Army of Two The Pink Rabbits 作:MP5
卒業式が終わり、訓練が本格的になっていった。2週間もすればだいたいの動きがわかり、様々な銃を使いこなせるようになっている。
「よし、休憩だ。ここまで学習能力があるなんて、正直思わなかったぞ」
「あ、ありがとうございます」
「しかし実戦になると的じゃなくて人間を撃つことになる。覚悟は出来てるか?」
二人はリオスの言葉に声が出なかった。
「心配するな。出来る限り俺も同行するから安心して任務に集中してくれ。ところでだ」
リオスが卓也に近づく。
「彼女いるんだって?教えろよ」
「え!?いや・・・その・・・」
「減るもんじゃないし、いいだろう。部下のことを知るのも上司の仕事だ。さぁ」
「きょ・・・拒否権は」
「あるがしつこいぞ」
「か、彼女が恋人です」
スマホの画像をリオスに見せる。銀髪のスレンダーな女性、名前は響野里澄。彼女は今や世界中で有名な作曲家として名を馳せ、音楽に疎いリオスも彼女のことを知っていた。
「おいおいマジかよ。俺はこんな有名人を彼女に持つ男を雇ったのか!?」
「馴れ初めも話していいですか?」
きらめき高校の音楽室で出会い、最初は自分から声をかけ、静かな場所でデートするようにし、互いに信頼しあうようになるとデート場所のバリエーションも増えたこと、修学旅行で女子の部屋にお邪魔して先生に見つかりそうになったとき、彼女の隠れている布団に潜ってしまったこと。学校の讃美歌を作曲中に元生徒会長からダメ出しをもらい落ち込んだ際、励ましたこと。卒業式の日に自分のためだけに作った曲とともに告白され、結ばれたことを話した。
「今でも互いに時間があるときはデートするんです。中央公園でゆっくり時間を」
「ごめんもう大丈夫だ・・・腹と口の中に三温糖を大量に入れられたみたいに甘ったるい・・・お腹いっぱいだ」
リオスはあまりに甘すぎる展開に音を上げた。聞くんじゃなかったと後悔している。
「僕もいますよ彼女」
「頼むから惚気話は勘弁してくれ・・・今度は口から何か吐くぞ」
翌日、卓也は中央公園に来ると、ほぼ同時に白のワンピース姿の里澄が来た。
「里澄さんおはよ」
「あっ卓也君」
「さぁ行こうか」
「うん」
口は少ないが、二人の間には誰も入れない空気が流れていた。この二人より前にリオスは植木に隠れて観察していた。
(マジかよ。嘘っぱちだと思ってたのに、ここまで来ると役所から婚姻届け来そうだな・・・持ってきたVSSが火を噴きそうだ)
もちろん、殺害するつもりはないためイタズラで使うのだが、いざケガがしてもいいようにペイント弾を装填している。
(頼むから使う機会がないようにしてくれよ)
木陰のベンチで並んで座っている。里澄はポケットから少し長めの細い棒状のお菓子を取り出し、卓也に食べさせる。
「あの・・・咥えてて?」
「え、何するの?」
里澄はもう片方から少しずつ食べていく。このままキスをするのではないかと、そう読んだリオスはVSSを構えお菓子だけを狙い撃つことに成功した。
「ひゃん!?」
「え!?」
(人の恋路を邪魔するものは・・・俺だ)
気づかれることなく見事に邪魔してみせたリオスは心中ガッツポーズを決める。しかし、どこか寂しさもあった。一緒に分かち合える相棒が、今はいないのだ。
(セーレムがいたら、もっと面白かっただろうな)
近くに誰かいる気配を感じ、顔を上げると、そこには卓也が立っていた。彼の後ろで里澄が不安そうに見ていた。
「何してんですかリオスさん?」
「いや・・・その・・・草木の観察だ」
「銃持ってやることじゃないですよ、正直に言ってください」
「デートの邪魔してた・・・すまない」
「はぁ・・・もう邪魔だけはしないでくださいね」
リオスは大人しく帰ることにした。
(ちくしょう、帰ったらとびっきり苦いコーヒーでも飲むか・・・まぁ俺も悪かったからな、今回)
デートを終え、下宿先に帰った卓也。
「リオスさん、何がしたかったんだろう?気を引き締めろってことかな?」
彼の行動をポジティブに受け取り、再びニュースを見る。前日同様、ピンク・ラビッツのニュースが流れていた。しかし、声明中の映像をよく見ると、見覚えのある人物が映っているのがわかった。
「え・・・確か中米で3年前ボランティア活動してた際、行方不明になったって聞いたけど、どういうことだ?何故そっちにいるんだ・・・」
同じころ、リオスは伊集院レイに呼ばれニュース映像を見せられる。
「リオス、真ん中の人物はわかる?」
「あぁ、ジュリアン・カルリーニ。ピンク・ラビッツの参謀で実質的なリーダーだろ?そいつに用があるのか?」
「私の知り合いの娘を誘拐されたんだ。しかも、偶然かもしれないけど、誘拐された日と同時にピンク・ラビッツは本格的に武装組織として名を上げたんだ。変だと思わないか?」
「確かに偶然にしては出来過ぎだ。ジュリアンを殺しに二人を派遣させたいのか?」
「そうじゃないさリオス。二人が派遣されたとしても、あなたも同伴してくれるんだろ?」
「そこまで激しい戦いにならないかもしれないし、新人研修には持って来いだ。引き受けてやるよ」
「ありがとうタイソン。額は・・・言わなくていいか」
「ちゃんと仕事してくるさ。文句言うなよ」
リオスはレイのオフィスを出た。
「俺だ卓也。3日後、メキシコに行くぞ。パスポートは持っておけ、アキラには俺が伝えておく」
こうして、3人はメキシコ南部に向かうことになった。
響野さん推しです、私の場合