運命よ、そこをどけ。   作:明鏡止水

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『少なくとも私は……あんたたち選ばれたエリート共から頂点もぎ取るっていう宣戦布告をしに来たつもり』


 太陽をも彷彿とさせる橙色の髪はただ下ろされているだけなのに美しかった、決意を形にしたその可愛らしい唇は妖艶に、その動きだけで人目を引き付けていた、思いを秘めた切れ長の目は眼は、宝石のように炎々と輝いていた。

 


開幕

 

 雄英体育祭本番当日

 

「フハハハハハ!!!」

 

 私は高らかに笑っていた、周りの目線が痛いけれど気にしない。

 

 ところでなぜ私がこんなになっているのかと言うと、いうなれば計算が上手くいきすぎたのと、予測がものの見事に的中したからだ。それに加えて今日の私は絶好調、もう神が私に味方しているとしか思えない。

 

 この2週間、光の見えない勝ち筋と格闘し続けたり、奥の手の実用化に向けて幾度となく失神しかけたことも何もかもが下積みだと思えば苦労が報われれるというものだ、丁度今、この時のためにあるようなもの。

 

 そして今朝の突発的な思い付き、というよりは調子が良い時だけに発生する能力の暴発のおかげで面白いネタを発見することが出来たのも運がいい、もしかしたら鬼札以外にも切れる重要な札が手に入ったのかもしれないと思うとテンションは爆発的に上がった。

 

 公式チートだろうが穴は絶対にあるってことかな、私の予測が正しいならばあの時のことも納得がいくしそこに付け込むことが出来る、心の傷はなかなか癒えるものではない、時がたつにつれて塞がりはするけれども体の傷よりは格段に治るのが遅い。

 

 そこに付け込むって言うのはどうかなと思うけれど今日の私が最も重要視しているのは過程ではなく結果のみ、勝利することだけを至上として行動する、残留思念感応(サイコメトリー)を使うのも一つの手だったけれどもここは確実なネタが欲しかった、というわけで畜生にしか通じない精神干渉による洗脳で行動に移したわけだけれども、案の定1-Aはやらかしてくれた。

 

 やらかしてくれたというよりはもっと複雑なバックグラウンドや並々ならる思いの暴走、口にすることによっての決意を確固たるものにするという感じでもあったけれど、言わせていただこう、ごちそうさまでした、と。

 

 おかげさまで、光明が見えてきたって感じかな?

 

 これだからこういうシチュエーションは面白い、私のお年玉12年分もこれで報われるだろう。

 

 言葉を借りるのならば彼の言った通り、仲良しごっこの行事じゃない、私だって、私以外の普通科の生徒だって、サポート科だって、もちろんヒーロー科だって本気でトップを狙っている人たちがいる。

 

 私はヒーローを目指しているわけでもないし、それ相応の志なんて持ち合わせているわけもない、これは単なるわがままであって動機こそ不純極まりないただの復讐劇だ…そんな立派なものじゃないな、八つ当たりがふさわしい。

 

 超人社会で生まれ、個性を持たずに中途半端なものをもって生まれ、失われていく力と新たに得る使えるかどうかもわからない能力。例え使えたとしても、個性なんかよりも遥かに重いリスクを背負わなければならない、そして個性なんかよりもずっと弱い。

 

 そんな力は私を孤独にした。

 

 何かを得る度、失っていく度に、募るだけの焦躁と恐怖。

 

 使っている私自身が一番理解している、泣き言を言っている暇なんて終わった、そんなのとっくの昔に過ぎている。

 

 そりゃあ当然、皆のほうが上だよ、実力なんて大多数の人たちにかなわない、客観的にみても、主観的にみても、だからと言って諦める理由に該当はしない。

 

 

 だから、私は本気で獲りに行く。

 

 私がいたってことを知らしめるために。

 

 私の証を刻んでもらうために。

 

 邪魔をするつもりだったら誰であろうと容赦はしない、たとえそれが運命でも受け入れるつもりはない。 

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとしのぎを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?敵の襲撃を受けたのにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!!

 

 ヒーロー科!!

 

 1年!!!

