【東方戯曲台本形式】リベンジフルゴースト   作:三城朝海

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※魔力……「力」の中でも最もスタンダードなもの、自然界に多く存在し、そこから生まれでた者たちも誰から教わることもなく使い方を身につけていることが多い。様々なエネルギー源や物質、および物理学的な力に変換することが可能で、浮遊力や光源、栄養素等を生み出す役割を持つ。季節や災害等の自然界のバランス変化の影響を受けやすく、地中や大気中に関わらず染み込んでいたり漂っていたりする。

Chap.7 final


7. 火花

城地下

 

椛「これがもう一つの陰陽玉と繋がっている……奇妙な術式です」

妖「恋文箱を利用しろということでしょうか。しかし肝心の目的も、八卦炉を取り出す方法も分かりません。通信もできず、揺れでいつ崩れるか分からない状況ですが……」

椛「諦めず打開策を練りましょう。陰陽玉はふたつあります。一つは魅魔が突き破った穴を伝い、今ここにあるもの、もう一つは霊夢さんが持っていると思われます。ほぼ確定です。私たちと霊夢さんは物々交換できる立場にあるとすると、私たちが霊夢さんに送るべきは」

妖「八卦炉、しかない」

椛「はい。しかし私たちがここにいることを知って玉を送ってきたのなら、それを教えたのは誰か?魅魔ではないとすると、魔理沙さんしかいません。とすると八卦炉を取り外すことの難しさも霊夢さんに伝わっているはずです」

妖「つまり私たちが八卦炉を霊夢さんに送るんじゃなくて……」

椛「はい、その前に霊夢さんが八卦炉を外すことができる手段を送ってくる。私たちの方から陰陽玉を使うのはその後、という推論が成り立ちます。霊夢さんがどうやって魔理沙さんから聞きだしたのかは分かりませんが、あのお二人を信じましょう」

妖「同感です。悠長にしている時間はありませんが、精神統一ですね」

 

森

 

ガシッ……(白楼剣を鞘に戻す魅魔)ブシャア……(血を噴き上げる巨人)

 

魅「ふんっ、霊夢が我が子にでも見えたか。父親なら、家族を守れ」

巨「……あ……あぁ……」

霊「巨人さん!?」

巨「……息子と一緒に新聞を読んだぞ……俺は気に入った、応援しているぜ……ガハ……」

霊「……っ……魅魔!!」

魅「片腕くらいどうってことあるまい。それが人間と妖怪の差だ。精神さえ頑丈ならば、肉体の枷は無いも同然。だがこの剣で斬られた妖怪は精神に直接ダメージが行く」

霊「あんたは霊体だけれど実体はあるのね」

魅「この世の物ではなくなっているだけだ」

霊「だったらあの世に帰りなさい!」

魅「第二局面と行こうか!」

 

ズキュン!ズキュン!ビューン!(高速で動き、弾幕と魔弾を打ち合う霊夢と魅魔)

 

魅「ゼロ戦にでもなったつもりか?」

霊「あんたはエノラ・ゲイよ!」

 

ダダダダダ!!(連射音)

 

魅「旋回がなっていない」

霊「あんたの癖は魔理沙と同じ!」

魅「教えたが、私より遅い」

 

ビューン!ビューン!(ビーム音)

 

霊「さっきの大魔法……あんたも消耗して永遠には飛べない」

魅「では、そろそろケリを付けるとしようか。……今度こそ斬る。腑抜けにしてやる」

霊「肉は斬られないわね」

 

シャキン……ユラァ……(白楼剣)

 

霊「その妖刀はあんたのものじゃない、魅魔!」

魅「ならば奪い取ってみろ、私がそうしたように」

霊「私には必要ない。在るべき場所に返すだけ!」

 

キュイーン……ガチャー……(陰陽玉)

 

魅「剣術指南だ。来い、霊夢!」

霊「正面から受ける!」

 

パカァ……!(陰陽玉)

 

魅「ハアッッッ!!!」

霊「抑え込んで!」

 

ギュイーン……!(陰陽玉)

 

魅「……ッ!?」

霊「……母親なら、娘を守れ!」

魅「白楼剣を……!どこにやった!!」

 

城地下

 

ギュイーン……!(陰陽玉)

 

椛「見てください!陰陽玉が……!」

妖「開く……!いったい何が……っ!……あれは!!」

椛「妖夢さん!?」

妖「そういうことね!霊夢!!」

 

パカァ……!(陰陽玉)

 

椛「……刀!!」

妖「取り返してくれたの!後で礼はするから、今は思いっきり振るわせて!」

椛「二刀流!?」

妖「初めてで慣れてないけど、お爺ちゃんが憑いている。……見ていてください、椛さん」

椛「これくらい、千里眼も要りません」

妖「ありがとう。……魔力の流れを、魔極の力を……斬るッ!」

 

ザザザ……(妖夢が駆ける)ジャキンッ!!(妖夢が斬る)

 

……ッ……パァーン……(断ち切られる魔力の流れ)

 

妖「楼観剣と白楼剣、二本揃えた今の私に、斬れぬものなどあんまりない!」

椛「妖夢さん!八卦炉を!」

妖「受けとって!椛さん!」

 

ビューン!(妖夢に投げられる八卦炉)

