【東方戯曲台本形式】リベンジフルゴースト   作:三城朝海

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※妖怪の山……理想郷の一大勢力、その名の通り「妖怪の山」、裾野が広く高い、人間の里から見ると麓には霧の湖、中腹には風見の城である夢幻城、奥部には山のダム、見えない反対側にはさらに広大で複雑な山麓が広がっており、縦穴や岩山などに天狗を始めとする妖怪たちが社会を作り上げて生活している、大天狗よりもさらに上位の天魔がトップの自治組織

Chap.3


3. 集結

4、妖怪の山、大天狗と記者、白狼天狗、文と椛

 

裁判所前

 

記者1「山の勢力はもはや風見に敗北したのですか!?屈したのですか!?どうなんですか!?」

大天狗「まず……今回の裁判じゃが……例え山のしきたりで決められた法が……魔法薬物の持ち込みを禁じていたとしても……彼奴があの大妖怪の体制下に従事する者……ましてや人間ならば……罪に問うことは……妖怪ならば死罪でも……あり得ない……じゃ!」

記者2「それでは道理がおかしいでしょう!?妖怪が人間を殺すことをためらうなど、好機を逃すなど進んですることじゃない!やはり裏で風見が絡んでいますね!?」

記者3「おいおい……やべえんじゃねえのか?これ……」

記者1「あ、ああ、このままだと……まずいことになる」

大天狗「じゃから……山の皆は沈黙を保つように……」

記者2「沈黙なんてもってのほか!!……なっ!なんだお前たちは!?」

白狼1「山の警察の名のもとに、あなたを城まで連行します」

白狼2「よし、容疑者の身柄を確保、罪状は侮辱罪、及び体制反逆罪で逮捕する」

記者2「くそっ、離せっ!風見の犬があ!」

大天狗「あの烏天狗は……若かった……出る杭は打たれる……悲しいかな、それが理想郷の変えられない現状じゃよ……記者会見はこれで終いかのう?」

 

山、展望台

 

文「出る杭は打たれるんじゃなく、腐るんですよ。ストーカーですか、椛」

椛「千里眼を使いました。すみません、先輩」

文「何をしに来たのですか?山の警察も今日は非番ですか?」

椛「まだ哨戒中です。しかし皆やる気を失くしています。ただ命令に従うだけの組織と化しています。山は風見幽香に骨抜きにされました」

文「私は警告した記事を書きました。だが誰にも相手をされず、皮肉にも記事を目にしたのは風見です。組織に属さない私がどれほどの苦労をしたのか、あなたに分かりますか?」

椛「先輩の強みはそこです。フリージャーナリスト。集団に埋没することなく自由に書きたい物を書くことができるはずです」

文「つまり誰も守ってはくれないということです。職を失い、路頭に迷い、どれだけ惨めだったか。あなたに分かりますか、犬走椛……山の警官であるあなたに、飛べなくなった鴉の悲しみが理解できるのですか。無理でしょう。同情だけであなたは自分の組織を抜けることはできない、妖怪を辞められるわけがない」

椛「同情なんて、私はもう一度、先輩の新聞が」

文「だったらあなたが書けばいいじゃないですか!私ばっかりに頼らないで、風見に反抗する文章を白昼堂々大天狗にでも突きつければいい。風見幽香に見せて付けてくればいい!それで馬鹿にされるか殺されるような目に合えばいいんですよ!どうして分からないんですか。私はもう、新聞なんて書きたくないんですよ!」

椛「先輩!植樹祭の記事、覚えていますか?私と女の子の写真、忘れていないですよね?毛並みのせいで苛められていた私が初めて誰かに手を引かれた日でした。前々から接してくれていた先輩にも感謝しています。……女の子の村は人里の外れの貧民街で、五年前に焼かれ、あの時植えた苗木たちはご神木と一緒に炭に変わりましたよ。積み重ねられた焼死体の山から、焦げた枝木を見つけました」

文「あなたと少女が一緒に苗木を抱いているのが美しかったから、シャッターを切っただけです。それはただの棒切れかもしれないし、少女とは何の関係も無い枝切れですよ、きっと」

椛「先輩、あなたは一度始めたことを投げ出すような天狗じゃありません」

文「あなたは私を誤解しています……私の文は、弱い。今日まで音信不通であなたから逃げていて申し訳ありませんでした。風が冷え込んできたので、この辺で」

椛「先輩!……先輩……」

文「ついてこないでください」

 

5、 香霖堂、霖之助と霊夢と魔理沙、橙

 

