とある二周目の垣根帝督   作:riboson

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序章『一周目終了カラ、二周目開始マデ』
こうして垣根帝督は世界を塗り替えた


日本の首都たる東京に存在せし一つの街、学園都市。世界でも最先端の科学技術を有するその街の上空にて、相対するのは二人の男。彼らは人間とは思えぬほどの強大な力を持ってして、ぶつかり合う。その戦闘の様子は、まるで神話のワンシーン。人智を超えし力を振るう彼らは、天使の如き翼を携えていた。

 

片方の男の名を、一方通行。色素が抜け切った白き髪に血のような色の赤き目を持つ。どこまでも白きその男は、どこまでも黒き翼を携える。黒き翼は禍々しき雰囲気を醸し出し、学園都市を闇に染める。どこまでも黒き闇に。

 

もう片方の男の名を、垣根帝督。金色の混じった茶色の髪に、光を映さぬ黒き目を持つ。身を赤き服で包むその男は、どこまでも白き翼を携える。白き翼は神々しく輝き、学園都市を光に染める。どこまでも白き光に。

 

一方通行の背中から噴出する黒き翼が、垣根帝督へと襲いかかる。垣根帝督の背中から噴出する白き翼が、一方通行へと襲いかかる。同時に放たれた翼は衝突し、暫しせめぎ合い、相殺されて互いに弾け飛ぶ。

 

一方通行の翼が、街を黒に塗り替える。垣根帝督の翼が、黒く染まった街を白に塗り替える。そうして、白は黒に。黒は白に。変わっていく。塗り替えられていく。黒の世界が出来て、その直後に白の世界が出来る。白黒白黒白黒白黒白黒白黒、繰り返されていく。

 

 

「jsidnshka殺ndisnxsha」

 

 

一方通行が声を上げる。殺意にまみれた、怨嗟の声を。ノイズ混じりの、人のものとは思えぬ声を。そしてその声と共に黒き翼は大きく大きくなってゆき、やがて姿を変えていく。翼の形をしていたそれは、禍々しき闇に変貌する。最早それは翼ではない。噴出されし闇の塊だ。

 

 

「面白ぇ! 面白ぇよ一方通行ぁぁぁぁぁあああああっっっ!! 」

 

 

くつくつ、けたけた。垣根帝督は笑う。嗤って、微笑って、嘲笑する。そして彼の翼も、一方通行の翼と同じように変貌し、姿を変えていく。翼だったものは、噴出されし光の塊に姿を変える。

 

 

 

轟ッ! という音を立てて、二つの力は衝突する。光と闇が、白と黒が、互いを否定するために衝突する。その圧倒的な力同士をぶつけ合う。二つの力が衝突した余波によって、街がみしみしと軋んだ。光は闇を飲み込もうとして、闇は光を塗り潰そうとした。

 

一見して互角の力は、次第にその勢力を変えていく。ギリギリギリ、力がせめぎ合い、ひしめき合う。しかしその均衡も、いずれは崩れる。そしてその崩れる時は、今からそう遠くはなかった。

 

一方通行は第一位、垣根帝督は第二位。一方通行はメインプラン、即ち主軸。垣根帝督はスペアプラン、即ち代替品。一方通行は守るべきものがあって、それ故の強さを持っている。垣根帝督は守るべきものを持っていなくて、それ故に孤独である。

 

第二位は、第一位に勝てないから第二位なのだ。スペアは、メインに及ばないから代替品なのだ。守るべきものが無く、意志の弱い者は、守るべきものを持つ意志ある者に勝てないのだ。

 

だからこれは、必然。必然的な結果であり、そこに疑問の余地は無い。『第二位』で『代替品』で『独り』の垣根帝督が、『第一位』で『メイン』で『家族』がいる一方通行に勝てる道理など、何一つ存在しないのだから。

 

 

 

せめぎ合いし二つの力の均衡が崩れた。黒き闇の力は、白き光の力を塗り潰す。光は闇に塗り潰され、飲み込まれた。一方通行の背中から噴出されし闇の塊が、垣根帝督へと迫る。垣根帝督は抵抗しない。抵抗できない。

 

ぐちゃ。垣根帝督の体は闇の塊によって、地面に向けて突き落とされる。垣根帝督はこうして、物言わぬ屍と化した。だが一方通行の怒りは、この程度じゃあ終わらない。

 

この男は、垣根帝督は。自分の守るべき少女を、大切な少女を傷付けようとした。だから許さない。ただ殺す程度じゃあ、許してやらない。もっともっともっともっと痛め付けなくちゃあならない。一方通行は怒りのままに、垣根帝督の体を打ち付ける。物言わぬ屍と化した垣根帝督は、闇の塊によって打たれ続ける。その屍が原型を無くすまで、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もなんどもなんどもなんどもなんどもなんども。

 

垣根帝督の全身の骨は、既に粉々だった。垣根帝督の全身の肉は、既に潰れてひしゃげていた。垣根帝督の臓器は、既に機能を停止していた。だが、それでも一方通行は満足しない。本来闇に関わるべきでない光の世界の少女を、10031人を殺した自分を受け入れてくれたあの少女を傷付けようとした罪は、重いのだから。