 

椛「これで地下から炉心が消えます……!」

 

ギュイーン……(陰陽玉)

 

森

 

ギュイーン……(陰陽玉)

 

魅「よくも……今度は何だ」

霊「椛に妖夢……そして魔理沙とみんなの分よ、魅魔」

魅「それは……何故八卦炉が!」

霊「喰らいなさい、……マスタースパーク!!」

 

(マスパ音)

 

魅「くっ……八卦炉が抜かれたことで火花花粉の量は私の想定の半分になる……もう半分の連鎖爆発を防げる道理はないが」

霊「ばら撒かれた爆竹状態って訳……あんたの花火は打ち上げさせない」

魅「祭りは勝手に始まるものだ。夏の思い出も幻想に過ぎない」

霊「それを守るのが私の役目。お盆までには成仏しなさい、魅魔!」

 

湖

 

メ(幽香……幽香?そこにいるの?ねえ、返事してよ、幽香……!)

風「……あぁ?……」

メ(私だよ……!メディスンだよ……!幽香の言うこと聞いて……ちゃんと化け物になったよ……?だからメディスンは良い子でしょ……?ねえ、また頭を撫でて褒めてよ、幽香……)

風「……あらぁ……何の声……?……メディスン……?……誰それ、知らないわよ、私……」

メ(……嘘だ……幽香が私のこと忘れるはずないっ……!……幽香は私を守ってくれたのに……!……一緒に遊んでくれたのに……!)

風「……うるさい声ねぇ……私はあなたの友達でもなければ……保護者でもないのよ……」

メ(……ねえ……幽香は……私を……好き……?)

風「……気持ち悪い……心底どうでもいいわ……あなたは誰も振り向いてくれない、独りぼっちの化け物でしょう……」

メ(…………あ、あぁ)

 

文「動きが……止まっている……?」

 

メ「キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!………………」

 

文「うぐっ!……何ですか、いきなり……!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!(放たれる触手)

 

文「触手!?……不味い、結界を突破される!」

 

ガン!ガン!ガン!(結界に激突する触手)

 

文「……速度が上がっている!本体ごと体当たりする気ですか!」

 

ゴゴゴ……(湖を人里方向に移動する巨体)

 

文「……そんなにも人間が……世界が憎いですか……メディスン・メランコリー……!」

 

ド、ドド、ドドドドオオオンンン!!!(大波ごと結界に体当たりする巨体)

 

城上空

 

魅「八卦炉は出力装置に過ぎない。私の杖もマスタースパークを放てる」

霊「だから何?」

魅「先進技術に頼るのも良いが、原始的な法則に任せた方が確実な場合もある」

霊「3つの暴力のうち、純粋な暴力って訳?」

魅「ああそうだ……経済と言葉は置いていけ……マスタースパーク」

 

(甲高いマスパ音)

 

ダム

 

藍「……橙!城から魔砲だ!」

橙「狙いはダムじゃない……?」

 

山肌

 

サニー「うわー!いきなりなんだー!」

ルナ「城からの流れ弾!?」

スター「違う……!狙いは花畑よ!」

 

ドドドガガガアアアンンン!!!(爆裂する火花の花畑)

 

3妖精「きゃーーー!!!」

 

ダム

 

藍「こちらに直接撃たれていたら防げたが、間に合わなかったか……」

橙「まさか……地盤ごと……」

藍「ダムにヒビが入り始めた。今からでは止められない。濁流が城を襲う……魔力炉の暴走が……橙、私は……」

橙「藍様は悪くないにゃ、爆発さえ防げば……霊夢に託すしかありません」

藍「……紫様が言ったんだ、私は硬いと。自覚はある。融通と機転を利かせることが苦手だ……この失態の原因だ……無能な上司で、本当にすまない……」

橙「そんなことないです。橙は藍様の緻密な計算を信頼しております、安心感があります。だから動くことができるのです。藍様のおかげで頑張れます」

藍「……ふふ、言うようになったな、橙も」

橙「いつも寝坊助な紫様を叩き起こす藍様を見ています故」

藍「……橙、私たちに上限関係は無い。共に紫様の式だ。だからこそ、お前に頼みたい」

橙「何なりと」

藍「私の手と足になってくれ。私よりも素早く小回りの利くお前の力が必要なんだ」

橙「だったら藍様は橙の耳と鼻になってほしいにゃ。相手を化かす知恵も借りたいにゃ」

藍「二人で一つだ。これでも紫様には及ばないが、私たちにできることをするぞ、橙」

 

ピキ……ピキピキ……プシュー……ドバババ……ボガァン!……ドドドドド……(ひび割れ漏れ出し決壊し濁流が起きる)

 

城上空

 

魅「さあこれで私の念願の準備は整った。この杖を核に理想郷中の虫どもを引き寄せる。花粉は球状に集合し、巨大化し一個の爆弾となる。……洪水が押し寄せれば魔力炉も、な」

霊「……魅魔。あんたも幽香も私も、みんな別々の正義だった。誰もが犠牲の上に自分の願いを叶えようとする。あんたのことを否定する気は無い。だけど肯定する気も無い」

魅「追い詰められた時の時間稼ぎか?……炉心を抜いても意味は無かった。ダムは決壊し、私を倒すことも叶わなかった。どの要素で失敗しても、大災害は避けられなかったんだ」