霊「山のダム?」

霖「……三珠が人妖戦争の後に妖怪の山と一緒に作った貯水湖だ」

橙「うん、最近その近くで山ではご法度の薬物密輸の事件が起きたんだけどそれは置いといて……私が紫さまから任せられていたのは、山のダム周辺の地質調査だよ」

魔「地質の調査?何のためにだ、橙」

橙「主に地中の魔力……妖力、霊力も含めてその上下を調べろって。霊夢と魔理沙はまだ知らないかもしれないけど、この冬はもう三年続いているんだ」

魔「は?」

霖「それは僕から説明するよ。三年前、春がそろそろ到来するって時期になっても雪はやまず気温があがらず、そのまま春は過ぎ夏も理想郷は寒さに包まれたままだった。あの時は天変地異でみんな混乱したけど、それが三年も続くと不思議と違和感が無くなるんだ」

霊「……今が師走だから私たちも違和感が無かったわ。信じられない、これも風見幽香の計画なの?」

橙「それまでは分からないよ。紫さまはきっとこの終わらない冬について調査を進めているんだ」

霖「賢者様も後手後手だな。それで頼まれていた物だが、僕の在庫と君の神社の蔵から出てきた巻物を全部見てみた結果から割り出した、僕の考えた最強の設計図を用意した」

魔「こーりんはすごいぞ。あたしの必殺の八卦炉だって準備してくれたしメンテナンスもできるんだ。これが無い生活は考えられない」

霖「魔理沙、あまり僕を良いように使うなよ?……それでこれだ。見てくれよこの美しい紅、肌触りも最高級で、何より頑丈だ。“火鼠の皮衣”、名の通り伝説の獣の毛皮を編んで織られた一級品さ。平安貴族や戦国武将が求めてやまず、マルコポーロの東方見聞録の中ではサラマンダー、魏志や中国の古い文献では火浣布(かかんぷ)とも記されている代物だ。竹取物語の中でも、この衣を求める安倍御主人(あべのみうし)は後に陰陽師として有名になる安倍清明の先祖であって……」

魔「こーりん、長い」

霊「これを私の巫女衣装に?」

霖「ああ、ふんだんに使う、採寸は既に終わっているからあとは仕上げだ。それで君の蔵に眠っていた術式を、君の要望通りに応用できるようにした。君の母、三珠は洒落た名前の術式を残したものだな。恋文箱なんて」

魔「おお、恋する乙女としては聞き捨てならないな」

霖「恋人同士がお互いに手紙のやりとりを簡単にするために特定の2つの箱の中身を繋げてしまう術式だ。これは中身が手紙でなくても活用できるから幅が広がる。浮遊術式を仕掛けた道具箱同士を恋文箱で繋いでやれば、離れていてもポケットが二つの便利な収納庫の完成だ。君自身に浮遊術式は効かないのかい?霊夢」

魔「魔法使いでもない限り体内への術式投下は危険だ」

霊「巫女は結界に乗せて術式を張る。結界は元々浮くから具現化術式で中空にとどまることはできるけど、それで空中移動するのは採算に合わないわ」

霖「飛ぶための何かと、箱術式の改良が必要だな……残念ながら服の仕立はできても僕は道具屋。技術屋じゃない。何か良いコネでもできればいいんだが」

橙「それで、次に私は何をすればいいんだにゃあ?」

魔「急に猫被るな」

橙「式が外れたらただの野良猫に戻っちゃうんだにゃあよ」

霊「そうね。こっちは時間との兼ね合いだし。橙、安否も不明だけれど、探してほしい妖怪がいるの」

橙「……射命丸文、鴉天狗。これは妖怪の山にとんぼ返りにゃ」

 

6、霧雨店、若頭と会計、魔理沙、少年剣士

 

会議場

 

若頭「俺たちは風見には媚びねえ!親方の決めたことを俺たちが守り通す!それが霧雨店の意地ってもんだ!」

会計「そうはいっても、終わらない冬のせいで農産物や畜産業は壊滅、一次産業の衰退で私ら商人も上がったりです。現実を見てください、若頭。今、唯一の希望は風見が持つ魔界との交渉案件のみです。それが理想郷の商業の活路です。霧雨をあなたの代で潰す気ですか」

若「お前は計算が得意だ。それは知っている。だから会計を任せている。だがな、数字だけじゃこの世は測れねえ。霧雨への信用や愛着、商売ってのはお客さんありきだろ?それを裏切ることはできない。人間の里に手厚いことを、俺たちが手放すわけにはいかねえだろ?」

会計「私は計算が得意です。数字は風見の傘下に下ることを是として推しています。人間の里の警察を滅ぼした記憶が霧雨店を蔑ろにしても、魔界からの貿易流入はそれ以上の恩恵をこの店にもたらします。ここで働く者全員の生活を救います。それでも……」

魔「おうおう、熱い議論を交わしているとこ悪いんだが、親父はいるかい?」

若「誰だ……まさか、魔理沙ちゃんか!」

会「頭領の一人娘の!?」

店員1「え!?5年も行方不明だった、あの?!」

店員2「こりゃあ大ごとだ。今の若頭が仕方なく跡を継いでいるってのに……」

 

応接間

 

