Army of Two The Pink Rabbits 作:MP5
日本・きらめき市。腰まで及ぶ美しい黒髪をした女性、アキラの幼馴染にして恋人である井ノ倉葵歩は海外に行った彼を心配し、メッセージを送るが二日前から返ってこない。
(アキラ。ちゃんとご飯食べてるかしら?)
職場の休憩室でテレビを見ていると、中米の事情を伝えるニュースが流れる。彼女の目に変わった仮面の男達が戦闘を繰り広げている様子が映った。
「あれは何だい、ホッケーマスク被った男達がピンクなんちゃらの連中と戦ってんのか?」
中年女性が弁当食べながら同僚に聞く。
「防弾チョッキにTWOって文字が書かれているぞ、たしかそこって世界で一番有名なPMCじゃないか?」
「あの、PMCって何ですか?」
葵歩は男性上司に聞く。
「PMCってのは民間軍事会社のことだよ。正規軍が出来ないような汚れ仕事とかする、傭兵のようなものさ」
アキラがその企業に就職したのを聞いていたが、まさか戦争するような会社とは聞いていない。頭の中が真っ白になり、仮眠室に担ぎこまれたのであった。
夜中、3人はピンク・ラビッツの拠点でもある大麻工場に向かっていた。そこでは裏で銃も製造されており、武器供給路を叩く作戦を、リオスは運転しながら指示した。
「この工場は規模で言えばアメフトのフィールドぐらいの広さだが、見ての通り3階建てだ。屋根の上にはスナイパーもいるし、警備も厚い。そこで、俺が配電盤をいじるから停電と同時に攻撃し一気に制圧する。気をつけろよ」
リオスは車を止めそこで降り、遠回りしながら裏口を目指す。
「俺達は待機っぽいし、一応サプレッサー付きつけとこうか」
「そうだね・・・って、なんだアレ?」
双眼鏡で工場の正門を見ると、敵兵士の腰ほどしかない背丈のピンク色のウサギが何か指示を出している。右手には鉄パイプを握っていた。
「血糊がついてる・・・気味悪いウサギだ・・・奴らのシンボルマークに似てるから尚更」
「うわ、兵士を叩きやがった・・・しかも気絶してるぞ」
その後が壮絶だった。気を失い、倒れている兵士に追い打ちで全身に鉄パイプを叩きつけているのだ。頭から血を流し、息が無くなっても殴り続けていた。見ていられなくなった二人は視線を背ける。
「コイツはマズイ・・・リオスさん、ピンクのウサギに注意してください、強い凶暴性でミンチにするまで攻撃してきます」
「あと少しで停電だ、突入準備」
停電後、建物内に入ろうとした瞬間、背後から気配を感じ振り向くとピンクのウサギが鉄パイプ片手に襲い掛かる。とっさに躱し、M249の弾を数発撃ち込む。力無く倒れ、襲い掛かってくる気配はなかった。
「なんなんだいったい・・・これは?」
ウサギの頭部から見えるコンピューター状の基盤。
「殺人兵器か?」
リオスは基盤の一部を取り、バックパックにしまう。
(コイツが複数いたとしたら厄介だな)
裏口から入り、二人と合流する。
「ウサギに襲われた。幸い倒せたが、あれは生物じゃなくてサイボーグに近い。出来る限り銃で対抗するのがいいだろう」
「了解。上の階も制圧しに行きましょう」
2階を制圧し、3階に到達する。すると、急に明かりが灯り、視界が奪われる。近くの遮蔽物に身を隠し、鉛の雨を避ける。
「いいか、俺がお前らの前進を支援する。お前たちは横に入り込み十字射撃する。行け!」
それぞれのメインアームを握り、低くしながら移動する。多くの兵士がリオスに注目する間、配置につき敵に狙いをつけた。不意を突かれた敵は統制を崩し、一瞬で敗走していった。一息つこうと瞬間、ショットガン重装甲兵が別のドアから現れ、リオス達に攻撃してきた。
「目にモノを見せてやれ!」
卓也はM79に持ち替え、グレネードを直接ぶつけ怯んだ隙にEVO3の高速連射でヘルメットを撃ち落とすと、HK45に切り替えた卓也が頭を撃ち抜き制圧してみせた。3階にいた敵が想像より多かったのか、二人は息が絶え絶えになっていた。
「ふぅ・・・どんだけ多いんだよ敵・・・」
「でも終わったね。屋上が気になるけど」
「お疲れさん、地元有権者がここを制圧してくれたお礼に現金を君らの口座に振り込んでくれた。チャに武器を新しく新調する時に使うといい」
先へ進もうとしたその時、独特な声がどこからか聞こえる。
「ボク達ピンク・ラビッツはこんなものじゃないよセニョール」
「誰だ!?」
M4A1を握り、周囲を警戒する。
「ボクはみ・・・ボスからの伝言を伝えたよ・・・裏切者の卓也君?」
声が聞こえなくなり、警戒を解いた。卓也は考え込む。
(裏切者?どういうこと?俺が誰を裏切ったんだ?)
リオスが肩をそっと叩く。
「お前、女からモテたか?」
「うーん、どうでしょう?全くわかりませんからねぇ」
「鈍感なのか敏感なのかハッキリした方がいいぞ?これは俺の勘だが、誰かに恨まれてんじゃないか?」
後にリオスの勘が的中していることに驚くのだが、この時点では知る由もない。
「そんな覚え、一個もないのですが?」
「女の恨みは幽霊より怖いからな、気をつけろよ」
アキラは相棒にどう声をかけるか悩んだが、言葉が思いつかず、一言もかけることができなかった。
その頃、里澄はCMソングを作るために部屋に籠って作曲していたのだが、全く捗らない。彼が中米に行ったのが気掛かりなのである。
(どうしたんだろう?電話に出ないから寂しい)
途端、彼女のスマホが鳴る。相手は卓也だった。
「もしもし、起きてる?中米は夜なんだ」
「卓也君・・・もしかして、疲れてる?」
「ううん大丈夫。里澄さんこそ元気?仕事が忙しかったから掛けられなかったんだ」
「ふふ・・・今元気になった。あなたの声を聞けたから」
彼の声が聴けたからだろう、自然に安心感を覚える。
「今度日本に帰ったらデートしようよ、土産買って帰るから」
「楽しみ・・・」
「あっ、上司から呼ばれた。ごめんまた今度ね」
電話を終え、里澄は東の空を見る。
(これで頑張れる)
再びピアノの前に座り、譜面に音符を書くのであった。
次回、リオスと別行動します