霊「だからって諦めないわ。私は博麗の巫女だもの」

 

城地下

 

椛「妖夢さん……城に山の方から鉄砲水が迫っています……貯水湖が落ちたようです」

妖「魔力掃除機も無意味……ここも危ないということですか。……ん?」

 

妖1「な、なんだお前らは!?」

妖2「馬鹿!ボスはもういねえんだ!さっさと逃げるぞ!」

妖3「あいつらが城をめちゃくちゃにしたんだ!そうだろ!?」

妖4「違いねえ。腹いせだ。襲って喰っちまおう」

妖5「乗ってやるが、この地響きはなんだ?」

 

妖「垢舐め、小豆洗い、塗り壁……?」

椛「皆さん!争っている場合じゃ……逃げてください!……あ!」

 

ジャキン!(妖4の不意打ちを剣で受け止める妖夢)

 

妖「いきなりかかってくるとは失礼ですね。……椛さん、あなただけでも、どうか」

椛「剣術の心得くらいあります……」

妖「私は半分死んでいます……高濃度の魔力が溶けた大水に呑まれても、生き残れます。しかしあなたは……」

椛「妖夢さんも無傷では済みません。そこのあなた達だって」

妖4「けへへ、可愛い子ちゃん達を襲って死ねるなんて光栄だね」

妖「下衆が……!椛さん、早く……!……あ!」

 

ドバドバドバ……!(濁流)

 

妖1「なんだ!?天井が?!!」

妖2「だから逃げようって言ったのに!おえええ!」

妖3「城が終わる~!!」

妖5「……これが地鳴りの正体か……」

妖4「てめえら、これはいったい!」

妖「剣を抜いたのなら、いかなる時も集中を切らすな」

 

ズババ(妖4を斬る妖夢)

 

妖4「ぐえええ!!」

 

ドサ……ドババババ!!!(濁流)

 

妖「……幽々子様」

椛「妖夢さん!!」

 

城上空

 

魅「本丸も天守閣も沈む。風見の配下も蚊のように逃げていく。すぐに地下空洞も水没するだろう…………怒りで言葉も無いか?」

霊「巫女の勘が言っているの。あんたの負けだ、ってね」

魅「痴れ者が。この期に及んで君に何ができる?」

霊「やれることはやり切った。後悔はない。私の弾幕は既に放たれた」

 

湖

 

文「不味いです……陸が汚染され始めています……何か打つ手は……」

藍「射命丸殿!ご無事ですか!」

文「藍さん!橙さんは?」

藍「橙は無事だったが、ダムが破壊された……すまない」

文「起きてしまったことは仕方ありません。次の被害を防がなければ。見ての通りメディスンが藍さんの張った結界を突き破って湖畔の草木を枯らしています。私の風だけでは押し返すのに不十分です。橙さんは?」

藍「湖畔の八カ所に結界の補強術式を設置してもらっている。私の火力と君の大風、八雲家と妖怪の山の協力で霧の湖に化け物を押し倒すと同時に補強する。奴を湖に閉じ込める」

文「毒の大地では妖精たちも死に絶えます……やりましょう」

藍「恩に着る。タイミングは設置完了を知らせる橙の信号弾だ。……畳みかけるぞ」

 

城地下

 

ドババババ……(濁流)

 

椛「妖夢さん、しっかりしてください……!」

妖「……う……うぅ……」

椛「……あなたも先輩からは真面目だと言われるんでしょうね……私のように……妖力の影響を受けやすいあなたにこの場は酷かもしれませんが……ろくな魔力も無い私は、まさに不純物です」

妖「……そんなこと……ありません……」

椛「妖夢さん……お体は……」

妖「あなたはもっと自分を大切にしてください……」

椛「……それはあなたにも言えます……妖夢さん、もしも無事に先輩に会えたら」

妖「通信は……通信は回復していませんか……?」

椛「……やはり繋がらないみたいです」

妖「……私がやるべきことはあなたと共に脱出すること、最期の言葉を伝えることではないです……いっ……!」

椛「動いてはいけません……安静に……妖夢さん……射命丸先輩にはこうお伝えください。『お悔やみよりも、結婚と誕生欄が似合う新聞でした』と」

妖「待ってください……!」

椛「あなたとも一太刀交えてみたかったですね、妖夢さん」

妖「椛さん!!」

 

バチバチバチ……(激しい魔力の流れ)

 

椛「私は不純物……だからこそ激しい魔力の流れに逆らえます」

 

ガシ……ガシ……(魔力炉側面を登る椛)

 

椛「ここを登れば……炉の中心……絶縁体の私にならできるでしょうか」

 

ガシ……ガシ……――ガシ!(登り切る椛)……スッ(お守りを手に取る椛)

 

椛「あなたが、ここまで私を導いてくれたのでしょうか……?」

 

ドババババ……!!(濁流)

 

椛「今、そちら側へ行きます……すみません、先輩」

 

ガンンンン!!!!!(炉心に飛び込む椛)

 

城上空

 

……スッ(杖を構える魅魔)

 

魅「君が私の家を燃やした時の信管術式だ。同じ仕打ちを君も受けろ」

霊「させない!!!」

魅「さあ、終わりだ。焼かれろ、理想郷よ」

 

ビュン……!(魅魔に投げられる信管)

 

霊「くっ……!!」

 

湖

 

ビューーーン!(橙が打ち上げた信号弾)

 

文「上がりました!信号弾です!」

藍「行くぞ!尾が燃え尽きようが狐火は休めん!」

文「羽が散っても出血大サービスですよ!」

 

ゴウゴウ!!(文と藍の合わせ技)

 

メ(風が熱い!)