若「それで、こことは時間のずれた場所に居たから色々と年齢的に矛盾が起きていると……にわかには信じられない話だな……」

魔「星間旅行のタイムスリップ理論と同じだ。にしても、親父に一番しごかれていたあんたが霧雨を継いでいるとはな。あたしもびっくりだぜ……で、どうなんだい?親父の容体は?」

若「隠しても意味がないから正直に言うぞ、魔理沙ちゃん。親父さんはもう長くない。元からの病と、この寒さが原因だ。若い連中でも死者が出ている凍結だ。もう一年は……いや一月かもしれない」

魔「そうか、ありがとう。親父には勘当されても当の本人が病床に臥せていたら、こうして家に迎えてくれるあんたたちが温かいよ。実家ながら良い店だな」

若「……魔理沙ちゃん、もう一度、この店に戻る気はないか?君ももう大人だ。最期に親方と腹を割って話してみないか」

魔「あたしは親父の家と自分の夢を天秤にかけた。その時点で、あたしにとっての親父ってのがどの程度なのか分かるだろう?親ってのは偉大だ、子にとって神様だ。それを裏切ったあたしは苦しみ続けるしか道はない」

若「魔理沙ちゃん、いや、魔理沙、君こそ次期当主にふさわしい器の持ち主だ。真っ直ぐなのは良いことだが、君には真っ直ぐな若者には無い別の良さがある。君次第で、霧雨店は君を歓迎するよ。いつでもおいで」

魔「ああ……ああ、恩に着る。だけど物質的な援助はお断りだ。あくまであたしは個人営業主。あんたらとも仕事づきあいだけの関係にしておくつもりだしな。それでだ、何かあたしに回せる仕事があったら請け負わせてほしい。霊夢を貧乏巫女ってからかっていたらあたしが一文無しになっていたんじゃ笑えん」

若「その点は君のやり方に合わせよう。それで魔法使いの君に回せる仕事だが、良いのが一つある。いわゆる妖怪退治、北の鉄塔近く、玄武の沢に巨人が住み着いてしまいうちの牛車や馬車にも被害が出ている。懸賞金をかけているがうちの若いのも返り討ちにあっていて……」

 

裏口

 

会「今の当主は考えを折らない。私からの説得は無意味だ。実力行使は不可能なのか?」

少年剣士「それは僕が決めることじゃない。決めるのは風見幽香だ」

会「店内での私の立場もそろそろ危うい。霧雨の娘が帰ってきた」

剣「ことは単純じゃない。それにあなたは風見に雇われている身。言葉には気を付けて」

会「少年剣士様は女のようだ。男なら建前で話すな」

剣「どういう意味?」

会「お前が三重スパイだってことは知っている。風見の間者だけじゃない、お友達の薬売りは元気かい?」

剣「言葉に気を付けて。夜道で辻斬りにされたくなければ」

 

7、玄武の沢、巨人とその息子、椛、橙、レティ、霊夢、魔理沙、文、紫、藍

 

穴倉、中

 

椛「久しぶりに会ってみれば、あなた、人里でちょっとした噂になっていますよ」

巨「ちょっとした噂ならどうってことねえな」

椛「前言撤回します。大層な話題です」

巨「いっぱしの巡査になれたからって言うようになったな、椛。相変わらず白くねえな」

椛「今は巡査長です。ともかく、かつての大天狗の近衛がこのような洞穴で暮らしているなどあってはなりません。山に戻ってください」

巨「人間の真似事は下らん。裁判、政治、報道……妖怪が社会を持つことには無理がある。理性よりも感情が優先されるような連中は、原始的な暮らしまで戻るしかない」

椛「山は変われます。きっと」

巨「自分の身は自分で守るさ。お前も守りたい物を守れよ、椛」

 

穴倉、外

 

橙「玄武の沢に立ち寄る時は気を付けよ。昼間でも谷の影が目を眩ませる」

椛「猫目は暗闇でも良く見えるでしょう。指名手配の八雲の式」

橙「式の式にゃよ、先代巫女が妖怪と共同建設したダムはこの上流だにゃ?」

椛「白々しいですよ……妖怪の山のダムと人里の植樹公園、2つはどちらも平和の象徴でした」

橙「一方は風見の所有物、もう一方は焼け落ちたにゃ。水力発電なんて時代遅れ……」

椛「用がないのなら私は帰ります。非番であっても暇ではないので」

橙「まあ、待つにゃ。運が良いことにこれからこの沢で一悶着あるにゃ」

椛「山の警察の管轄区で騒ぎを起こす気ですか」

橙「だからお願いしたいのにゃ。手を出すなと。それに起こすのは橙たちじゃない。博麗の巫女だにゃ、犬走椛殿」

椛「巫女……?それにどうして私のことを」

橙「あなたにはここで他の哨戒天狗たちが介入しそうになったら止めてほしいのにゃ。既に新聞社何社にかは投書で巫女のことを送っていたんだにゃ、予想通り手ごたえが悪い。だけど噂には成っているようで、鴉天狗の中でも広まっているにゃ」