 

 A組だろぉぉ!!?』

 

 

「1年にこんなに集まるなんて…」

 

 予想以上に想像以上、否が応でも見られているということを意識せざるを得ないわね。

 

「おやおや、カケルも緊張しているのかな~?」

 

 どうやら知らないうちに口に出ていたようだ、クラスでも比較的仲がいい子?に指摘される、緊張?そんなわけないじゃん。

 

 不覚もいいところだけれど流石にここまでの群衆が押し掛けてくるとは想定外、前後左右見渡す限りに男性が、女性が、ご老人が、子供が…人間が、所狭しと敷き詰められるところを見るとさすがに揚がりそうになる。

 

 

 完全に引き立て役だと認知していても、これほどまでに圧倒的で不自然な現象を目の前にするとどんな人でも平常な気持ちではいられないだろう。

 

 ひとまず、会話くらいは成立させといたほうがいいかな。

 

「そんなわけない、緊張はしていないよ。それよりあんたの方が緊張しているんじゃないの?」

 

「あはは、ないない、ほとんど無個性と同じあたしがそんな緊張をすると思う?だいたいさ~あたしとしてはバチバチにやりあうよりかエンジョイしたいんだよね~。それより花架琉は本当に出るつもりなの?」

 

「もちろん、じゃないとあんなことしないよ」

 

 あんなこととは前にやった宣誓布告のことだ、案の定大騒ぎになったけれどあれくらいで驚きすぎだろう、そんなんじゃこれから起こる出来事で失神してしまうかも。

 

「花架琉が何を隠しているのかはわからないけどさ、なんていうか…自己完結だけはしてほしくないなぁ」

 

「自己完結ってどういうこと?」

 

「そのまんまの意味だよ、一人で目標を達成して喜んだり、失敗しても自分のせいだってそう思って勝手に完結させちゃうこと」

 

「………」

 

 それはどういう意味なんだろう、私は少し黙って考えるけれど何も思い浮かばなかった、それよりも自己完結をして何がいけないと少しいら立っていた。

 

「ヒーロー科や心操君、他の人たちはやってやるぞ!って燃えていたり、この場所で実力を見せつけてやる!って人たちが多いと思うんだよね、けれど花架琉は少し違うと思うの…上手く言えないけれど崖っぷちにいて追い込まれている感じかな、後がないって思い詰めている、違う燃え方を…冷蔵庫で冷えていく水みたいな?」

 

 独特な例え方ありがとう。

 

 意味は分からない、が見透かしているような目が癇に障る。

 

「だからどうしたの?」

 

 だから、強い口調でそう返した、言っていることは的を得ているばかりに心は穏やかではなかった、お前が私の何を知っているのだというのだ。

 

「何も知らないよ、だから知りたい」

 

 また見透かしたかのように、彼女はそう答えた。ひどい目つきだったと思う、嫌悪感を露わにしまるでゴミを見ているような風だったに違いない、それでも彼女は笑っていた、それがひどく気に入らない。

 

「あたしが花架琉のことを知るわけもないし分かるわけでもない、でもさ、花架琉もあたしのことを知っているわけないしわかってくれようともしない。もう少しあたしのことを頼ってみてよ。どうせ利用できるものは何でも使って目的果たすんでしょ?だったら私も使ってくれていいんじゃないかな」

 

「断る、あんたに何かをしてもらう義理はない」

 

 

「冷たいなぁ……あたしたち友達でしょ?それにこんな面白いことする子ってなかなかいないじゃない?」

 

 

 このバカ、まったくもってひどく気に入らない。

 

 友達?いつなった。たかが2週間くらいで私のことを知ったかのように語って、何も知らないくせに、解るわけないくせに。

 

 

 

 

 最初からこんな子だった、無垢な笑顔でずかずかと勝手に人の領域に入ってくる身勝手なやつ。

 

 友達だなんて私はそうやって思われるようなことした覚えがないのに、面白いと思ったら何でも首を突っ込んでくる、まぁ嫌いな性格ではないけど。

 

 

 腹立たしいことこの上ない、というか、どうして私にそこまで固執するのか意味不明だ。

 

 そこまで興味があるものとは全く思わないけれど、しかしまぁ私みたいなのじゃなくてもっといい子と仲良くすればいいのに…そこまで言うのだったら徹底的に使ったように見せかけよう。

 

 フリだけしておけば、形だけしておけばそれでいい。

 

 それで満足してくれるのならいくらでも演技しよう。

 

「それじゃあ、遠慮しないよ。よろしく」

 

 カバンの中に入っていたはずのメモ用紙と筆記用具を取り寄せて、すでに済ませてあった確認事項を箇条書きに書いて渡す。その好意は非常にありがたいがこれは私個人の問題で、最初から最後まで自分でやらないと気が済まない。

 

 自己完結で何が悪い、他人の手を借りたら望む結果が出ても喜べないし、負けたら負けたで悔いが残る。それだけは嫌だ、自分に嘘はつきたくない。

 