 

藍「押せ!倒れろ!」

文「根こそぎ吹き飛べ!」

 

グラッ……!(後ろに傾く毒怪物)

 

文「傾いた!」

藍「押し出しの寄り切りだ、受けろ!」

 

ゴゴゴ!……ザッパーン!(傾き、そして湖上に盛大に転倒する毒怪物)

 

文「やった……!藍さん!」

藍「今度こそ封じ込める……ハアッ!」

 

ドゥイーン……(結界起動)

 

橙「はぁ……はぁ……やりましたにゃ、藍様……ん?」

 

城地下

 

椛(ここは……そうだ、私は炉の中心で挟まれて……腹の感覚がありません……潰れているのでしょうか……足もどこかに千切れて……これで炉の暴走は……ん?)

 

フワ……フワ……(お守り)

 

椛(私のお守り……?……木の枝が……暖かい……付喪神……?)

 

ピカーーー!!!――“上へ”

 

椛(……上……?)

 

妖「暴走!?!?」

 

――……ドドガガガボボガガガゴゴガガガアアアアアアアアンンンンンンンン!!!!!!!!(魔力炉から根が生える)

 

妖「根っこ!!??!!??」

 

城上空

 

魅「……地震か?だが爆ぜろ!特大花火だ!」

 

カッ――(火花花粉集合体が起爆)

 

人間の里

 

慧「ヒロシマ!?」

 

精肉場・賭博場・上階

 

ドガドガドガボガボガボガゴガゴガゴガッッッッッシャァァァァァアアアアアンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!(幹が生える)

 

妖6「木の幹か!??!!?」

妖7「城が崩れるぞおおおお!!!!」

 

城上空

 

霊「わっ!」

 

――ドッッッッッカァァァァァアアアアアアアアアンンンンンンンンン!!!!!!!!!(花粉集合体が爆発)

 

湖

 

文「あやや!」

藍「橙!!」

橙「藍様!!」

 

ドオオオオンンンン!!!!(爆発の衝撃波)

 

天守閣

 

バッッッッッカァァァァァアアアアアアアアアアンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!(花粉集合体の爆風)

 

ガラガラガラガラガラドザドザドザドザドザドドドドドドドドドドド……(枝が生え、天守が内側から破壊される)

 

霊「枝!!??!!??」

魅「巨木か??!!??!!」

 

ボボボボボバババババドドドドドォォォォォオオオオオオオオオオンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!(生える巨木が下から、花粉大爆発が上から、大激突)

 

ダム跡地付近

 

ルナ「きゃあ!!」

スター「眩しい!!」

サニー「伏せろ!!」

 

湖

 

メ(え?…………何の光?)

 

ピカーーー……(起爆の光)

 

メ(暖かい……まるで……)

 

カァァァァァアアアアアアアアアア……――(迫る爆風)

 

メ(あれ?……なんで……私……泣いて……)

 

――……フワッ……――(涙を流すメディスン)

 

メ(……幽香……)

 

――……グチャグチャグチャボチャボチャボチャバラバラバラララァァァァァアアアアアアアアアアンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!(毒怪物メディスンが爆散する)

 

城上空

 

メキメキメキボサボサボサバサバサバサ……――(成長する巨木)

 

――……ゴウゴウゴウボウボウボウボロボロボロ……――(燃える枝葉)

 

――……パラパラパラポロポロポロフワフワフワ……(崩れながら生える枝葉)

 

巨木枝葉

 

霊(ここは……うぅ……すごい魔力の流れ……これは理想郷に染みた記憶……?)

 

 

『風「探し物、これでいいの?」

三「は、はいっ、この髪飾りです……」

風「大切な物なら二度と失くすんじゃないわよ」

三「あ、ありがとうございます!優しい妖怪さん!」』

 

 

霊(若い、母さん……?……それにあの妖怪は……)

 

魔「……いむ!霊夢!気が付いたか?」

霊「……ここは?」

魔「良かった、意識はあるな。ここ突然生えたでっかい木の上だ。城の地下から天守閣もろとも突き破ったド根性大根……ごぼうと同じだ。冬に閉じ込められた春の気、大地に溜まった魔力を養分にして数千年分の成長過程を吹き飛ばした大木だよ」

霊「大木……はっ!……爆発は……理想郷はどうなったの!?」

魔「あはは、慌てるな、ここだって理想郷だ。この巨木が盾になって地上を守ったみたいだ。爆風で思い切り焼かれたが、焦げ落ちるよりもさらに速い成長速度で目いっぱい枝を広げて、身を呈して爆風を防いでくれた。人間の里も妖怪の山も無事だ」