椛「何が言いたいんです?」

橙「今更旬でもないネタに喰いつく物好きを誘き出すってことにゃよ」

 

山の雪原、入り口

 

レ「トンネルを抜けるとそこは雪国でしたってね」

霊「入る前からそうでしょ。これ以上凍らせる場所が無いと冬の妖怪さんは退屈するんじゃないの?」

レ「氷の妖精も遊び場がないって泣いていたね。困ったものよ。雪やこんこ霰やこんこで」

霊「降っても降っても三年降りやまぬは勘弁ね。春の者たちは冬眠中なの?知っている?」

レ「春告精も私も似たような存在で、その季節じゃないときは無色透明で漂っていて、時が来れば色づくの」

霊「冬には積もる雪の白、春には舞う桜の色」

レ「理想郷には空飛ぶ巫女の赤……この郷であなたを知らない者はいない。しかし作物が死に井戸が凍れば誰もあなたのことを見ない。皆生活が第一だから」

霊「妖精ですら飛べるのに私は非力。光を曲げたり音を消したり気配を探ることもできない。これからすることも既得権益のためよ」

レ「神社に住み着く三月精は過激派じゃないから安全だよ。親のコネを断ち切って自力での独立を目指している君の友人と比べているのかい?」

霊「魔理沙が巫女だったら大結界でも蹴りそう。私が霧雨店の娘なら大人しく親に従うわ」

 

穴倉、裏口

 

魔「ありゃ?人里を騒がしている巨人だって聞いて、箱を開けたらとんだ体たらくだ。楽勝だな」

息子「くそう。ひ弱な魔法使いのくせに。ちょこまかと」

魔「あたしは鍛えている方の魔法使いだぜ。それにしても巨人にしてはあたしの倍も無い体格だな。この四五倍はないと物足りないぞ」

息「ぼ、僕だって将来はそれくらいになるやい」

魔「なんだお前、小さいと思ったら巨人は巨人でも、巨人の子供か」

息「馬鹿にしやがって、そっちはもっとチビな人間の子供のくせに。へへへ、お前なんて父ちゃんの足裏でぺしゃんこにされちゃえばいいんだ」

 

ドシン!

 

魔「あたしは不意打ちにも対応できる子供だぜ。こっちが本命か」

巨「息子が世話になった。まだまだ体術の鍛錬が足りんようだな。家に侵入したのはお前が初めてだ。小さな強盗さん」

魔「やっと盗人稼業が板についてきた証拠だな。それと家じゃなくて洞穴だろ?噂の巨人の旦那」

巨「無駄な殺生はしたくないが人の子の肉は妖怪に高く売れる。その金で新聞を買って噂の出どころを見つけるとしよう」

 

雪原と沢の境

 

霊「あの鉄塔の麓に玄武の沢がある……外の世界から引っ張ってきている電線だっけ……橙が今日この沢に例の文屋を連れて来るって言っていたけれど、本当かしら?……大結界付与のための妖怪退治……紫に面接してもらわない私が困るわね」

 

ド、ドォン・・・・・・・・・・・・(遠くから破壊音)

 

霊「こうやって雪に振られると空を飛べても地上を歩くのとあんまり変わらないわね。でもやっぱり飛べないのは悔しいな……母さんみたいに超高速で。……私もいつまでも地べたを這っている場合じゃない……あいつが飛べているのに、私って才能ないのかな」

 

ドドォン・・・・・・!(より近くから破壊音)

 

魔「……ぅぅぅうううわああああああああ!!!」

霊「ん?」

魔「マスパも毒煙も効かねえとか聞いてないぞ!」

霊「魔理沙?」

魔「ったくどうしたら……って霊夢か?どうしてここにいるんだ?」

霊「それはこっちの台詞。あんたこそ、どうしてこの谷に来ているの」

魔「それはアレだぜ、実家からのお達しだよ。八雲の試験を受けているお前とはいささか軽い依頼だがな」

霊「あんた私がここの巨人退治に大結界が貰えるかどうかかかっていることを知っていて横取りしようって?」

魔「ダブルブッキングしたのは偶然だ。私は明日食うための路銀稼ぎで狩りに来ただけだ」

霊「それが友達の就職を妨げると分かってやっているのが悪質ね」

魔「お互いの仕事の範囲が被ることなんてこの先いくらでもあると思うぞ。これはその第一号だ」

霊「前例が積み重ならないことを祈るわ……その前にこの山を越えられたらの話だけど」

 

