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最初におかしいと思ったのは小学校の時だった、それはあくまで付きまとっていた優越感が確固たる疑問に変わっただけの話だけれど、自分が持っているものが個性とはまた違うものだということに気付いたのだ。
今更ながら良く気づけたものだなとも思うし、悪くも幼きながらに謙虚でいられたものだと我ながら感心している。
そんなことはさておき、自覚が芽生えるとともに力は失われ、否、分割され平均的に均されていくわけで、それは自分自身にとってはいい話ではなく、寧ろどんどん器用貧乏に近づいて行っているだけ。
終わりの見えない運命さんの掌でコロコロと転がされていただけなのかもしれない。
振り返って今考えてみると、弱小個性で使いようもないどうでもいいものを持った両親から生まれた旧世代で落ちこぼれの、劣性遺伝子を順当に引き継いだ子供が、すこしばかり強力なものを得たところで疑問を持ってくれるとありがたかったのだけれど…
やはり我が子は可愛いもので過大評価をしたくなるのだろうか?それとも自分たちが今まで持っていた劣等感を自分らの子供で晴らそうとしたのだろうか?毎日毎日、洗脳するかのように呪詛のような言葉を呟き、諭すように、言われ続けられて15年間。
無理やりに押し付けられた偶像への道は苦痛でしかなかったけれども、皮肉にもそれが両親にできる精一杯であり、望みでもあり、かけがえのない愛情だと知っていた。
前述で述べた通り、没個性でこの世を苦しんできた両親たちが、どんなにわが子に疎まれようとも引いてきたレールを、残念ながらいとも簡単に脱線してしまったわけだ。
大体、あの入試は不合理だ。例えば精神系の個性を持つ子はヒーローとして活躍できる可能性があるけど、あの入試ではよっぽど鍛えて金属バットやスタンガンとか振り回したり、パワードスーツとかサポートアイテム駆使したり、他の受験生を操作でもしたりしない限りほぼ100%受かることは無くあくまでも戦闘力を見るものだ。ヒーローとは言うが広告のついたボランティア活動なのに求めるものは富と名声、馬鹿馬鹿しい。
負け惜しみはさて置いて、確かにこの社会の花形になる道はもうないのだけれど、もし仮に両親の思いが叶ったところで幸せになるのかなんて不確定なのだ。
何というのかこの超人社会は些か度が過ぎるのではないか?
たかが栄光のある道から外れてしまっただけで(まぁ両親の過剰評価と井戸端会議などによる豪語のおかげで世間から白い目で見られてしまっている)、その脱線してしまった張本人はともかくとして、身を粉にして必死になって洗脳まがいのこととわかっていながら我が子のことを思い続けた人たちを巻き込むのは趣旨が違う話だろう。
気に食わない、気に入らない、気が気でない、気が立つ、気に障る、気が詰まって気が遠くなりそうだ。
うちの両親はちょっとあれだけれど、誰よりも優しくて、自分たちの事よりも子供のことを思ってくれるいい人たちなのだ。悪いうわさや期待外れだ、個性もおかしいのに高望みしすぎだと言わないでほしい、一番傷ついているのは両親なのだから、こっちが落ち込むのも馬鹿馬鹿しくなるくらい。
曲がりなりにも神童など天才など言われていたし、完全にアウトなこともやっちゃったわけで脱線はしたものの横転まではしていない、倍率300倍の振るいに落とされてはしまったけれど、倍率20倍の振るいには落とされずに済んだわけだ。(エッヘン)
というわけで何とかまだ機会はある、と思う。
簡単なことではないと思う、想像にもよらない苦痛や疲労があるだろう、完全に未知の領域だ、たった一度だけでいい、その機会があるだけできっと救われるものがある。運よく今年の人たちは注目を浴びている、話題性はここ10年で一位をぶっちぎる、敵の襲撃を受けるヒーロー科一年生って一体何なんだろうしかもほとんど被害なしで乗り切るなんて…ありがたいなぁ、全く。
お父さん、お母さんが信じて育ててくれたこの私は、こんなにも有能だった、「ヒーロー科に入らなくたって、ヒーローになることが出来なくても私たちの娘は立派に育ってくれました。」と両親が胸を張って前を向けるように。それが出来て私も
最高の結果が出た時こんな話をすれば大いに盛り上がるだろうし結構結構!いや~メディアに優しいな。
さて器用貧乏、超人社会に埋もれた超能力者のこの私【
HRが終わったようだ、さてそろそろ行きますか。
2
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろザコ、
はっはー、言ってくれるなぁ。おやおやヘドロの爆豪君じゃないか?流石はプロから将来を約束された人、自信に満ち溢れているというかなんというか…嫌いじゃないぜ?