霊「良かった……あんたが呼んでくれた巨人さん……怪我、させちゃった。私の力が足りないから。人間巫女が妖怪に助けられたんじゃ、示しがつかないわよね」

魔「良い助っ人だったろ?死闘になることは予め伝えておいた。それでも臆することなくお前に助太刀することを承諾してくれた。あいつも男だ、二言は無い。今は一緒にここまで来た息子に介抱されているぜ」

霊「ありがとう、魔理沙」

魔「良いってことよ。あたしたちはラッキーだ」

霊「それにしても、城の地下から……椛と妖夢は……?」

魔「それなら安心しな。二人とも無事みたいだ。さあ、うかうかしていられないぜ?ちょっとしたスペクタクルだ。北欧神話の世界樹ユグドラシル、聖書にある楽園の生命の樹、伝説の木は数あれど理想郷の御神木は今か今かとその時を待っている」

霊「確かに暖かいし、眩しいわ」

魔「城は崩れ風見異変は終結し、火花は散って魅魔の計画は破綻した。そして博麗異変の幕開けだ」

霊「そうね、ようやくね」

魔「その心意気だ。あたしたちの新たなる門出に、大自然の祝福が待っている」

霊「それって……」

魔「知っているか?動物が恋をして、植物が芽吹く季節をっ!」

 

キラ……!(妖精の羽)

 

リリーホワイト「“春”!!!“です”!!!!“よおーーーーー”!!!!!」

 

ビュゥゥゥォォォオオオオオォォォ……………!!!!!(桜吹雪)

 

霊「春告精……冬の妖怪が言っていた」

魔「ずっと冬眠していたんだろう、この時のために」

 

ファサ……(霊夢の頬に花弁)

 

霊「桜吹雪……この弾幕は、避けられないわね」

魔「ああ、綺麗だ。お前が居たおかげで放たれた。自信もっていいぜ、霊夢」

霊「はは、あんたがそれを言うのね。……魔理沙、ありがとう」

魔「そこは明けましておめでとう、だ。へへ」

 

人間の里

 

阿「……雪落ちて まだかまだかと 城の山 春告精の 跡探す道……」

霖「リリーホワイト、春が来たことを伝える程度の能力、か……」

慧「キノコ雲がしだれ桜に変わった。降る雪も積もる雪も、美しい花弁に」

若「おい、どうやらお前の夜逃げの意味はなくなったようだ……って伸びているのか?」

会「うぐぐ……」

霖「やあ、若頭、景気はどうだい?」

若「霖之助か、ああ、春の陽気が戻った。親父さんも回復できる……兎も角、店を回すには会計係の後釜を探すことからだ」

霖「良かったら紹介するよ。賭博に溺れていた風見の密売人だが、元は優秀な男だ」

 

巨木根本

 

幽「綺麗な桜の木の下には死体が埋まっている。うふふ、お団子が食べたいわね」

妖「……はっ!……ゆ、幽々子様!?どうしてここに……」

幽「細かいことは気にしないのよ。剣士である前にあなたは1人の女の子、まずはしっかり体を休めなさいね……白楼剣、取り換えせたのね、妖夢」

妖「で、ですが膝枕は……」

幽「可愛い従者さんの祖父への孝行に免じて、白玉楼の主がここに許します。長い間、魂魄家の宿命を1人で背負い込んで、大変だったわね、妖夢」

妖「そ、そんな、お褒めに預かるようなことは……何も……」

幽「部下の頑張りを評価しないで、上司が務まるもんですか。春眠暁を覚えず、今は私の膝を枕にして赤子のように眠りなさい」

妖「……う、うう、ゆ、幽々子様……」

幽「よしよし、可愛い子。今は、心をほぐして。今度一緒に噂の八目鰻の屋台に行きましょ?」

妖「うぅ……ぐすんっ……えうっ……ずずっ……はいっ……」

幽「良い子良い子……。……私の死に際にも、舞っていたのかしらね」

 

ダム決壊跡地付近

 

サニー「辺り一面草原だあー!」

ルナ「見て!森が緑色!」

スター「タンポポ咲いているわ!」

三妖精「万―歳―!!」

 

湖

 

橙「藍様……熱いにゃ……」

藍「す、すまない。また抱きつきすぎたか……?」

橙「いいえ、今度は春の温もり、むしろこうしてずっとくっ付いていたいです。……藍様の柔らかさが、爽やかさが、滑らかさが、橙は大好きです。藍様が知らない藍様の良い所を、橙はたくさん知っているんです」

藍「橙……」

橙「だから藍様、もうご自分を悪く言わないでください。……藍様が油揚げを好きな所は可愛いです。藍様が凛々しくあろうしている後ろ姿はカッコいいです。藍様が仕事をしている横顔は、憧れます。……だから、お願いだから、どうか橙のもとを去らないでっ」

藍「誰が去るもんか。ずっと一緒だ、橙。お前の替わりは世界中どこを探したっていやしない。たとえ数千万の猫が他に居ようとも、お前が好奇心に任せて旅に出ようとも、ここにいる一匹の狐はたった一人、お前だけを、……その帰りをずっと待っているんだ」

橙「ふふふ、安心ですにゃ」

藍「ああ、私もだよ、橙」

 

巨木頂上

 