巨「俺を山呼ばわりとは礼儀がなっていない小娘だな。石ころ二つが山脈に勝てるのとでも?」

魔「霊夢、奴のタフネスは相当なもんだ。おそらく全身に魔力か霊力が漲っているせいであたしの攻撃はまともに効かん。有効なのは物理的攻撃、打撃だと思うぜ」

霊「この沢で寝て暮らしているうちに身体強化されたって訳。流れている水にもうっすらと妖力を感じる。上流からの力の供給が巨人の腕力に加算されている……最悪ね」

魔「霊夢、お前は飛べないが、全力ダッシュはかなり速い。すばしっこさと相手の動きの先読みで奴を撹乱できるか?隙ができたらあたしが叩く」

霊「あんたの攻撃は奴には通らないんじゃなかった?」

魔「あたしが叩けば奴は防御に出る。その時が本当の隙だ。あたし1人の相手で精いっぱいな奴を、死角から突け」

霊「アバウトなようでちゃんと段取り組んでいて感心するわよ、名軍師さん?」

魔「マジシャンだからトリックにはこだわるのさ、切り込み隊長?」

霊「紫、協力は無しとは言ってなかったし構わないわよね」

巨「この辺の玄武岩は薄くはがれやすい。脆い足場ごと地盤沈下させてやろう」

 

九天の滝

 

橙「絶景で有名な九天の滝も雪景色となると味気ないものだにゃ」

文「……私は、秋の紅葉と同じくらいに好きですけどね」

橙「凍った滝や氷柱の冷気も猫には堪えるのにゃ。鴉さん?」

文「……名もなき鴉でいいですよ、私は。ペンネームは捨てましたから」

橙「だったらどうして、今でも手帳とカメラは忘れず携帯しているんだにゃ?」

文「趣味ですよ、景色から詩を連想したり、自然や動物たちの姿を記録するためです」

橙「風流だにゃ。こんなご時世にも散歩がはかどるにゃね」

文「いいえ、山は危険なんです。昔はよかった。山には自由がありました。集会の自由、表現の自由、経済活動の自由……。衣食住も好きにしていい。そのゆとりが懐かしくて、今でもこうして誰もいない裾野に出てきてしまうのかもしれません」

橙「だったら猫一匹紛れ込んだくらいは許せにゃ。橙は子供だから同じ猫ともよく喧嘩するにゃ。引っかき合って噛みつき合う。だけどお互いを傷つけてふと我に返った後、どちらも互いに何をするべきか、分からない鴉天狗でもないことは、子供の橙でも知っているにゃ」

文「……本当に八雲の目はどこにでもあるんですね。喧嘩別れは良くないってことですか?」

橙「記事にするなら」

文「……見知らぬ猫さん、どこかで灰色の狼を見ませんでしたか?あいつの仲間はみんな白いのに、あいつだけ濁った色をしているんです」

 

玄武の沢

 

巨「うらああッッッ!!!頭からつぶれろ!!!」

 

ドンガラガッシャン!(沢が崩れる)

 

魔「霊夢!……っておま!」

霊「あんたこそ頭の上を見たら?」

巨「なっ、いつの間に!バッタのようにぴょんぴょんと!」

霊「それ言うなら舞う蝶のようにひらひらと!」

魔「霊夢!足は固定した!」

巨「小癪な!」

霊「七転八倒!七転び八起きは無し!そのまま谷の底にめり込みなさい!」

巨「そんなひ弱な脚で俺の拳が砕けるか!」

霊「多重結界!文鎮落とし!うりゃあああああ!!!」

巨「ぬおおお!!?重力か!??」

魔「行けえええ!!!霊夢!!」

霊「跪けええええ!!!」

巨「うぐっ…………!!!」

 

シュー・・・・・・(巨人の頭から蒸気)

 

魔「やったか?」

霊「倒してはない。ダウンさせただけ」

魔「神がかった身のこなしだ。人間のあたしにはできん」

霊「妖怪扱いするな」

魔「ミイラ取りがミイラに。妖怪退治する奴は化け物だよ」

霊「無自覚に殺しを重ねるのが化け物。私はそうじゃ……」

椛「待ってください!!この巨人は……私の友を殺さないでください!」

魔「おっ狼の妖怪だ。……なに?」

霊「その巨人……いいえ、あんたの友達を誰が殺そうとしている?」

椛「あ、あなたたちに決まっているじゃないですか!」

魔「なるほど。なあ霊夢聞いたか、ワンコちゃんが言うにはあたしたちが巨人を殺すそうだ」

霊「……少し話を聞いて、狼の妖怪さん……じゃなくて白狼天狗さん、私たちは何も友達の首を取りに来たわけじゃ……」

紫「いいえ、首を取らなければ大結界は上げられないわ。横着はダメよ、霊夢」

魔「ゲッ、今度はスキマ妖怪」

椛「……八雲の賢者……」

霊「……紫、どういうこと?」

紫「理解力はあると思っていたけれど私の思い違いかしら?霊夢、私はあなたに巨人の討伐を条件として提示したの。それが一切の答え」

霊「だったら条件は呑めない。契約内容を確認しなかった私のミスよ」

紫「あなたがその気なら構わないでおきましょう。しかしそれでは巫女の不在で困るのは私です。ふふふ……ここは私の手で巨人を狩ってあなたの功績と言うことにしましょうか。無理矢理にでも大結界は付与します」

