指示を下す。

「今すぐR-3に中止命令を!」

「出来ません!」

「どういう事だ!?」

 川内が、苦い顔をしながら答えた。

「作戦行動中は、外部からの指示は一切受け付けないように設計されていますからね。深海棲艦に解析されて無力化されたら、それこそ本末転倒だ」

 長門は唇を噛み締め、熊野は「馬鹿な……」と呟いた。

 

 

 

 陽炎は、震電偵のギアが降りていないのに気が付いた。

〔着陸体勢じゃない?〕

 

 

 

 そして、長い間動く事が無かった雪風の口が動いた。

「深海……棲艦だ」

 

 

 

 震電偵の照準器が、ラバウル基地エプロンに並ぶ零戦 52型の列を捉える。

 

 

 

「長門さん! ラバウル基地に退避勧告を!」

 大淀がそう伝える。が、長門は首を振った。

「間に合わない……」

 

 

 

 雪風の右手が挙がる。伸びていた右人差し指が曲がり始める。

 

 

 

 陽炎は叫ぶ。

〔止めろ! 気でも狂ったのか!? おい、止め――〕

 

 

 

 雪風の右人差し指が曲がりきった。

 

 

 

 震電偵の30mm機銃が火を吹いた。ラバウル基地エプロンに並んでいた8機の零戦 52型が粉々になり、炎上する。そして、複数の整備員が撃たれた。

 

 

 

 特偵戦指令センターに、静寂が走る。ディスプレイにはただ〈R-3: mission complete: RTB〉と表示されていた。

 川内は気付く。雪風が、ふらふらと立ち上がるのを。

 しっかりしない足取りで、雪風は指令センターの真ん中へ向かう。そして、大型ディスプレイを指差した。

「そこに、深海……棲艦が、いる……そこです! 見えないのですか!?」

 

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