椛「……女の子の、声が聞こえたんです。いつかどこかで、私と出会った人間の子です。私のお守りが、その子と私を繋ぐ、絆のようなものになったのかもしれません」

文「無病息災恋愛成就、合格祈願安産長寿……お守りは小さな神様ですよ。魔力炉に集約した膨大な魔力が小枝の付喪神をこの大木まで押し上げた……にわかには信じられない話です。が、あなたには立派な後遺症が残ってしまいましたね、椛」

椛「私は、死のうとしました。妖夢さんに遺言を伝えてほしいなんてまで言って。反省しています。二度とこうして先輩に会えることは無いと思いました。だから、こんな姿になっても、あなたに会えたことが嬉しいです。先輩」

文「今だけ、カメラは要りません。私の瞳がレンズに成り、あなたの素顔をフィルムに残します。だけど椛、今のあなたは一面を飾るに相応しい、美しい狼ですよ」

椛「……断ります。先輩の記事には笑顔の写真が似合います。灰色が抜けて平凡な白狼に成れただけです。載せるならあの子を、この桜をお願いします」

文「黒い鴉から言わせてもらえば文字通り眩しいくらい……せっかく純白の毛並みを手に入れたのに中身は前からの恥ずかしがりやから変わっていませんね」

 

ユラッ……(悪霊の影)

 

椛「先輩っ……先輩!」

文「あやや、高い所は苦手でしたっけ、椛」

椛「違います!まだ終わっていません!霊夢さんが……!」

文「あや?」

 

巨木枝葉

 

霊「そういえば八卦炉、返すわね」

魔「おお、取り返してくれたんだな、助かるぜ」

霊「魔力が暴走気味だったから後で霖之助さんの調整を……」

魔「はっ!?霊夢!!!」

 

霊「へ?」

 

ヒュルヒュルヒュル(霊夢の腰に魅魔の鞭杖が巻き付く)

 

魅「霊夢を借りるぞ」

魔「マスタースパーク!!」

魅「遅い」

魔「くっそっ!!!」

 

ビュウウウン!!!(霊夢を攫う魅魔)

 

魔「速い!甲羅じゃ追いつけん!文たちはどこだ?!」

 

霊「うぐっ!」

魅「花咲か爺にでもなったつもりか」

霊「は、なせ……!」

魅「私の火花を桜に変えたか」

 

巨「あの爆発で消えてねえのかよ、悪霊!」

息「巫女のお姉ちゃん……!」

巨「届かねえ……!」

 

 

博麗神社

 

 

鳥居

 

魅「参拝だ、鳥居をくぐらないとな」

霊「ぐはっ……」

 

ガンッ!……ガラガラガラ(霊夢がぶつけられ鳥居が真っ二つに砕け崩れる)

 

境内

 

魅「境内で身を清め……」

霊「ううぅっ……」

 

ゴロゴロゴロ……(境内の石畳を引きずられる霊夢)

 

社

 

魅「……初詣だ。賽銭は持ったか?」

霊「このっ!……解けっ!」

魅「今解く。お前で鐘を突け、霊夢」

 

ガラガラガッシャーン!(社の鐘に叩き付けられそのまま霊夢だけ社内部へ)

 

霊「……う……ぅづ……た、立たなきゃ……」

魅「受け取れ……イビルフィールド」

 

カッ!――

 

霊(爆弾……!)

 

――ドオオオオンンンンン!!!!!

 

霊「あがぁっ……!」

 

バキバキバキィッ!(神社半壊)

 

霊「うぐっ……ぐふっ……」

魅「まだ息があるな。瓦礫の下で生き埋めになっても」

霊「ま、まだ……」

 

ヒュル~(陰陽玉)

 

霊「霊、符、『……」

 

ドサッ!(魅魔が霊夢の腕を踏む)ガシッ!(魅魔が陰陽玉を捕まえる)

 

魅「弾幕ごっこはおしまいだ、霊夢」

霊「魅、魔……」

 

ヒュルヒュルヒュル(霊夢の腰に再度、鞭杖が巻き付く)

 

霊「どこ、に……」

魅「君の死地だ」

 

結界外周、森

 

魅「……八卦炉と白楼剣を入れ替えた陰陽玉の力を見て確信した。術式は何だ?」

霊「教える、もんか……」

 

ドゴォッ!(霊夢を岩に叩き付け押さえる)

 

霊「カハッ……、……恋文、箱よ……」

魅「男女の逢い引きのための道具……?ふっ、笑わせてくれる。境界の有無に関わらず時空を超える力など、万に一つしか存在しない」

霊「何の、話よ……」

魅「乙案は失敗した。甲案の修正で私の計画を完成させる。目的は変わらない。世界への復讐だ。私は止まらない。次の手段を手に入れるのみだ。霊夢、君の力を、な」

霊「……何を言っているのかさっぱりだけど、行動は一貫した方がいいわよ……魅魔!」

 

ボウッ!(発火する巫女服)

 

魅「なっ!火炎術式!」

霊「よく燃える巫女服よ!」

 

ドガーン!(バックドラフトで吹き飛ばされる魅魔)

 

霊「消し炭には、成らないか……」

魅「ああ、地縛霊には成れるがな」

 

ガバァ!(霧状になり霊夢に覆いかぶさる魅魔)

 

霊「うっ……」

 

霊(これは……魅魔の意思……?……まるで濁流……体が、乗っ取られる……頭の中に入り込んで……呑み込まれる……!)