霊「なっ、紫、ふざけないで」

魔「なんて滅茶苦茶な」

椛「あなたたちはさっきから何を言っているんですか、小芝居なら騙されません、全員グルでも」

紫「ええそうね、私たち三人は友達よ」

椛「殺らせません……!」

霊「くっ……」

魔「金のためとか言ったがこれはダメだ、八雲紫、お前いい加減に……」

 

バサア……(羽音)

 

文「その懐から取り出そうとしている物を閉まってくれませんか、白黒の魔法使いさん。この谷でどの方向に魔砲を放っても壁が崩れてろくなことになりません」

魔「……速いなあんた。見えなかったぜ」

文「理想郷最速ですので」

椛「え?あ!先輩!?」

文「可愛い後輩の窮地に颯爽と駆け付けるのも私の仕事です、椛。もしもこの間の無礼が許されるなら、今一度この場は私のことを立たせてやってはくれませんか?」

椛「私は最初から……ずっと前からそのつもりですよ……」

文「あははは……これは先輩として後輩の涙の原因になってしまうとは、不覚ではありますが得した気分ですね」

紫「お楽しみの所ごめんなさい?全ての意思ある者に別々の都合がある……お分かりかしら?」

文「新聞記者として時間の都合などは心得ているつもりですが」

紫「そう、だったら手短に。今すぐ天狗としての立場を弁えているのなら博麗と八雲の名の前に退きなさい。後ろの頑固な手下の白狼も説得して退かせるの。できたらあなたの口から現状を説明してあげて?射命丸文」

椛「せ、先輩……いったいどういう……?」

文「椛、大丈夫です。そうですよね?次の博麗の巫女さん?」

霊「……紫、私は救いたい者を抑えつけない。もしも八雲が圧政を強いたら博麗が正す。その代わり、理想郷がどちらを好むかは運任せ」

魔「霊夢らしいな。大雑把で適当なところが」

霊「機知に富んで明快な所、でしょ?」

紫「ふふふ、八雲も異変解決の対象になる可能性はあるってことね……面白い。満足だわ。どの道あなたの覚悟を見るための試練だし、結果としては合格ね」

霊「ほんと?」

紫「次の……いいえ、当代の博麗の巫女の誕生よ、はいコレ、博麗銭」

 

チャリン(博麗銭)

 

霊「一銭玉?」

紫「神社の賽銭箱に投げ入れなさい。さすれば大結界が復活してあなたのものよ。その小銭はそのためのマスターキー……おめでとう、博麗霊夢」

椛「私たち、助かったんですか?」

文「緊迫はしましたが杞憂だったというところでしょう」

魔「おう、あんたらが居なかったら違う未来になっていた。あたしたちはラッキーだ」

霊「さっきはナイスパスだったわ、鴉天狗さん、いいえ、初めまして、射命丸文。こっちのうるさいのは魔理沙って言うの。やっと会えたわね」

文「噂は正しかったと言うことですか。どうも、霊夢さんでよろしいですか、それと魔理沙さん、こちらの狛犬は椛と言います」

 

スキマ内

 

紫「橙は?」

藍「はっ、あのまま貯水湖及び魔法の森一体にかけて土壌サンプル回収の続行を通知しておきました」

紫「立ち回りとしては及第点ね」

藍「紫様がお選びになった式ですから」

紫「それはあなたもね」

藍「……紫様は最初から橙の顔を立てるおつもりいだったのでしょう?巫女の考えを計ったり、文屋と引きあわせる狙いも」

紫「アイデアは一度に多くのことを解決するわ。それを憶えておきなさい、橙は子供ながらそれを感覚で分かっているけれど、あなたは少々硬い所があるわ、藍」

藍「橙から学べと、肝に命じます……しかし良かったのですか?妖怪討伐も躊躇うような少女を巫女に挙げて」

紫「歴代の巫女のやり方は十人十色、肉弾戦から交渉術まで、手段は問うていなかった。それを思い出しただけ。主人の判断に水を差すとは秘書に慣れすぎたかしら?」

藍「そのようなことは……ただ、紫様は三珠様のためにやっているのではないかと」

紫「あの子の夢は三珠のそれとはまた異なる。どちらも捨てがたい理想よ」

藍「だとしても、私の全ては紫様の理想のために捧げます……私はあなたの式なのですから」

紫「ありがとうね、藍」

 

穴倉、奥

 

