夕方、学校にて今日が七夕だと気づいた作者。すべての授業が終わり次第急いで帰ったのが午後10時。風呂に入って執筆を始めたのが午後11時。書き終わったのが0:15。まだに七夕だと言い張って投稿。
pixivにもマルチ投稿してます
「―――はい、特製ざるそば二枚お待ち!」
人里の中心からちょっと離れたところにある食事処《 葉っぱ 》。そこで今日も俺は住人のみんなに料理をふるっている。
外来人である俺がこの幻想郷に来てからもう一年以上になる。最初は現代と幻想郷との些細な違いで戸惑うことも多かったが、なんとか人里のみんなに受け入れられてここまでやってきた。一人だったこの場所も今じゃ5人ほどの従業員を雇えるほどになった。
お昼のピークが過ぎ客足も少なくなりはじめたころ、とある二人のお客が来店した。
「おっ、ちょうどいい感じに空いてるな」
「邪魔するよ」
「慧音さん、もこたん、いらっしゃい」
のれんをくぐって入ってきた二人は俺の前のカウンター席に座り、給仕担当から渡されたお冷を飲みながらメニューを見る。
慧音さんともこたんはとある異変で知り合い、幻想郷に残る決断をした俺に支援をしてくれた。慧音さんは俺に食事処を作れるように手配してくれたり、この人里で俺が不自由しないようにしてくれたりと何かとよくしてもらっている。
もこたんは竹林で料理に使う食材の確保を手伝ってくれたり、俺が困ってないかよく確認してきてくれる。
二人から注文を聞き、調理に入りふと気になったことを聞く。
「今日はどうしてんで?食べにくるにしてもいつもより遅かったじゃないですか」
「いや、今日は七夕だからな。慧音に頼まれて竹とかを用意していてな」
「それで竹林で手頃なのを探していたんだがこんな時間まで付き合わせてしまってな。それで奢ろうと思ってな」
そうか、もう七夕だったのか。そういえば朝から子供たちの話の内容が願い事関連だったなと思い出し、自分にもこういった行事に目を輝かせた時期もあったなと思わず顔を緩ませる。それに気づいたもこたんが何を思い出してんだと聞いてきたのでいやちょっと懐かしかっただけだと返しておいた。
「よかったらお前も短冊飾りに来るか?」
今の時刻は休憩時間の未の刻、つまり二時になろうとしていた。
少し考え、ええ、行きますと答えた。
寺子屋の前で子供たちが短冊に願い事を書き、それを慧音に見せてから笹の代用である竹に括り付けていく。括り付けてある短冊を見ると「およめさんになりたい」や「まもれるぐらいつよくなりたい」などから「もこたんがもうちょっとやさしくなりますように」、「○○くんがすきになってくれますように」「慧音先生が頭突きをしなくなりますように」など色々なものがあった。
と迷いの竹林方面から明らかに時代が違うだろと突っ込みを入れたくなるようなブレザーに絶対見えるミニスカートを履いた、鈴仙が走ってきた。
ほほう、今日は紫と白の縞パンか・・・
「あっちゃー・・・これは怒られるな・・・」
と鈴仙に気づいた慧音が「遅いぞ、なにやってたんだ」と聞くとしょんぼりと永琳に色々教えてもらっていたと答える。
「まあまあ。こういう日に説教はなし」
「そうそう。集中してると時間忘れるって良くあることだから」
俺ともこたんが言うと、寺子屋の生徒の男の子が出来たー!と言いながら慧音に短冊を飾ってもらいに来た。・・・・・・机を乗り越えながら
「こら!机を乗り越えるな!」
「いいからいいからー」
慧音の注意をものともせず短冊を渡してくる男の子に慧音が生意気になって・・・といいながらもちゃんと受け取り、俺を含め他の三人が短冊をのぞき込む
「なになに・・・「寺子屋の授業が易しくなりますように」・・・」
妹紅が読み上げた子供らしいといっちゃ子供らしい願い事に慧音を除き一同苦笑いを浮かべる。
「授業をちゃんと聞け。以上。」
真顔で願い事をぶった切った慧音に鈴仙が思わずツッコミ、妹紅が慧音は頭が固いからね~と追撃をかます。
「・・・まあ、願うのは自由だからな」
「叶えてあげてよ。慧音次第でしょ」
目をそらしながら答えた慧音にまた鈴仙がつっこむ。まあ、教師って結構むずかしいからね・・・
さてと、俺は懐から大事そうに短冊を取り出し括り付けようとする。
「なんだ。急だったが短冊用意していたのか」
「あっ、その短冊・・・」
慧音が少し驚いたように聞くと鈴仙が何かに気づいたように駆け寄る。次に気づいた妹紅がちょっと苦いこと思い出すような笑みを浮かべる。
「まだ、持ってたんだな」
「ああ、俺にはこの小さいけど立派な願い事を引き継ぐくらいしか出来なかったから」
俺がとり出した短冊には「みなさんと一緒に生きていられますように」と拙い字で書かれた願い事が書かれてあった。
一年前、幻想郷中を騒がした大異変があった。後に「自然癒異変」と称されたこの異変は一人の小さな葉っぱの消滅を以って幕を閉じた。その時に犠牲になった小さな葉っぱは幻想郷の人達に深く影響を与え、俺は彼女の生き方を完全に真似出来なくても忘れないようにしようと決意し、彼女が残したこの短冊をこの日まで大事に保管していた。
・・・大事にこの日を待っていたのになんで七夕を忘れてたんだとかのツッコミはなしネ。
「それは・・・。そういう、ことか。・・・そうだな」
短冊に紐を通し、彼女への思いを込めていざ飾ろうとしたが、とある声がそれをとめた
「待ってください」
久しく聞いてなかったその声は俺の心と体を揺さぶった。俺だけじゃなく慧音たちも驚愕した表情を浮かべている。声がした方向へ向くと特徴的な緑の帽子を被った少女が歩いてきた。
「私の願い事も、私のものです。取られると・・・その、困ります」
近づいてきた少女が目の前で足を止めるとちょっと困った顔で言った。唖然とする俺たちに少女は続けて言った。
「○○さんは○○さんの願い事を飾ってください。・・・だから、その短冊は・・・私に飾らせくれませんか?」
その言葉にを聞いて、俺は自分の頬を涙が伝うのを自覚し、思わず俯く。
「ったくよ。急に出てきて・・・いうことがそれなのか・・・」
「え?え、えっと・・・」
俯く俺からの問いかけに考えはじめる少女。少し考えて出た言葉が「お、お待たせしました?」で思わず変わってないなと笑ってしまった俺はきっと悪くないと思う。
「バカ・・・。相変わらずとんちんかんなんだから・・・」
「でも・・・おかえり。葉」
袖で涙をぬぐい、俺も一年前の自然癒異変で消えた少女、瀬笈 葉に向かって笑顔で言った。
―———おかえり、葉ちゃん
―—————はい、ただいまです!
今年の七夕は去年に続いて忘れられない七夕になりそうだ。