 

紫「そこまでよ」

 

ブイン!(スキマ音)グバァ!(霊夢から引き剥がされる魅魔)

 

魅「がはっ!……また、お前か……」

 

バタッ……(地に臥す魅魔)

 

霊「はぁ、はぁ、紫……」

紫「危ない所だったわね、霊夢。こんなに傷だらけになって……」

霊「私よりも魅魔を……」

魅「弟子に気遣われるのも悪くないな」

紫「黙りなさい。よくも理想郷を焼け野原にしようとしてくれたわね。死を以て償え、と言いたいところだけれどあなたには意味がないわね」

魅「ふん、それはお前にも言えるだろう。八雲の大妖怪。人成らざる者同士、異形であることに違いは無いが、お前は特に奇形だ」

紫「あら、私は五体満足よ。あなたは時々足が無くなるから平均して四体満足かしら?」

魅「阿修羅や千手観音にも同じことを言ってみろ……ごほっ、ごほっ」

霊「今、楽にしてあげるわよ、魅魔」

魅「看取ってもらうのが君で良かったよ、魔理沙にはこんな情けない姿は見せたくない」

霊「最期までそこは譲らないのね、天晴れよ」

魅「……誰の血も見ない。それが君の復讐だったな」

霊「あんたに血は流れていない。これは復讐じゃない……『夢想封印』」

 

ピシャーン!(夢想封印)

 

魅「……試練は続くぞ、霊夢」

 

――パッシャン…………!(魅魔、消滅)パサッ……(魔理沙の帽子)

 

霊「……魔理沙の帽子、返してもらうわよ」

紫「お疲れ様、霊夢。悪霊退治、大仕事だったわね」

霊「新人に任せる案件ではないわね。初任給は出る?」

紫「こっちへ来なさい、霊夢」

 

パタ(紫にもたれる霊夢)

 

霊「あっ……」

紫「気休めだけれど、回復魔法よ。安月給でごめんなさいね」

霊「……いいわよ、紫、ありがとう。これで三度目ね」

紫「あら、結界の歪みがあったから偶然様子を見に来ただけよ」

霊「神社も壊された。母さんとの思い出が」

紫「全ては心の中よ。また再建すればいい」

霊「……紫、私は、本当に博麗の巫女?」

紫「ええ、あなたの他には誰もいないわ。だから今は良い夢を見なさい、霊夢」

霊「あっ……ゆか、り……」

紫「……嫌な想い出は忘れましょう」

 

 

 

 

<異変後>

 

 

 

 

霧雨魔法店

 

寝室

 

チュンチュンチュン(小鳥の鳴き声)

 

霊「……んあ?」

霖「おはよう、霊夢」

霊「……霖之助さん、また5日経っていたりしないわよね?」

霖「そんな寝正月でもないが、元日は昨日だよ」

霊「良かった……って魔理沙?」

魔「くぅ……くぅ……」

霖「八雲の妖怪が君を寝かせる場所を探していてね。魔理沙が率先して家を開けたんだ。彼女の親父さんも容体は回復に向かっている。君と父親のことで心配でならなかっただろうね」

霊「ったく、静かにしていれば可愛いのに」

霖「そう言うな、君の無事と愛用の帽子で泣き疲れたんだ。それは射命丸君の新聞だ」

霊「一面は異変のことだらけね。妖精が大会を企画、ね」

霖「君の神社が倒壊したことは六面だ。大晦日には沢山のものが壊れた。八卦炉はメンテ中、彼女の箒も新調した」

霊「新調?」

霖「そして君には新品だよ、霊夢。これが無くちゃ降霊術も退魔術も使えない。君の場合はチャンバラで剣術や棒術にも使えるかな」

霊「3寸3尺ばかりの棒……巫女の武器」

霖「紙垂には石灰石から生成した魔法の紙を使った。そして魔理沙の箒もこの玉串にも、どちらもあの桜の御神木の素材を使っている。魔力も霊力もよく馴染む一品だ」

霊「軽いし硬い……突きも払いも筋が良い……しなり具合と鋭さも、巫女のお祓い棒としては申し分ないわね」

霖「それともう一つ、山の技術屋から送られてきた設計図がある。これも君の新しい装備……兵器だ」

霊「霖之助さん、私からも一つ提案があるの」

霖「ん?なんだい、霊夢」

霊「弾幕ごっこだけじゃ足りない。人間と妖怪が分け隔てなく話し合える場を用意する。それを手伝って欲しいの」

 

庭

 

魔「ったく、先に起きたならあたしのことも起こしてくれよな」

霊「あんたの寝顔で遊んでいたのよ」

魔「おいおい、羽根つきの罰ゲームみたく落書きされてないだろうな」

霊「ヒョットコかオカメにでもする?これがあんたの家庭菜園?」

魔「ああ、トマトにナスにエダマメ……キノコ栽培用に原木も拾ってきたんだ」

霊「捗るわね、ホントに。そういえば森の奥の魔女さんに礼を言っていなかったわね」

魔「礼ならメディスンの抜け殻でも届けるか。あいつは人形遣いだからな」

霊「藁人形でも贈るほうがあの怪物の核よりもマシだわ」

 