霊「個性の裾野は紋切型でないとダメなの」

魔「一見バラバラな物を支えるのは同じ物でないといけないってことか」

文「例えば私たちが互いに一騎打ちするとして、戦闘手段は?」

椛「お札、魔法、剣、先輩はカメラですね」

文「カメラなら情報戦に成るだけですよ、他の三手段も交えたら異種格闘技になります」

魔「基準が必要ってことだな」

霊「ええ、その通りね」

息「おーい、ひ弱な魔法使い……じゃなかった魔法使いさん、父さんが全員に話があるって」

魔「お、チビ巨人。なんだ、また戦うのか?」

巨「違う。息子から聞いたなんだかんだ全員で俺を助けてくれたんだな。まあその前に気絶はさせられたがチャラにするさ。そこの巫女さんも殺す気は無かったって言うのは本当らしいからな」

霊「……ごめんなさい」

巨「おお、いいさ。それより俺が食糧目当てに襲った積み荷にあったガラクタがたくさんあるんだが、俺らには無価値でもあんたらには値打ち物かもしれん。礼としてできることは、今はこれが精いっぱいだ」

魔「お、ガラクタだと?素晴らしい掘り出し物があるかもしれん!」

椛「将棋盤と駒とかあれば嬉しいです」

文「レンズは高価ですからね。霧雨店の荷車を襲ってもそうそう無い代物ですし」

魔「実家を勝手に襲うな……霊夢、どうした?」

霊「巨人さん、これは?」

巨「目の付け所が良いな。玄武の甲羅。大天狗から貰った勲章品だ。北方の四神、大亀の種族でも大往生した個体の甲羅だそうだ。俺には無用の長物だったが、台風や氷河を消し飛ばす衝撃波を出せた生前の霊力がまだ残っていて、余力をうまく使えば神風を起こせる……」

 

ブオオン・・・・・・(霊的な起動音)

 

魔「やったな霊夢、飛べたぞ」

霊「自力じゃない!」

巨「出力には気を付けろ!風で穴倉が崩れちまう!」

文「また良いアングルですね」

椛「羽団扇の天狗風よりも繊細な風圧ですね」

息「ねえ!巫女の姉ちゃん!今の理想郷を変えてくれるって本当?!」

霊「ええ!あんたの父さんのプレゼントが役に立つわ!」

 

8、城上部、風見幽香とリグルとメディスン、少年剣士

 

風「そう、霧雨魔理沙が……5年もどこをほっつき歩いていたのかしら」

リ「それも見た目が少女のままだったとすると、答えは魔界だよ、幽香」

メ「ああー!メディスン知ってるー!人が滅んで魔物だらけになってる場所!」

風「うふふ、メディスンは物知りね。今日の人形遊びはもう飽きたのかしら?」

メ「ううん?後からまた遊び部屋に行くよ?毎日毎日良い声でなくから楽しいし!」

リ「それで少年、君は僕たちが最重要反乱分子として指名手配している霧雨魔理沙を放置してこうして城に戻り僕たちに報告している訳だけど……何も考えられないマヌケなの?」

剣「リグル様、気づいたときには霧雨魔理沙は店の自警団に連れられて人里の外まで護衛されていました。僕は会計係と今後の対策を練っていました。霧雨店屈服のために娘の魔理沙が邪魔にならないようなら、僕の剣が彼女の血で染める必要もないと」

風「霧雨魔理沙は魔界に居た。そのことは私たちの取引相手への態度を変え得る要因になり兼ねない。剣術の腕を見込んで手元に置いているけれど、役立たずならメディスンの遊び場行きよ。魔界の商人は察しが良いのよ。今度の取引にはまた部外者を利用する」

リ「了解したよ、幽香。メディスン、そろそろお部屋に戻ろうか、お気に入りの人形たちがご主人様を待っているよ」

メ「ええー、剣士のお兄ちゃんとも遊びたいー」

リ「この男の子は幽香と僕のお人形だ。メディスンメランコリー、君のお人形は誰だい?」

メ「稗田あきゅう!」

リ「そう、正解だ。さ、毒虫まみれの遊び部屋で好き放題やってきてごらん、殺さない限り何をしても構わないからね」

メ「はーい、いってきまーす!」

 

剣「毒虫まみれの部屋……この城の地下空洞にあるという蟲蔵のことですか?」

風「それを聞いてどうしようって言うのかしら。あなたも耐え難い苦しみの中で救われない悲鳴を上げ続けたい?」

剣「……いいえ」

リ「変な気を起こさないことだね。君がもう一つ集中すべきなのは、冬を起こして春を隠す術式の維持だよ。クライアントからの要望だ。その要は君の外部への繊細な干渉を可能とする精神力だ。それは剣筋のぶれの無さにも通じる。素振りでもしていたらどうだい?」

剣「日頃の精進こそ剣豪への唯一の道標です。ご指南感謝します。しかし術式の手順が逆です。小さな春を消せば大きな冬にできますが、大きな冬は小さな春に抗えません。風見様、リグル様、失礼します」

 