「あははは、想像以上だね~。まさか本気とは思いもよらなかったよ、もし望みが叶ったら駅前の喫茶店で何か奢ってくれる?」

 

 そんなのでよければいくらでも奢ってあげる、私の領域に入ってきても邪魔しないならそのくらいは善処しよう。

 

 手札が増えるのは一向に構わないけれど、他人からもらったものを手札にするのは断じて断る、自分でそろえたからこそ使い時が把握できるし、どんな場面でも冷静に対応できる。

 

 教科書通りの感嘆詞を隣でぶつぶつと唱える様子を見るとおおむね満足してくれたと判断していいだろう。

 

 早速取り掛かってくれるとは健気なやつだ。そしておめでたいやつだ、ここまで一生懸命な感じを出してくれると少しだけ心が痛むけれど致し方がない。

 

 選手宣誓、爆豪君。

 

 自分を追い込むように宣言した、たった一言、その後ブーイングが会場を包み込む。大胆不敵でまっすぐなまでのトップへの執着心、私の最大の障害になるだろう、A組総勢巻き込んでの宣誓はその分大きく反響を呼ぶ。

 

 ふと振り返ると目が合った、彼女の笑顔が眩しい、楽しそうで何よりだ。

 

 この2週間で自分の手に余る武器まで使えることになったのだ、後は結果を残すのみ。

 

 何があっても何に変えても勝利だけは譲れなくなった。私には一か八かの道のりも新しい武器ならばならしっかりとした舗装道路にしてくれる…はずだ。そうはできなくとも明かりくらいは照らしてくれるだろう。

 

 これが終わったら、機会さえあれば彼女にきっちりと感謝を言おう、そして、こんなことで許してもらえるかはわからないけれど、すべて終わったらきちんと謝罪をしよう。

 

 彼女の好意が本物であることを信じて、そしてあんたの望みは私が出来る範囲なら叶えてあげようそれがどんなことでも私に出来ることはこれくらいしかないし。勝利の美酒に酔いしれた後できっと気分もいいだろうから。

 

 それに、駅前の喫茶店で奢るくらいじゃ等価交換にならないからね。

 

 

 

 

 

 

『さーてそれじゃあ、早速第一種目行きましょう、いわゆる予選よ!毎年多くのものがここで涙を飲むわ!!(ティアドリンク)さて運命の第一種目は……これ!!!』

 

 早速というよりか即行じゃないのかな?障害物徒競走、か。

 

 11クラス総当たりで外周一周(約4キロ)そしてコースアウトしなければ何をしても構わないのだとか、良く死人が出ないわね…それにしてもスタートが狭すぎる、私みたいなか弱い女の子がこんな密集地帯を潜り抜けるなんて厳しい。結構前の方でスタンバってはいるのだけれど押しつぶされるのがいいところかな?

 

 最前列までは約1メートルと少しくらいか、ならいけそう。

 

 合図は目の前にある3つのランプの1つが消えた瞬間、私は目を閉じ意識を集中させる。

 

 3

 

 2

 

 1

 

 今だ。

 

『スタート!!!』

 

 たった半径2,5メートルの瞬間移動、タイミングも精度もばっちり。

 

『さぁ始まった!第一種目は障害物徒競走!この特設スタジアムの外周約4キロを一周してゴールだぜ!!!』

 

 そしてそのままの勢いで颯爽と走り出す、4キロかぁ…体力もつかな?正直男子には勝てる気しないけれど先頭集団にいさえすれば安全圏内だろう、さて先頭集団はどこだ?あれれ~おかしいな見当たらない。

 

『ルールはコースアウトしなけりゃ何でもありの残虐チキンレース!!!各地に設置されたカメラが臨場感たっぷりにお伝えするぜ!』

 

 目の前には多分轟君(髪で判断したから定かではない)と後ろから聞こえる怒声によって挟み撃ち、一体全体どういうこと?2重の意味で。

 

 まず轟君?しか前にいないことは置いといて、目の前の巨大なロボットは一体何なんだ?疑問が多すぎて混乱してきた。

 

『さぁいきなり障害物だ!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ』

 

 障害物競走ってこんなのだったっけ?それよりこの数のロボット、お金と資源はどこから湧いて出てくるのだろう。こんなにお金があるのだったらあと一クラスくらいヒーロー科を増やしてあげればいいのに。

 

 大人の事情はさて置いて、こんなところで立ち止まるとはもったいないし時間の無駄だ、序盤から使うことになるのは癪だけれど出し惜しみしている場合じゃない。

 

 ロボットがどこを動くのか、その僅かな隙と私が対処できるだけのルートを把握、そして選択。

 