 

博麗神社

 

境内

 

トンテンカーン(作業音)

 

魔「霊夢の神社は再建中、まさか鬼まで手伝ってくれるとはな」

萃「お前達には面白いものを見させてもらったからな、せめてものお返しだよ」

サニー「私たちも恩返しだー!」

ルナ「少し名残惜しいけどね……」

スター「新居探し、手伝ってくれて本当にありがとうございます」

霊「いいのよ、困った時はお互い様、また遊びに来なさい」

 

鳥居

 

紫「ふふふ、みんなの所に戻らなくてもいいの?」

霊「私があいつらと宴会してると妖怪神社だと思われて参拝客の足が遠のくわ」

紫「それでも良いとあなたは思っている。人間も妖怪も違いはないと思っているのね」

霊「人間と妖怪が共に暮らしていくのは幻想?」

紫「外の世界の常識で考えれば夢物語の絵空事でしょうね。しかしここは常識が非常識に、非常識が常識に変わる世界。不可能は無いわ」

霊「それでも魅魔や幽香のような、手のつけられない連中は嫌でも出てくる」

紫「それを解決するのがあなたの役目。弱気になっているのかしら?」

霊「違うわ。でもあんたが語り、母さんが守ろうとした理想を私が受け継いでいけるのか分からないの」

紫「自信を持ちなさい、霊夢。この理想郷の未来の全てが、あなたの双肩にかかっているわけじゃない。周りをご覧なさい。人間も妖怪も、あなたを支えてくれる者達を大切にしなさい。大事なのはこれまでに成し遂げたことよりも、これからの心構えよ」

霊「あんたには敵わないわね、紫。ありがとう、これではっきりした。私が本当に守りたいものが」

紫「ふうん?それは一体何?お聞かせ願おうかしら」

霊「私が守りたいのは理想郷じゃない。幻想郷よ」

 

縁側

 

幽「うふふ、やっぱりあの店のお団子は美味しいわね〜」

妖「もうっ、幽々子様、ご夕飯までに満腹になってしまいますよ?」

 

境内

 

息「へえ~、恐竜が絶滅した原因って隕石だったんだ」

子「小惑星とも呼ぶらしいね。それで哺乳類の時代が始まったんだ」

 

鳥居

 

紫「……ふふふ、あなたには本当に驚かされるわね」

霊「うん?どうしたの?紫」

紫「何でもないわ、霊夢、楽園の素敵な巫女さん?おかげで何を忘れていたか思い出せた。また近いうちに会いましょう」

 

妖怪の山

 

頂上

 

ゴウゴウ(山風)

 

霊「東の風が強いわね」

魔「おっ、昇進したのか?椛」

椛「はい、おかげさまで」

文「犬走警部補専属の情報屋、射命丸文です」

魔「早速だが情報を見せてくれ」

文「はい、こちらが現場の写真と記録です」

霊「これは……大量のナイフ?それに……」

魔「おいおい、まじか。弾幕ごっこで殺しか?」

椛「五ヶ所バラバラな現場から回収された五枚のスペルカード……いずれも名称やモチーフから割り出すと、とある西洋の妖怪に行き着きました」

文「夜の王、紅き月、最強の生命力と怪力の持ち主で、生者の血を啜り糧とする翼を持った悪魔、私もブン屋人生でその存在を確認したのは初めてです」

魔「ドラキュラ伯爵……」

霊「吸血鬼ね。でもどうして日本に」

文「この理想郷……いえ、幻想郷の結界には外の世界で忘れ去らせらた者達を引き寄せる力があります。おそらくはその影響かと」

椛「東洋の島国まで来て、目撃したのがド派手な異変解決だった。そして自分もやってみたくなった、という感じでしょうか」

霊「いずれにしろ、リグルや風見残党も放って置けない。妖怪退治の収束にはまだ程遠いわ」

魔「異変倶楽部は続行だな。霊夢、お前が復讐心に燃えてくれたおかげで、感謝している奴が大勢いる。あたしもだ」

霊「……私は博麗の巫女だもの。礼は必要ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

THE REVENGEFUL GHOST

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<おまけ>森、ルーミアと霊夢

 

ル「わはー、あなたは取って食べられる人類?」

霊「良薬口に苦し。夜にうろついている人間は食べてもいいわよ」

ル「そーなのかー」

霊「私を食べたかったら弾幕ごっこで勝ったらね、宵闇の妖怪さん?」

ル「望むところなのだー!月符『ムーンライトレイ』!」

 

(つづく)

 




※幻想郷……大晦日異変後に博麗の巫女の御触れと天狗の新聞によって広まった理想郷の新たな名前、かつてもそう呼ばれていたがいつしか忘れられていた。四季折々の景色が見られ、人間と妖怪が住む山と川と森と湖に育まれた美しい土地。博麗の巫女や八雲の賢者といった管理者が居るが、人間と妖怪の活発な相互関係に焦点が当てられる。魑魅魍魎が住まう中で、最高神は龍神であり、その姿を見た者はここ百数十年ばかり存在しない。


ここまで読んでくださった方、誠にありがとうございます。
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