飛ばされたキングダムの世界で   作:陳慶之

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第七話 王騎と対面

(side 足立政一=嬴政)

 

「魏無忌が、信陵君が、兄王を殺した?!」

 

「は。 間違いありません。

魏王が魏火龍を処断していたことが露見しており、魏王の罪は明らかになっており、魏王以外は粛清されておりませんので、魏国内での混乱は全くと言ってよい程起きておりませぬ。

ただ、信陵君の食客が何人か彼の元を去った他は何も変わった出来事はない状態です。

それどころか、むしろ、魏国内の士気は最高潮に高まっているとのことです。」

 

信陵君はかつて、邯鄲を包囲していた六大将軍の王齕を打ち破った程の軍略の持ち主らしい。

 

春申君や項燕の楚軍が邯鄲に到着した頃には王齕は大敗していたというから、魏単独で王齕の秦軍を打ち破ったことになるという。

 

まさに、中華の英傑。 戦国四君と呼ばれるに相応しい才能だが…………それだけに恐ろしい

 

しかも、王として立った今、もし仮に自ら秦に攻めてきても、離間策は使えず、撃退には労力を使うことになる。

 

「昌文君っ!」

 

「ハ……?」

 

「王騎に会いに行くぞ」

 

「ハ、ハハッ!」

 

チ…………仕方ないが、予定を更に繰り上げて王騎に面会するとするか。

 

 

 

 

(side 王騎)

 

ンフ………。 魏火龍がまさか生きていたとは………。

 

「騰も驚いたでしょオ?」

 

「ハ、殿におかれましては、まさに僥倖とも言えるかと」

 

「そうですねェ。  

ですが、中華の中心は完全に魏王………魏無忌さんになってしまいました。

あの人はどこまでも真っ直ぐな人ですから、間違いなく秦に攻めてくるでしょう。

 

ンフフぅ。  面白い時代になってきましたねェ。」

 

「ハ、まさに。」

 

さてさて…………。

 

麃公さん風に言うなら、〝魏無忌さんはどれだけの大炎を、中華にまき散らしてくれる〟のでしょうか?

 

 

今から楽しみでなりません。

 

 

 

……………おやおや。 来ましたか

 

私共々、あの華々しい時代の再到来を渇望してならないお馬鹿さんが。

 

 

 

 

(side 足立政一=嬴政)

 

「感謝するぞ。 昌文君。」

 

「一重に王騎を説得出来るか否かはお主にかかっておるからな。

気にせんで良いわ」

 

昌文君は二人きりの時は、俺にため口で話す。

 

「そうか。 昌文君。

お前も来い。  

まだ11才とあれば、1人では大言壮語を吐く恐れを知らぬ、無垢なガキと侮られる恐れもあるゆえな。」

 

「勿論だとも。」

 

 

 

「お入りなさァい。」

 

王騎と覚しき、艶のある声が聞こえてくる。

 

「失礼するぞ 王騎」

 

「今日は私に何の用で……………昌文君、あなたこの歳で子供とは随分良い趣味ですねェ。」

 

はじめて見た王騎はたらこ唇で、どことなくオネェな気配を漂わせているが、圧倒的な気配を持ち、さながら山がそびえているかのような威圧感だ。

 

「ち、違うわっ!  このお方は太子の嬴政様だ。」

 

「嬴政だ。 会えて嬉しく思うぞ」

 

「…………おやおや。

太子様がこの王騎にいったい何の御用ですか?」

 

「2回程、将軍に協力してもらいたいことがあります。」

 

何故か敬語調になってしまった。

 

まあ、完全に敬語とまではいかなかったが。

 

「お断りします。」

 

「……………何故だ?」

 

理由は簡単だがここは敢えて…………。

 

「ンフフ。決まっているでしょう?  

たかだか10そこらの太子様。 

貴方にこの王騎を使いこなすだけの力量があるとは思えないからですよォ」

 

「そこは無論、承知している。 

お前が俺の力量を知るならば、わざわざこちらから出向かずとも馳せ参じよう。」

 

「ですよねェ。  

まあ、わざわざ出向いていただいたのですから?

話だけはお聞きしましょうか。」

 

「まず、1つ目だが、将軍の私兵のうち、騰将軍、録嗚未将軍、干央将軍、隆国将軍をお貸し頂きたい。」

 

「…………何に使われるおつもりですか?

私が手塩にかけて育てた兵達を?」

 

「魏無忌への備えだ。

王齕大将軍達が洛(河南)の地に兵を構え、備えてはいるが魏無忌は王齕大将軍を撃破し、必ず函谷関に至るだろう。」

 

「つまり、魏無忌と戦ってほしいのだ。

王騎よ。」

 

「そして、将軍の私兵に受け持って頂きたいのはこの場所だ。

戦う軍は……………俺の見立てが正しければおそらく楚だ。」

 

「この位置は………………そうですか。

今すぐ首を縦には振れませんが、考えておきましょう」

 

「感謝する。 もう一つの件は、また後日。

俺が将軍の眼鏡に適うものに映った、その時にまた考えてほしい。

 

それでは失礼する。」

 

「…………………。」

 

 

そうして俺は王騎の元を去った。

 

 

 

 

「……………さっき王騎に見せた図面は一体、何だったのだ?」

 

「あれは、俺なりに考えた魏無忌が秦に攻めてくる際の戦略だ。

あの作戦ならば、間違いなく秦は軍を咸陽に進められて滅亡するだろう。

今回の訪問はそれを補う刃として王騎の私兵を借り受けるのが一先ずの目標だったのだ。」

 

「それで、もう一つの案件とは?」

 

「……………まだ時間がある。 今はまだ温めておく。」

 

「そうか……………。」

 

 

 

そして、その1ヶ月後

 

 

魏王となった魏無忌が、楚・趙・燕・韓・衛と一気に同盟を締結するという事件が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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