 前方は…ダメだ、どういう訳か知らないけど倒れてくる

 

 なら両脇は…もっとだめだ、ルートすら見いだせない。

 

 それならば前方、倒れる前に駆け抜けるまで。

 

 走り出したその直後、轟君の個性によって一瞬にしてロボットが凍てついた、成程だから倒れるんだ、そんな不安定な状況で凍らしたら必ずどちらかへ偏りが生じる。一瞬にして見破るなんてさすがの判断力、そしていい個性だなぁ、全く嫉妬しちゃうよ。

 

『1-A轟!攻略と妨害を一気に!!こいつぁシヴィ―!!!そしてその先を駆け抜けた普通科の紅一点、こいつは一体何なんだぁー!!!』

 

 いったい何なんだと聞かれても…私の名前は時尾 花架琉、雄英高校普通科1年、何の変哲もない超人社会に埋没した器用貧乏な超能力者だ。

 

 

 

 

『オイオイ第一関門ちょろいってよ!!んじゃ第2はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌ならはいずりな!!

 

 ザ・フォー――ル』

 

 解説はどこを基準にしているんだろう、やっぱり大多数の味方なのかな?これだから多数決は嫌いだなぁ、少数意見なんて無視されちゃうんだから。

 

 それと同じように私の前を進む轟君と爆豪君は今だ解説されていない、もちろん難なく第2の障害物にあたる前に轟君には抜かされたし、この綱渡りにつく頃にはペースの上がった爆豪君にもあっさり越された、身体能力の差を埋めるのは手厳しい。

 

 今回分かったことがある、どうやら私は根っからの負けず嫌いのようで、頭では未だにトップ3に入っているのだからこの調子でいいとは思っているけれど、体はそうはいかずにいつの間にか轟君と爆豪君を抜かそうと無理を押して追いかけている。

 

 その結果、頼りない不安定な縄の上を猛ダッシュし少しでも落ちそうになれば空中浮揚で浮き、それを阻止するということが続いている。

 

 正直気分が悪い…胃の中から何かが出てきそうな気もするがまだ使用時間も短いし、地上波でぶちまけるわけにもいかないとのことで何とか持ってはいるがこみあげてくる何かがあるのは事実だ。

 

『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!!先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するのかは公表してねぇから安心せずに突き進め!!!

 

 そして早くも最終関門!!かくしてその実態は―――…

 

 一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!

 

 ちなみに地雷!威力は大したことねえが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』

 

『人にもよるだろ』

 

 なるほど、これは先頭ほど不利かもしれない、けれど…私の目の前ではこんな障害無力だ。

 

 何故なら私には少し先の可能性(未来)が映るのだから。

 

『ここで先頭がかわった―――!!』

 

 言うなよオイ、轟君が一生懸命下を向いている間に死角からこっそり越したのに無駄足じゃないか。

 

 危なっ!!冷た…くない?あれおかしいな。

 

「ちょっと、轟君!?…酷くない?」

 

「……」

 

 無視かよ、私としたことがこんなところでわざわざしゃべって体力を消耗するなんて…急ぎすぎたかな。

 

「はっはぁ俺は―――関係ね―――!!

 

 てめェ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねェよ」

 

『またしても先頭が変わった―――!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!後続もスパートをかけてきた!!!だが引っ張り合いながらも…先頭3人がリードかあ!!!?』

 

 先頭三人って…確かに先頭にいはいるけれど男子に競り合いと徒競走で勝てるわけない、だからしっかり斜めに見えないように先に行っていたというのにアナウンスで知らせるとは私の健闘を妨害しにかかっているのかな?

 

「てめェ!この赤女、シレっと抜かしてんじゃねェよ!!!」

 

「っ!くそ、油断した…」

 

「ちょ、タイム!暴力反対」

 

 爆炎と冷気が私の足を止めるべく襲い掛かる、今私がどうにか対応できているは単に未来予測を使って地雷の回避と最短ルートの選出を行っているからであって、宙に浮いて地に足をつかないように浮きながら進む爆豪君とそれに注意しながら互いに引っ張り合う轟君がいるからだ。

 

 ちょっと轟君!?強引な男は魅力的だけど、今はその時じゃないよね!?

 

 そのうえ凍らされた!肩めっちゃ重いんですけど…

 

「生憎俺は男女平等主義なんだよ!」

 

「俺も俺の前を行くってんなら容赦しねえ」

 

 ちくしょう!爆豪君は仕方ないとして轟君くらいレディーファーストの精神を持っててくれてもよかったのに!