「あ、ヘドロの爆豪君だ!」
「ああ゛!?」
1ファンとして近付こうと思ったけれど失敗、しかも逆鱗に触れてしまったようだ、目が怖い、というよりすごいあれどうやって吊り上がっているのかな?
とまぁファーストコンタクトは失敗したけどそれでも私はめげなかった。
私の能力の一つ
それは正確に伝えるときに限った話でぼんやりしたもの例えばイメージだったり送るときには近くに行けばいい、またオンオフ切り替えできるのが唯一の救いかな?ただ他の能力を使わないといけないのがネックだ。
利点としては今大人数の目の前で自分の思いを人知れずに伝えることが出来るくらいかな、正直言って今思いついた。
それはさておき強く念じる、能力2つ目
「あ゛!マジか!っておい、何のつもりだ?今てめェがやっただろ!てかおい、今何やった?」
まぁ、そんなゴミ能力も煽りには十分使える。
「さて、何の話でしょう?それはさておき、私は敵情視察に来たモブ等と一緒にしないでもらいたいのだけど、少なくとも私は……あんたたち選ばれたエリート共から頂点もぎ取るっていう宣戦布告をしに来たつもり」
ピリピリとした空気が張り詰めて私に襲い掛かる、比喩とかではなく本当に突き刺さってくる…精神干渉の副作用、一回使うと1分間感情が刃となり矢となり槍となり脳に土足を履いたまま容赦なく凌辱する、私から干渉するのは大して出来ないくせに回りからの干渉は嬉々として受け入れる、前言撤回、全くもって使えない。
まず、なんで言葉を精神干渉で言葉を伝えるだけでこんなにも苦しい思いをしなければならないのだろう?何か悪いことしたっけ、にしてもこの条件でだけ私への副作用が大きいのは腑に落ちない。
こんな人が群がっている状況での使用は初めてだ、今までで一番激しい。
えっとなになに、大胆不敵?そりゃどうも、それより静かにしてもらえませんかねぇ?
「どんなものかと見に来たがずいぶん偉そうだなぁ?ヒーロー科に在籍する奴は皆こんなやつなのかい?」
「ああ!?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ普通科とか他の科ってヒーロー科から落ちたやつが結構いるって知ってた?体育大会の結果によっちゃぁヒーロー科編入も検討してくれるんだって、その逆もまたしかりらしいよ…少なくとも
大演説ありがとう、ほとんど私ということ同じだったけれどやっと頭がすっきりした。
「隣のB組のもんだがよう!!敵と戦ったつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!!エラク調子づいちゃってんなぁオイ!!!本番で恥ずかしい事ンなっぞ!!!!」
にしても暑苦しい、不敵な人の登場ってわけか。
「待てコラ!どうしてくれんだ!てめーのせいでヘイト溜まりまくってんじゃねぇか!!!って爆豪お前何してんの!?」
驚くのも無理はない、なぜかというと爆豪君が私の顔を両手で挟みじっと見つめてきたからだ、何だい私に惚れちゃったのかな?それでも私は遠慮なく勝ちに行くよ、私のために。
「かっちゃん、それどういうこと?」
もじゃもじゃ君が話しかけるとより一層波が立つ、男の子の感情は単純で分かりやすいけれど理解しにくい、逆もまたしかり。
「あ゛、なんだろう?」
が、それでも爆豪君は私を見る、正確には私の瞳をのぞき込む。私に直接触れているからだろうか、伝わってくる怒りと焦り…そして私の精神干渉能力じゃ図りきれないもっと複雑な感情が不気味なくらいに静かに燃えている。これまた驚きだ、彼のようなタイプは自制心が弱いものだと思っていたが逆にしっかりと抑えられている、すごいの一言に尽きるな。
結構力強いんだね、痛いんだけど。
「関係ねぇよ……上にあがりゃ関係ねぇ」
「ちょりあえじゅ、てはなひておらへまへんか?」
とりあえず、手離してもらえませんか?
プロフィール
時尾 花架琉〈ときお かける〉
個性:超能力
サイコキネシス・サイコメトラー・テレパシー・予知・透視・飛行・幽体離脱・テレポーテーション・借力・イグニション・エンパス
等々たくさんできる優れもの?
得意不得意はなくどれも平均的に使うことはできる、だが使わないし使えない能力もそこそこポテンシャルを割り振られているため本人曰く扱いづらいし、突出したものもなく微妙。
何たるゴミ能力といいつつもなんだかんだで使い道を探す。