リ「確実にあの少年は黒だ。是非曲庁か、はたまた八雲の間者か」

風「両方だと思うわよ?まあ、泳がせておきなさい。……博麗霊夢も理想郷に帰ってきている。妖怪の性がうるさく訴えてくるのよ。ここに巫女がいる、食い殺せってね」

リ「人間も妖怪も風見幽香は倒せない。魔界の商人からまた種だ。今回も栽培から量産まで頼めるかい?幽香」

風「武器商人は死の商人、いい加減温室にも向日葵以外に割けるスペースが少なくなってきたわ」

リ「僕の管轄なのに実質は君に任せきりで申し訳ないよ」

風「理由は知らないけれど、先方曰くこの取引は大晦日で打ち切り。それまでに霧雨魔理沙と博麗霊夢、奴らの協力者とその首を城門に晒せば、万事解決よ」

 

9、妖怪の山、図書館、魔理沙と椛

 

椛「魔界ではどのように過ごしたんですか?」

魔「語れるようなもんじゃないさ」

椛「では図書館の閲覧禁止ゾーンに忍びこめるようなスキルはどこで会得したんですか?」

魔「ここの錠前は魔界でよく見かける奴と同じだ。同じ会社の製品か?」

椛「妖怪の山は魔界とも取引していますから、魔界に流通しているセキュリティ製品がこの街にもやってきていることもあるでしょう」

魔「企業ごとにダイヤルが微妙に違うんだ。その誤差で警報が鳴るかどうか決まる。監視カメラや巡回ドローンも同じ社製の方が都合が良い」

椛「簡単な空き巣やスリというより、大掛かりな施設への侵入に慣れているんですか?」

魔「中には天界にまで進出しいてる企業もあるんだ。ま、あたしとしてはさらに好都合だが」

椛「魔理沙さん、私が山の図書館まで案内するのは良かったんですが、こんな目的なら直接掛け合ったのに」

魔「馬鹿言うな。山の警察は腐っているんだろ?汚職に賄賂、博打に薬。図書館にまで麻薬が持ち込まれて警備員どものアヘン窟ときた。まともに取り合ってもらえるわけがない。だったら端から強行突破だよ」

椛「だったらせめて一言私に」

魔「真面目なお前は代案を探してその分時間がかかるだろ。人間の生は短いんだ。それに敵を騙すにはまず味方からってな」

椛「味方だと思ってもらえるのには感謝します。この山の街では誰も信用できない。どこで誰が裏で風見に繋がっているか分からない。居心地の悪い監視社会ですよ」

魔「そうか?本当に誰もが見張られている街なら、こんな真昼間から泥棒なんてできっこないだろ」

椛「魔理沙さんのスキルと私の能力がありますからね」

魔「助かっているぜ、椛。お前の目はどんな監視カメラよりも有能で、それが魔法の類だったらあたしは喉から手が出るほどに欲しい。千里眼はそれだけの希少価値がある」

椛「自分では思ったことがありません。私はこの能力とこの見た目のせいで小さい頃からいじめられていたので」

魔「白狼なのに灰色、か。黒にも近いかもな。河童の工業地帯の廃水にでも浸かったのか?」

椛「私を身ごもった頃の母親が戦争中に事故に遭い、その影響だと」

魔「……とんだ災難だな。つまりは人間にやられたってことか?」

椛「いいえ、妖怪にやられたと聞いています」

魔「は?戦争って人間と妖怪の争いだろ。だったらどうして天狗が同じ妖怪に害されるんだ」

椛「人間にはあまり知られていないのですね。人妖戦争の裏では妖怪同士の覇権争いも繰り広げられていたんです。天狗も河童も妖精も鬼も、有象無象が派閥に分かれ地縁で結束しお互いに主導権争いを行った。人間と争うよりも質の悪い妖怪同士の足の引っ張り合いです。消耗戦になり多大な犠牲者の後には、生存者には碌な見返りもなかった。今だって風見と正面切って妖怪の山が争わないのはそういった過去の教訓があります。戦ったところでお互いの損害にしかならない。しかし風見はそれを見越しているんです」

魔「ふうん、難儀だな、妖怪も。それに風見の巧妙なやり口も見えた気がするぜ。卑怯だが堅実な支配の方法だ。争いというものの使い方がうまい」

椛「感心している場合じゃありません。お目当ての本は見つかったんですか?」

魔「ああ、やっぱりここにあったぜ。貸出禁止でも死ぬまで借りてくだけだ。ついでに箒を新調したいんで良い所知らないか?なあに、次は盗まねえって。金ならあるぜ、風見の城の賭博場でたんまり稼いだからな」

 




※玄武の沢……山のダムから流れ出て、九天の滝を通り過ぎた先に水流が行き着く沢、ダムから流れてすぐ滝よりも手前で霧の湖に行き着く川と分離している。主に河童たちの住処であるが、異常に長い冬期で水面が凍っていたため別所に移動していた。沢の両端は崖のようになっておりそこに洞窟も多数存在する。妖怪の山の勢力圏はギリギリ外側か内側か、といった場所。
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