(side足立政一)
「よいか この西安は京都なんざ比にならないくらいの古都だ。
よく学ぶように。」
大嶋教諭が煩い声で叫んでいる。
大島教諭は世界史の担任だ。
毎回のように厳しいテストとクソ専門的な課題を出してくる。
大学の史学科生に出してくるような問題ばかりだ。
俺の志望は法学部なので全く興味は無い。
だが、法学部は早〇田、〇應、中〇、そしてウチらの4つの私学大が司法試験に強いなんて言われているくらいなんである程度の成績が必要だから、仕方なくやっているわけだが。
ちなみに、この大島教諭は自身の後輩、つまり、開闢大学文学部史学科生を増やすことに教師人生賭けてるような嫌な奴だ。
ヤ〇ーの知恵袋になんて書き込もうものなら、
「お前の成績は1だ」
がベストアンサーに選ばれており。
そのベストアンサーの回答者のIDはBigーislandだったとかいう噂がまことしやかに囁かれている。
ってこれどっかの高校にも似たような噂があったな。
確かそっちは化学教師の…………。
まあ、どうでもいい。
これ以上言うとそのどっかの高校が特定されちまう。
分かる奴には分かるだろう。
「おい、秀信、いつまで見ている気だ?」
横にいるのは太田秀信。 まさにその史学科志望という変わった奴だ。
附属という学校に似合わない程ウブな奴で、俗に言うラブコメの主人公体質な癖して好きな漫画はキングダム。
本人は運動神経は良く、顔も良いのにそれだけのせいで彼女いない歴=年齢という可哀想な奴である。
「あ、うん。」
彼が見とれているのは兵馬俑。
彼曰く、始皇帝は千年に一人の英雄王らしい。
ま、たかだか黄河流域にしか国家と呼べるような代物が存在しなかった中国大陸に、中国大陸全土を網羅した巨大な国家を建設したくらいだから、その認識は間違いない。
統一国家という概念、皇帝という概念を生み出しただけでも、その凄さは既に語るまでもない。
ただ、晩年の幾つもの汚点を残し、後世には「秦始漢武」というのが暴君の代名詞となってしまったが。
「次は漢の時代の史跡らしいから早くいくぞ」
「え~? 僕、劉邦嫌いなんだけどなぁ
親父臭いし、何もしてないくせに天下は取るし、何もしてないくせに粛清バンバンするし」
「お前の好きな三国志の劉備の実態とてそんな感じだろ」
「う、うう………劉備で天下を取るのは浪漫があるじゃないか」
「知るか コー〇ーのゲームのやり過ぎだ。」
「そんな………!!」
「さて、行くぞ…………?!」
その瞬間、大地が揺れた。
かつて経験したことの無いくらい烈しい揺れだ。
壁が崩れ、屋根が落ちてくる。
これが中国クオリティ………!!
「あっ! 政一ぃっ!」
「うわ、最悪。まさかこんな人生の終わり方をするなんてな。」
何故か叫び声をあげて抗うことが出来なかった。
そして、妙なことにこんな状況で冷静な自分にはつくづく驚かされる。
次の瞬間、俺の意識は無になった。
ーーーーーーーーー
気づくと、俺は奇妙なところにいた。
隣にはなぜか秀信のやつがいる。
「よ、よかった!!」
秀信は安心してくれたようた。
「だが、 ここは何だ。」
すると、脳内に妙な声が響く。
「そなたらには申し訳ないことをしたのう」
なんだ、これ? まさか神様転生とかいう奴か?
俺は死んだのか?
やはり俺の頭は冷静なままだった。死ってこんな冷静でいられるものなのだろうか?
「流石、頭の良いのは話が早くて良いのう
いかにも、これは神様転生の機会をそなたらに与えようという………」
「ふざけないで、早く元の世界に返せよっ!」
秀信は脇でキレていた。
「落ち着きがないのう。 好きな世界に転生させてやると言うておるのに
まあ、転生先での目標を達成できたら、元の世界に戻してやるがな。」
……………おもしれぇ
「じゃあ、To L〇VEるで!」
どうせ転生すんなら、結城リトに転生してウハウハしてやる
あいつの生来のバカさを俺の学力で補完したら完璧じゃないか!
「やれんこともないが…………最高難度じゃな。
ソードアート〇ンラインとか、To LO〇Eるの世界に転生したがる輩も後を絶たないが、みんな失敗しておる。
あいにく、ウチは転生特典無しじゃしな。」
チッ。 転生特典無しかよ
「ちなみに、To 〇OVEるの目標って?」
「結城リトの親友・猿山で20人以上に跨がるハーレム形成
但し20人の中にララ、モモ、古手川唯、西連寺春菜を含まない場合は無効。」
猿顔でそんなハーレムを形成するなんて難易度高過ぎだろ
「ソード〇ートオンラインは?」
「アインクラッド第100層までパーティーを率いて到達
但し名前だけでも登場した原作キャラクターを含めたパーティーは無効。
当然、死んだ時点でチャレンジ失敗じゃ。」
無理ゲー
こうなれば敢えてレトロな所を…………。
「うる〇やつら」
「また随分古いところを突いてきたの。
面堂終太郎でハーレム形成
ハーレムの構成要件としてラム、しのぶ、弁天、おユキ、クラマ、竜之介、ラン、さくら、カルラ、飛鳥を全て含まない場合はこれを認めない。」
面堂自体はモテるキャラに入るが、その面子は厳しい
恋人がいるキャラ多いし。
だが、大分楽にはなってきた。
やはり、レトロな感じが良いようだ。
「銀〇英雄伝説」
「トリューニヒトに転生して内政を行い、銀河帝国を戦略と謀略で弱体化させきったところで攻め入り、ラインハルトをドーソンに率いさせた艦隊で戦死させる。
但し、ヤン、ビュコック、メルカッツを遠征軍に編成してはならない。」
戦略で最強キャラのラインハルトに勝つ自信は俺には無い。
レトロでもダメか
その後もたくさんある中で色々尋ねていったが、めぼしいものはなかった。
「おい、爺! ろくなもんないぞ!」
そして何故か原作崩壊案件とハーレム構成案件ばかりだ。
「そうだよ! 原作崩壊案件とハーレム形成案件ばかりじゃないか!
原作に沿ったのは無いのか!」
これには秀信も怒ったみたいだ。
てか、話を聞いた感じ、これは転生ではなく、憑依な気がする。
「あるよ」
「「早く言えやっ!」」
「ほらこれ」
示されたのは「キングダム」と「3×3E〇ES」だった。
「キングダムしか知らないな。」
「キングダムで決まりだよ。
つか、僕達、西安で死んだんだし、丁度いい。」
つか秀信の奴、結構嬉嬉としてる。
「で、目標はなんだ。」
「秦の、嬴政による中華統一。
サポートするも、嬴政になりかわるも良しじゃ。
これだけだが、その分、原作よりも展開がハードに出来ておるかも知れぬぞ」
憑依じゃないやつもあるんだな。
「だがまあ、ハーレム形成よりは楽です」
「本当に後悔はないな。」
「「はい!」」
「そうか では、行って参るがよい」
「「はい!」」
その瞬間、まばゆい光が俺達を包んだ。
原作よりもハード…………か。
面白いな。
そして、俺達は、いや、俺は
「…………………え?」
崖の上に俺はいた。
崖の下では誰かが弓を持った兵士の騎馬隊に追いかけられていた。
そして少年が馬車を御して、美人が追手と応酬している。
「…………………。」
どうやら、あれが嬴政で、俺は本当にキングダムの世界に転生を果たしたようだという状況を悟らせられた。