 

一方通行が垣根帝督を打ち付けるのをやめた時。垣根帝督の体は、原型を留めていなかった。ミンチなんて生易しいものではない。最早肉すら残っていない。ここに死体があると言われても信じてもらえないくらい、垣根帝督の体は粉々のどろどろのぐちゃぐちゃのぼろぼろにされていた。

 

必要以上に痛め付けられて傷付けられた垣根帝督の体は、コンクリートの染みと化してしまった。宿敵に勝てず、むしろ蹂躙された成れの果ての、哀れな肉塊。それが垣根帝督であり、彼の最期でもあった。

 

 

 

 

垣根帝督は一方通行に敗れ、死亡し、その短い生を遂げた。最後に一方通行のノイズ混じりの声を聞いて、黒い塊が自らの身に迫るのを見て、そして死んだのだ。彼が生き返ることは決してない。死者は生き返らない。それはこの世の原理で、決まりなのだから。

 

当然ながら、垣根帝督は二度と起き上がらない。二度と口を開けない。二度と目を開けない。二度と動かない。二度と能力を使わない。二度と翼を生やさない。二度と笑わない。二度と泣かない。二度と怒らない。二度と戦わない。二度と、二度と、二度と……

 

 

 

 

 

いやだ、いやだ、いやだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。こんな無様なままで、一生を遂げたくない。あいつを、一方通行を倒すって決めたのに。それでこのイカれて狂ったクソみたいな街を滅茶苦茶に変えてやるって決めたのに。なのに、これでおしまい?

 

無様に負けて、蹂躙されて、死体とすらも分からないコンクリートの染みとなって、それでおしまい? ふざけてる。おかしい。そんなことあってはならない。俺は第二位で、一方通行を超えたくて、メインプランになりたくてーー。そんな俺が、ここで終わるのか? こんなところで、終わってしまうのか?

 

俺はこんなところで死んでいい人間なのか? 否、俺にはもっと相応しき死に場所があるはずだ。なのに。それなのに。これでおしまいだなんて。いや、これでおしまいならばまだいい。これでおわれるのなら、まだいい。問題はこの街、学園都市の上層部共だ。

 

あいつらの科学技術なら、俺の脳のみを回収して復元するなど容易な筈だ。そして。きっとあいつらはそれを行う。俺の脳みそを培養器みたいなものに浸すなりなんなりして、それを未元物質を生み出す装置として利用するに違いない。

 

死者の冒涜、非人道的行為。人にあるまじき行動。でもきっと、学園都市のトチ狂っていかれた上層部のクソ野郎どもは、顔色一つ変えることなくそれを行うのだろう。奴らは俺たち学園都市の学生達を、ただのモルモット程度にしか思っていないのだから。

 

イヤダ。あいつらにとって都合の良い道具になるのだけは、嫌だ。何としても吠え面をかかせようと思っていた学園都市のクソ野郎どもに利用されるのだけは、嫌だ。だから死にたくない。絶対に死にたくない。生きたい。生き返りたい。

 

このまま生き返って一方通行をぶっ殺してメインプランになって直接交渉権を得て。それからプランを乱すだけ乱して乱して乱しまくって、アレイスターの野郎に、あの第一位以上にムカつく野郎に吠え面をかかせてやりたい。だから、このまま死にたくない。

 

 

 

でも決まり。死んだ人間は生き返らない。それは決まり。だから垣根帝督は、俺は生き返れない。ーーだが。そんな世界の原理や法則如きに、垣根帝督は屈しない。

 

 

 

 

(死んだ人間が生き返れない。それはこの世の法則で原理、即ち常識)

 

 

 

 

常識? 常識か。面白い。垣根帝督はほくそ笑む。くつくつくつ。けたけたけた。

 

 

 

愉快だ。ああ、愉快だ。まさかあの台詞を、もう一度言える時が来るだなんて。

 

 

 

 

「俺の未元物質に、常識は通用しねぇ」

 

 

 

 

奇跡は起こるものではない。起こすものなのだ。そして垣根帝督の手によって、奇跡は起きた。確かに起きた。起きてしまったのだ。

 

死んだ人間は生き返らないのが常識ならば、そんな常識塗り替えてやればいいのだ。なあに、常識を塗り替えるなど簡単なことさ。何せ垣根帝督に、未元物質に、常識は通用しないのだから。

 

その日、奇跡は起こった。垣根帝督は天使の領域に、ほんの少しだけ足を踏み入れたのだ。そして彼は、既存の常識を、ほんの一瞬のみ塗り替えたのだ。

 

 

 

 

 

垣根帝督は一度終わって、そこからまた始まるのだ。これは二周目の垣根帝督の物語なのだから。





こういう闘いを書くと厨二病臭くなってしまうのが困るところ
まああれよね、翼とかいう厨二の権化みたいなの携えて戦う二人が悪いよね
そして厨二病っぽい地の文を入れる私が更に悪いよね
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