 

 そんなに私に構うのならばこっちにだって考えがある、先ほどから見えるものが君たちには見えないのだから。

 

「轟君、爆豪君、後方に注意!」

 

「「…は?」」

 

 

 その先の言葉を言う前に爆音が後方から飛んでくる、私が見たのはあくまで後方から飛んでくる飛行物体でその正体が一体何なのかは知る由もないけれど、私の言葉に反射的に反応し、確固たる証拠が突き付けられて2人の警戒心は一気に高まる。

 

『後方で大爆発!!!?なんだあの威力

 

 偶然か故意か―――――A組緑谷爆風で猛追――――!!!?』

 

 

 その物体はAはその勢いに任せてグングンと飛んで行く、轟君は氷結を、爆豪君は爆幕を張るけれど、勢いを弱めるだけで爆追を失墜させるのには至らない。

 

 しかし爆炎から判断したときに生じたエネルギーと重力加速度の前には人間が追いつけるはずもなくそのままどんどん差は広がっていき、ついには

 

『っつーか…抜いたああああ!!!』

  

「デクぁ!、俺の前を行くんじゃねェ!!」

 

「後ろ気にしている場合じゃねぇ…」

 

 おお、やっぱり早いなぁ…普通にあのまま競り合っていたところであの速さで駆け抜けられたらとてもじゃないけど対処できない、私を攻撃する意味あったのかな?なかった気がするんだけれど!いつかかならず仕返ししてやるからおぼえておけよ。

 

『元・先頭2人 足の引っ張り合いをやめ緑谷を追う!!共通の敵がいれば人は争いをやめる!!ただし争いはなくならないがな!』

 

『何言ってんだお前』

 

 さすがの私もこの暑苦しい男の戦いにちゃちゃを入れようとは思わない、私の到達点はここではないし、あの2人を相手に競り勝つなんてもってのほかだ、私はあくまで策を弄して勝ち筋を探していくだけで1対1でしかその効果を発さない、ましてやこの形式ではどうしても後れを取ってしまうから。

 

 過程(プロセス)は大事だ、でも結果(リザルト)はもっと大事。

 

『緑谷 間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原即クリア!イレイザーヘッドお前のクラスすげぇな!どういう教育してんだ!』

 

 おっと…これは驚いた、ばくついまでが緑谷君の最後のあがきだとは思っていたけれど、まさか最後の最後にもぼうがいこうさくを仕掛けてくるなんて…。

 

 今日は全く荒れそうなふんいきだ。ちなみに今になって肩にのしかかる氷がどれほどのダメージを与えているのか今知った、おそらくさっきはドーパミンやらエンドルフィンやらが出ていたから気付かなかったのかもしれないな、っととりあえず氷をこうおんいじで溶かして…と、個性で作った氷だから消えちゃうんだね、ふしぎだなぁ

 

『さァさァ序盤の展開から誰が予測できた!?今一番にスタジアムへ戻ってきたその男――――…

 

 緑谷出久の存在を!!』

 

 何が彼ををそこまでして突きうごかしたのか、一体全体わからない、けれどもその信念に一切のゆるぎはないはずだ。

 

 地味めの彼のけんとうはみんなの目にも焼き付けられたはず、流石は地味党(じみんとう)党首、緑谷君。君に対するけいかいはぐんと跳ね上がってしまったよ、その超パワーはきっと超ハイリスクハイリターンなのだろう。

 

 自身の身に余るその力はいまだに制御できないとみた、もし使えたらこんなしょうがいぶつ徒競走なんてぶっちぎりの余裕で一位を獲れるはずだからね。

 

 っとまぁ……やっと着いた。

 

 のうないまやくがドパドパ出ている状態でからだの感覚がまったくない、むしろなにも感じない。

 

 これは計算外、ここまでさいしょの競技で体と(超能力)をここまでこくしするとは思わなかった…今になってもひろう感と痛みが襲ってこないのが恐ろしい。

 

 現時点でどの程度のふかが脳にかかっているのか、からだの疲労からしてあとどのくらいのねんどうりきなら持つのか…アレ(奥の手)が使えるコンディションかいなか…この状態だったら、ふかくていようそがおおすぎる。

 

 

 ほんとうに実力がためされるのはここから、考えていたよりもずっと、よそういじょうに、厳しくけわしいみちのりだ。

 

 わたしができることといえば、まえに進むことくらい、この先がどんな道のりであったとしても、ただ進むことしかできない…なぜならわたしは、険しいみちをあるくしかないから。

 

 それしかのこされていないから。

 

 

 

 





 時尾 花架琉

 障害物徒競走4位通過
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